51 / 95
依頼
しおりを挟む
それから二日。
アーヴァインは未だにヴェントに逗留してるけれども、実は内緒でここまで来ちゃったらしく護衛っぽい人に怒られてからは宿屋に籠って書類仕事をしている。
ご飯時に真っ青な顔でやってきて、たくさん食べてちょっと話してまた宿屋に戻ってるんだけど、幽鬼みたいでちょっと怖い。
ご飯以外は外出さえ許してもらえないらしく、ドルツさんたちが代わりに手紙を出しに行ったり必要なものを買いに行ったりしているらしい。
「初めての友達だからって無理して会いに来なくても良いのになぁ」
まぁ直接言うのは可哀想なのでやめておく。時々回復魔法を掛けてあげてるので何とか頑張ってもらおう。四六時中かければ薄いスープを一日一食でも生きてられるのは私で実証済みだし。
「ンマー……悩んじゃってる顔してるわネ。恋? 恋かしらぁ?」
「そんなんじゃないですー」
私の前にいるのはミス・テールマンさんだ。可愛らしいフリフリのドレスを身にまとっていて、だけど野太い低音ボイスと丁寧に剃られた青髭のせいで性別不詳な洋服屋さん。
とはいえ、私とノノがいるのは”フリル&レディ”ではなく、冒険者ギルドの応接室だ。
「ごめんなさいねぇ……繋ぎとはいえギルド長代理なんて押し付けられちゃったせいで」
「いえいえ。可愛い洋服もたくさんいただいてますし」
私たちは、ギルド長代理をしているミス・テールマンさんに呼ばれたのだ。
内容は魔物の討伐依頼。
私たちは冒険者ギルドには登録してないんだけれど、顔見知りのミス・テールマンさんに頼まれてしまったのでとりあえず話を聞きに来たのだ。
「ごめんなさいねェ……ドルツちゃんとフェミナちゃんは皇太子殿下のパシリで忙しいし、アタシも動くわけにはいかなくてネ」
なんとミス・テールマンさん、元A級冒険者だった。お店を開くのに必要なお金は溜まったから、って理由で引退宣言していただけで、別に今も冒険者ではあるらしいんだけど、ユザークさんがギルド長を辞めて、後任が決まるまで代理を要請されたらしい。
頼みに来た冒険者ギルド本部の職員が好みのタイプだったから引き受けちゃった♡と言っていた。
「危ないってことはないと思うわァ。失敗しても違約金は取らないから、無理のない範囲でやってくれれば良いのよォ」
「カーバンクル、ですか」
「すばしっこい魔物ね。逃げられちゃって討伐が難しいからCランク扱いなだけで、戦闘力はほぼないわヨ?」
『肯定:種族名【カーバンクル】にはほとんど攻撃力がありません。光属性と闇属性の魔法が多少使えるため、幻術とすばやい動きで逃げ回る魔物です。知能が高くいたずら好きなので畑を荒らしたり民家にいたずらすることが多いです』
なるほど。
「ちなみに依頼元は錬金術ギルドの職員ヨ。薬草畑や保管庫を荒らされたと憤慨してたワ」
「れんきんじゅつぎるど」
「冒険者とか商人と違って試験有りの資格制だから人が少ないとこヨ。薬草とか鉱物を調べてニヤニヤしてる奴らが多いのよォ」
それってすごく変な人達なのでは……?
「研究熱心だけど初心で奥手なシャイボーイばっかりなのヨォ。ホントはアタシが行きたいくらい♡」
「……ちょっとその依頼は不安が残りますね」
「あらぁ? マリィちゃんが心配ならノノちゃんが守ってあげれば良いのよ♡」
そ・れ・と・も、と変に言葉を強調してノノを覗き込むミス・テールマンさん。
「守れる自信がないのかしらぁ?」
上目遣いになろうとして屈みこんだ拍子に、二の腕とか背中とかがバツンッて破けてた。鋼のような肉体とショッキングピンクの下着が露わになる。
「きゃっ♡ イタズラな筋肉♡」
「……お嬢様のことはたとえ魔王級の魔物が来ようと守ります。とりあえずお嬢様の精神にダメージが入る前に服を着てください」
「男の子だけじゃなくて女の子まで見惚れて理性がトんじゃう肉体美ってコト!?」
「良いから早く服着てください!」
「ンもぅ……恥ずかしがりなのねエ……!」
えっと、会話できてる……?
