エンゼルローズ

RASHE

文字の大きさ
上 下
11 / 56
第1話 始まりの事件

始まりの事件 10

しおりを挟む

ひとまずゼオンは目前のロングテーブル上の中央に赤い薔薇の花飾りが刺さったガラス瓶の手前に会社で手渡されたレポート用紙を取り出して置くと椅子に腰を掛けて、テーブルに置いてあるボールペンを手に取った

同時にその反対側に腰を掛けた四女セレーラルが、部屋に入ってきたゼオンとキルバレン、アウリの三人の顔を見渡した後、ソファーの上で膝を立てて両手を前に投げ出した姿勢でゼオンに目線を合わせる


「そういえばゼオ姉、アーシェリとシェリーはどうしたの?」

「ああ、あいつらは風呂入りに行ったぞ。
電気がついていなかったから誰も入っていないみたいだったからな」


なんでもないようにレポートに目を通し始めたゼオンは何気なく答えるが、対してセレーラルは目を丸くして更に問いかける


「あれ、そうなの?ついさっきマレーシャが入りにいったはずだったけど?」

「マジか!?」


驚きながらもゼオンが右手のボールペンを手の中で遊ばせてると、消灯しているはずの浴室の方から「おい、おまえなんでいるんだ!」とシェリエールの慌しい声が響いてきた


「どうやら本当みたいだな…二人入る分にはちょうどいいんだが、三人だとちょっと狭いんだよな」

「しかし、なんでまた電気をつけずに入ってるんだろうかね~」


頬に右手をつけたセレーラルがテーブルに右肘を立てた後ろで、ゲームのコントローラーから手を離してテレビゲームをやめていたフィオリンとルリアはテレビ画面にニュース番組を映す

テレビ画面がニュースに映り代わっている事に気づいたゼオンは帰宅途中に立ち寄った封鎖区間の事件を思い出し、レポートを書くために手に持っていたペンを一旦テーブル置いた

もしかしたらさっきの事件の内容がーーー

と思っているとき、グラスにお茶を注いだキルバレンがゼオンが座っている席の前にお茶を置いてジト目でゼオンに話かける


「姉さん、レポートを書くのはいいことですが、先ずは着替えて下さい」

「おっと、すまんすまん」


キルバレンに注意されるまで自分が戦闘服のままでいたことをうっかり忘れていた為、ようやくその事実に気づいたゼオンは着替えに行こうと慌てて立ち上がる


そのまま寝室に戻ろうと部屋のドアノブに手をかけたその時、テレビ画面に映るニュースキャスターが先ほどの封鎖区間における事件を放送した


『第一支部市静環通りで今夜8時、人通りが少ない裏道にて男性の遺体が発見されました。』

「姉さん、これって…」

「ああ…」


ニュースの冒頭を聞いたゼオンは手にかけたドアノブから手を離し、同様にその事件を知っているキルバレンと並んで聞き漏らす事がないよう、ニュースを注視する


『男性は腹部を刺された状態で倒れており、第一発見者によって通報を受けて救急隊が駆けつけ、病院に運ばれましたが、既に亡くなっていました』


感情を出さず事務的に事件内容が読み上げられる中、ゼオンやキルバレンはもちろん、割と近所で事件が発生したこともあって先ほどの団欒とした空気が嘘だったかのように他の四人も誰一人喋ることなく真剣な顔でテレビ画面に釘付けになっていた

現場の張り巡らされた厳戒態勢を確認して、なんとなく感づいていたゼオンは、身近で起きた殺人事件に少し衝撃を覚えながらも話の続きを聞き入ろうとするが、画面内のニュースキャスターは更に信じられない言葉を発した

『亡くなった男性は国の公務員である第五支部長のライマルカ・エクスワード部長58歳。
男性は発見される午後7時30分………』


ゼオン達の身近で起きた殺人事件、不可思議な『ピーヌス』の群れの出現、そして天使の存在ーーこれらの現象はこれから起こる事件の始まりの事件
全てが繋がった先、時代を跨いだ未曾有の大事件が勃発する
ゼオン達が知らない間に、その歯車は既に動き始めていたーー
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する

美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」 御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。 ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。 ✳︎不定期更新です。 21/12/17 1巻発売! 22/05/25 2巻発売! コミカライズ決定! 20/11/19 HOTランキング1位 ありがとうございます!

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

処理中です...