異世界召喚されました……断る!

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魔王国アディス~アライズ連合国

調査隊『ティターニア』後悔

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 アライズ連合国
 港町プエルト 詰所


「誘拐事件ですか………プエルトでは特に聞きませんね」

 プエルトの詰所で領主でもあるリディア・フォン・エルフリアは隊長さんに誘拐事件に関する情報はないか?と訊ねる。
 おおっ?ちゃんと仕事するのかよっ?それなら詰所に来てから直ぐにやってくれませんかねっ!?
 そう思った俺は悪くないと思うんだ…。

 つまり…
 先ほどの戦犯はリディア!異論は認めない!………とジト目でリディアを見やる。

「………ん?」コテン

 そんな俺のジト目に気付いたか、リディアは首を傾げ、疑問を持っていそうな顔でこちらを見る。
 ちょっとあざとくてカワイイが許さん!と思いましたまる。

 そんなしょうもないことを思っている俺を他所に、話は進む。

「この町は漁師以外も………それこそ子供も海の魔物と戦いますし、リディア様のおかげで魔法のレベルも高いですからね。そんな輩に負ける町人は赤ん坊くらいのもんです」

 なるほど………あのエルフ漁師さん達はある意味この町の英才教育の賜物、ということか…。
 ナニソレ怖い…。

 さらに町レベルで魔法の扱いが上手いと………そういえば港の騒動の時も町人や商人もあまり騒いでなかったな…。
 水竜やらリヴァイアさん(仮)やらが出て来ていたのに…。

「そっかぁ………一先ず安心だね。でもそういう話が出て来ているから、少し警戒を強めて情報も聞き漏らさないようにしてね」

「はっ!了解しましたっ!」

 リディアの言に『ビシィッ!』と敬礼で返す隊長さん。しかし…

「ところでリディア様…」

「ん、何?」

「目が覚めてから後頭部が痛いのですが、何か知りませんか?」

『ピシィッ』

 隊長室の空気が固まる…。
 申し訳なさそうに質問する隊長さんに、隊長さんから『サッ』と顔を背けたリディア。………おいっ、肩をプルプルさせんな、笑うのを我慢しているのがバレるぞ。

 今にも笑いの我慢がパンクしそうなリディアを置いて、この空気の中………俺は動く。

 両手を上げて何かを掴むような動作から「エイッ」と声を出し振り下ろす動作をリディアに見せつけた…。

 ソレを見た………見せられたリディアは口元を両手で押さえ、頬をパンパンに膨らませ、そのまま床をゴロゴロと転がりだす。
 今、リディアの脳内では隊長さんの後頭部が綺麗な半円を描き天井から床に『ゴンッ』と落ちるまでの映像がリフレインしていることだろう。
 声に出さないのはさすがだ、と言っておこう。

 そして俺は…

「フッ………勝ったな」

 そう一言呟き、華麗に隊長室から、そして詰所から脱出した…。



~~~~~~~~~~~~~~~~


 死の山岳地帯
 中立都市ヘリオ


「くそぅシーハンめ…」

 商業ギルド・ギルドマスターのシーハン・ネィト・タクゥトから情報収集の対価として焼肉のタレを要求されたリュウジ・ベルウッド。
 まさか、そんな焼肉のタレもので良いのか?と思ったのと同時に、娘であるリサ・ベルウッドから泣く泣く分けてもらったなけなしの小瓶をシーハンに渡し、対価としたのだが………また分けてもらわなくては…実の娘に両の掌を合わせ、ペコペコとお願いする父親として情けない姿をまた見せるのか…という思いに、つい悪態を独り言ちてしまっていた…。



 商業ギルド

 タレの入った小瓶を受け取ったシーハンは小指をチョンとタレに付けペロリ。「こ…これはっ!?」とその灰色の両の眼を『カアッ』と見開いてから数瞬、動きを止める。
 リュウジは「多分脳内で色々考えてんだろうなぁ」と、何時ものことだな…とソレを待ち…

「リュウジ………対価はコレで十分だ。………素晴らしい味だ…」

 シーハンのこの言葉にリュウジは目を光らせる。………言ったな、と…。
 そしてシーハンが余計なことを言う前に…

商会うちの商品じゃあない…」

 ニヤリ…とリュウジは応え…

「………何?」

は親父の知人に娘と妻が譲ってもらった物だ。俺は娘に頼みこんで、やっと一瓶………その小瓶を分けてもらったワケだが…」

「なっ!?………それでは?」

「しかも、その知人は商人でもない…。商品ではないし卸し先があるワケでもない。つまり………これ以上入手できるかも不明な物だ」

『ビシィッ』と人差し指を突き出すリュウジ・ベルウッド。
「なん………だと…?」と雷に撃たれたような表情に変わるシーハン・ネィト・タクゥト。
 
「シーハン………お前は言ったな?『対価はコレで十分だ…』と。言葉を違えるなよ?明後日の午前中にまた来る………頼んだぞ」

 そう言い残し、リュウジは商業ギルドを後にした…。
 残されたシーハンは両手両膝を床につき…

「………なんて…ことだ」

 と呟いていた。
 




 そんなやり取りが商業ギルド・ギルドマスターの私室で行われていたワケだが…。

「俺のタレ…」

 結果を見れば『リュウジ大勝利』なのだがなけなしの小瓶を渡したことに少し後悔していた。
 







「あっ………トーイチさんがいるから大丈夫か」

 そうリュウジが気付くのはヘリオを出てからの最初の野営の時である。



〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


プエルト=町ぐるみで育成(笑)
リディア=床をゴロゴロするハイエルフ
フッ………勝ったな=もちろん某司令
リュウジ=名探偵のように
シーハン=orz

シリアスさんが行方不明。
次回もよろしくお願いします。
 
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