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第39話 望み
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「喋らないでください! 竜の精霊様は怒っています!」
「ソフィアさん。精霊様は何と? 何をお望みなのですか?」
(ええっと……何て言えば良いの……!?)
誰もがソフィアに注目していた。スカーレットの問いかけに口ごもったソフィアに代わり、今まで傍観者と化していた王太子アルフレッドが口を開いた。
「聞くまでもない。フィーネの命だろう」
「何を平然と! あなたの婚約者なのですよ!」
「分かっております、母上。私なりに、最善を尽くしますので見ていてください」
フィーネの言動を黙認していたアルフレッドが何をするのか。
全員の視線が集まる。当然ながら、好意的ではないものが多く、エルネストも射殺さんばかりに唸っていた。
「睨まないでくれ。一応、エルとソフィア嬢のためになることをするのだから」
アルフレッドは飄々とした態度でフィーネに近づいていく。炎と氷の槍を突きつけられて真っ青な顔をしたフィーネに寄り添うように立つと、エルネストに視線を向けた。
「フィーネが私利私欲のために動いたのは間違いないが、正論でもあるぞ?」
「義母上も仰っていた通り、貴族憲章は権力者から平民を守るためのものだろう。平民を傷つけるならば無効で良いはずだ」
「エルとの婚姻に関してじゃない」
アルフレッドは意地の悪い笑みを浮かべた。
「『精霊の御子は宮殿にて保護される』。これもまた貴族憲章の決まりだ」
ソフィアがその言葉に反応し、エルネストの裾を掴んだ。
その手は小さく震えている。
脳裏に浮かんだ宮殿に閉じ込められた祖母。それがトラウマとなってソフィアを襲っていた。
ぐる、と竜が小さく唸ったところでエルネストが質問を飛ばす。
「ソフィアを宮殿に閉じ込めるおつもりですか?」
「違う。そう怖い顔をするな」
アルフレッドはソフィアに向き直ると頭を下げた。
「迷惑をかけっぱなしですまない。そちらにいる竜の精霊様と交渉をさせてほしい」
ソフィアが尋ねるまでもなく、竜が鼻を鳴らした。不快であることを隠そうともしない。
「覚悟を示せ。さもなくば言葉を交わす価値すらない」
それきりムスッと黙り込んでしまったので、ソフィアは仕方なくそれをそのまま伝えた。
何をもって覚悟を示したとするのかが分からず戸惑っていれば、アルフレッドは大きく頷いて、
「これが私の覚悟だ。ご覧いただこう」
フィーネを取り囲んでいた氷槍を思い切り握りしめた。
びしり、と罅が入るような音とともにアルフレッドの手に霜が降りる。強烈な冷気によって皮膚が凍り付き、色を失っていく。
あまりの出来事に周囲が言葉を失うが、アルフレッドは悲鳴一つ上げなかった。歯を食いしばり、脂汗を流しながらも耐え切り、呼吸を整えてから訊ねる。
「……ソフィア嬢。精霊様に覚悟はお見せできただろうか?」
『ふん……話すだけ話せ』
エルネストとソフィアには忖度するが、竜としてはそれ以外に気を遣うつもりなどさらさらなかった。
しかし竜は自らの氷槍が生半可なものではないことを知っていた。あらゆる生命の灯を消すのに充分な力の結晶だ。胴に直撃したわけでなくとも、その痛みも被害も到底耐えられるものではない、と自負している。
間違いなく、アルフレッドの腕は二度と使い物にならないはずだ。
自らの手を犠牲に、しかし悲鳴の一つも漏らさなかった人間を、多少なりとも認めたようだった。
ソフィアが頷いたところで、アルフレッドは氷槍を握りしめたまま口を開いた。
「私の王位継承権をそなたに譲る。王位に就き、貴族憲章を改正せよ」
貴族憲章の改正。
貴族や王族を縛るために存在するルールを、王族と貴族とで変える。それはつまり、精霊の御子を宮殿に縛り付ける規則や、エルネストとソフィアの婚姻を阻む障害を排除できるということだ。
