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有為転変 2
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「のう、みつおよ…」
「はい?」
「拾の代わりになれ」
みつおは一瞬、淀殿の言葉が理解出来なかった。
「あの…、それは一体、どういうことですか?」
「拾はもう…、永遠に目を覚ますことはない…」
淀殿はポツリとそう呟くと、目を閉じている秀頼の頬を撫でた。
「それって、まさか…」
「左様。先程、拾は息を引き取ったわ…」
そんな馬鹿な…、みつおは思わずその言葉が口をついて出ようとした。秀頼は大坂夏の陣で破れ、淀殿と共にこの大坂城内にて火に取り囲まれながら自害して果てた筈である。それがまた病死とは…、みつおにはどうしても信じられなかった。
「さればみつおに拾…、いや、秀頼の代わりを務めてもらいたいのだ」
淀殿がそう頼むと、叔父とかいう長益が、「正気か?」と呆れた口調で尋ねた。みつおも同感であった。
「正気ぞ」
「まさかに…、これなみつおなる者を秀頼ぎみの影武者として、内府殿に面会させるつもりではあるまいの?」
もしかして二条城での会見か…、それぐらいの知識なれば、みつおにもあったので、「二条城での会見ですか?」と尋ねた。
「いかにも。明後日に二条城にて会見が行われる予定でな。その会見にみつおよ、そなたが秀頼の代わりとして出て欲しいのだ」
淀殿がそう告げた瞬間、「愚かなことを…」と長益がそれこそ、
「苦虫を噛み潰したような…」
表情でもってそういたものである。
「何が愚かなことかっ!」
どうやら長益の呟き声が淀殿の耳にまで届いてしまったらしく、声を荒げた。だが長益も負けてはいない。
「愚かだから愚かだと評したのだ」
長益は淀殿を相手にそう反論した。
「愚かはどちらぞっ!そもそもわらわは内府殿へ拾を会わせることに反対だったのだ…」
「それがいかが致したと申すのだ。既にそのことなれば、そなたも承知したではないか」
長益は心底、うんざりしたような表情を浮かべ、それこそ赤子でもあやすように言った。
「何が承知したものか。そなたらに押し切られて已む無く、拾を内府殿へ会わせることにしたまで…、つまりはそなたらに強要されたようなものにて、その結果がこれぞっ!」
淀殿は金切り声を張り上げると、眠っている…、永遠の眠りについた秀頼の顔を手で示した。
「そなたらが…、内府殿への面会を強要致したがために、このように拾は心労が重なりて、命を落とすことと相成ったのじゃぞっ!そなたらが拾を殺したようなものぞっ!」
どうやら話を聞く限り、淀殿は秀頼を家康に会わせることに反対であったが、長益を始めとする連中が淀殿を必死に説得し…、或いは宥めすかして、淀殿を頷かせたということらしかった。それが秀頼の死により、それまで鬱屈していたものが一気に噴出した、ということの真相のようであった。
それにしても秀頼の死を家康との面会に求めるとは、牽強付会もいいところであったが、淀殿はそれを固く信じて疑わない様子であった。
「さればみつおよ、拾…、秀頼の身代わりを務めてくれるな?」
みつおは完全に淀殿の気迫に飲み込まれ、思わず頷いていた。そんなみつおに対して淀殿は愛息を失った悲しみも忘れたかのように笑みを浮かべて頷いたものである。
「はい?」
「拾の代わりになれ」
みつおは一瞬、淀殿の言葉が理解出来なかった。
「あの…、それは一体、どういうことですか?」
「拾はもう…、永遠に目を覚ますことはない…」
淀殿はポツリとそう呟くと、目を閉じている秀頼の頬を撫でた。
「それって、まさか…」
「左様。先程、拾は息を引き取ったわ…」
そんな馬鹿な…、みつおは思わずその言葉が口をついて出ようとした。秀頼は大坂夏の陣で破れ、淀殿と共にこの大坂城内にて火に取り囲まれながら自害して果てた筈である。それがまた病死とは…、みつおにはどうしても信じられなかった。
「さればみつおに拾…、いや、秀頼の代わりを務めてもらいたいのだ」
淀殿がそう頼むと、叔父とかいう長益が、「正気か?」と呆れた口調で尋ねた。みつおも同感であった。
「正気ぞ」
「まさかに…、これなみつおなる者を秀頼ぎみの影武者として、内府殿に面会させるつもりではあるまいの?」
もしかして二条城での会見か…、それぐらいの知識なれば、みつおにもあったので、「二条城での会見ですか?」と尋ねた。
「いかにも。明後日に二条城にて会見が行われる予定でな。その会見にみつおよ、そなたが秀頼の代わりとして出て欲しいのだ」
淀殿がそう告げた瞬間、「愚かなことを…」と長益がそれこそ、
「苦虫を噛み潰したような…」
表情でもってそういたものである。
「何が愚かなことかっ!」
どうやら長益の呟き声が淀殿の耳にまで届いてしまったらしく、声を荒げた。だが長益も負けてはいない。
「愚かだから愚かだと評したのだ」
長益は淀殿を相手にそう反論した。
「愚かはどちらぞっ!そもそもわらわは内府殿へ拾を会わせることに反対だったのだ…」
「それがいかが致したと申すのだ。既にそのことなれば、そなたも承知したではないか」
長益は心底、うんざりしたような表情を浮かべ、それこそ赤子でもあやすように言った。
「何が承知したものか。そなたらに押し切られて已む無く、拾を内府殿へ会わせることにしたまで…、つまりはそなたらに強要されたようなものにて、その結果がこれぞっ!」
淀殿は金切り声を張り上げると、眠っている…、永遠の眠りについた秀頼の顔を手で示した。
「そなたらが…、内府殿への面会を強要致したがために、このように拾は心労が重なりて、命を落とすことと相成ったのじゃぞっ!そなたらが拾を殺したようなものぞっ!」
どうやら話を聞く限り、淀殿は秀頼を家康に会わせることに反対であったが、長益を始めとする連中が淀殿を必死に説得し…、或いは宥めすかして、淀殿を頷かせたということらしかった。それが秀頼の死により、それまで鬱屈していたものが一気に噴出した、ということの真相のようであった。
それにしても秀頼の死を家康との面会に求めるとは、牽強付会もいいところであったが、淀殿はそれを固く信じて疑わない様子であった。
「さればみつおよ、拾…、秀頼の身代わりを務めてくれるな?」
みつおは完全に淀殿の気迫に飲み込まれ、思わず頷いていた。そんなみつおに対して淀殿は愛息を失った悲しみも忘れたかのように笑みを浮かべて頷いたものである。
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