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mission1 Patrol
新米軍人(闇魔術師)VS魔法使い(万能手)
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「ちょっと待って!ノアに勝てるわけ無いでしょ!」
ハンク一正に引きずられて、外に連れて行かれるシェリーがなんか喚いてる。
「だから二人に勝てって言ってるだろーが!頑張れよ!」
「お兄ちゃんは私のプライドを蹂躙する気だ!誰かああああああ!」
…誰も助けてくれないと思うけどな…20にもなった大人を…。
「じゃ!皆は準備をしておいてくれ!城の正門に22時集合だ!」
ハンク一正はそう言い残し、彼女をひきずってどこかに言った。
「報告書…どうすんのよ?」
満月が出たその日の夜
ハンク一正に連れられやってきたのは王城の外にある、工作部用の駐車場だった。
「工作部の特監に頼んで人払いはしておいたから、いくら暴れても大丈夫だ。うちの馬鹿な妹を叩き潰してくれ。」
…どんだけ苦労してんだろ…ハンク一正。
「ふっ…さっきは取り乱したけど所詮子供。叩き潰すのはこっちの方ね!」
「じゃあ…ノア…やってくれ…。」
「!」
一番最初にノアとか鬼畜だなこの人!
「了解しました。ハンク一正。」
「ちょっと待って!一番最初にノアとかふざけてんの!?マジで殺されちゃう!」
うん、私もおかしいと思う。第一なんでノアはスターリング家の兄妹喧嘩みたいな物に協力するのよ…。
「じゃあ、両者見合って…」
審判はコリン君だ。この子もなぜ協力する…。
「話を聞いてよおおおおおおお!お兄ちゃああああああん!」
「始め!」
「あああああん!」
開始と同時に二人はお互いに後ろ向きに飛び、距離を取った。
「あーもう…やるしかないのね…。」
シェリーはため息をつき、つばの広い三角帽子とマントを脱ぎ捨てた。上は白いブラウスにベスト、下はロングスカートといった格好で、これだけ見ると何処にでもいる可愛らしい少女だ。20で私達より年上だけど
「勝ち目は薄いけど…諦める理由にはならないわね!」
カッコいいなおい!最初からそんな感じでいて欲しかった。まあ…私達がそうさせなかったんですけどね…。
「『ブラスト』!」
シェリーがそう叫んだ瞬間、私たちはしばらく耳を使うことが出来なかった。
とてつもない大爆発と爆音が発生したからだ。その中でもかろうじて見えたのはノアが凄い速さで吹き飛ばされるところだけだ。
「強い…。」
「今更気づいたのかしら?そうよ、私は強い。」
自信満々な表情で、彼女は白い歯をみせながら笑ってそういった。
もしかしたらさっき取り押さえられたのは偶然で、もし私しかいなかったら…捕まったのは私の方ではないだろうか?
「そうだね…確かにあなたは強い…でもね…。」
コリン君がおかしそうにくすくすと笑い始めた。
「なにがおかしいのよ、そこのガキ。」
「いや…ノア三正のほうがもっと強いと思うよ。」
コリン君はさっくの魔法で発生した砂煙の方を指差した。…なにやら人影が…。
「!なんで無事なのよ!」
人影の正体はノアだった。「今なにかしたの?」と言いたげな涼しい表情をした彼はじっとシェリーの方を見ていた。かすり傷どころか砂煙の汚れすらついてない。
「シールドで防いだ。それだけ。」
「でも…あの速さで反応するなんて…お互い化け物の様ね。」
シェリーに対し、ノアはたった一言だけ。
「ちがうね。君は人間だよ。」
それとほぼ同時にシェリーが苦しみ始め、彼女は吐血した。
「!?なにこれ…。」
彼女は足取りがおぼつかなくなり、ふらふらと体を揺らし始めた。
「なんなの…。」
今にも倒れそうなところをなんと踏みとどまっているようだったが、いつ倒れてもおかしくなさそうだ。
「やっぱこの程度じゃ駄目か…。」
ノアが何かを呟き、開いた手をシェリーに向けた。
するとシェリーは喉を両手で押さえて苦しげな呼吸を始めた。
「っ!なにこれ…息が…苦し…痛いよお!」
立っていることすら困難になったのか、彼女は両膝と手を地面についた。
ノアは彼女に対して何もして無い。少なくとも私たちにはそう見えた。
それなのになぜ、彼女は苦しんでいるの!?
