婚約破棄感謝します!~え!?なんだか思ってたのと違う~

あゆむ

文字の大きさ
上 下
1 / 1

婚約破棄感謝します!~え!?なんだか思ってたのと違う~

しおりを挟む
「シーナ・カルヴァネル!いや、罪人シーナよ!お前は婚約者である私の愛を取られたことに嫉妬し、ラズベリー・カルヴァネルに度重なる嫌がらせだけでなく暴漢に襲わせた!!この所業は万死に値する!よって王子である私カク・バデズの名において国外追放に処す!!」

「それは、婚約破棄ということでしょうか?カク様」

「当たり前だ!本当はこの手で処刑してやりたいが、ラズがどうか命だけは助けて下さいとお前の助命を求めてきたから国外追放で許してやるのだ。感謝するんだな」

「ごめんなさい…弱いお姉ちゃんを許して……」


 そう言いながらも、殿下から見えない角度でにやつきながらこちらに侮蔑の表情を向けてくる我が姉に心底呆れる。


「分かりましたわ…では、失礼します」

「待て!追加だ。お前が自力で手に入れた物以外の持ち出しを禁ずる」

「まあ!」

「……分かりましたわ」


 私はさっさとこの場を離れるため、踵を返した。




 私は生まれた時から、前世の記憶があった。


 前世では、バリバリのキャリアウーマンだった私は、人よりかなり要領がよく所謂勝ち組と呼ばれる人種だったが、元々楽して稼ぐのが夢のめんどくさがりな性格の為、今の自分に矛盾を感じてやけ酒をしてしまったのがいけなかった。


 酔っ払った私は道路に飛び出してしまい呆気なく死んだ……らしい。


 転生後は今度こそ楽しく生きてやる!!と決意して、神様のくれたハイスペックなスキルを封印して色々な計画をたて、未来の生活を思い描いて暮らしていた。


 両親は家に居ないことが多かったが、やさしい姉と使用人達の支えで何事もなく生活出来ていた…姉の5歳の誕生日までは。


 5歳の誕生日、姉はまるで人が変わったように傲慢で周りを見下すようになった。


 姉は、2歳の私に「ふん、お前が悪役令嬢ね?せいぜいヒロインである私の踏み台になってねぇ?」と言ったあと「ふふふ…まさか乙女ゲームの『君は儚くも美しき華』のヒロインに転生出来るなんてね。やっぱり私は特別なのよ!ふふふ…アハハハハ…アーッハッハッハッハッハッ」と嬉しそうに独り言を呟いていた。


 私は乙女ゲームなんてしたことは無く、どうしようかと悩んだが姉曰わく、攻略対象とやらが居るらしいのでその人達と関わらないようにしようと決意した。


 しかし、公爵令嬢で婚約者のいなかった私はこの国の王子の婚約者にされてしまう。


 当時、同格の公爵家長男と婚約していた姉は妹の代理とうそぶいて王子にアプローチするようになった。


 こいつ頭大丈夫かと心配になったが、これはチャンスだと気づいて積極的に2人を後押しした結果、姉の婚約者は愛想を尽かして去って行った。


 姉は他の攻略対象にもちょっかいを出そうとしていたみたいだったが、私が手を回し表向きは留学で国外に逃げて貰った。


 本当は攻略対象達と関わりたくなかったのだが、私がある商会の社長をしていることがバレ、そこから仲良くなってしまったのだ。


 流石に仲の良い人達を破滅させるのは寝覚めが悪いので、危険だったがなんとか助けることが出来た。


 この国の王子は既に姉に籠絡されているし、言っちゃ悪いが頭の中がお花畑かつクズなので、見捨てさせてもらった…後悔はしてない(ゝω・)