確かにエルネストが国王となれば可能かも知れなかった。
もちろんそれは簡単なことではない。不備があれば苦しむのは民だし、絞め付け過ぎれば政治が立ち行かなくなる。
かといって玉座に就いた者が私利私欲のために変更するなんてことがまかり通ってしまえば貴族憲章の存在意義が消えてしまう。
粘り強さに頭脳、そして強力な求心力。
どれが欠けていても失敗するほどの難事だった。
「簡単に言ってくれるな……」
「では、断るか?」
「答えなんて分かっているでしょうに。それで、義兄上の望みは?」
「我が婚約者フィーネの命を助けてはくれ」
「本気ですか。フィーネ嬢の命を王位と交換にすると」
エルネストの問いはフィーネの命を軽視したものではない。今まで義兄が王族としてどれほど努力を重ねたて公務に取り組んできたかを知っているからこその問いだ。
それまでの積み重ねを捨てるのか、という問いににアルフレッドは頷いた。
「私が必死に王太子の座にしがみついていたのは、好きな女性のためだ。だからこうして彼女を救える」
「なるほど」
頷いたエルネストはソフィアに視線を移した。
「俺もソフィアとその他の全てを天秤に掛けたらソフィアを選ぶ。だから義兄上の気持ちは分かる。精霊たちを説得することはできるか?」
「はい」
ソフィアは竜に向き直った。
今にも吼えださんばかりに不機嫌な竜を収める。
精霊の御子でなければ出来ないことだった。
「いと畏き精霊にお願い申し上げます」
古ノルド語での言葉に空気が変わった。
『述べよ』
「人の営みの中での不始末、人の中で決着をつけたく存じます。怒りを鎮め、矛を収めてはいただけないでしょうか」
『ならん。我の感じた不快の代償は我が取り立てる』
「それをしたとて、何が残りましょう。人など歯牙にも掛けぬ強大なる精霊が、なぜただ一人の人間の命をそこまで欲するのですか」
『そこの小娘の薄汚い星幽なぞ欲してはおらぬ』
だが、と竜は続ける。
『我の世に不要なゴミを一つ消すのに、何の配慮が要る?』
「精霊よ。あなたには大切な存在はいないのですか? 命を賭しても守りたいと思う者は」
『我が愛し子がそうだな。あの星幽には惹かれる』
「では、フィーネさんも、」
『あれは脆く歪で、淀んでいる。価値などない」
断言した竜に、ソフィアの目の色が変わった。
闘志を滲ませた彼女は、真正面に竜を捉えて姿勢を正した。
「私は、実家ではメアリのオマケでした。父にも妹にも要らないものとして扱われ、侍女からもハズレと認識されていました」
『……?』
「ですが、エルネスト様は私を見てくださいました。離さないと約束して抱きしめてくださいました。ずっと傍にいると言ってくださいました」
ソフィアの目から、一筋の涙が零れた。
「あなたにとってどうでも良い人でも、誰かにとっては大切な人かもしれないじゃない! 現にアルフレッド様は全てを捨ててフィーネさんを救おうとしているわ!」
怒りのあまりに涙が止まらなくなったソフィアは、堰を切ったように言葉の奔流をぶちまけた。
「どれほど力があっても、理不尽に誰かの愛する人を奪っていいなんてことはありえないわ! 誰からも愛されない人なんていないもの! 何百年も生きてきてそんなことも分からないの!?」
ソフィアはボロボロと涙を零した。
「誰からも愛されてないなら、きっとその人はまだ、出会えてないだけだわ」
『出会う? 誰に?』
「本当に、愛してくれる人に。――私がそうだったもの」
涙を零しながら、しかしソフィアは俯くことも視線を逸らすこともしなかった。
竜が大きな溜息を吐いた。ドレスが揺れるほどの息がかかり、そして竜が視線を外した。
『桁が違う』
「え?」
『我が生まれてから、4000年はとうに超えた。当然、そなたの言っていることくらい理解している』
そっぽを向いた竜の代弁者はトトだった。
『大丈夫よソフィア。素直に謝れないだけで納得してるから』
『ふん』
「ソフィアさん。精霊様は何と? 何をお望みなのですか?」
(ええっと……何て言えば良いの……!?)
