2 / 2
第2話過去
しおりを挟む
シャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワシャワ
ー小6の夏ー
ハァハァ・・・
俺は自転車をこいでいた。
「ちくしょう・・・」
「なんで俺がパシリにされなきゃいけねぇんだよ」
小学生の頃、俺は何かにつけて物を奢らされていた。
急にじゃんけんを申し込んできたと思えば
最初はパー!
なんて卑怯な真似で勝ち負けを決め、俺に物を奢らせていた。
そんなの断ればよかったかもしれないけど
当時の俺にとってはそのやりとりですら面倒に感じていた。
というか断っても買わされていたと思う。
だけど後になっていつも思うのだった。
腹が立つと。
今日の注文はコーラを買って来いとのことだった。
しかも、ちまたでうわさされている限定品のコーラだ。
俺が住んでいる静岡の田舎町じゃあそんなものは
見たことがなかった。
「きっと隣町のスーパーだろうな・・・」
照りつける夏の暑さにひぃひぃ言いながらも
自転車をこいだ。
今は夏休み。
流石に田舎町でもいつもよりは車通りが増える。
時たま見る観光客は一体何を見に来ているのかいつも不思議に思っていた。
編集メールで編集画像を追加削除
ここにページを追加
ここに章を追加
4ページ
そんなことを考えながら自転車をこぎ続けていると
川原まで来た。
「夏といえど川原の方は少しばかりか風が涼しいや」
おかげでちょっとだけ元気が出た。
「コーラを買ったらさっさと帰ってゲームでもしよう。」
ゲームのことを考えているときの俺は少し気持ちが悪いらしく
近所の拓海《たくみ》兄さんがいうには口角が少し上がっているらしい。
普段笑わないからか余計に気持ち悪いみたいだ。
「あぁ~なんでこんな田舎なんだ~!」
思わず愚痴がこぼれる。
独り言を言っても周りに人がいないので聞かれる心配はほとんどない。
唯一そこだけが田舎の取柄なのかもしれないな。
「あっ、朝陽《あさひ》じゃない」
「えっ」
俺は思わず振り返る。
「やっぱり朝陽じゃん。なにしてんのこんな所で」
短めで少し茶色がかった髪が太陽に透けてみえる。
美晴《みはる》だった。
彼女は隣のクラスだけど、去年は同じクラスだったためよく絡まれていた。
「なんで固まってんの?」
「あっいや、びっくりして。」
そりゃ、ビックリもする。
独り言を言っていたのだから。
「さっきなんかぶつぶつ言ってたけどなんて言ってたの?」
聞かれていた。
「え?いや、別に」
「ほんと?ま、いいや。」
美晴は問い詰めようとしない。
「美晴はなにしてるの?」
俺は逆に質問してみた。
「あたし?」
「あたしはさ、その散歩だよ」
その時俺は美晴からどこか焦りを感じた。
「散歩?こんなクソ暑い日にか?」
「そうよ。いいじゃない。」
「ちょうどコーラが飲みたくなって息抜きがてら外に出たのよ。」
美晴の右手には確かにコーラがあった。
ん?なんだあのコーラ。
見たことない色のラベルとキャップだ。
もしかしてこれが噂の限定コーラなのか!?
「おい、美晴」
「な、なによ。そんなにあたしが散歩してるのがおかしいって言いたいの?」
「ちげぇよ」
「じゃあなによ」
「その手に持ってるコーラ見せてくれないか」
美晴はむっとした顔でコーラを隠した。
「そうやって飲む気でしょ!」
「ちげぇよ!」
「そのコーラって限定のやつかと思ってさ」
「あー、なに?あんたもこれ買いに来たの?」
「まあ、そんなところだ。」
「わざわざ自転車で大変ね。」
美晴は人を馬鹿にするとき口がとがる。
「わざわざってそれこの町じゃ買えないだろ。」
「へ?」
美晴は拍子抜けした顔をしていた。
「あんたさぁ。」
「なんだよ」
「ここまでくる間に自販機あったよね?」
確かにあった。
だが限定品なんてそれこそわざわざ業者が自販機に
補充しに来るわけがないと思っていた。
「うそだろ。」
「嘘じゃないわよ。」
美晴がスッと指をさす。
その方向には自動販売機がおいてあった。
「みてみなさい。」
そこには見たこともない、いや美晴の手に抱えてあるコーラそのものがあった。
「まじかよ。」
美晴が拍子抜けしたのも納得できる。
「なんで気づかなかったわけ?」
「あると思うわけないだろこんな田舎に」
「その固定概念がいけないのよ」
ぐうの音も出ない。
確かに俺の固定概念がなければ自販機を見ていただろうし
そうすれば早く家に帰ってゲームもできただろう。
ピッ
ガシャン
「あ、ちなみに」
「なんだよ」
美晴は何かを言いかけてやめた。
「いやなんでもない。」
「へんなやつ」
俺はバッグに入れてチャリをこぎ始めた。
「じゃあな」
俺が小さく呟くと美晴がでかい声で
「またねでしょ!」
と言った。
これは去年から始まったお決まりの流れだった。
「それにしてもあいつ、何を言おうとしてたんだろう。」
ー小6の夏ー
ハァハァ・・・
俺は自転車をこいでいた。
「ちくしょう・・・」
「なんで俺がパシリにされなきゃいけねぇんだよ」
小学生の頃、俺は何かにつけて物を奢らされていた。
急にじゃんけんを申し込んできたと思えば
最初はパー!