 姉は挙げ句の果てに妹に嫌がらせを受けていると噂を流し、王子に泣きついたらしい。


 勿論、その時私はアリバイがあったのだが。


 まあ、そんな生活もようやく終わり、やっと自由に楽しく生きられると気分良く出口に向かっていたのだが、突然目の前に男性が現れ私に跪いた。


「え?」


 困惑する私をよそに、男性は私の手をとり手の甲にキスをした。


「ふふふ。やっとあなたの本当の顔を見ることが出来ました。どうか僕の妻になっては頂けないでしょうか?」

「え?えーーーー!」


 ツマ?妻!?脳がやっと男性の言葉を処理して顔が熱くなり、思わず叫んでしまった。


「な!?あなたはオスカー様!なんであなたがシーナなんかに告白してんのよ!告白するならヒロインのこのわたしにでしょ!!」


 おいおい姉よ、素が出てるぞ素が。


「はて?何故僕が君に告白しなければならないんだい?」

「何故って、あんたは攻略対象でしょ!なら無条件に私の物なんだから当たり前でしょうが!!」


 シーン


 あーあ…みんな固まっちゃってるよ?どうすんのコレ、完全にカオスだよ。


「まったく…持っているスキルと同じで随分と傲慢なやつだね?」

「っ!?な、なんであんたが私のスキルを知ってるのよ!」

「そりゃ、僕のスキル『鑑定』で見たからさ。いやー、びっくりしたよ…まさか《神の怒りを買いし者》なんて称号を持っているなんてね」

「う、嘘よ!なんでこの私が神様の怒りを買わなくちゃいけないのよ!デタラメ言うんじゃ無いわ!!」

「ふーん…心当たり無いんだぁ。理由は多分、君の持つ『強奪』ってスキルだと思うんだけどな?」

「おい!どういうことだラズ!!コイツの言っていることは本当なのか?」

「うるっさいわね!!あんたは黙ってなさいよ!!」

「ヒッ………」


 あーあ、遂にこの国の王子にまで噛みついちゃった。


「こうなったら……」

「ふふふ」

「あれ?なんで!なんでなんでなんで!!なんで奪えないの?」

「……知らなかったようだね。君の強奪のスキルには回数制限が設けられていたのさ」

「なっ!」


 姉は呆然として、その場にへたり込んでしまった。


「さて、では僕の国に行こうかシーナ」


 はい、やっぱりそうなるんですね…あ、なんで2人のやり取りの間に逃げなかったのかって?そりゃこの男性の護衛?みたいな人達に囲まれて居たからです。


 逃がす気無いなこの人(゜Д゜;)。


「えっと…なんで私?」

「君に一目惚れしたのと、君の経営してる商会に興味があったから。それと、僕はオスカー。一応隣国の王子やってる」


 そう言ってオスカー様は私をお姫様抱っこして外にとめてあった馬車に乗せると、自分達も乗り込んで隣国へと出発してしまった。


 その後、なんだかんだで私はオスカー様に籠絡されてしまい、王妃になって幸せに暮らしたのだった。


 ちなみに、カク王子と姉のラズベリーは国交を乱した罪で責任を取らされ平民にされたらしい。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

聖女召喚2

胸の轟
ファンタジー
召喚に成功した男たちは歓喜した。これで憎き敵国を滅ぼすことが出来ると。

貴様とは婚約破棄だ!え、出来ない?(仮)

胸の轟
ファンタジー
顔だけ王子が婚約破棄しようとして失敗する話 注)シリアス

品がないと婚約破棄されたので、品のないお返しをすることにしました

斯波@ジゼルの錬金飴②発売中
ファンタジー
品がないという理由で婚約破棄されたメリエラの頭は真っ白になった。そして脳内にはリズミカルな音楽が流れ、華美な羽根を背負った女性達が次々に踊りながら登場する。太鼓を叩く愉快な男性とジョッキ片手にフ~と歓声をあげるお客も加わり、まさにお祭り状態である。 だが現実の観衆達はといえば、メリエラの脳内とは正反対。まさか卒業式という晴れの場で、第二王子のダイキアがいきなり婚約破棄宣言なんてするとは思いもしなかったのだろう。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

(完)実の妹が私を嵌めようとするので義理の弟と仕返しをしてみます

青空一夏
ファンタジー
題名そのままの内容です。コメディです(多分)

母は姉ばかりを優先しますが肝心の姉が守ってくれて、母のコンプレックスの叔母さまが助けてくださるのですとっても幸せです。

下菊みこと
ファンタジー
産みの母に虐げられ、育ての母に愛されたお話。 親子って血の繋がりだけじゃないってお話です。 小説家になろう様でも投稿しています。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...