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美しい国の総理婦人のストーカー 1
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花形雄一郎が練馬にある公団住宅に帰宅するとドアノブにレジ袋が提げられており、そこで花形は袋の中身をあらためてみると案の定、半額シールの貼られた稲荷寿司があった。賞味期限はあと2時間である。
「至急、会いたい」
花形の元上司、公安総務課長の林伸明のメッセージである。
東武練馬にある林のアパートまでは2時間もかからなかった。1時間後には花形は半額の稲荷寿司と共に林のアパートに到着した。
「待ってたよ」
林は花形をそう歓迎すると、他にも半額シールの貼られた惣菜でもって歓待した。
「それで用件は?」
花形は林と向き合うと早速、本題に入るよう林を急かした。
「あとうあきこ、知ってるよな?」
林にそう問われた花形はそれが阿東総理婦人の阿東明子であると脳内変換してみせた。
「総理婦人の?」
花形が脳内変換の正しさを確かめると林は頷いた。
「で、ファーストレディがどうかされたんですか?」
「ストーカーに悩まされている」
林のその言葉が花形には一瞬、理解できなかった。いや、総理婦人がストーカーに悩まされていることは直ぐに理解したものの、それと自分がつながらなかった。
「それならSPに何とかしてもらえば良いでしょう」
わざわざ裏方の自分が出る幕でもない、花形はそう示唆した。
「いや、それがSPにも知られずに対処して欲しい…、それがファーストレディのご意向なんだよ…」
「どうしてですか?」
「そのストーカーなんだがな…、ファーストレディが昔、付き合っていた野郎なんだよ」
林は実に苦々しげに打ち明けた。
「昔、ってのはどのくらい昔の話なんです?高校時代にまで遡るとか?」
花形は内心、分かってはいたものの、あえて尋ねた。
「そんな昔の話じゃない。つい2年前の話だ」
やはりそうか、花形はそう思うと、
「それじゃあ不倫してたってことですか?」
あけすけにそう尋ねた。今から2年前ともなると阿東明子は既に阿東慎太郎の妻であった。いや、それどころか阿東が総理であった頃の話となる。
「ファーストレディってのはそんなに暇なんですか?ラブアフェアできる程に…」
花形はそれが疑問でならなかった。
「まぁ…、居酒屋を切り盛りする程度には暇なんだろうな…」
林は今度はやれやれといった口調で応じた。
「ああ…、確かKUZUだがGUZUだか、GOKUTSUBUSHIだか、そんな看板でしたっけねぇ…」
花形はわざと嫌味ったらしく間違えてみせた。
すると林は律儀にも「MUTSUだ」と訂正してみせた。
「それじゃあもしかして…、そのストーカー野郎ってのもMUTSUの客、いや、元客だったとか?」
それで不倫に陥ったのか…、花形はそうインスピレイションを働かせた。
「その通り。それも常連客でな…」
「ってことは、まさかその…、情事も店内で、とか?」
ファーストレディがホテルで不倫相手と密会を重ねようものなら、それこそマスコミの格好の餌食になるだろう。いや、それ以前にSPがそれを許さないだろう。
だがファーストレディが自ら経営する居酒屋の店内ともなれば話は別である。居酒屋においてはSPは店外にて、つまりは遠巻きにファーストレディを警護するだけである。ファーストレディが店内にてSPが警護するのを許さないからだ。
そうであるならば不倫相手との情事は店内以外には考えられなかった。
花形のその「スジ読み」に林はやはり頷いてみせた。
「まぁ、切り盛りといってもファーストレディが自ら包丁を握るわけでもない。その手の雑事は人にやらせてファーストレディはもっぱら酌をする程度だからな…」
「それじゃあ…、店の営業中、合間を見ては他の客を尻目に不倫相手と店の奥にでも消えてはそこで情事を重ねてたと?」
「ああ…、いや、二人して同時に店の奥に消えようものなら流石に他の客の目があるからな…、だからまずは不倫相手が店のトイレを借りるフリして奥へと…」
「で、その後にファーストレディも奥へと消える、と…」
「まぁ、そんな塩梅だな…」
「正に酌婦、いや、娼婦ですな…、美しい国の総理婦人ともあらせられようお方が…」
美しい国…、それが阿東総理のキャッチフレーズであった。だが実際には自らの女房には居酒屋経営を許し、挙句の果て、不倫まで許してしまうのだから美しい国が聞いて呆れる。
「言葉が過ぎるぞ…」
「でもやってることはつまりはそういうことでしょう?しかもテメエの不倫の尻拭いまでさせようってんだから…」
正しく花形の言う通りであるだけに林も流石に反論できなかった。
「で、そこまで熱々だったお二人さんがまたどうして別れることに?」
「去年、池田が…、ああ、それが不倫相手の名前なんだが、池田が会社をリストラされてな。それで…」
「無職男と付き合ってやるほどお人よしではない、と…」
