上 下
176 / 250

思わず…

しおりを挟む
案内板を確認したあと、冒険者ギルドの受付に行こうとしたが、すぐに止められる。スーツのような制服に身を包んだ、人の良さそうなオッサンに声を掛けられる。

「先に総合の方で受付を行ってください」

「あっ、はい」

返事をして、総合受付に進路を変える…が、あのオッサン…

「警備員…でしょうね」

「…だな」

優しそうな顔と声だったけど、中身は…大分強いな…。武器は持ってないみたいだけど、大抵の奴はあのオッサンには勝てないんじゃなかろうか…。
俺?…俺は余裕で勝てるよ。フロントチョークで十五秒で絞め落とせるね…ホント。

「私なら十秒で勝てますけれどね」

張り合うんじゃないよシーバス君…。それにお前は俺より全然弱いだろっ。

総合受付の前に到着。受付には二人の見目麗しい美女がお揃いの制服を着て並んでいる。
これだけの美女だ、常に冒険者に絡まれたり口説かれたりしていそうだけれど…あのオッサンの効果、だろうな…。

「いらっしゃいませ。どちらに御用でしょうか?」

「冒険者ギルドに」

「かしこまりました、少々お待ちください」

受付嬢はそう言うと、横に設置されている自販機程度の大きさの箱を操作。どうやら魔導具らしい…。
ガコン…と音がすると木札が出てきた。数字と『冒険者ギルド』と書かれた木札だ。
なるほど、自販機ほどの大きさなのは木札がいっぱい入っているからだろうな。

「こちらを持ってお待ちになって下さい。番号を呼ばれたら受付へどうぞ」

受付嬢は俺の手を両手でソッと包むようにして優しく木札を渡す。
…トゥンク。

いや、トゥンクちゃうわ…。
優しく手を握られたから、思わず惚れちゃうところだったよ。俺にはアイアリーゼさんという心に決めたひとが…

「ユーリウス様、早く行きましょう」

「あ、はい」

しょうもないことを考えていたのがシーバスに読まれ、さっさと冒険者ギルドの受付前の待合所へ。

しかし…アイアリーゼさんの姉妹か。そう言えば、姉か妹…どっちなの?

「確か…妹さんだったと記憶していますが」

妹さんか…。
きっと姉のアイアリーゼさんに似て美人で可愛いらしい女ひとなんだろうな…。
脳内で夢想しながら、呼ばれるのを待つ。うん、字面が酷い…。

あの警備のオッサンがいるせいか、変に絡まれたりすることもなく待つ。
ヴァーチェの冒険者ギルドは酒場も併設されていたし、常に騒がしい感じしかしなかったのだが、ここは全然違うな。

静か…なワケでは決してないが、雰囲気が悪いワケでもなく、なんだろうな…うん、やっぱり役所然としている。
…が、かといって職員がお役所感を出しているかと言えばそう言うワケでもない。
上手く回っている…って言えば良いのだろうか。

そうして、なんとなく観察をしていたのだが…

受付カウンターに乗っている魔導具に俺の持っている木札の番号が表示され、同時に番号を呼ばれた…。
しおりを挟む
感想 107

あなたにおすすめの小説

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成! この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。 戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。 これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。 彼の行く先は天国か?それとも...? 誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。 小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中! 現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。

暇つぶし転生~お使いしながらぶらり旅~

暇人太一
ファンタジー
 仲良し3人組の高校生とともに勇者召喚に巻き込まれた、30歳の病人。  ラノベの召喚もののテンプレのごとく、おっさんで病人はお呼びでない。  結局雑魚スキルを渡され、3人組のパシリとして扱われ、最後は儀式の生贄として3人組に殺されることに……。  そんなおっさんの前に厳ついおっさんが登場。果たして病人のおっさんはどうなる!?  この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...