誰もがソフィアに注目していた。スカーレットの問いかけに口ごもったソフィアに代わり、今まで傍観者と化していた王太子アルフレッドが口を開いた。
「聞くまでもない。フィーネの命だろう」
「何を平然と! あなたの婚約者なのですよ!」
「分かっております、母上。私なりに、最善を尽くしますので見ていてください」
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全員の視線が集まる。当然ながら、好意的ではないものが多く、エルネストも射殺さんばかりに唸っていた。
「睨まないでくれ。一応、エルとソフィア嬢のためになることをするのだから」
アルフレッドは飄々とした態度でフィーネに近づいていく。炎と氷の槍を突きつけられて真っ青な顔をしたフィーネに寄り添うように立つと、エルネストに視線を向けた。
「フィーネが私利私欲のために動いたのは間違いないが、正論でもあるぞ?」
「義母上も仰っていた通り、貴族憲章は権力者から平民を守るためのものだろう。平民を傷つけるならば無効で良いはずだ」
「エルとの婚姻に関してじゃない」
アルフレッドは意地の悪い笑みを浮かべた。
「『精霊の御子は宮殿にて保護される』。これもまた貴族憲章の決まりだ」
ソフィアがその言葉に反応し、エルネストの裾を掴んだ。
その手は小さく震えている。
脳裏に浮かんだ宮殿に閉じ込められた祖母。それがトラウマとなってソフィアを襲っていた。
ぐる、と竜が小さく唸ったところでエルネストが質問を飛ばす。
「ソフィアを宮殿に閉じ込めるおつもりですか?」
「違う。そう怖い顔をするな」
アルフレッドはソフィアに向き直ると頭を下げた。
「迷惑をかけっぱなしですまない。そちらにいる竜の精霊様と交渉をさせてほしい」
ソフィアが尋ねるまでもなく、竜が鼻を鳴らした。不快であることを隠そうともしない。
「覚悟を示せ。さもなくば言葉を交わす価値すらない」
それきりムスッと黙り込んでしまったので、ソフィアは仕方なくそれをそのまま伝えた。
何をもって覚悟を示したとするのかが分からず戸惑っていれば、アルフレッドは大きく頷いて、
「これが私の覚悟だ。ご覧いただこう」
フィーネを取り囲んでいた氷槍を思い切り握りしめた。
びしり、と罅が入るような音とともにアルフレッドの手に霜が降りる。強烈な冷気によって皮膚が凍り付き、色を失っていく。
あまりの出来事に周囲が言葉を失うが、アルフレッドは悲鳴一つ上げなかった。歯を食いしばり、脂汗を流しながらも耐え切り、呼吸を整えてから訊ねる。
「……ソフィア嬢。精霊様に覚悟はお見せできただろうか?」
『ふん……話すだけ話せ』
エルネストとソフィアには忖度するが、竜としてはそれ以外に気を遣うつもりなどさらさらなかった。
しかし竜は自らの氷槍が生半可なものではないことを知っていた。あらゆる生命の灯を消すのに充分な力の結晶だ。胴に直撃したわけでなくとも、その痛みも被害も到底耐えられるものではない、と自負している。
間違いなく、アルフレッドの腕は二度と使い物にならないはずだ。
自らの手を犠牲に、しかし悲鳴の一つも漏らさなかった人間を、多少なりとも認めたようだった。
ソフィアが頷いたところで、アルフレッドは氷槍を握りしめたまま口を開いた。
「私の王位継承権をそなたに譲る。王位に就き、貴族憲章を改正せよ」
貴族憲章の改正。
貴族や王族を縛るために存在するルールを、王族と貴族とで変える。それはつまり、精霊の御子を宮殿に縛り付ける規則や、エルネストとソフィアの婚姻を阻む障害を排除できるということだ。
確かにエルネストが国王となれば可能かも知れなかった。
もちろんそれは簡単なことではない。不備があれば苦しむのは民だし、絞め付け過ぎれば政治が立ち行かなくなる。
