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第五話 復讐者の来訪
復讐者の来訪 04
しおりを挟む暫くして、キルバレンは背後から瞬時に現れた何者かの気配を感じて振り返ると、ふと遠くの物陰から異様に大きな翼らしき影を視界の端で捉えた
まさか、翼を生やした悪魔かーー
そう勘ぐり、影が見えたであろうその場所に目を凝らして一歩踏み出すと、その物陰あたりから白い羽を生やした大きな鳥が現れて空を飛んでいった
到底悪魔のものとは思えない純白の翼を持つ鳥を見て、余計に気を張り過ぎだと自らに言い聞かせてキルバレンは一息つきながら空を見上げる
そういえばと、彼女はいつの日かゼオンが見かけたといっていた『天使』について思い出す
ちょうどピーヌスが集団目撃された時期に、この近くで見たと言っていたことを
その『天使』もこの事件と関係あるのだろうか…
そう考えたが、キルバレンは頭を左右にかぶりを振って自らの自問に対して考えを否定する
精霊族と思われるその『天使』がピーヌスを統率できる訳がなく、そのこと以外にどう事件に関係するのか見当もつかない
判断材料が少ない中で考えすぎても仕方のないことだと断じ、踵を返して作業手伝いをしているアーシェリやフィオリン元へ歩み寄っていった
しかし、その物陰から気配を消すように沈黙を保ちつつ、キルバレンの背中を見つめている者がいた
その者は右眼に眼帯を付け、純白の衣を身に包んでおり、その背には翼こそ無いがゼオンが見たというあの『天使』その人だった
「あの人がジークフリートの末裔…」
中々鋭い感覚をしているーーー
心中彼女に称賛を送ると、彼女は無人の廃屋の中に身を潜めて、霊気によって見えなくしていた背中の二翼を物質化させる
彼女は昨晩、自身の元にいる紫色をしている長髪の男との会話で今日この一帯の警戒網が解除されるということを聞いたことを思い出し、近くの椅子に腰を下ろす
以前この付近でピーヌス相手に戦っていた紫髪の悪魔の情報を知っている住人がいるかもしれないこと
これからの行動を考えると、この国直属の兵士との接触はなるべく避けたほうが良いことを話し合ったのだが…
「警戒網が解除って、まだ結構残っているじゃないですか…」
ここに落ち着くまで、巡邏や歩哨らしき兵士を散見しており、何とか見つかることもなくやり過ごしているものの、現状に不満を感じていた彼女はここにはいない情報提供者に向けた愚痴を零していた
ここで待機し続けるのは簡単だが、以前長髪の男が映し出したこのエリアの映像の中でピーヌス相手に戦っていた紫髪の悪魔が存在し
彼に関する情報が欲しい彼女にとって、このまま何もせずに無駄な時間を過ごす訳にはいかなかった
目撃したと思われる住民達は今でも何処かに避難しているようで、ここにいる作業員も歩哨を付けており、CICの兵士に見つからず有益な情報を得ることはできそうにない
だからといって、熟練の兵士に見つかると、霊気によってあえて見えなくさせている翼の存在を感知される危険性があり
より自分の存在を相手に印象づけらるうえ、兵士達の雇い主である国の本社まで情報が出回る可能性が出てくる
ただでさえ、ピーヌスによる襲撃で警戒を続けている状況の中、人間ではない自分の存在が表沙汰になれば、CICによって束縛される恐れもある
今の彼女にとってそういった事態はなるべく避けたいところだった
「この国の兵士たち、同じジークフリートの『九人姉妹』なら尚更…」
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