【完結】最強ロリ聖女のゆるゆりグルメ紀行

吉武 止少

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強襲

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 私の目が覚めたのは、カンカン、と耳障りな音が響いていたからだ。
 大樹林方面を見張る鐘楼で、誰かが合図を出しているのだ。

「……お目覚めですか」
「おはよ……うん? ノノ、その手は?」
「あ、いえ。ちょっとけがを——」

 言い切る前に、包帯が巻かれた両手に回復魔法を飛ばす。たっぷり寝たからかチョウシハバッチリ。
 カッと魔力が弾けて、けがを治した手応えが返ってきた。

「まだ痛い?」
「いえ、ありがとうございます」

 ぱらりと包帯を解くけれど、ノノの手には傷も痕も見当たらない。きちんと治せたようだ。

「それで、この音は?」
「どうやら魔物の襲撃みたいです」
「ええ? 大丈夫なの?」
「有能な冒険者さん達が総出で街の外に向かっていたのできっと大丈夫でしょう」

 あ……これ絶対に怒ってる。
 ノノの言う”冒険者さん”はフェミナさんやドルツさんの事じゃなくて、ユザークさんとか嘘つき冒険者のことだろう。

「朝食は何か召し上がられますか?」
「ご飯……ごめん、ちょっと食べれそうにないや」

 たくさん食べた割にお腹いっぱいって感じでもないんだけれど、何か妙に気持ち悪かった。ノノが気遣わしげに私を伺いながら、冷たいハーブティーを用意してくれた。
 レモンの香りがする爽やかなそれをこくんと飲めば、胃が熱を持っているのが分かった。

「なんだろ……ノノ、昨日って最後のほう何があったの?」
「お嬢様は疲れて眠ってしまわれました」

 うーん。そんな感じじゃないんだけど。
 じーっとノノを見つめていたら、深紅の瞳が逸らされる。何か隠し事があるんだね。

「ノノ」
「……」
「ノノ、お願い」

 ごり押しおねだりで聞き出したところによると、私はドルツさんと握手しようとしてぶっ倒れたらしい。それも、食べたものを全部戻しながら。

「……あ、謝りにいかないと」
「残念ながら冒険者は魔物対応で街の外です」
「じゃ、じゃあ陣中見舞い的な」
「お嬢様や私が向かっても負担にしかならないと思います」
「いや、普通にけがしてる人がいるかもしれないし」
「か弱くてメタルリザードも倒せない私たちが行ったら、冒険者さんたちも負担だと思います」

 大樹林で私の魔法が大活躍しているのは見てるし、どう考えても本心じゃない。
 メタルリザードのこと、予想以上に怒ってる。
 
「えっと、私はもう気にしてないよ? ロンドさんに取りなしてもらったし」
「いいえ! あの愚か者どもはお嬢様に謝罪していません! 魔物にぼこぼこにされてからお嬢様の偉大さを思い知って土下座すればいいのです!」
「本当に気にしてないんだけどなぁ」
「私が気にします! きちんと頭を下げさせるべきです」
「なら、謝ってもらうまでは元気でいないとね」

 私がぴょん、とベッドから降りれば、ノノは不満そうにしながらもお供します、と言ってくれた。
 嬉しかったのでにっこり笑いかけたら、何故か頭を撫でられた。気持ちいいし得した気分。

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