「ひっ…おえ…。」
彼女は青い顔をして嘔吐した。その吐しゃ物には血が混じっていた。とめることが出来ないのか、彼女は嘔吐を続け、今だ苦しんでいた。
「どう?自分の体の中で魔法を使われる気分は?」
「!?まさか!」
シェリーは自分の胸に手を置き、何か呟いた。それと同時に彼女の顔から更に血の気が失せていくのが遠目からでも分かった。
「そう、自分の魔力を空気中にばら撒いて、君の体に少しずつ入れた。
魔力が十分に中に入ったなら、その魔力をエネルギーに変えて内側から魔法で攻撃するだけだ。簡単だろう?」
「ふふふ…私はとんでもない人に一目ぼれしてしまった様ね…。」
ノアは黙って彼女に近づき、手を差し伸べた。
「今ならまだ間に合う。降参してくれ。」
シェリーは苦しそうな表情で力なく笑い、
「はは…降参なんて…してたまるもんですか!」
彼女はノアに飛び掛り、腕をつかんだ。
「あなたの魔力、ちょっと貰うわ!」
彼女の手が紫色の光に包まれた。そしてその手でつかんだノアの体から白い光をどんどん吸収してるのが見えた。
この抵抗は予想外だった。力ずくで振りほどこうとはしているけど、シェリーは力が強いようで僕を放さず、いかんせん僕は細身なので力がなく、最終的に彼女に押し倒されてしまった。
「本当はベットで押し倒したかったわね!」
少しずつだがシェリーの顔に生気が戻っているのが分かった。そして先程の怯えた顔、口調から一転し、あった時のような人を小ばかにする口調に戻ってる。
この人…自分が有利だと生き生きする人だ…。
「気持ち悪いことを…いわないでくれるかな…。」
だいぶ魔力を吸収されてしまったようで、口が上手く回らなかった。
「…僕の魔力を吸収したって事は…。内側から…攻撃されるリスクを…高めただけだよ…。甘いね…。」
「はいハッタリ♪いくら私の体に魔力があっても、あなたから私につながる導火線のような魔力がないと私に攻撃できません♪」
「くっ…。」
「あら?図星ね。初めて会ったときと取調室の時はとても怖かったけど…冷静に対処すればそこまで怖くはないわね♪あなたの魔力のおかげでだいぶ回復したけど…ダメ押しで全回復しちゃいましょう♪」
彼女は両手に緑色の光を発生させ、確かあれは回復魔法だ、それを胸に当てた。
先程吐血してたのが嘘のように、彼女の顔に生気が完全に戻った。
「君…演技してたでしょ…実はそんなに効いてなかったんじゃないか?」
「あ、ばれた?確かに吐血しちゃったのはびっくりしたけれど…内側から攻撃されてるのは大体分かったから、体の主要部分にシールドを張って致命傷を防いだ。
ま、体の中にシールド張るのは気持ち悪くてゲロ吐いたけどね。
あんたの攻撃が正確すぎるが仇になったわね。だってあなた、私がシールドをはった致命傷になる所にしか攻撃してこないのだもの!」
「ははは…凄いな…。」
僕がそういうとシェリーは親にほめられた子供のような笑顔をして、
「でしょー!惚れた?ま、後はザコ三人を片つけて夜になったら魔力切れで動けないあなたを襲いにいくわ!顔を赤らめて必死に抵抗するあなたは見ててさぞ…興奮するでしょうね!痛くはしないわよ、身も心もゆだねてくれるならね☆」
ははは…自分より身長の低い子に襲われるとはね…。
「分かった…好きにして…。」
「ほんと!やたー!」
「勝ったらね。」
「へ?」
私もノアの言っていることの意味が分からなかった。もう勝敗は悔しいけど決している。それなのになぜそんなことを言ってるんだ?
「最後の…力だな。」
そういったノアが手のひらを勢いよく握った。その瞬間、ノアを押し倒してまたがっているシェリーの真後ろの何も無いところから青白い20センチほどの電気の球が発生した。球は地面から1メートルほどの所に浮かんで今すぐにでも周囲を消し飛ばしてもおかしくなかった。
「!どうやって!」
彼女がそう叫んだ時には遅かった。電気の球から青い雷が彼女の方にまっすぐ伸び、逃げようとした彼女に直撃した。
「かっ!」
とてつもない量の電流を流されたシェリーはノアに覆いかぶさるように倒れ、それと同時に電気の球も消滅した。
「どうやったのよ…。」
シェリーが僕に息も絶え絶えにそう聞いた。
「いっただろう…始めに空気中に魔力をばら撒いたって。それを利用しただけだよ…。今度はこっちの番だね。」
「ははは…魔力切れ起こして動けなくなった私をゆっくりと…辱めながら食べるつもりね…ゆっくり自分が襲われるのもイケメン相手なら悪くないかもね…。」
軽口叩く余裕はあるのか。
「いや…正直言うともう攻撃魔法を使うほどの魔力は無い。」
「あ、そうなの…残念ね…。」
僕は彼女に対し少しだけ笑って、
「せいぜい出来るのは君の体を全回復させることぐらいさ。」
僕は彼女の右手をつかみ、簡単な詠唱をした。ただ、混在する自分の魔力と彼女の魔力を操作して、回復を促すだけの簡単な詠唱。
なんだけど…僕は…もう体力が無いみたいで…。終わった頃には彼女の胸元で眠ってしまった。
「不思議な子だねえ…殺す気だった相手を回復させて、しかもその相手の胸元で眠っちゃったんだから…。」
シェリーは上半身だけ起こした状態で自身の胸元で眠るノアを見ながらそういった。
…凄い戦いだったとしか言いようが無い。両者のレベルが高すぎる。
ノアは常識では考えられないほどの高度な搦め手で戦ったし、シェリーはそれに対して真っ向勝負で挑んだ。私だったら負けていただろう。
「いや?殺す気じゃなかったと思うけど?」
そういったのはティファニーちゃんだった。
「もし本気で殺す気だったなら最初から面倒なことしなくても、吹き飛ばすだけでよかった。それなのにノア三正はわざわざ相手を無力化して交渉する方法で負けを認めさせようとした。手を抜かれたんですよ。たぶんだけどね。」
「僕もそう思います。ノア三正の魔術でいくつかトドメをさせる場面があった。
でも、あの人はそうしなかった。理由は分かりませんが。」
コリン君もティファニーちゃんに賛成した。
「ははは…やっぱそうだよね…。前に助けてくれた時より全然弱いもん。」
「?どういう意味かしら?」
ノアをの頭をなでている、シェリーにそう聞いた。
「ほんとは…一目ぼれじゃないんだー…。」
彼女は満月の方を見ながら静かにそう言った。
あの日も…満月だったなあ。
ハンク一正に引きずられて、外に連れて行かれるシェリーがなんか喚いてる。
「だから二人に勝てって言ってるだろーが!頑張れよ!」
「お兄ちゃんは私のプライドを蹂躙する気だ!誰かああああああ!」
…誰も助けてくれないと思うけどな…20にもなった大人を…。
「じゃ!皆は準備をしておいてくれ!城の正門に22時集合だ!」
ハンク一正はそう言い残し、彼女をひきずってどこかに言った。
「報告書…どうすんのよ?」
満月が出たその日の夜
ハンク一正に連れられやってきたのは王城の外にある、工作部用の駐車場だった。
「工作部の特監に頼んで人払いはしておいたから、いくら暴れても大丈夫だ。うちの馬鹿な妹を叩き潰してくれ。」
…どんだけ苦労してんだろ…ハンク一正。
「ふっ…さっきは取り乱したけど所詮子供。叩き潰すのはこっちの方ね!」
「じゃあ…ノア…やってくれ…。」
「!」
一番最初にノアとか鬼畜だなこの人!
「了解しました。ハンク一正。」
「ちょっと待って!一番最初にノアとかふざけてんの!?マジで殺されちゃう!」
うん、私もおかしいと思う。第一なんでノアはスターリング家の兄妹喧嘩みたいな物に協力するのよ…。
「じゃあ、両者見合って…」
審判はコリン君だ。この子もなぜ協力する…。
「話を聞いてよおおおおおおお!お兄ちゃああああああん!」
「始め!」
「あああああん!」
開始と同時に二人はお互いに後ろ向きに飛び、距離を取った。
「あーもう…やるしかないのね…。」
シェリーはため息をつき、つばの広い三角帽子とマントを脱ぎ捨てた。上は白いブラウスにベスト、下はロングスカートといった格好で、これだけ見ると何処にでもいる可愛らしい少女だ。20で私達より年上だけど
「勝ち目は薄いけど…諦める理由にはならないわね!」
カッコいいなおい!最初からそんな感じでいて欲しかった。まあ…私達がそうさせなかったんですけどね…。
「『ブラスト』!」
シェリーがそう叫んだ瞬間、私たちはしばらく耳を使うことが出来なかった。
とてつもない大爆発と爆音が発生したからだ。その中でもかろうじて見えたのはノアが凄い速さで吹き飛ばされるところだけだ。
「強い…。」
「今更気づいたのかしら?そうよ、私は強い。」
自信満々な表情で、彼女は白い歯をみせながら笑ってそういった。
もしかしたらさっき取り押さえられたのは偶然で、もし私しかいなかったら…捕まったのは私の方ではないだろうか?
