エンゼルローズ

RASHE

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第五話 復讐者の来訪

復讐者の来訪 01

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ゼオン達が悪魔との戦いに敗れたあの日から数日後ーー

何度も日が空を通過し、過度な運動を控え続けてから今まで、かつて紫髪の悪魔との戦いで麻痺した体の調子を取り戻したゼオンは桃色の髪を束ねた九人姉妹の三女・ルリアを相手に自宅の地下で修行に励んでいた

『神器霊核』の霊獣である五体の龍を操り、各々が持つアクセルラインがルリアの霊気を吸収していく


「よし、こんなもんか」


以前とは違って修行の成果に手答えを感じたゼオンは満足そうに鼻で笑うと、霊獣を四散させて一息つく

本当ならば、かつてセレーラルが言ったように暫く安静した後にアウリを連れて外で修行するつもりだっだが、安静期間の終わりを待ちきれず、非番の妹に協力してもらって日々の屋内修行に明け暮れていたのだが

あくまで『過度』な運動のみを控えていた為、でセレーラルやマレーシャより体の麻痺が完治するのが遅れてしまっていた


「初めて聞いた時は驚いたけど、これほど簡単に霊気を取られるなんて知らなかった」

「『神器霊核』自体負担が大きいし加減がかけにくい奥の手だからしょうがないさ、あれこれ試すうちに短時間でバテるからな」


充分な出来に満足した後は、修行の手を止めて、ゼオンはパイプ椅子に腰を落ち着ける


「そういえばお前はどうなんだ?一度アーシェリとフィオリンの三人で試してみたんだろう?」

「いや、私はちょっと…」


返答に戸惑いを見せたルリアはもともと八の字だった眉を更に歪めて罰が悪そうに視線を逸らす

臆病なルリアその様子だけで、誰かを相手に『神器霊核』の発動すら躊躇って、できなかったことを容易に思い浮かべることができた


「全く、無理しろとは言わないけど、あまり甘いことを言ってられない状況になるかもしれないから腹括ってしっかりやれよ」

「うん…」

「昔はお前が一番の暴れん坊でやんちゃだったのにな~」

「ゼオン姉さん、そ、それは昔の話であって…」

「悪い悪い、わかってるって」


触れてほしくない昔の話題に対して、恥ずかしそうに表情があたふたと崩れるルリアに、ゼオンは手で抑えるポーズをとって言葉尻にゆっくりと立ち上ごり、部屋の扉へと足を向ける


「そろそろ時間だし、とりあえず昼食にしようか、あいつらも集まってそうだからな」

「そ、そうだね…」



時刻は昼の十二時半を指しており、本来の昼食時間である十二時を大きく過ぎていた

ゼオンががリビングに辿り着いたときにはマレーシャ、アウリ、シェリエールの三人がテーブル上にあるそれぞれのご飯を頬張りながらテーブルの中心に置かれた三つのお茶入りコップを注視している

三人共リビングの扉の開閉に目もくれず、睨みつけるようにコップを眺める姿を前にして、ゼオンはまた何か変なことをしてるんだろうと思いながら既に用意されていた昼食を取りに行こうとキッチンへと足を進める


そんな中、シェリエールがマレーシャから見て左側のコップを恐る恐る手に取った


「よし…わたしはこのコップだ」

「じゃああうりんはこっち!」


自信満々な表情でアウリはシェリエールとは対照的に真ん中のコップを挟んで置いてあった反対側のコップを勢いよく手元に引き寄せる

そして、最後に残されたコップをマレーシャは何事も言うことなく無言で持ち上げると中にある水を凝視しながら恐る恐る手前へ置く

三人はお互いに手元に置いたコップを持ち上げるのを確認すると、アウリが元気よく他の二人に呼びかける


「じゃあ、先にあうりんからいくよ~!当たる確率は三分の1!!」


その言葉を皮切りにアウリが勢いよくコップの中の液体を飲み干すと、見る見るうちに顔を真っ赤にして、我慢できずに咄嗟に席を立つ


「あーっ!!辛い辛いカライカライカラーイッ!!」


アウリが口をおさえて叫ぶと、キッチンの前に立っていたゼオンに体当たりしながら、水道の蛇口から水を出して、うがいをするように水の吐き出しを繰り返し始めた


「うあぁ…から~い…」

「はっはっはっは!!!だからやめようっていったじゃないか!バチあたりめ!」


涙目になりながらも必死に辛さを堪えているアウリの行動を見ながらシェリエールは腹を抱えて笑い続ける

マレーシャも無表情ながらもアウリの行動に視線を外さず、釘付けになっていた

顔は笑っていないものの、肩が小刻みに震え続けており、笑いを堪えているのは一目瞭然だ
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