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第五話 復讐者の来訪
復讐者の来訪 02
しおりを挟むやがて、笑い声も落ち着いたところで、シェリエールとマレーシャは自然にコップを手にした
口をつけて中の飲み物を飲むとアウリと同じように顔を真っ赤にして咳き込み始めた
「かッ…!ゲホッ!!ケホケホゲホッッ…!!!」
「~~~っ!!!いたたたた!!おい!なんでこっちまでからいんだよっ!!」
最早安心しきった二人は虚を突かれる形で手に持つコップを落とし、勢いよく椅子から転げ落ちた
そして立ち上がってすぐに洗面台の水を二人で競うように口に含めたあと、一旦落ち着くまでひたすら口の中の辛さを我慢しながら揃ってアウリに視線を投げかけてた
対するアウリはなんのことだかよくわかっておらず、口を押さえながら首を傾げて2人の顔を覗き込む
「おいおい、何がどうなって…うわっ」
一部始終を見ていたゼオンは台所に出しっぱなしのタバスコ入りの瓶に気付いて、本来三人が何をしようとしていたのか見当がついた
「成程、1つだけハズレの筈が、手違いで全部ハズレだった訳か」
三者三様に騒いだり動いたりしている妹達をよそに、転げ落ちたコップを回収してテーブル上に戻したゼオンは、昼食を手に取るついでに冷蔵庫から残り少ないお茶の入ったボトルを取り出して一気に飲み干す
そして、何かの異変を感じて、眉を顰めたまま昼食をとるその手を暫く止めていると……
「辛ッ!!?なんだこれ!?うわっ!辛い辛い!」
叫びながら辛さに悶え始めたゼオンの前にマレーシャ、アウリ、シェリエールの三人は動きを止めて何事かといった疑問と驚きの混えた顔でゼオンを見る
「おまえ、もしかしておなじ赤いラベルだからといってケチャップをタバスコとまちがえてつかったのか?」
「ハー…ハーっ…馬鹿!そんな訳、ないだろう…誰だ、このプラボトルのお茶にタバスコを混ぜたやつは…」
あまりの辛さに過呼吸になりながらもシェリエールに言葉を途切れ途切れにゼオンは三人に対して空のボトルを見せつけた
そのボトルを前に、シェリエールは隣であっけらかんとしているアウリに視線のみを移して睨む
「まさかおまえ、ボトルにタバスコをしこんだのか…」
「え~あうりんじゃないよ!あうりんはちゃんとコップひとつだけしか入れてないよ?」
「どうりでコップ全部にタバスコいりのお茶があったんだな?」
「だからあうりんじゃないって、信じてよー」
元々タバスコを仕込む役はアウリだったようで、ゼオンは反論する彼女の言い分を無視していた
シェリエールは彼女が全てのコップにタバスコを仕込んだと信じて疑わずアウリから視線をそらさない
ゼオンもシェリエール程ではないがアウリを疑っていたようで彼女に問いかける
「本当か?なんか手違いでミスったわけじゃないよな?」
「ホントだよ!あうりんは間違ってないよ」
落ち着きがないアウリの性格上からゼオンは誤って仕込みミスしたものだと彼女を見ていたが、その横でマレーシャがひっそりと手を挙げていた
「ごめん……多分わたし…」
間髪入れずに一斉に注目を集められたマレーシャはバツが悪そうに顔を背ける
「お前か…」
その後、ゼオンがマレーシャを問い詰めてみると、朝ボトルの中に茶っ葉を入れたときに誤って何かの瓶をボトルの中に落としたらしく、それがタバスコだったらしい
見たところ蓋は閉まっている様に見えたからロクな確認をせず、瓶だけを元に戻したという話を恐る恐る説明した
「全く…そういうのは確認しとけって」
「……」
ゼオンはマレーシャに注意を促しながら手慣れた動きでボトルの中を水で洗い流してからお茶っ葉を取り出して再びお茶を用意する
一連の作業を終えた後に用意された昼食を今度こそ手に取ってテーブルの席につく
そしてゼオンはふと閃いたように昼食に向けていた顔を上げると三人に真剣な眼差しで問いかける
「ところでお前ら、今日の予定は空いてるか?」
「うーん、空いていると言えば空いてるかな?」
「あとすこししたら 三人で修行するつもりだけどな」
咄嗟にアウリとシェリエールが自身の都合を答えると、三人をしっかりと見据えたままゼオンは表情を明るくした
「そうか、しっかりやる気になってるのは良いことだな
よし、じゃあ飯食って暫くしたらオレとルリアを混ぜて五人で鍛錬するということでいいか?」
マレーシャはともかくアウリとシェリエールにも昨日の話が親身に届いていることが嬉しくなり、つい頬が緩む
もし遊びに行くという用事であれば、引き止めて鍛錬に付き合わせるつもりであったが、先日ゼオン達が負けて帰った件で、三人共強くならなくてはいけないと思ったのだろう
思いの外、鍛錬に前向きの様子を見せていた
三人にゼオンは安堵していた
「あうりんは構わないよ!」
「いっとくが、ゼオンとマレーシャは療養期間中だから、体力のつかいすぎには 気をつけろよな」
「……」
「よし、じゃあ飯食って食い物を消化したら早速始めるぞ」
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