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第六話 白と黒の衝突
白と黒の衝突 04
しおりを挟む「私の邪魔をした貴方には、ここで消えていただきましょう」
今度は明確で静かな怒りを滲ませながら、マーリアはようやくアーシェリを見据えて正面から対峙する
「にしてもなんの因果でしょうか…こうも早く、あの人の一族と戦うことになるなんて」
さっきまで怒っていたかと思えば、まるで昔を懐かしむような優しい柔らかな表情して一人物思いに耽る
次から次へと表情が二転三転するマーリアを前に痺れを切らしたアーシェリは聞くだけ無駄だと判断し、突如マーリアへ突進をかける
「訳わかんねーことばっか言ってんじゃねー!オメーはここであたしがコテンパンにしてやらぁ!!」
咆哮と共に大剣の腹で薙ぎ払うべく、アーシェリは剣を旋回させるが、マーリアは飛び引いてアーシェリとの一定の距離を保っていた
先の二撃で単純な力の差を知って、ぶつかり合うことはせずに翼を駆使して空に留まり、アーシェリの攻撃範囲の外から、両手の剣を振りかぶって急接近と離脱を繰り返しながら攻撃する
対するアーシェリは『アクセルウェポン』バイオレットラブを手放して消失させた身軽な状態でマーリアの攻撃を躱し、そこから攻撃するときに再びバイオレットラブを手にマーリアに叩きかける
攻撃しては躱されて、躱されては攻撃されるというお互いにカウンターの応酬が繰り返されるものの、ダメージどころか武器同士の衝突もなく拮抗した戦況のまま時間が過ぎ、体力を減らしていく
「くっ!当たんねー…」
「キリがありませんね…」
そんな中、拮抗した戦況に痺れを切らしたマーリアはこの状態を打破すべく背中の両翼を左右に大きく広げる
そしてその時アーシェリは既にマーリアの攻撃を交わして、バイオレットラブを手にマーリアのスキを突くべく突撃をしている最中
お互いにかわしては攻撃するというヒットアンドアウェイの繰り返しによって、相手の翼が勢いよく展開したことも回避運動の予備動作だと認識していたたアーシェリはそのまま突撃を敢行したがーーー
アーシェリの攻撃が届くより先にマーリアの翼から拡散された光のレーザーが発射された
「なっ!?」
驚くのも束の間
今にも相手の脇に大剣がマーリアに届くこのとき、アーシェリは手を止めることも出来ず、突然目前で放たれたレーザーを前に回避もままならず光に包まれてしまった
アーシェリを包んだ光は勢いを緩めることなくそのまま建物の壁に着弾する
着弾した壁を起点に眩い閃光を放ちながら、あたりを揺るがす大爆発を引き起こして一面の砂埃を舞い散らし、視界を遮っていく
「…」
霧のように舞う砂埃の中でマーリアの表情は硬いまま目の前の砂埃の先にあるものを目を細めて注視する
直前の攻防で確実にダメージは避けられないタイミングの中で的確な攻撃を叩き込むことに成功していたものの、表情は優れないままだった
「ふぅー危ねー危ねー」
視線の先から聞こえてきた余裕ある声に驚くことなく、砂埃が落ちるのを待つ
そうして現れたのは一切のダメージが見当たらない姿で白い歯をチラつかせながら薄ら笑うアーシェリの姿が現れた
「一体どうやって…」
あの攻撃を凌いだのかーーー
そう続く言葉を飲み込んでマーリアは無傷のアーシェリと再び対峙する
確実に回避不可能なタイミングでレーザーを受けた筈で、仮に防御したとしてもレーザーの勢いが一切緩まなかったのはおかしい
まるであの時、あの場所にいなかったかのようだった
「何言ってんだ、教えるわけねーだろ」
「そうですか…」
教える訳ないーーーということなら、教えられないこと
その口振りからおそらく彼女の『メインアクセル』であることは間違いなさそうだという考えに行き着いたマーリアはその能力の秘密を炙り出そうと、今度は離れた位置から止め止めなく翼から拡散レーザーを放ち続けた
迫り来るレーザーを前に、姿勢を屈めると外回りを走ってレーザーをいなし、そのうちの幾つかを左手から紫の炎を放出して打ち消しながらマーリアとの距離を縮めていく
しかし、近づくほど撃ち出されるレーザーとの感覚と回避までの時間も狭まり、徐々に攻めあぐねてしまう
本来、能力者が放出できるレーザーなどのブランチアクセルは両手のみであり、攻撃の手数もかなり限定的なのが一般的なのだが、マーリアはそのブランチアクセルの放出元が両手のみならず、大きな翼からも放つことが可能
その為、ブランチアクセルによる攻撃の手数は常人より遥かに多く、攻撃の多様性も富んでいるものだった
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