上 下
149 / 225
魔王国アディス~アライズ連合国

調査隊『ティターニア』包囲

しおりを挟む
 
 アライズ連合国
 港町プエルト


 リディアに手を引かれ連れて来られたのは、プエルトの詰所。
 あれ?何か俺、連行されてる?

 そしてリディアは躊躇うことなく詰所の扉をドアバーンッと開け放ち、ズンズンと中に入っていく。
 もちろん後ろ手に俺を引っ張りながらなワケだが…。

「お疲れ様」

 リディアの挨拶に、中にいた数人のエルフ達は全員バッと立ち上がり…

「リディア様っ!?お疲れ様ですっ!」
「「「お疲れっすっ!!!」」」

「何すかソイツ?何かの犯人っすか?」
「おいお前、何したんだ?早く吐けっ」

 既に犯人扱いである。リディアさん早く説明して。

「隊長さん、いる?」

「はっ!奥におります」

「分かった。行こ」

「あっ、おい」

 リディアは何の説明もせず、未だ俺の手を離さないまま、所内の奥へと進む。
 お仕事中のエルフさん達は俺達を………いや、俺にだけ鋭い目を向けてきている。
 止めてっ!トーイチは無罪よっ!?

 そんな一人針の筵を通り抜け、奥の扉に向かうリディアは扉の前に着くと、こちらも躊躇うことなくドアバーンッと開け放ち中へと入っていった。

 ちなみに詰所内にいるエルフさん達はやはりというか何というか…。
 革の軽鎧を纏ってはいるものの、日に焼けた薄褐色細マッチョなエルフさん達で、イケメンではあるものの、その野性味溢れる鋭い眼光で睨まれるのは怖かったです。

 
~~~~~~~~~~~~~~~~


 港町プエルト 詰所

 
「隊長さん、お疲れ様ぁ」

「リディア様っ!?………お疲れ様です。このような場所にどうされました?」

 詰所内の奥の部屋。隊長室と思われる部屋に躊躇うことなく入室するリディアに隊長と思われるエルフさんが応える。
 しかし………しかしである。
 
「(何故俺を睨む…)」

 詰所内にいた他のエルフさんとは違い、かなり立派な感じのハーフメイルを装備した金髪ロングの白い肌を持つ細マッチョな隊長さんは、その切れ長な目を細め、俺を超睨んでいた。

「ちょっとお願いがあってねぇ」

「はっ!リディア様の願いならば………何なりと」

 さすが………この旧エルフ国で元王族のリディアである。兵士達にも随分と慕われているのは非常に好感が持てる。
 持てるのだけれど………早くこの状況を説明してっ!早くっ!

「コイツですね?捕まえれば良いのですか?拷問ですか?殺せば良いのですか?おいっ!いつまでリディア様の手を握っている?よし、殺そう、良いですねリディア様?よし、コロス…」

 おいぃぃぃっ!?良くねえよっ、何がよしなんだよっ!?
 隊長さんは瞳の色を消しながら、スラァっと腰の細剣を抜いた。
 ハイライトさんちゃんと仕事してっ!?
 っ~~~かお前は…

「早く説明しろぉっ!」

『ビシィッ』と俺はリディアの脳天にチョップをお見舞いした。

「あ痛ぁっ!?」

 両手で頭を押さえ、ちょっと涙目で蹲るリディア。ここで俺を引いていた手がようやく離されたワケだが…

「っ!?貴様っ!」

 細剣を構え直し、力を入れる隊長さん。
 さらに…

「「「リディア様っ!?」」」

 隊長室の扉を開け放ち、ドタドタバタバタと入ってくる衛兵さん達。

 おや?
 囲まれたっ!?

「………………どうしてこうなった」




〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


詰所のエルフさん=専属ではなく漁師兼任
隊長エルフさん=専属。書類中も金属製のハーフメイルを装備。仕事しづらそう
涙目で蹲るリディアさん=あざとい。戦犯

シリアスさん、連続はもたず。
次回もよろしくお願いします。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので暗殺される前に国を出ます。

なつめ猫
ファンタジー
公爵家令嬢のアリーシャは、我儘で傲慢な妹のアンネに婚約者であるカイル王太子を寝取られ学院卒業パーティの席で婚約破棄されてしまう。 そして失意の内に王都を去ったアリーシャは行方不明になってしまう。 そんなアリーシャをラッセル王国は、総力を挙げて捜索するが何の成果も得られずに頓挫してしまうのであった。 彼女――、アリーシャには王国の重鎮しか知らない才能があった。 それは、世界でも稀な大魔導士と、世界で唯一の聖女としての力が備わっていた事であった。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。