予知と強化身体能力、変身能力と頭脳があれば他いらなくない?

六枚のとんかつ

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お金が無いです…

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東京都内の超高級ホテルの最上階、その一番奥に存在する一泊だけでも何十万とするスイートルームの「0号室」。僕達はその部屋を買い取り、家にしている

僕達は生まれながら種類こそ違えど、『特殊な能力』を持っている。
その能力のせいで、僕達は今まで命がけの日々を送ってきた。今もそうだけど。
だけど、今は帰る我が家がある、助け合える仲間がいる。

「よー連れて帰ってきたぞー。」
「はーい無事に帰ってきたよ~。」

茜と一緒に安心できるはずの我が家、「0号室」に入った瞬間、目に飛び込んできたのは…とんでもないものだった。

「大丈夫!ただ男性ホルモンを完全に死滅させるだけの薬だから!暴れないで!怖くないから!」
「それ男として死ぬって事じゃねえか!…ちょっと待て!白衣はだけてんぞ!
今すぐ離れろ!」

…えーと『多次元視』の能力で見えてたけど…実際に見ると衝撃的だな…。

こういう時は、…確か百文字以下で状況をまとめるといいんだよね。
早速やってみよう。

えーと、白髪ショートで胸の大きい眼鏡で白衣を着た女性が、茶髪の男の娘にソファの上で跨って、なにやら怪しい薬を注射しようとしてます。

うん!全然まとめられていない!何これえ?
「えーと…茜、どうする?」
とりあえず苦笑いで隣で呆れたような顔で立っている茜に聞いてみた。
「とりあえず…殴っとくか。」
僕達の帰宅にも気づかない、白衣の女性と茶髪の男の娘が激しく絡み合っていくところに、茜はつかつかと近寄り、思いっきり白衣の女性をぶん殴った。

「痛ったあ!ちょっと誰…あ、お帰りー。」
「何がお帰りだ伊織…何やってんだ人んちで…。」
茜が白衣の女性の長い白髪を握り、汚物を見るような目でそう問いかけた。
「あはは~ちょっと新しい薬ができたからね。実験をしようとしたんだ~。」

彼女の名前は白雪伊織、調剤学やウイルス学、医療学などの人体に関する学問は全て知ってると豪語し、実際に実力もともなっている天才。
また発明家としての一面もあり、ついさっき茜が使っていたチェーンソーは彼女の私物だ。(発明とは何の関係も無いが。)

そんな天才の彼女は僕達の友人でもあり、頼りになる仲間でもある…のだが少し人間として…いや、かなり問題がある。

彼女の問題は色々とあるのだけど極めつけは、この人、家の中では全く服を着ようとしない。うん、本当に着ない。意地でも着ようとしない。
最初に茜と、この人をスカウトしにこの人の家を訪れた時は、不覚ながらも鼻血を思いっきり出してしまったのだが、もう今では悲しいことに、全裸の彼女に遭遇しても、全く反応しないぐらいに慣れてしまった。

最近では茜とこの後に紹介する雫の「再教育」によってようやく自室以外では、白衣を着るようになったけれど、その下は何も着てない。…なんで?
伊織いわく、「私は服を着る手間も、選ぶ手間も研究に当てたいの!」と言っていた。…常識の研究もして欲しいね。

ちなみに茜は「こいつ、自分にいろんな薬の人体実験してるから、たぶん頭おかしくなっちゃったんだろ。」だそうだ。…確かにあの人、裸見られても全然恥ずかしがらないしな…。なにかが壊れちゃってるのかな?

ちなみに年は茜の一つ下っていってたから、16か17だろう。…僕はあまり現役の女子高校生とは絡まないけど、少なくともこうじゃないことは分かるよ…。

「はあ…はあ…死ぬかと思った…。サンキュー茜…。てか男性ホルモン全部殺す薬って何に使うんだよ…。」
茶髪の少年は、伊織に対して恐怖の視線を向けながらそう聞いた。
「え?雫君を雫ちゃんにするためだけど?」
「やめろって!本当にお前の研究は洒落にならないのが多いな!」
うん、僕もそう思う。

