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魔王国アディス 首都サタニア

そして動き出す…

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 魔王国アディス
 ??????


「王国は勇者召喚に成功した様だな」

 枢機卿から召喚成功の報告を受け、その旨を皆に伝える。

「………で、今回はどうだったのだ?」

「とりあえず魔王討伐には協力的らしい」

『とりあえず』と使ったのは、勇者がその力を魔王討伐のみに使うのか、我々『魔族』に使うのか、ソレがわかっていないからだ。
 上手く魔王討伐のみになる様に誘導したいところだが…。

「………出来るのか?」
「また教国を動かした方が良くないか?」

「………そうだな」

 ………教国はそもそも過ぎた人族至上主義の集まりだ。我々の依頼を聞く等、あの枢機卿以外におるまい。
 かといって続けてあ奴に依頼して王国に送り込むのは少しマズイ気がする。
 
 ………なら

「………いや、諜報部隊の人員を王国に送り込む」

「………っ!?」
「………大丈夫なのか?」

「直接諭すのではなく、兵や騎士、侍従に噂を流させるのだ。我々に被害が来ない様に………な」

 しかし国王には届かない様にはしないとな。
 あの豚は教国と同じく、人族至上主義が過ぎる。

「………ふむ」
「………それならば」

「…ふ、我らが魔王国を牛耳るのも時間の問題だな」

 


~~~~~~~~~~~~~~~~

 
 魔王国アディス
 ??????


「おい、マズイぞ」
「………マズイな」

「………………」

 帰ったと思っていたベルウッドが魔王城に帰ってきた。
 もちろんヴィーネ様も一緒なワケだが…。


 ………マズイ。


 恐らく勇者は魔王や魔王に連なる者に対する補正があるだろう。
 だがベルウッドは別だ。

 そもそも戦力的にどうなのか?
 
 ルシファス一人なら最悪刺し違えてくれれば良い。
 しかしヴィーネ様が加わったら…。
 さらにベルウッドが加わったら…。

「………………何とか早くルセリアに帰らせるしかないか」

「………………」
「………………ならばベルセでスタンピードを起こそう」

 ………っ!?可能なのか?

「………可能なのか?」

「アレか…」
「………ああ。アレを使う」

 「………アレ?」

 一体何だ?

「魔力溜まりを人為的に作り出す魔道具」
「ソレをベルセの周りに複数設置して街に誘導する」

 ………そんな魔道具が…。
 やる価値はある………か…。

「よし、そちらは任せる。私は手持ちの暗部を動かしてベルウッド達の動向を探ろう」

 ベルウッドとヴィーネ様が帰ってきたのは予想外だったが大丈夫だ。
 問題は一つずつ潰していくとしよう。



~~~~~~~~~~~~~~~~


 ポークレア王国
 客間


「………では、現在その天敵のベルウッドがいないベルセを攻める、と言う事ですね」

「はい、国境から一番近い街になりますので、ここを落として拠点としたいのです」

 …ふむ。
 強敵がいない間に落とす。
 作戦としては普通だな。

 だがソレじゃあボクが楽しめないな………となると面倒なだけだ。
 ………なら

「お話は分かりました。ではボクの部下を御貸ししましょう」

「………部下………ですか?」

「不服ですか?」

「いいえ、とんでもない。では先日の?」

「いえ、新たに喚びましょう。二人もいれば十分でしょう?」

「そう………ですね、先日の二人と同レベルの方なら十分かと」

「分かりました。では明日、喚び出したら訓練場へ向かわせますので」

「………分かりました。ご協力感謝します、勇者シュウヤ殿。それでは失礼します。」

「………………」

 まったく面倒な…。
 ま、仲間を呼んで引っ掻き回すにはちょうど良い口実が出来たかな。

 さて…
 誰を喚ぼうかなあ…。




~~~~~~~~~~~~~~~~


 ルセリア帝国
 冒険者ギルド本部


「ギルマス、貴族小飼の暗部が王国に入ったみたいだぜ」

 諜報に長けた冒険者からの報告を受ける。

「目的は?」

「いや、まだそこまでは分からんな」

「引き続き頼む」

「了解」

『すぅ』っと影に消えていく。
 何そのスキルカッコいい。
 とか考えていると…

「ギルマス、魔術師ギルドから連絡です」

 サブマスが執務室に入ってくる。

「内容は?」

「先日の魔力の波動の解析結果ですが、やはり召喚魔法の様だ、との事です」

「………そうか」

 となると勇者召喚の後にさらに召喚魔法が行使されたワケだが…。
 厄介な事になっていそうだな。

 勇者召喚一つで騒いでいた王国が立て続けに召喚などあり得ない。
 イコール、召喚魔法を使ったのは勇者…という事になる。

 レベルの低い勇者が召喚魔法を使えるか?

 無理だ。
 なら喚び出された勇者は既に高レベルという事が容易に窺える。
 
 そして勇者が召喚魔法を使った理由。
 兵なら王国側で用意出来るはずだ。
 しかし自ら仲間、もしくはソレに殉ずる者を喚び出した。
 何故か?

 何処かを攻める。
 
「………………」

 コレは警戒レベルを引き上げた方が良いか…。

「サブマス、城に行ってくる。あと頼めるか?」

「了解です。お戻りは?」

「そのまま直帰す「はっ?」………夜には戻ります」

「………はい、行ってらっしゃいませ」







 俺、一応冒険者ギルドで一番偉いんだけどなあ…。



~~~~~~~~~~~~~~~~


 魔王国アディス
 魔王軍訓練場


 その頃、トーイチとソウシは…






「………ハイッ、ハイッハイッ」
『バシッ、バシッバシッ』

「………ウイィ~……ハッ」
『………ふらぁ~……ビシッ』


 
『蛇拳』と『酔拳』で遊ん………組み手をしていた…。





 ちなみにヴィーネは『警察物語』を見終わり『警察物語Ⅱ』を視聴中だったそうな…。


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓


動き出す貴族派。
さらに仲間を呼び出すシュウヤ。
警戒を強めるマサシ。
カンフー映画を視聴する主人公とベルウッド夫妻。
次回、新章突入か?



次回もよろしくお願いします。
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