なんて卑怯な真似で勝ち負けを決め、俺に物を奢らせていた。
そんなの断ればよかったかもしれないけど
当時の俺にとってはそのやりとりですら面倒に感じていた。
というか断っても買わされていたと思う。
だけど後になっていつも思うのだった。
腹が立つと。
今日の注文はコーラを買って来いとのことだった。
しかも、ちまたでうわさされている限定品のコーラだ。
俺が住んでいる静岡の田舎町じゃあそんなものは
見たことがなかった。
「きっと隣町のスーパーだろうな・・・」
照りつける夏の暑さにひぃひぃ言いながらも
自転車をこいだ。
今は夏休み。
流石に田舎町でもいつもよりは車通りが増える。
時たま見る観光客は一体何を見に来ているのかいつも不思議に思っていた。
編集メールで編集画像を追加削除
ここにページを追加
ここに章を追加
4ページ
そんなことを考えながら自転車をこぎ続けていると
川原まで来た。
「夏といえど川原の方は少しばかりか風が涼しいや」
おかげでちょっとだけ元気が出た。
「コーラを買ったらさっさと帰ってゲームでもしよう。」
ゲームのことを考えているときの俺は少し気持ちが悪いらしく
近所の拓海《たくみ》兄さんがいうには口角が少し上がっているらしい。
普段笑わないからか余計に気持ち悪いみたいだ。
「あぁ~なんでこんな田舎なんだ~!」
思わず愚痴がこぼれる。
独り言を言っても周りに人がいないので聞かれる心配はほとんどない。
唯一そこだけが田舎の取柄なのかもしれないな。
「あっ、朝陽《あさひ》じゃない」
「えっ」
俺は思わず振り返る。
「やっぱり朝陽じゃん。なにしてんのこんな所で」
短めで少し茶色がかった髪が太陽に透けてみえる。
美晴《みはる》だった。
彼女は隣のクラスだけど、去年は同じクラスだったためよく絡まれていた。
「なんで固まってんの?」
「あっいや、びっくりして。」
そりゃ、ビックリもする。
独り言を言っていたのだから。
「さっきなんかぶつぶつ言ってたけどなんて言ってたの?」
聞かれていた。
「え?いや、別に」
「ほんと?ま、いいや。」
美晴は問い詰めようとしない。
「美晴はなにしてるの?」
俺は逆に質問してみた。
「あたし?」
「あたしはさ、その散歩だよ」
その時俺は美晴からどこか焦りを感じた。
「散歩?こんなクソ暑い日にか?」
「そうよ。いいじゃない。」
「ちょうどコーラが飲みたくなって息抜きがてら外に出たのよ。」
美晴の右手には確かにコーラがあった。
ん?なんだあのコーラ。
見たことない色のラベルとキャップだ。
もしかしてこれが噂の限定コーラなのか!?