短めの茶髪に黒いパーカー、ぴったりとしたジーンズを着ている彼(彼女ではない)の名前は桜見雫。れっきとした15歳の男子高校生だ。
「たくよ…これ以上女みたいになってたまるかっての…。」
彼は綺麗な茶髪をガシガシと乱雑にかき、そう吐き捨てた。

彼は行動心理学、精神医学など人の心に関係することに長けており、僕達が仕事の依頼を引き受けるときの窓口になってくれている。
特に優れているのは「人格変換術」で、その人の特徴や普段の言動、趣味思考を彼に伝えただけで、数時間後にはその人格をそっくりそのまま真似ることが出来る。

しかし、そんな彼にも伊織ほどではないが問題がある。(彼のせいではないのが不憫)
彼は顔も体も凄く女性的で、そのため小中学校時代はあまりよい過ごし方をしていなかったようだ。一人称や喋り方を色々変えてみたりはしたものの、むしろ周りからの視線は悪化する傾向だったらしい。

ついこの間の依頼では雫が依頼とは関係ない人たちに、ハイエースされそうになったため、一時依頼を中断して雫を助けに行くはめになった。
(最終的に伊織がとんでもないガスを使って雫を救出した。)

「私はいいと思うけどね~雫ちゃん。」
「…茜、あれが自分の親友だと思うとどう思う?」
雫が茜の方をうんざりとした顔で見た。

「…泣きたくなってくるな。」
やれやれと言った顔で頭を押さえた彼女の名前は日向茜。先ほどチェーンソーで暴れまくっていた現役女子高校生だ。

話し方は少しがさつだけど、セミロングの茶髪に筋の通った目鼻、何かに燃えているような茶色い瞳、一つ一つの顔のパーツが凄く整っていて、さっきのことを見ていなければ、かなり美人な女子高校生だと思えるだろう。
実際通っている高校では「能力」もあってか成績優秀、スポーツ万能の文武両道美人だと言われているらしい。
(僕と雫は仕事での茜の姿を見ているので、共感できないのだが…)

「てか、そのチェーンソー私のじゃん!何であんたが持ってんの!」
「わりい伊織、ちょっと借りた。」
「フレームがひしゃげてるんだけど!どんな力で使ったのよ茜!」
(注…現役女子高校生二人の会話です。伊織は高校通ってないけど。)
「なんか私の力じゃすぐ壊しちゃうな~。」

そう、彼女の能力はとんでもない馬鹿力…ではなく「強化身体能力」だ。
ついさっきみたいに、チェーンソーを持った状態で陸上選手並みのスピードで走ったりするのは朝飯前、ビルの二、三階ぐらいの高さならジャンプするだけで忍び込めるし、前に雫が連れ去られそうになったときは、男達が持っていた『鉄パイプを蹴り折ってた』。…?

「最近は力のコントロールも上手くなったものだなって思ったんだけど…まだ駄目だな。特訓しないと。」
「それ以上強くなるつもりなの?茜は。とりあえずそのケチャップ付きの制服着替えなさい。」
伊織が呆れたような表情を浮かべた。

茜は仕事やハプニングに巻き込まれた帰りは大概ケチャップまみれになって帰ってくる。…うん、鉄臭いケチャップだ。
彼女は仕事をするときは自身が通っている高校の制服から、校章を取り除いたものを着て作業を行っているのだが、そのたびにケチャップ(意味深)まみれになり、しかも洗っても全然落ちないのでそのたびに買い換えている。(ちなみにこれは経費。)

「まーたケチャップまみれにしたのか?茜は?いつもホットドックとか食ってるのかよ…次はマスタードまみれで帰ってくるのか?」
ちなみに雫は本当にケチャップだと思っている。純粋って素敵。

「あ、そーいえば皆に伝えなきゃいけないことがあったんだった。」
伊織が身に着けている白衣のポケットをゴソゴソと漁り、平たい手帳のようなものを取り出した。彼女が取り出したのは「活動資金」太字のマジックで書かれた、銀行の通帳だった。
「このページみてー。」

彼女が笑顔で銀行のページを指差した。そこの行の貯金額は一千万円ほど、確か大体そのくらいだったと記憶している。
しかし、そのすぐ下の行には…
「百五十六万円…。」
あれ…目の錯覚かな?ちょっと「多次元視」使おう…。