「そうだね…確かにあなたは強い…でもね…。」
コリン君がおかしそうにくすくすと笑い始めた。
「なにがおかしいのよ、そこのガキ。」
「いや…ノア三正のほうがもっと強いと思うよ。」
コリン君はさっくの魔法で発生した砂煙の方を指差した。…なにやら人影が…。
「!なんで無事なのよ!」
人影の正体はノアだった。「今なにかしたの?」と言いたげな涼しい表情をした彼はじっとシェリーの方を見ていた。かすり傷どころか砂煙の汚れすらついてない。
「シールドで防いだ。それだけ。」
「でも…あの速さで反応するなんて…お互い化け物の様ね。」
シェリーに対し、ノアはたった一言だけ。
「ちがうね。君は人間だよ。」
それとほぼ同時にシェリーが苦しみ始め、彼女は吐血した。
「!?なにこれ…。」
彼女は足取りがおぼつかなくなり、ふらふらと体を揺らし始めた。
「なんなの…。」
今にも倒れそうなところをなんと踏みとどまっているようだったが、いつ倒れてもおかしくなさそうだ。
「やっぱこの程度じゃ駄目か…。」
ノアが何かを呟き、開いた手をシェリーに向けた。
するとシェリーは喉を両手で押さえて苦しげな呼吸を始めた。
「っ!なにこれ…息が…苦し…痛いよお!」
立っていることすら困難になったのか、彼女は両膝と手を地面についた。
ノアは彼女に対して何もして無い。少なくとも私たちにはそう見えた。
それなのになぜ、彼女は苦しんでいるの!?
「ひっ…おえ…。」
彼女は青い顔をして嘔吐した。その吐しゃ物には血が混じっていた。とめることが出来ないのか、彼女は嘔吐を続け、今だ苦しんでいた。
「どう?自分の体の中で魔法を使われる気分は?」
「!?まさか!」
シェリーは自分の胸に手を置き、何か呟いた。それと同時に彼女の顔から更に血の気が失せていくのが遠目からでも分かった。
「そう、自分の魔力を空気中にばら撒いて、君の体に少しずつ入れた。
魔力が十分に中に入ったなら、その魔力をエネルギーに変えて内側から魔法で攻撃するだけだ。簡単だろう?」
「ふふふ…私はとんでもない人に一目ぼれしてしまった様ね…。」
ノアは黙って彼女に近づき、手を差し伸べた。
「今ならまだ間に合う。降参してくれ。」
シェリーは苦しそうな表情で力なく笑い、
「はは…降参なんて…してたまるもんですか!」
彼女はノアに飛び掛り、腕をつかんだ。
「あなたの魔力、ちょっと貰うわ!」
彼女の手が紫色の光に包まれた。そしてその手でつかんだノアの体から白い光をどんどん吸収してるのが見えた。
この抵抗は予想外だった。力ずくで振りほどこうとはしているけど、シェリーは力が強いようで僕を放さず、いかんせん僕は細身なので力がなく、最終的に彼女に押し倒されてしまった。
「本当はベットで押し倒したかったわね!」
少しずつだがシェリーの顔に生気が戻っているのが分かった。そして先程の怯えた顔、口調から一転し、あった時のような人を小ばかにする口調に戻ってる。
この人…自分が有利だと生き生きする人だ…。
「気持ち悪いことを…いわないでくれるかな…。」
だいぶ魔力を吸収されてしまったようで、口が上手く回らなかった。
「…僕の魔力を吸収したって事は…。内側から…攻撃されるリスクを…高めただけだよ…。甘いね…。」
「はいハッタリ♪いくら私の体に魔力があっても、あなたから私につながる導火線のような魔力がないと私に攻撃できません♪」
「くっ…。」
「あら?図星ね。初めて会ったときと取調室の時はとても怖かったけど…冷静に対処すればそこまで怖くはないわね♪あなたの魔力のおかげでだいぶ回復したけど…ダメ押しで全回復しちゃいましょう♪」
彼女は両手に緑色の光を発生させ、確かあれは回復魔法だ、それを胸に当てた。
先程吐血してたのが嘘のように、彼女の顔に生気が完全に戻った。
「君…演技してたでしょ…実はそんなに効いてなかったんじゃないか?」
