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商談
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「これで病人やけが人は全員? 小さな傷とか、ちょっと調子がおかしいって人も遠慮なく来てね!」
「不調がない方とお嬢様に癒していただいた方はこちらへ。スープを用意していますので『神の御使い様万歳』か『神の御使い様に栄光あれ』と言って受け取ってください」
「ノノ!? 何を言わせようとしてるの!?」
「これは一般的な信仰ですよ? ほら、これが『お嬢様』だったり『聖女様』だったら話は変わりますが」
「あっ、そっか……ヴェントでそう呼んでくれる人がいたから勘違いしちゃった。自意識過剰だね、ごめん」
「いえ! そんなことはありません!」
ノノはフォローしてくれるけれど、あまりにも恥ずかしい勘違いに頬が熱くなるのを感じた。
きっと真っ赤だろうから見られないように俯いて深呼吸。
「おいロンド、あの聖女様ちょっとチョロすぎねぇか……?」
「ええ。ですから周囲が目を光らせ、付け入ろうとする輩を排除せねばならないのです。……仮にジグでもマリィ様を食い物にするならば全力で叩き潰します」
「馬鹿。俺はそこからは一番遠いって分かってんだろうが」
「分かっておりますよ。ですからこうして同道を許したわけですし」
ふぅ。ちょっと落ち着いたかも。
まだあっつい気がするのでパタパタ仰ぐと、ジグさんに視線を逸らされた。
「……クソ。何であんな美人なんだよ……!」
「そっちの意味でも手を出そうとしたら全力で叩き潰します」
「分かってらぁ。嬢ちゃんたちを口説くなんて恥知らずな真似できるわけねぇだろ」
さて、回復魔法が必要な人はもういないみたいだし、ノノのお手伝いしよーっと。
「何かやれることある?」
「スープを作り足したいのですが配膳の手も足りないのです。どちらかをお任せしても良いですか?」
「じゃあ配膳するね!」
レードルを受け取ると、かなり少なくなったスープをくるくるとかき回してから器に注いでいく。
うーん、食器も土魔法で作り足しておこうかな。使い捨てとはいえ人数を考えて予備まで作ったはずなのに足りないってことはおかわりしたいいっぱいいるってことだ。
残ったスープの配膳を済ませてノノが作り終えるのを待っていると、ロンドさんやジグさんとリーダー格の青年が話し込んでいるのが見えた。
深刻そうな顔なので途中から首を突っ込むのも申し訳ないし、ノノのお手伝いしよっかな。
そんなことを考えていると、ロンドさんが二人を引き連れてやってきた。
「さて、マリィ様。商談をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
「不調がない方とお嬢様に癒していただいた方はこちらへ。スープを用意していますので『神の御使い様万歳』か『神の御使い様に栄光あれ』と言って受け取ってください」
「ノノ!? 何を言わせようとしてるの!?」
「これは一般的な信仰ですよ? ほら、これが『お嬢様』だったり『聖女様』だったら話は変わりますが」
「あっ、そっか……ヴェントでそう呼んでくれる人がいたから勘違いしちゃった。自意識過剰だね、ごめん」
「いえ! そんなことはありません!」
ノノはフォローしてくれるけれど、あまりにも恥ずかしい勘違いに頬が熱くなるのを感じた。
きっと真っ赤だろうから見られないように俯いて深呼吸。
「おいロンド、あの聖女様ちょっとチョロすぎねぇか……?」
「ええ。ですから周囲が目を光らせ、付け入ろうとする輩を排除せねばならないのです。……仮にジグでもマリィ様を食い物にするならば全力で叩き潰します」
「馬鹿。俺はそこからは一番遠いって分かってんだろうが」
「分かっておりますよ。ですからこうして同道を許したわけですし」
ふぅ。ちょっと落ち着いたかも。
まだあっつい気がするのでパタパタ仰ぐと、ジグさんに視線を逸らされた。
「……クソ。何であんな美人なんだよ……!」
「そっちの意味でも手を出そうとしたら全力で叩き潰します」
「分かってらぁ。嬢ちゃんたちを口説くなんて恥知らずな真似できるわけねぇだろ」
さて、回復魔法が必要な人はもういないみたいだし、ノノのお手伝いしよーっと。
「何かやれることある?」
「スープを作り足したいのですが配膳の手も足りないのです。どちらかをお任せしても良いですか?」
「じゃあ配膳するね!」
レードルを受け取ると、かなり少なくなったスープをくるくるとかき回してから器に注いでいく。
うーん、食器も土魔法で作り足しておこうかな。使い捨てとはいえ人数を考えて予備まで作ったはずなのに足りないってことはおかわりしたいいっぱいいるってことだ。
残ったスープの配膳を済ませてノノが作り終えるのを待っていると、ロンドさんやジグさんとリーダー格の青年が話し込んでいるのが見えた。
深刻そうな顔なので途中から首を突っ込むのも申し訳ないし、ノノのお手伝いしよっかな。
そんなことを考えていると、ロンドさんが二人を引き連れてやってきた。
「さて、マリィ様。商談をお願いしたいのですが、よろしいですか?」
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