かといって玉座に就いた者が私利私欲のために変更するなんてことがまかり通ってしまえば貴族憲章の存在意義が消えてしまう。
粘り強さに頭脳、そして強力な求心力。
どれが欠けていても失敗するほどの難事だった。
「簡単に言ってくれるな……」
「では、断るか?」
「答えなんて分かっているでしょうに。それで、義兄上の望みは?」
「我が婚約者フィーネの命を助けてはくれ」
「本気ですか。フィーネ嬢の命を王位と交換にすると」
エルネストの問いはフィーネの命を軽視したものではない。今まで義兄が王族としてどれほど努力を重ねたて公務に取り組んできたかを知っているからこその問いだ。
それまでの積み重ねを捨てるのか、という問いににアルフレッドは頷いた。
「私が必死に王太子の座にしがみついていたのは、好きな女性のためだ。だからこうして彼女を救える」
「なるほど」
頷いたエルネストはソフィアに視線を移した。
「俺もソフィアとその他の全てを天秤に掛けたらソフィアを選ぶ。だから義兄上の気持ちは分かる。精霊たちを説得することはできるか?」
「はい」
ソフィアは竜に向き直った。
今にも吼えださんばかりに不機嫌な竜を収める。
精霊の御子でなければ出来ないことだった。
「いと畏き精霊にお願い申し上げます」
古ノルド語での言葉に空気が変わった。
『述べよ』
「人の営みの中での不始末、人の中で決着をつけたく存じます。怒りを鎮め、矛を収めてはいただけないでしょうか」
『ならん。我の感じた不快の代償は我が取り立てる』
「それをしたとて、何が残りましょう。人など歯牙にも掛けぬ強大なる精霊が、なぜただ一人の人間の命をそこまで欲するのですか」
『そこの小娘の薄汚い星幽なぞ欲してはおらぬ』
だが、と竜は続ける。
『我の世に不要なゴミを一つ消すのに、何の配慮が要る?』
「精霊よ。あなたには大切な存在はいないのですか? 命を賭しても守りたいと思う者は」
『我が愛し子がそうだな。あの星幽には惹かれる』
「では、フィーネさんも、」
『あれは脆く歪で、淀んでいる。価値などない」
断言した竜に、ソフィアの目の色が変わった。
闘志を滲ませた彼女は、真正面に竜を捉えて姿勢を正した。
「私は、実家ではメアリのオマケでした。父にも妹にも要らないものとして扱われ、侍女からもハズレと認識されていました」
『……?』
「ですが、エルネスト様は私を見てくださいました。離さないと約束して抱きしめてくださいました。ずっと傍にいると言ってくださいました」
ソフィアの目から、一筋の涙が零れた。
「あなたにとってどうでも良い人でも、誰かにとっては大切な人かもしれないじゃない! 現にアルフレッド様は全てを捨ててフィーネさんを救おうとしているわ!」
怒りのあまりに涙が止まらなくなったソフィアは、堰を切ったように言葉の奔流をぶちまけた。
「どれほど力があっても、理不尽に誰かの愛する人を奪っていいなんてことはありえないわ! 誰からも愛されない人なんていないもの! 何百年も生きてきてそんなことも分からないの!?」
ソフィアはボロボロと涙を零した。
「誰からも愛されてないなら、きっとその人はまだ、出会えてないだけだわ」
『出会う? 誰に?』
「本当に、愛してくれる人に。――私がそうだったもの」
涙を零しながら、しかしソフィアは俯くことも視線を逸らすこともしなかった。
竜が大きな溜息を吐いた。ドレスが揺れるほどの息がかかり、そして竜が視線を外した。
『桁が違う』
「え?」
『我が生まれてから、4000年はとうに超えた。当然、そなたの言っていることくらい理解している』
そっぽを向いた竜の代弁者はトトだった。
『大丈夫よソフィア。素直に謝れないだけで納得してるから』
『ふん』
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