「おい、美晴」
「な、なによ。そんなにあたしが散歩してるのがおかしいって言いたいの?」
「ちげぇよ」
「じゃあなによ」
「その手に持ってるコーラ見せてくれないか」
美晴はむっとした顔でコーラを隠した。
「そうやって飲む気でしょ!」
「ちげぇよ!」
「そのコーラって限定のやつかと思ってさ」
「あー、なに?あんたもこれ買いに来たの?」
「まあ、そんなところだ。」
「わざわざ自転車で大変ね。」
美晴は人を馬鹿にするとき口がとがる。
「わざわざってそれこの町じゃ買えないだろ。」
「へ?」
美晴は拍子抜けした顔をしていた。
「あんたさぁ。」
「なんだよ」
「ここまでくる間に自販機あったよね?」
確かにあった。
だが限定品なんてそれこそわざわざ業者が自販機に
補充しに来るわけがないと思っていた。
「うそだろ。」
「嘘じゃないわよ。」
美晴がスッと指をさす。
その方向には自動販売機がおいてあった。
「みてみなさい。」
そこには見たこともない、いや美晴の手に抱えてあるコーラそのものがあった。
「まじかよ。」
美晴が拍子抜けしたのも納得できる。
「なんで気づかなかったわけ?」
「あると思うわけないだろこんな田舎に」
「その固定概念がいけないのよ」
ぐうの音も出ない。
確かに俺の固定概念がなければ自販機を見ていただろうし
そうすれば早く家に帰ってゲームもできただろう。
ピッ
ガシャン
「あ、ちなみに」
「なんだよ」
美晴は何かを言いかけてやめた。
「いやなんでもない。」
「へんなやつ」
俺はバッグに入れてチャリをこぎ始めた。
「じゃあな」
俺が小さく呟くと美晴がでかい声で
「またねでしょ!」
と言った。
これは去年から始まったお決まりの流れだった。
「それにしてもあいつ、何を言おうとしてたんだろう。」
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
隣の席の美少女お嬢様の彼氏のフリをした日から、何故かお嬢様が甘々に
月姫乃 映月
青春
放課後、周りの生徒は、友達とショッピングモールやゲームセンターに出掛けようと話し合っている。
けれど俺――八神遥翔(やがみ はると)は未だにクラスに馴染めずにいるせいか、お誘い何てないと思ったが――
「ちょっと今から付き合ってほしい所があるのだけれど……」
隣の席のお嬢様、桜咲愛菜(おうさか まな)が俺にそう話しかけてきた。
「付き合ってほしいところ?」
「近くのカフェに一緒に行ってほしいの」
そして愛菜は俺にとあるパフェに写真を見せてきた。
「これが食べたいのか?」
「そうなの、でもこれカップル限定なの。だから私の彼氏のフリをしてほしいの」
「……は? 彼氏のフリ? 俺が?」
雪と桜のその間
楠富 つかさ
青春
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。
主人公、佐伯雪絵は美術部の部長を務める高校3年生。恋をするにはもう遅い、そんなことを考えつつ来る文化祭や受験に向けて日々を過ごしていた。そんな彼女に、思いを寄せる後輩の姿が……?
真面目な先輩と無邪気な後輩が織りなす美術部ガールズラブストーリー、開幕です!
第12回恋愛小説大賞にエントリーしました。
光属性陽キャ美少女の朝日さんが何故か俺の部屋に入り浸るようになった件について
新人
青春
朝日 光(あさひ ひかる)は才色兼備で天真爛漫な学内一の人気を誇る光属性完璧美少女。
学外でもテニス界期待の若手選手でモデルとしても活躍中と、まさに天から二物も三物も与えられた存在。
一方、同じクラスの影山 黎也(かげやま れいや)は平凡な学業成績に、平凡未満の運動神経。
学校では居ても居なくても誰も気にしないゲーム好きの闇属性陰キャオタク。
陽と陰、あるいは光と闇。
二人は本来なら決して交わることのない対極の存在のはずだった。
しかし高校二年の春に、同じバスに偶然乗り合わせた黎也は光が同じゲーマーだと知る。
それをきっかけに、光は週末に黎也の部屋へと入り浸るようになった。
他の何も気にせずに、ただゲームに興じるだけの不健康で不健全な……でも最高に楽しい時間を過ごす内に、二人の心の距離は近づいていく。
『サボリたくなったら、またいつでもうちに来てくれていいから』
『じゃあ、今度はゲーミングクッションの座り心地を確かめに行こうかな』
これは誰にも言えない疵を抱えていた光属性の少女が、闇属性の少年の呪いによって立ち直り……虹色に輝く初恋をする物語。
※この作品は『カクヨム』『小説家になろう』でも公開しています。
https://kakuyomu.jp/works/16817330667865915671
https://ncode.syosetu.com/n1708ip/
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣の彼女は有料。期間限定
家紋武範
青春
思い続けた女友達に告白するも撃沈。しかも、友人の恋人だったことを知りさらなる追い撃ちを受ける。
夏休み海に行く約束をした友人たちはみなカップルとなり、自分だけ蚊帳の外。ここは幼なじみの提案を受け、有料だが期間限定の彼女になって貰うしか方法はない!
楽しい青春を送るぞ。チクショー!
半分ファンタスティック?学校生活
なななのな
青春
メガネを外すと完全なる女子な中学生男子が、魔法使いに!?
すれ違う想い…ってそんな訳ないだろ!
両想いじゃなきゃすれ違わない!
すれ違う想いすらない、一方的なドキドキ片思いが止まらない!
完全素人が送るはちゃめちゃラブコメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる