14 / 56
第2話 悪魔の操り手
悪魔の操り手 03
しおりを挟むつまるところ嫌になった『魔界』から抜け出して周辺で出没している「ピーヌス』をかき集めている上級悪魔がいるのかーー
とラクナの話から、そう解釈したセレーラルは更に疑問に思ったことを口にする
「ん~…でも、『魔界』のボーダーゲートは厳重に管理されている筈だから、そう簡単に抜け出せられないと思うけど?」
『そうだな、しかし今となってはこちらの世界に流れて生活している上級悪魔も僅かに存在しているからはっきりとは言えないが、どちらにせよピーヌスを統率している上級悪魔が存在する可能性は比較的に高い』
上級悪魔…ピーヌスなどとは比べ物にならないほどの実力を保持すると言われている悪魔でゼオンですら敵として相対したことがなく、緊張から身体が強張っていく
『後続の部隊が来るまで無理せず、足止めの対処をお願いしたい
その後、安全を確保したら後続に現場を任せて、一度本部に戻ってきてくれ』
「了解」
やがて会話を終えた後、モニターの画面が切れてから暫くすると、先日ゼオン達が足を踏み入れた小さな町が見えてきた
現場付近にたどり着くとゼオン達三人は車を降りて周囲を確認するが、人っ子一人見当たらず、まるで時間が停止しているかのような寂れた雰囲気が漂っている
「誰もいないね」
「ああ」
争った形跡が見当たらなかったからこの付近の住民達は事件を聞いておそらく避難したのであろう
「とにかく、先を急ごう!」
「りょーかい」
「…」
一通り辺りを見渡した後、三人は目的地の森の麓まで周囲に気を配りながら駆け足で進む
やがて目的地にたどり着くと報告どおり『ピーヌス』が群れを成しているのを発見すると、息を潜めるように一旦物陰に隠れる
顔を覗かせて様子を見たところ、その数はおよそ15体くらいで何をする訳でも無く辺りをうろついていた
そしてその足元の中には…
「オッチャン!?」
ゼオンがそう叫ぶと、一目散に飛び出して『ピーヌス』の前へと駆け込む
「ちょっ、ゼオ姉!?」
「!?」
セレーラルとマレーシャがゼオンの突拍子もない突撃に驚いて、その先へと視線を向けるとあらゆるところに大きな損傷を負った貨物自動車と、ゼオンとアーシェリ、シェリエールが担当した先日における任務の依頼主だった初老の男性が倒れていた
物陰から直ぐに飛び出したゼオンは両掌に黒塗りで赤いラインを所々に描かれた大剣二本ーーー
『クリムゾンレッド』を何もないところから取り出して男性から近い『ピーヌス』から斬りかかる
赤い残光を残しながら、それぞれの剣でで一体ずつ斬り伏せると、手に持っていた『クリムゾンレッド』を消して直ぐに男性を抱えたまま後ろへと跳躍するように後退した
「キキキキキ……」
ゼオンの襲来に気づいた残りの『ピーヌス』は奇妙な呻き声をあげながら一斉に獰猛な獣のようにゼオンを猛追するも、飛び引いたゼオンと入れ替わるように今度は緑色のラインを帯びた両刃に幾つもの鋭角がある黒塗りの大剣ーーー
『ヴェデュールリーフ』を提げたマレーシャが体を拗らせて回転しながら周囲の『ピーヌス』に斬り込んでいく
更にマレーシャから離れた位置で彼女を取り囲もうとする『ピーヌス』を水色のラインが入ったそれぞれ形の違う黒い二丁拳銃『オブロンズスカイ』を構えたセレーラルが銃口から水色の光線を乱射して、次々と『ピーヌス』を撃ち抜いていく
「つっ!!」
「ギジジッ…!!」
最後の一体にマレーシャが倒すと、セレーラルとマレーシャは直ぐにゼオンの元へと駆け寄る
「ゼオ姉、その人…」
「ああ、よかった…外傷は殆どない。
気絶しているだけだ」
気絶した男性をゆっくりと床に横たわらせて、見たところ多少なりとも打撲の後はあるが、特に大事に至る心配が無いことを確認したゼオンは心の中でホッと胸を撫で下ろす
「念のために病院で安静ーーー」
「ゼオンお姉さん、セレーラルお姉さん!」
どんな時でも滅多に喋らないマレーシャに言葉を遮るように呼びかけられた二人は外を警戒しているマレーシャを見上げる
マレーシャは顔をしかめながら森の方角を見つめており、それに釣られて二人も同じ方向を見るが特に変わったことはない
「いる……凄いのが、いる…」
特に何かが見えるわけでは無いのだが、マレーシャが呟くのと同時に視線の先からとてつもなく強烈な圧力が放たれているのを二人も感じ始めていた
「ゼオ姉…これって…」
「ああ…上級悪魔のご登場ってやつさ…」
屈んで男性を抱き寄せたゼオンはセレーラルに男性を預けると再び二本のクリムゾンレッドを取り出し、マレーシャと横並びになって剣を構えて森の方を見据える
「セレーラル、オレとマレーシャで相手を押さえるからお前は先にオッチャンを安全な所まで運んでやってくれ」
「…了解…」
ゼオンに男性の身柄の安全を頼まれたセレーラルは男性を抱き抱えて立ち上がると、すぐにその場を離れた
その場に残った二人の目線の先に相手のシルエットが森の中から徐々に浮き彫りになっていく
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
月は夜をかき抱く ―Alkaid―
深山瀬怜
ライト文芸
地球に七つの隕石が降り注いでから半世紀。隕石の影響で生まれた特殊能力の持ち主たち《ブルーム》と、特殊能力を持たない無能力者《ノーマ》たちは衝突を繰り返しながらも日常生活を送っていた。喫茶〈アルカイド〉は表向きは喫茶店だが、能力者絡みの事件を解決する調停者《トラブルシューター》の仕事もしていた。
アルカイドに新人バイトとしてやってきた瀧口星音は、そこでさまざまな事情を抱えた人たちに出会う。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
クールキャラなんて演じられない!
参
恋愛
プレイしていた乙女ゲームのヒロイン・ステッラベッラとヒーロー・サルヴァトーレとパソコン越しに話せるようになってしまった社会人歴そこそこのオタクの知輝(チアキ)。
そんなファンタジーを受け入れて楽しんでいたある日、彼女は交通事故で死亡し、見目麗しい令嬢に転生…というよりも転移された。そこはパソコン越しに話していたステッラベッラ達がいる乙女ゲームの世界。転生(転移)の大元の原因で身体の主である令嬢オリアーナ・テゾーロ・ガラッシアは自ら命を絶つためにチアキに身体を譲った、はずだった。チアキはオリアーナを見過ごす事が出来ず、力づくでオリアーナを彼女の世界に留めた。
そしてチアキはオリアーナとして過ごす事で彼女が抱える問題を目の当たりにし、それを持ち前の力技で解決していく。
1章はオリアーナの周囲の状況を解決していくヒューマンドラマ風、2章はオリアーナ(中身チアキ)の恋愛ものでお送りします。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる