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第五話 復讐者の来訪
復讐者の来訪 05
しおりを挟むやがて日が傾いて赤い空に覆われた中、ゆったりと流れる雲のように、何事もなくこの日の補修作業が終わりを迎えていた
作業員達が材料や道具を片付けて撤収準備をしている側で、アーシェリとフィオリンは近くのベンチに腰を下ろす
「今日は疲れたね、工事って面白そうだと思ったけど、なんか…えっーと、しどうい?」
言葉選びにつっかえたフィオリンは疲れからいつもの声に張りがなく、ベンチに浮かせた足を力なくブラブラ遊ばせる
「指導員?…ああ、『しんどい』だろ」
「あ、そうだった
アーシェリちゃん物知りだね」
「物知りって訳でもねーけどな」
フィオリン同様にアーシェリも作業の手伝いと、初めての業務や技術を学んだりで疲れを見せており、考えなしの身も蓋もないダラダラとした会話が二人の間を横行する
「それにしても工事って結構大変なんだな
見た感じそうでもねーと思ったけど、実際きめ細かいっつーか想像してたのと全然ちげーな」
柄にもなく物思いにふけるように空を見上げながら、アーシェリはベンチの背板に右肘を乗せて右脚を座面に立てるという自称乙女とは程遠い姿勢をとって一息つく
「そうだね、でもこんなこと毎日続けてるのかな?」
「依頼があればやるって感じじゃねーのか?ジャンルこそちげーけど、そこらへんはあたし達と似てんのかもな」
ベンチに体重を預けて力なく背板の上に後頭部を乗せながらそう言ったアーシェリの姿を見て、フィオリンも同じように空を見上げながら、ただぼんやりと雲の流れを目で追う
しかし、暫く空を見上げていたものの、会話のない沈黙に耐えられず、フィオリンがアーシェリに向き直って話題を振る
「そういえば、レポートはどうしよう?」
一度任務が終われば、上司であるラクナの元にレポート提出が義務付けられており、チームでの任務ならチーム内誰か一人が提出すればいいのだが、任務として何をどう書くのかわからず、まだ幼いフィオリンはどう書こうと迷いを感じていた
「そうだな、護衛だったとはいえ、何処に行く訳でも危険があった訳じゃねーし…仕事の手伝いをした事とか書いとけはいーんじゃねーか?」
「それ、日記みたいになりそうじゃないかな?」
フィオリンとしてはもし、自分がレポートをまとめあげるとしたらもっと事務的でいかにも資料ぽい理想なレポートを日頃からいつか書きたいと思っていた
今まで上手く書けたことなどなく、経験も浅いフィオリンは自分なら今日の任務についてどう纏めるべきかと頭を捻らせて考える
「まー、実際そんなもんになるだろーな
キルバレンは家事があるし、お前も疲れてるだろ
今回はあたしが書くから気にすんな」
「え?いいの?大丈夫?」
「大丈夫大丈夫、こーゆーときは姉貴に任せておきなさいって」
レポートをただの宿題程度にしか感じてないアーシェリにとってはめんどくささが勝るものだが、実際に書くときは真面目に取り組むようにしており、今もレポートにどう表すか腕を組んでシュミレートしていた
しかし、疲れから文字が浮かんでは消えての繰り返しで結局その場ではまともな文章が浮かばず、帰ったら考えることにして、力なく息をつく
「あの、お疲れのところすみません…」
一旦思考をクリアにして下げた頭を上げようとしたとき、見知らぬ少女が目の前に立って、アーシェリたちに声をかけていた
「あなた方は兵士の方ですよね?一つお伺いしたいことがありますが、構いませんか?」
長い銀髪を後頭部に二つも束ねたその少女は、胸元まで曝け出した薔薇模様が描かれた白いワンピースと白い髪飾りを身につけて、同じく白色の眼帯で右目を隠しているいるという白一色という異様な佇まいで、物腰を柔らかく話しかける
急に現れて話しかけられたことと、その少女の雰囲気に気圧された二人は驚いて返事も出来ないまま、少女を見て暫く固まっていた
それはまるで現実から非現実に押し出されたような感覚を覚えながら
「あの~…」
「あ、ああ…悪かった、別にいいぜ」
「う、うん…いいよ」
夕日に照らされて、白一色の衣装が赤く反射しながらもその清楚な出で立ちから、純白の翼が生えているのではないかという錯覚を感じた二人はしどろもどろに返事を返す
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