格闘ゲーム最強ゲーマーが転生～でもステータスが貧弱なんですけど？～

３．初戦闘①

 
家を出て領軍兵舎へ歩いて行く。子供の足だと徒歩十五分位か。
 兵舎の前に着くと声が掛かる。

「おっ、ライトじゃないか」
「グアルさん、こんにちは。どうしたんだい？」

「今日、洗礼でステータス貰ったんだけど父さんがいないから誰かに模擬戦お願いしようと思って」
「そうかあ、もうそんな歳かぁ。っと、今日は非番のヤツも出払ってるな」
「そうですか、残念」
「門の方はどうだ？手の空いてるヤツがいるかもしれんし、ライルもいるかもしれんしな」

 門か………門もここからなら徒歩十五分位か。

「………うん、行ってみる。ありがと、グアルさん」




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『商業都市グラーフ』

 グラーフ辺境伯領。『マルク・フォン・グラーフ』辺境伯が治める領地の国境に一番近く一番大きい、領主の住む街。

 国境に近い事から隣国との交易も積極的に行っている。また海にも面している為、海産業・海運業が盛んで船を用いた貿易は大陸で一・二を争う。

 俺たち家族の住む街は、そんな大都市である。
 街の南側は港になっており門は東西北の三ヶ所。

・商店の並ぶ通りを抜け、王都に続く街道へ出る西門
・宿屋や飲食店の並ぶ通りを抜け、魔の森と国境に続く東門
・農民等の一般居住区を抜け広大な畑や草原に続く北門

「父さんは狩りって言ってたから、いるとしたら東門の方かな？」

 と、俺は東門に向かって歩いていく。

「おっ、ライト。今度また飯食いにこいよ」
「うん、また行くね」

「あらライトちゃん。今日は一人なの？」
「うん、今、父さんを探して東門に行くところ」

「おうライト。今日は母ちゃん一緒じゃねぇのか？」
「父さんに言うよ、おじさん？」

 店の主人やお客さんに声を掛けられながら東門に到着。
 俺は門番に話し掛ける。

「こんにちは、ガランさん」
「おう、ライト。どうした？」
「父さん、いる？」

「ん？ライルなら森に狩りに行ったぞ。何か用でもあるなら聞いてやるから、後で伝えておくぞ」
「ん～、今日洗礼式でねステータスを貰ったんだ。だから、父さんに模擬戦をお願いしようと思って」

「お前ももうステータスを貰う歳になったか～。よし、ライルはいないが模擬戦なら良いだろう。手の空いてるヤツ探してくるから、ちょっと待ってろ」
「ホント？ありがとガランさん」
「なぁに、気にすんな」

 そう言って門の詰所に走って行くガランさん。とりあえず模擬戦は出来そうかな？



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「やあ、ライト君」
「あっ、カイトさん、こんにちは」

「模擬戦、僕が相手でも良いかい？」
「はい、よろしくお願いします」

「わかった。じゃあ詰所内の訓練所に行こうか」 
「はい！」

 呼びに行ってくれたガランさんと入れ替わりで詰所に行き、道場へカイトさんと向かう。
 俺は道場に着くまでの間に『使用キャラ』を設定する。

 選んだのは『武道戦士』の『ザイール』。『待ちザイール』なんて言葉ができるほど有名なキャラで比較的初心者向けだと思う。

 ふむ、使用キャラを選択しただけだが今のところ何も変化は無い。
 姿はもちろんステータス・能力値もそのままだ。
 まあ五歳の子供がいきなりザイールの設定、某国軍人の姿になったら、さすがにおかしいしなぁ。

 練習着に着替え道場に到着。
 カイトさんは直剣型の木剣を持って試合用スペースの開始線に向かう。
 
「………………」

 ………しまった。
 ザイールを選んだから気付かなかったが、武器を持ってきていない。
 この世界での戦闘は武器を使うか魔法を使うのが一般的であり、職業：武道家の様な素手での戦闘を行う者は極稀の様だ。

 念の為と武器置き場に行き、木の短槍を持ち戻る。

 ここで一つ心配事。
 果たして槍を持った状態で素手で戦うザイールの固有技とか使えるのだろうか？
 しかし五歳の子供が素手、しかも槍術スキルを持っているにも関わらず素手。ってのはマズイ。
 しょうがない…と開始線に向かう。

 


 開始線に立ち、お互い向かい合うかたちになったところでカイトさんが一言。

「じゃあ始めようか」
「っ！？」

 瞬間、『ギュンッ』と視界が引いていく。
 何だっ？と思ったがどうやら俺の身体を残して意識だけ離れてしまった様だ。

 次に視界は俺とカイトさんを横向きに捉えている。ちょうど格闘ゲームの様に…。

 …なるほど。
 これが『俯瞰』だろう。
 
 そして意識だけの俺の前に現れたレバーと六つのボタン。
 …多分これが『操術士』の『操術』。
 操るのは格ゲーキャラの技を使う自分。操作方法はゲームのコントローラーによるコマンド入力。
 そうコレは自分を格ゲーのキャラにした格ゲーだと理解した俺はレバーを握りボタンに指を置く。
 
 格ゲーのチャンピオンだった俺の血が騒ぎ沸き立つ。
 元の世界でのチャンピオンの力…思う存分に見せよう。

 そして意識だけの俺に聞きなれた声が聞こえた。

『ready fight！！』

 模擬戦ではあるが転生して初めての戦闘が始まった。



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グアルさん
兵舎の管理人さん的な人。

ガランさん
ベテラン門番さん。

カイトさん
兵士二年目の職業：軽戦士。

ザイール
モデルは某国軍人のあいつ。

待ちザイール
アレ


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戦闘までいかなかった。
『俯瞰』の表現はこんな感じでしか書けず…分かりにくいなぁ。

次回もよろしくお願いします。