意味が分かってないの、私だけなのかな。ちょっと仲間外れみたいで寂しい気もするけど、なぜだかほっとする気もする。
どっちが良かったのかは判断できないけど、蒸し返すのも微妙だから黙ってよう。
「まぁ、襲ってくる度胸もないようなシャイボーイだからそんなに心配しなくても平気よォ」
アーヴァインは未だにヴェントに逗留してるけれども、実は内緒でここまで来ちゃったらしく護衛っぽい人に怒られてからは宿屋に籠って書類仕事をしている。
ご飯時に真っ青な顔でやってきて、たくさん食べてちょっと話してまた宿屋に戻ってるんだけど、幽鬼みたいでちょっと怖い。
ご飯以外は外出さえ許してもらえないらしく、ドルツさんたちが代わりに手紙を出しに行ったり必要なものを買いに行ったりしているらしい。
「初めての友達だからって無理して会いに来なくても良いのになぁ」
まぁ直接言うのは可哀想なのでやめておく。時々回復魔法を掛けてあげてるので何とか頑張ってもらおう。四六時中かければ薄いスープを一日一食でも生きてられるのは私で実証済みだし。
「ンマー……悩んじゃってる顔してるわネ。恋? 恋かしらぁ?」
「そんなんじゃないですー」
私の前にいるのはミス・テールマンさんだ。可愛らしいフリフリのドレスを身にまとっていて、だけど野太い低音ボイスと丁寧に剃られた青髭のせいで性別不詳な洋服屋さん。
とはいえ、私とノノがいるのは”フリル&レディ”ではなく、冒険者ギルドの応接室だ。
「ごめんなさいねぇ……繋ぎとはいえギルド長代理なんて押し付けられちゃったせいで」
「いえいえ。可愛い洋服もたくさんいただいてますし」
私たちは、ギルド長代理をしているミス・テールマンさんに呼ばれたのだ。
内容は魔物の討伐依頼。
私たちは冒険者ギルドには登録してないんだけれど、顔見知りのミス・テールマンさんに頼まれてしまったのでとりあえず話を聞きに来たのだ。
「ごめんなさいねェ……ドルツちゃんとフェミナちゃんは皇太子殿下のパシリで忙しいし、アタシも動くわけにはいかなくてネ」
なんとミス・テールマンさん、元A級冒険者だった。お店を開くのに必要なお金は溜まったから、って理由で引退宣言していただけで、別に今も冒険者ではあるらしいんだけど、ユザークさんがギルド長を辞めて、後任が決まるまで代理を要請されたらしい。
頼みに来た冒険者ギルド本部の職員が好みのタイプだったから引き受けちゃった♡と言っていた。
「危ないってことはないと思うわァ。失敗しても違約金は取らないから、無理のない範囲でやってくれれば良いのよォ」
「カーバンクル、ですか」
「すばしっこい魔物ね。逃げられちゃって討伐が難しいからCランク扱いなだけで、戦闘力はほぼないわヨ?」
『肯定:種族名【カーバンクル】にはほとんど攻撃力がありません。光属性と闇属性の魔法が多少使えるため、幻術とすばやい動きで逃げ回る魔物です。知能が高くいたずら好きなので畑を荒らしたり民家にいたずらすることが多いです』
なるほど。
「ちなみに依頼元は錬金術ギルドの職員ヨ。薬草畑や保管庫を荒らされたと憤慨してたワ」
「れんきんじゅつぎるど」
「冒険者とか商人と違って試験有りの資格制だから人が少ないとこヨ。薬草とか鉱物を調べてニヤニヤしてる奴らが多いのよォ」
それってすごく変な人達なのでは……?
「研究熱心だけど初心で奥手なシャイボーイばっかりなのヨォ。ホントはアタシが行きたいくらい♡」
「……ちょっとその依頼は不安が残りますね」
「あらぁ? マリィちゃんが心配ならノノちゃんが守ってあげれば良いのよ♡」
そ・れ・と・も、と変に言葉を強調してノノを覗き込むミス・テールマンさん。
「守れる自信がないのかしらぁ?」
上目遣いになろうとして屈みこんだ拍子に、二の腕とか背中とかがバツンッて破けてた。鋼のような肉体とショッキングピンクの下着が露わになる。
「きゃっ♡ イタズラな筋肉♡」
「……お嬢様のことはたとえ魔王級の魔物が来ようと守ります。とりあえずお嬢様の精神にダメージが入る前に服を着てください」
「男の子だけじゃなくて女の子まで見惚れて理性がトんじゃう肉体美ってコト!?」
「良いから早く服着てください!」
「ンもぅ……恥ずかしがりなのねエ……!」
えっと、会話できてる……?
意味が分かってないの、私だけなのかな。ちょっと仲間外れみたいで寂しい気もするけど、なぜだかほっとする気もする。
どっちが良かったのかは判断できないけど、蒸し返すのも微妙だから黙ってよう。
「まぁ、襲ってくる度胸もないようなシャイボーイだからそんなに心配しなくても平気よォ」
0
お気に入りに追加
712
あなたにおすすめの小説
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
全てを奪われ追放されたけど、実は地獄のようだった家から逃げられてほっとしている。もう絶対に戻らないからよろしく!
蒼衣翼
ファンタジー
俺は誰もが羨む地位を持ち、美男美女揃いの家族に囲まれて生活をしている。
家や家族目当てに近づく奴や、妬んで陰口を叩く奴は数しれず、友人という名のハイエナ共に付きまとわれる生活だ。
何よりも、外からは最高に見える家庭環境も、俺からすれば地獄のようなもの。
やるべきこと、やってはならないことを細かく決められ、家族のなかで一人平凡顔の俺は、みんなから疎ましがられていた。
そんなある日、家にやって来た一人の少年が、鮮やかな手並みで俺の地位を奪い、とうとう俺を家から放逐させてしまう。
やった! 準備をしつつも諦めていた自由な人生が始まる!
俺はもう戻らないから、後は頼んだぞ!
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います
騙道みりあ
ファンタジー
魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。
その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。
仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。
なので、全員殺すことにした。
1話完結ですが、続編も考えています。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる