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家基存命時、西之丸にて御膳番の小納戸を勤めていた、一橋治済と縁のある瀧川久助とその縁者の落合郷八への新たなる「疑惑」2
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「されば、畏れ多くも大納言様がご放鷹、それに本丸奥医の池原長仙院が従い奉るゆえ、西之丸の奥医師まで、それに…、大納言様がご放鷹に従わせしむるには及ばぬであろうと…、誰が左様に考えると申すのだ?」
「それは…、やっぱ家基様の鷹狩り、そいつに同行させる野郎の人選をしたらしい御側御用取次じゃね?西之丸の…」
「ふむ…、されば仮にだが、益五郎よ、そなたが西之丸にてその、奥医を差配せし御膳番をも兼務せし小納戸…、大納言様の御側近くに仕えし小納戸だったとしてだ…、畏れ多くも大納言様がご放鷹に行かれるが、本丸より奥医の池原長仙院が従い奉るゆえ、西之丸よりはあえて奥医を…、西之丸にて大納言様に仕え奉りし奥医までその、畏れ多くも大納言様がご放鷹に従わせしむるには及ばぬと、果たして左様に考えるか?大納言様を大事に思うていればの話だが…」
意知にそうまで示唆されれば子供でも分かるというものであろう。益五郎は「ああっ」と声を上げた。
するとそれを見て取った意知は満足げな表情を浮かべつつ、「どうやら気付いたようだのう…」と目を細めさせたままそう告げた。
「これでまともな…、重好殿の縁者の三浦左膳なり、石場弾正なりが御膳番だったら…、小納戸としてそいつを兼務していたなら、必ずや、いや、家基様に万が一のことがあっては一大事と、西之丸からも奥医を…、家基様に仕える奥医も従わせるべきと、そう主張するってことだな?」
「ああ、その通りだ」
「だが、新たに御膳番を兼務するようになった小納戸の瀧川久助にしろ、落合郷八にしろ、こいつらはまともな御膳番じゃなかった…、いや小納戸じゃなかった、ってことだな?もっと言やぁ、治済の野郎の意向で、家基様の死を願っていた。だから西之丸の奥医…、家基様に仕える奥医までがその家基様の鷹狩りに従って、万が一にも家基様が…、品川の東海寺にて発病予定の家基様がそれら西之丸の奥医の懸命の治療により、命を取り留めたとあっちゃあ、こりゃ一大事、ってなわけで、瀧川久助と落合郷八は奥医を差配できる御膳番の小納戸でありながら、そいつら…、西之丸の奥医を家基様の鷹狩り、それも家基様にとっちゃあ、最期になっちまったその鷹狩りに従わせなかった、ってことだな?」
益五郎が確かめるようにそう言うと、意知は、「池原長仙院とて懸命に治療に当たったに相違あるまい」と池原良誠の名誉のためにそう反論しながらも、
「なれどまぁ、その通りではあるな…」
意知は益五郎のその意見を認めたのであった。
「いや、だとしたらだぜ?これはいよいよもって、治済が家基様殺しの黒幕ってな傍証、だったけか?そいつになりますよ…」
益五郎は家治の方を向いてそう切り出した。
「何しろ一年、いや、半年だけで良いから手前の縁者…、要は治済の息のかかった小納戸に御膳番を兼務させてやって欲しいだなんて上様に頼んで、それも正月に…、これは勿論、手前の息のかかった瀧川久助と、その義弟の落合郷八にその奥医を差配できる立場の御膳番を兼務させることで、より家基様の暗殺をし易くしようと謀った…、ってことはですよ?その正月の段階で、既に治済の野郎は家基様の暗殺計画を練っていた、ってことになるんじゃないっすか?」
益五郎が身を乗り出すようにして家治にそう尋ねると、「ああ、そうであろうな…」と家治もこれを認めた。
「いや、でも家基様の鷹狩り、そいつに誰を連れて行くか、その野郎の人選をすんのは繰り返すようですけど、御側御用取次っすよね?だったら例え、家基様の死を望む治済の息のかかった瀧川久助と、その義弟の落合郷八がその奥医を差配できる御膳番として、西之丸の奥医まで家基様の鷹狩りに従う必要はねぇ、だって本丸奥医の池原が従うんだから、ってな判断をしたとしても、御側御用取次がその、御膳番の瀧川久助と落合郷八のその判断を引っくり返して…、やっぱり何かあった時のために西之丸にて家基様に仕える奥医も連れてった方が良いんじゃね?ってことで、その瀧川と落合の判断が否定されることだってあり得るんじゃ…」
益五郎がその疑問を口にすると、家治もそれを認めた。
「いや、そこで御側御用取次の一人であった小笠原若狭守が瀧川と落合を後押ししたのかも知れねぇな…、何しろ、治済の倅の豊千代の次期将軍就任にいち早く、賛成してみせたわけだから…」
益五郎は更にそう言葉を重ねた。
「さればこそ、当時の平御側なれば、その辺の事情に詳しいかも知れぬゆえ…」
家治がそう言いかけたので、益五郎はそれで家治が当時、西之丸にて家基に平御側として仕えていた者たち…、大久保志摩守忠翰、大久保下野守忠恕、そして本堂伊豆守親房の三人からその当時の話を聴いてはと、そう提案したことを思い出した。
するとそこで準松が、「畏れながら…」と割って入った。
「何だ?」
「されば三人を一時に召し出されましてはやはり…」
準松がそう言いかけると、家治はそれだけですぐにそうと察した。
「やはり小笠原若狭めに怪しまれると?」
家治がそう尋ねると、「御意…」と準松は答えた。確かに小笠原若狭こと、若狭守信喜は今はここ本丸にて将軍・家治に仕える御側衆、それもヒラの御側衆…、平御側としてこの中奥にて勤めていた。
そうであればその中奥にかつての同僚とも言うべき大久保忠翰と大久保忠恕、そして本堂親房を一時に召喚しようものなら、確かに準松が危惧する通り、小笠原信喜に怪しまれるやも知れなかった。
「それは…、やっぱ家基様の鷹狩り、そいつに同行させる野郎の人選をしたらしい御側御用取次じゃね?西之丸の…」
「ふむ…、されば仮にだが、益五郎よ、そなたが西之丸にてその、奥医を差配せし御膳番をも兼務せし小納戸…、大納言様の御側近くに仕えし小納戸だったとしてだ…、畏れ多くも大納言様がご放鷹に行かれるが、本丸より奥医の池原長仙院が従い奉るゆえ、西之丸よりはあえて奥医を…、西之丸にて大納言様に仕え奉りし奥医までその、畏れ多くも大納言様がご放鷹に従わせしむるには及ばぬと、果たして左様に考えるか?大納言様を大事に思うていればの話だが…」
意知にそうまで示唆されれば子供でも分かるというものであろう。益五郎は「ああっ」と声を上げた。
するとそれを見て取った意知は満足げな表情を浮かべつつ、「どうやら気付いたようだのう…」と目を細めさせたままそう告げた。
「これでまともな…、重好殿の縁者の三浦左膳なり、石場弾正なりが御膳番だったら…、小納戸としてそいつを兼務していたなら、必ずや、いや、家基様に万が一のことがあっては一大事と、西之丸からも奥医を…、家基様に仕える奥医も従わせるべきと、そう主張するってことだな?」
「ああ、その通りだ」
「だが、新たに御膳番を兼務するようになった小納戸の瀧川久助にしろ、落合郷八にしろ、こいつらはまともな御膳番じゃなかった…、いや小納戸じゃなかった、ってことだな?もっと言やぁ、治済の野郎の意向で、家基様の死を願っていた。だから西之丸の奥医…、家基様に仕える奥医までがその家基様の鷹狩りに従って、万が一にも家基様が…、品川の東海寺にて発病予定の家基様がそれら西之丸の奥医の懸命の治療により、命を取り留めたとあっちゃあ、こりゃ一大事、ってなわけで、瀧川久助と落合郷八は奥医を差配できる御膳番の小納戸でありながら、そいつら…、西之丸の奥医を家基様の鷹狩り、それも家基様にとっちゃあ、最期になっちまったその鷹狩りに従わせなかった、ってことだな?」
益五郎が確かめるようにそう言うと、意知は、「池原長仙院とて懸命に治療に当たったに相違あるまい」と池原良誠の名誉のためにそう反論しながらも、
「なれどまぁ、その通りではあるな…」
意知は益五郎のその意見を認めたのであった。
「いや、だとしたらだぜ?これはいよいよもって、治済が家基様殺しの黒幕ってな傍証、だったけか?そいつになりますよ…」
益五郎は家治の方を向いてそう切り出した。
「何しろ一年、いや、半年だけで良いから手前の縁者…、要は治済の息のかかった小納戸に御膳番を兼務させてやって欲しいだなんて上様に頼んで、それも正月に…、これは勿論、手前の息のかかった瀧川久助と、その義弟の落合郷八にその奥医を差配できる立場の御膳番を兼務させることで、より家基様の暗殺をし易くしようと謀った…、ってことはですよ?その正月の段階で、既に治済の野郎は家基様の暗殺計画を練っていた、ってことになるんじゃないっすか?」
益五郎が身を乗り出すようにして家治にそう尋ねると、「ああ、そうであろうな…」と家治もこれを認めた。
「いや、でも家基様の鷹狩り、そいつに誰を連れて行くか、その野郎の人選をすんのは繰り返すようですけど、御側御用取次っすよね?だったら例え、家基様の死を望む治済の息のかかった瀧川久助と、その義弟の落合郷八がその奥医を差配できる御膳番として、西之丸の奥医まで家基様の鷹狩りに従う必要はねぇ、だって本丸奥医の池原が従うんだから、ってな判断をしたとしても、御側御用取次がその、御膳番の瀧川久助と落合郷八のその判断を引っくり返して…、やっぱり何かあった時のために西之丸にて家基様に仕える奥医も連れてった方が良いんじゃね?ってことで、その瀧川と落合の判断が否定されることだってあり得るんじゃ…」
益五郎がその疑問を口にすると、家治もそれを認めた。
「いや、そこで御側御用取次の一人であった小笠原若狭守が瀧川と落合を後押ししたのかも知れねぇな…、何しろ、治済の倅の豊千代の次期将軍就任にいち早く、賛成してみせたわけだから…」
益五郎は更にそう言葉を重ねた。
「さればこそ、当時の平御側なれば、その辺の事情に詳しいかも知れぬゆえ…」
家治がそう言いかけたので、益五郎はそれで家治が当時、西之丸にて家基に平御側として仕えていた者たち…、大久保志摩守忠翰、大久保下野守忠恕、そして本堂伊豆守親房の三人からその当時の話を聴いてはと、そう提案したことを思い出した。
するとそこで準松が、「畏れながら…」と割って入った。
「何だ?」
「されば三人を一時に召し出されましてはやはり…」
準松がそう言いかけると、家治はそれだけですぐにそうと察した。
「やはり小笠原若狭めに怪しまれると?」
家治がそう尋ねると、「御意…」と準松は答えた。確かに小笠原若狭こと、若狭守信喜は今はここ本丸にて将軍・家治に仕える御側衆、それもヒラの御側衆…、平御側としてこの中奥にて勤めていた。
そうであればその中奥にかつての同僚とも言うべき大久保忠翰と大久保忠恕、そして本堂親房を一時に召喚しようものなら、確かに準松が危惧する通り、小笠原信喜に怪しまれるやも知れなかった。
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