僕が「能力」を使っている途中、茜は見るものを全て凍らせるような冷たい目で、雫は不法投棄された生ごみを見るような目で伊織をじっと見てた。
「雫…こいつ…いくらで売れると思う…?」
「さあ…ただ内臓にしなくても十分値は付くんじゃないか?物好きはいるからな。」
茜はゆっくりとチェーンソー両手で持ち、紐を引っ張りエンジンを起動させた。
ついさっき聞いたけたたましい騒音が部屋に広がる。

「ちょっと待って!これにはちゃんと事情があったの!なんの予定も無く使ったわけじゃないの!」
伊織が事の重大さに気が付いたのか、青い顔をして両手を必死に振り、見苦しい言い訳を始めた。
「あ、やっぱり伊織が使ったんだ。」
僕がポンと手を叩き、思ったことをそのまま口にした。

「響い!」
伊織が僕のほうを見て、すがるような表情をした。
「雫を女の子にする薬を作るために買った研究器具代なのね。減った八百万円は。」
「響イイイイイイイイイイ!」
「多次元視」で伊織がやったことが全て分かった僕は、またしても思ったことをそのまま口にしてしまった。うーん喋らないほうが良かったかも。

茜と雫は汚物を見るような視線を伊織に投げかけた。…なんで伊織は顔を赤くしてるのよ…。ピンチなんだよあなた…。
「…お前には選択肢がある…。この八百万を稼ぐ方法を五分以内に思いつくか、それとも諦めて私達の言う通りにして、八百万を稼ぐか…伊織、どっちがいい?」
茜がへなへなと床に座り込んでいる伊織に少しづつ近づいた。それに反応し伊織は怯えるウサギのように、少しづつ後ずさる。

「…えーと私が今までに作った薬を売るってのは?例えば飲ませる量によって十五分単位で記憶を消せる薬とか…さっき雫に打とうとした薬とか!」
「却下。何でお前は犯罪者御用達みたいな薬を作ってるんだ。」
伊織が先ほど雫に打とうとしていた薬を拾い上げた茜は一瞥した後、ひょいとゴミ箱に投げ入れた。

「…えーと…雫と一緒に…卑猥なビデオ取って配信するってのは?最近はインターネットの需要も増えてるし、私と雫なら結構稼げると思うんだけど!」
どうでしょう!なんて感じで言われても!困るだけだよ!
「…茜、響、もうこいつ埋めようぜ。墓石にはなんて刻めばいい?」
「やめて!二割冗談だから!」
「八割本気じゃねえか!変態科学者め!」
「あ、なんか二人がベットの上で絡み合ってる未来見えた。雫は嫌々だけど、伊織の方は…あ、二人結構稼いでるわ。」
「忘れろ!」
雫の手刀が正確に僕の頭をぶち抜いた。…理不尽だな…見たくなくても発動中は見えちゃうのに。

「おい、真剣に答えないと本当に埋めるぞ。もうお前は三分使った。その優秀な脳みそで早く考えろ。」
非常にカオスな状況の中、茜だけはわりと冷静だった。
「あ、雫。もしこいつが何も考えれなかったら、さっきこいつが言ってたプランで行くから。その時は協力しろよ?」
心無いことが言える程度には。

「え?てことは私こっから何も言わなければ良いんじゃないの?」
伊織が涙目になりながらも、震える声でそう搾り出した。
「言い訳ねえだろ!」
雫の手刀、再び炸裂。てか雫不憫だね…。
「雫…年上のお姉さんは嫌い?」
「お前だけは無い!絶対無い!」
「あと一分半。さっさと考えろ~。」

うーんどうすればいいかな~。未来視の結果は伊織のプランだと成功率84%で結構高いんだけど…最近騒音の苦情が相次いでるってフロントの人から言われちゃってるし…ここで皆と一緒に入れなくなるのは嫌かな~。

「ねえ…僕達の能力なら成功しそうなプランがあるんだけど…。」
僕の言葉に茜が飛びついた。雫は救世主が現れたって顔をして、伊織の方は…舌打ちしないでよ…君は研究好きでそれ以外のことに興味が無いんじゃなかったの…。

「どんなプランか聞こうか。あのバカは何も思いつきそうに無いもんな。」
茜がやれやれと言いたげな表情をして、僕にそう言った。
「じゃあ言うよ…ところで皆さ…」


カジノいったこと、ある?
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