「まぁ、そういうことだな…」
「それで池田はストーカーと化したわけですか…」
「そうだ。毎日毎日、店に押しかけたりして…」
「まぁ、無職になれば時間にだけは恵まれますからねぇ…」
正に小人閑居して不善をなすの喩え通りであった。
「でもそれならやはり俺の出る幕とも思えないんですがねぇ…、店に押しかけるのならそれこそSPが取り押さえるとか、それが嫌なら所轄に出張ってもらうとか…」
「それがその…、あからさまに警察が介入されるのを嫌っておいでなんだよ。ファーストレディは…」
「どうしてです?」
「それが…、池田…、ストーカー野郎だが、ファーストレディと不倫していた頃、不倫の証拠をしっかりとおさめていたらしくてな…」
「それは…、例えば情事の写真とか?」
「そうだ…、池田は写真が趣味でな。それで…」
「趣味が高じたか、それともまさかの保険に備えてか、ともかく情事を隠し撮りしていたとか?」
「そんなところだ…」
花形にはようやく話が呑み込めた。
「池田はファーストレディ個人のスマホの番号も知っていてな、ある時に情事を隠し撮りした写真もあるぞと…」
「店に押しかけるだけじゃなく、そんな脅しまでかましたと…」
「そうだ…」
「なるほど…、それで俺にはその情事を隠し撮りした写真を回収しろと…、ネガと共に…」
「そういうことだ…」
「それにしてもどうして俺なんです?お話によればファーストレディは確か警察の介入を嫌っておいでのようですが…」
「だからそれは、あからさまに、だ」
「ってことは裏からなら良い、と?」
「そうだ。ファーストレディは恥を忍んで総理に何もかも打ち明けられ、そこで総理は上村さんに…」
「刑事部長に泣きつかれたと…」
「そうだ」
「で、官邸の番犬の、いや、番犬なんて呼び捨てにしたら失礼だな、番犬様の上村刑事部長殿は勿論、総理からのご下命を承り、と…。つまりは刑事部長案件と…」
「そうだ。その上、上村刑事部長は君を指名した…」
「えっ…、そうだったんですか…」
「まぁ、つい先日、刑事部長案件を潰した君を指名するのは上村刑事部長にしてみれば何とも皮肉というか癪だろうが、しかし、刑事部長案件を潰せる程の実力があるのも事実だからな。それで…」
「公安部長を介して公安総務課長の林さんから俺に、と…」
花形には指示伝達系統もようやく呑み込めた。
「そうだ。で、勿論、やってくれるだろうね?」
「まぁ、拒否権は生憎となさそうですからねぇ…」
花形は肩をすくめて見せた。
「そういうことだ。お前にとっても悪い話ではあるまい?前に刑事部長案件を潰したんだからな…」
だから今回の刑事部長案件を仕上げてみせれば上村刑事部長とは貸し借りゼロになる…、林はそう示唆してみせた。
「至急、会いたい」
花形の元上司、公安総務課長の林伸明のメッセージである。
東武練馬にある林のアパートまでは2時間もかからなかった。1時間後には花形は半額の稲荷寿司と共に林のアパートに到着した。
「待ってたよ」
林は花形をそう歓迎すると、他にも半額シールの貼られた惣菜でもって歓待した。
「それで用件は?」
花形は林と向き合うと早速、本題に入るよう林を急かした。
「あとうあきこ、知ってるよな?」
林にそう問われた花形はそれが阿東総理婦人の阿東明子であると脳内変換してみせた。
「総理婦人の?」
花形が脳内変換の正しさを確かめると林は頷いた。
「で、ファーストレディがどうかされたんですか?」
「ストーカーに悩まされている」
林のその言葉が花形には一瞬、理解できなかった。いや、総理婦人がストーカーに悩まされていることは直ぐに理解したものの、それと自分がつながらなかった。
「それならSPに何とかしてもらえば良いでしょう」
わざわざ裏方の自分が出る幕でもない、花形はそう示唆した。
「いや、それがSPにも知られずに対処して欲しい…、それがファーストレディのご意向なんだよ…」
「どうしてですか?」
「そのストーカーなんだがな…、ファーストレディが昔、付き合っていた野郎なんだよ」
林は実に苦々しげに打ち明けた。
「昔、ってのはどのくらい昔の話なんです?高校時代にまで遡るとか?」
花形は内心、分かってはいたものの、あえて尋ねた。
「そんな昔の話じゃない。つい2年前の話だ」
やはりそうか、花形はそう思うと、
「それじゃあ不倫してたってことですか?」
あけすけにそう尋ねた。今から2年前ともなると阿東明子は既に阿東慎太郎の妻であった。いや、それどころか阿東が総理であった頃の話となる。
「ファーストレディってのはそんなに暇なんですか?ラブアフェアできる程に…」
花形はそれが疑問でならなかった。
「まぁ…、居酒屋を切り盛りする程度には暇なんだろうな…」
林は今度はやれやれといった口調で応じた。
「ああ…、確かKUZUだがGUZUだか、GOKUTSUBUSHIだか、そんな看板でしたっけねぇ…」
花形はわざと嫌味ったらしく間違えてみせた。
すると林は律儀にも「MUTSUだ」と訂正してみせた。
「それじゃあもしかして…、そのストーカー野郎ってのもMUTSUの客、いや、元客だったとか?」
それで不倫に陥ったのか…、花形はそうインスピレイションを働かせた。
「その通り。それも常連客でな…」
「ってことは、まさかその…、情事も店内で、とか?」
ファーストレディがホテルで不倫相手と密会を重ねようものなら、それこそマスコミの格好の餌食になるだろう。いや、それ以前にSPがそれを許さないだろう。
だがファーストレディが自ら経営する居酒屋の店内ともなれば話は別である。居酒屋においてはSPは店外にて、つまりは遠巻きにファーストレディを警護するだけである。ファーストレディが店内にてSPが警護するのを許さないからだ。
そうであるならば不倫相手との情事は店内以外には考えられなかった。
花形のその「スジ読み」に林はやはり頷いてみせた。
「まぁ、切り盛りといってもファーストレディが自ら包丁を握るわけでもない。その手の雑事は人にやらせてファーストレディはもっぱら酌をする程度だからな…」
「それじゃあ…、店の営業中、合間を見ては他の客を尻目に不倫相手と店の奥にでも消えてはそこで情事を重ねてたと?」
「ああ…、いや、二人して同時に店の奥に消えようものなら流石に他の客の目があるからな…、だからまずは不倫相手が店のトイレを借りるフリして奥へと…」
「で、その後にファーストレディも奥へと消える、と…」
「まぁ、そんな塩梅だな…」
「正に酌婦、いや、娼婦ですな…、美しい国の総理婦人ともあらせられようお方が…」
美しい国…、それが阿東総理のキャッチフレーズであった。だが実際には自らの女房には居酒屋経営を許し、挙句の果て、不倫まで許してしまうのだから美しい国が聞いて呆れる。
「言葉が過ぎるぞ…」
「でもやってることはつまりはそういうことでしょう?しかもテメエの不倫の尻拭いまでさせようってんだから…」
正しく花形の言う通りであるだけに林も流石に反論できなかった。
「で、そこまで熱々だったお二人さんがまたどうして別れることに?」
「去年、池田が…、ああ、それが不倫相手の名前なんだが、池田が会社をリストラされてな。それで…」
「無職男と付き合ってやるほどお人よしではない、と…」
「まぁ、そういうことだな…」
「それで池田はストーカーと化したわけですか…」
「そうだ。毎日毎日、店に押しかけたりして…」
「まぁ、無職になれば時間にだけは恵まれますからねぇ…」
正に小人閑居して不善をなすの喩え通りであった。
「でもそれならやはり俺の出る幕とも思えないんですがねぇ…、店に押しかけるのならそれこそSPが取り押さえるとか、それが嫌なら所轄に出張ってもらうとか…」
「それがその…、あからさまに警察が介入されるのを嫌っておいでなんだよ。ファーストレディは…」
「どうしてです?」
「それが…、池田…、ストーカー野郎だが、ファーストレディと不倫していた頃、不倫の証拠をしっかりとおさめていたらしくてな…」
「それは…、例えば情事の写真とか?」
「そうだ…、池田は写真が趣味でな。それで…」
「趣味が高じたか、それともまさかの保険に備えてか、ともかく情事を隠し撮りしていたとか?」
「そんなところだ…」
花形にはようやく話が呑み込めた。
「池田はファーストレディ個人のスマホの番号も知っていてな、ある時に情事を隠し撮りした写真もあるぞと…」
「店に押しかけるだけじゃなく、そんな脅しまでかましたと…」
「そうだ…」
「なるほど…、それで俺にはその情事を隠し撮りした写真を回収しろと…、ネガと共に…」
「そういうことだ…」
「それにしてもどうして俺なんです?お話によればファーストレディは確か警察の介入を嫌っておいでのようですが…」
「だからそれは、あからさまに、だ」
「ってことは裏からなら良い、と?」
「そうだ。ファーストレディは恥を忍んで総理に何もかも打ち明けられ、そこで総理は上村さんに…」
「刑事部長に泣きつかれたと…」
「そうだ」
「で、官邸の番犬の、いや、番犬なんて呼び捨てにしたら失礼だな、番犬様の上村刑事部長殿は勿論、総理からのご下命を承り、と…。つまりは刑事部長案件と…」
「そうだ。その上、上村刑事部長は君を指名した…」
「えっ…、そうだったんですか…」
「まぁ、つい先日、刑事部長案件を潰した君を指名するのは上村刑事部長にしてみれば何とも皮肉というか癪だろうが、しかし、刑事部長案件を潰せる程の実力があるのも事実だからな。それで…」
「公安部長を介して公安総務課長の林さんから俺に、と…」
花形には指示伝達系統もようやく呑み込めた。
「そうだ。で、勿論、やってくれるだろうね?」
「まぁ、拒否権は生憎となさそうですからねぇ…」
花形は肩をすくめて見せた。
「そういうことだ。お前にとっても悪い話ではあるまい?前に刑事部長案件を潰したんだからな…」
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