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家基が毒キノコを食した時期を推理する 2
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ともあれ家治は祖父・吉宗の霊廟にはこの時…、安永8(1779)年2月20日の時点で本丸の老中であった意次を代参させ、一方で愛娘であった萬壽姫の霊牌所にはやはり当時は本丸老中であった松平輝高と、さらに西之丸の老中であった阿部正允の両名を東叡山へと差し向け、そして萬壽姫の霊牌所にて行われた法会に将軍・家治の代わりとして松平輝高を、家基の代わりとして阿部正允をそれぞれ参加させたのであった。
阿部正允は西之丸にて家基に仕えていたので、家基の代わりというわけだ。
それもこれも、萬壽姫が父・家治にとって大事な愛娘であるが、同時に、いや、それ以上に家基にとっても大事な姉だったからだ。
そこで家治は姉想いの家基のためにも萬壽姫の霊牌所にて行われる法会には己の代わりとして松平輝高を差し向けて、法会に参加させると同時に、家基にもその機会を…、己の代わりに誰かを大事な姉であった萬壽姫の霊牌所にて行われる法会に参加させるその機会を与えてやろうと、そこで家治は西之丸にて家基に仕える老中の阿部正允をも己の代わりである松平輝高と共に東叡山へと差し向けて、愛娘にして大事な姉でもあった萬壽姫の法会にそれぞれ参加させたというわけだ。
そして代参を終えた意次と、さらに法会を終えた松平輝高と阿部正允の両名は江戸城へと帰参すると本丸の黒書院にて将軍・家治とさらに家基に対して、意次は代参を済ませたことを、松平輝高と阿部正允の両名は法会を済ませたことをそれぞれ伝えたのであった。
家基は西之丸の主であったが、この時は本丸へと渡御、そして黒書院の上段にて家基は父・家治と並んで鎮座し、下段にて控える意次と、さらに松平輝高と阿部正允の両名よりそれぞれ、代参、あるいは法会の報告を受けたのであった。
「その時は…、もう昼でしたが、大納言様に特に変わった様子はなかったかと…、いえ、私はその時は流石に陪席は許されませんでしたが、それでも何か…、大納言様に異変があれば必ず、伝わりますから…」
意知は自信をもってそう答えた。
「されば、大納言様が我慢されていた可能性は?」
善之にその可能性を指摘されると、意知としても即答しかねた。
確かに家基ならばその可能性はあり得た。何しろ大事な姉、萬壽姫の法会の報告なのである。例え、苦しくとも堪えて聞いたに違いない。そしてそれは家治にも共通することであろう。即ち、崇拝してやまない八代将軍・吉宗の霊廟への代参報告ならば、堪えてでもそれを聞いたに違いない。
「確かに…、その可能性はあり得申す…」
意知はまずはそう認めた上で、「なれど…」と続けた。
「その後…、昼八つ(午後2時頃)だったでしょうか、畏れ多くも上様と大納言様におかせられては黒書院から白書院へとお移りあそばされ、そこでお二人は…、上様と大納言様のお二人は輪王寺ご門跡の准后公遵法親王殿下とその弟子の公延法親王殿下のお二人と面会され…、されば上様はともかく、大納言様がそのお体に何か異変でも生じていれば、親王殿下の面会にまでは及ばれないのではないかと…」
大事な姉の法会の報告であれば仮に苦しくとも我慢してでも聞いただろうが、親王との謁見にまで我慢して付き合う義理はないだろう。
意知がそう示唆すると善之も納得した様子を見せた。
「そうであれば20日は正に偽快復期…、偽物の快復の期間にて…」
善之がそう言ったので、意知もそれこそ「復習」する意味で、
「確かその、偽快復期は1日から3日程度でしたね…」
確かめるようにそう尋ねた。
「ええ。20日、丸一日、快復期だとして、その前日、19日はどうでした?」
善之が続けざま問うた。
「19日は…、良く分かりません…」
「分からないと言うと?」
善之は首をかしげた。
「確かその日は西之丸には渡っておらず…、いえ、私は本来、本丸の雁之間詰ですので…」
意知はそう言い訳した。いや、意知はそもそも本丸にて、表向にある雁之間に詰めていなければならない身なので、西之丸へと足を向けること自体、おかしいのだ。
「だとしたら、もしかしたら19日に消化器の異常により苦しんでいた可能性がありますな…」
善之はそう推理した。
「嘔吐や腹痛、下痢などの症状ですよね?」
意知はやはり確かめるようにそう尋ねた。
「ええ」
「確か、それが半日から長くて1日程度、続くんでしたよね…」
「ええ」
「だとしたら、大納言様は19日は半日から1日かけて苦しまれたと…」
意知がそう想像すると、善之も「だと思いますね」と意知のその想像を支持した。
「そうだとすると大納言様が毒を…、シロタマゴテングタケか、あるいはドクツルタケを口にされたのは…、消化器に異変が…、嘔吐や腹痛、下痢などの症状が出るのは摂食後、早くて三刻(約6時間)後、遅くとも1日後との話ですから…」
意知がそこで言葉を区切ると、善之がその先を引き取った。
「18日の何れかの時分に口にされたものかと…」
「だとしたら…、夕食よりも朝食の可能性が高いか…」
意知がそう呟くと、善之も同感だと言わんばかりに頷いてみせた。
阿部正允は西之丸にて家基に仕えていたので、家基の代わりというわけだ。
それもこれも、萬壽姫が父・家治にとって大事な愛娘であるが、同時に、いや、それ以上に家基にとっても大事な姉だったからだ。
そこで家治は姉想いの家基のためにも萬壽姫の霊牌所にて行われる法会には己の代わりとして松平輝高を差し向けて、法会に参加させると同時に、家基にもその機会を…、己の代わりに誰かを大事な姉であった萬壽姫の霊牌所にて行われる法会に参加させるその機会を与えてやろうと、そこで家治は西之丸にて家基に仕える老中の阿部正允をも己の代わりである松平輝高と共に東叡山へと差し向けて、愛娘にして大事な姉でもあった萬壽姫の法会にそれぞれ参加させたというわけだ。
そして代参を終えた意次と、さらに法会を終えた松平輝高と阿部正允の両名は江戸城へと帰参すると本丸の黒書院にて将軍・家治とさらに家基に対して、意次は代参を済ませたことを、松平輝高と阿部正允の両名は法会を済ませたことをそれぞれ伝えたのであった。
家基は西之丸の主であったが、この時は本丸へと渡御、そして黒書院の上段にて家基は父・家治と並んで鎮座し、下段にて控える意次と、さらに松平輝高と阿部正允の両名よりそれぞれ、代参、あるいは法会の報告を受けたのであった。
「その時は…、もう昼でしたが、大納言様に特に変わった様子はなかったかと…、いえ、私はその時は流石に陪席は許されませんでしたが、それでも何か…、大納言様に異変があれば必ず、伝わりますから…」
意知は自信をもってそう答えた。
「されば、大納言様が我慢されていた可能性は?」
善之にその可能性を指摘されると、意知としても即答しかねた。
確かに家基ならばその可能性はあり得た。何しろ大事な姉、萬壽姫の法会の報告なのである。例え、苦しくとも堪えて聞いたに違いない。そしてそれは家治にも共通することであろう。即ち、崇拝してやまない八代将軍・吉宗の霊廟への代参報告ならば、堪えてでもそれを聞いたに違いない。
「確かに…、その可能性はあり得申す…」
意知はまずはそう認めた上で、「なれど…」と続けた。
「その後…、昼八つ(午後2時頃)だったでしょうか、畏れ多くも上様と大納言様におかせられては黒書院から白書院へとお移りあそばされ、そこでお二人は…、上様と大納言様のお二人は輪王寺ご門跡の准后公遵法親王殿下とその弟子の公延法親王殿下のお二人と面会され…、されば上様はともかく、大納言様がそのお体に何か異変でも生じていれば、親王殿下の面会にまでは及ばれないのではないかと…」
大事な姉の法会の報告であれば仮に苦しくとも我慢してでも聞いただろうが、親王との謁見にまで我慢して付き合う義理はないだろう。
意知がそう示唆すると善之も納得した様子を見せた。
「そうであれば20日は正に偽快復期…、偽物の快復の期間にて…」
善之がそう言ったので、意知もそれこそ「復習」する意味で、
「確かその、偽快復期は1日から3日程度でしたね…」
確かめるようにそう尋ねた。
「ええ。20日、丸一日、快復期だとして、その前日、19日はどうでした?」
善之が続けざま問うた。
「19日は…、良く分かりません…」
「分からないと言うと?」
善之は首をかしげた。
「確かその日は西之丸には渡っておらず…、いえ、私は本来、本丸の雁之間詰ですので…」
意知はそう言い訳した。いや、意知はそもそも本丸にて、表向にある雁之間に詰めていなければならない身なので、西之丸へと足を向けること自体、おかしいのだ。
「だとしたら、もしかしたら19日に消化器の異常により苦しんでいた可能性がありますな…」
善之はそう推理した。
「嘔吐や腹痛、下痢などの症状ですよね?」
意知はやはり確かめるようにそう尋ねた。
「ええ」
「確か、それが半日から長くて1日程度、続くんでしたよね…」
「ええ」
「だとしたら、大納言様は19日は半日から1日かけて苦しまれたと…」
意知がそう想像すると、善之も「だと思いますね」と意知のその想像を支持した。
「そうだとすると大納言様が毒を…、シロタマゴテングタケか、あるいはドクツルタケを口にされたのは…、消化器に異変が…、嘔吐や腹痛、下痢などの症状が出るのは摂食後、早くて三刻(約6時間)後、遅くとも1日後との話ですから…」
意知がそこで言葉を区切ると、善之がその先を引き取った。
「18日の何れかの時分に口にされたものかと…」
「だとしたら…、夕食よりも朝食の可能性が高いか…」
意知がそう呟くと、善之も同感だと言わんばかりに頷いてみせた。
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