「あ、ばれた?確かに吐血しちゃったのはびっくりしたけれど…内側から攻撃されてるのは大体分かったから、体の主要部分にシールドを張って致命傷を防いだ。
ま、体の中にシールド張るのは気持ち悪くてゲロ吐いたけどね。
あんたの攻撃が正確すぎるが仇になったわね。だってあなた、私がシールドをはった致命傷になる所にしか攻撃してこないのだもの!」
「ははは…凄いな…。」
僕がそういうとシェリーは親にほめられた子供のような笑顔をして、
「でしょー!惚れた?ま、後はザコ三人を片つけて夜になったら魔力切れで動けないあなたを襲いにいくわ!顔を赤らめて必死に抵抗するあなたは見ててさぞ…興奮するでしょうね!痛くはしないわよ、身も心もゆだねてくれるならね☆」
ははは…自分より身長の低い子に襲われるとはね…。
「分かった…好きにして…。」
「ほんと!やたー!」
「勝ったらね。」
「へ?」
私もノアの言っていることの意味が分からなかった。もう勝敗は悔しいけど決している。それなのになぜそんなことを言ってるんだ?
「最後の…力だな。」
そういったノアが手のひらを勢いよく握った。その瞬間、ノアを押し倒してまたがっているシェリーの真後ろの何も無いところから青白い20センチほどの電気の球が発生した。球は地面から1メートルほどの所に浮かんで今すぐにでも周囲を消し飛ばしてもおかしくなかった。
「!どうやって!」
彼女がそう叫んだ時には遅かった。電気の球から青い雷が彼女の方にまっすぐ伸び、逃げようとした彼女に直撃した。
「かっ!」
とてつもない量の電流を流されたシェリーはノアに覆いかぶさるように倒れ、それと同時に電気の球も消滅した。
「どうやったのよ…。」
シェリーが僕に息も絶え絶えにそう聞いた。
「いっただろう…始めに空気中に魔力をばら撒いたって。それを利用しただけだよ…。今度はこっちの番だね。」
「ははは…魔力切れ起こして動けなくなった私をゆっくりと…辱めながら食べるつもりね…ゆっくり自分が襲われるのもイケメン相手なら悪くないかもね…。」
軽口叩く余裕はあるのか。
「いや…正直言うともう攻撃魔法を使うほどの魔力は無い。」
「あ、そうなの…残念ね…。」
僕は彼女に対し少しだけ笑って、
「せいぜい出来るのは君の体を全回復させることぐらいさ。」
僕は彼女の右手をつかみ、簡単な詠唱をした。ただ、混在する自分の魔力と彼女の魔力を操作して、回復を促すだけの簡単な詠唱。
なんだけど…僕は…もう体力が無いみたいで…。終わった頃には彼女の胸元で眠ってしまった。
「不思議な子だねえ…殺す気だった相手を回復させて、しかもその相手の胸元で眠っちゃったんだから…。」
シェリーは上半身だけ起こした状態で自身の胸元で眠るノアを見ながらそういった。
…凄い戦いだったとしか言いようが無い。両者のレベルが高すぎる。
ノアは常識では考えられないほどの高度な搦め手で戦ったし、シェリーはそれに対して真っ向勝負で挑んだ。私だったら負けていただろう。
「いや?殺す気じゃなかったと思うけど?」
そういったのはティファニーちゃんだった。
「もし本気で殺す気だったなら最初から面倒なことしなくても、吹き飛ばすだけでよかった。それなのにノア三正はわざわざ相手を無力化して交渉する方法で負けを認めさせようとした。手を抜かれたんですよ。たぶんだけどね。」
「僕もそう思います。ノア三正の魔術でいくつかトドメをさせる場面があった。
でも、あの人はそうしなかった。理由は分かりませんが。」
コリン君もティファニーちゃんに賛成した。
「ははは…やっぱそうだよね…。前に助けてくれた時より全然弱いもん。」
「?どういう意味かしら?」
ノアをの頭をなでている、シェリーにそう聞いた。
「ほんとは…一目ぼれじゃないんだー…。」
彼女は満月の方を見ながら静かにそう言った。
あの日も…満月だったなあ。
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