上 下
70 / 71
4章 勇者召喚編

11話 勇者2

しおりを挟む
 次々と自己紹介をしていく勇者達。


 表情やテンションはそれぞれ異なるが、だいたいの勇者は自慢気に名前と能力を言っていく。


「どう思う?」

「……どうって?」

「あの子達。警戒心0でまるで赤子だね。危機感ってものがまるで感じられない……一部を除いて、だけどね」

(そりゃ、なんて経験したこともない奴らだもんなぁ……むしろ、その一部の方が異常だよな)

「そうですね。顔合わせの時に忠告でもしましょうか?」

「ふふふ。それは良い提案だね」


 カイトの提案に満足げに頷くポトス。


「……ところで、勇者達はこれで全部ですか?」

「いや…おっと、噂をすればなんとやら…お出ましだ」


 ポトスの視線の先では、友好国の王と勇者達が会場に入って来るのが見える。


(…ふーん。やっぱり、隣のクラスの奴らかー。げっ!)

「どうかしたのかい?」

「いえ、勇者達に共通したことですが珍しい服装だなと」

「ああ、確かにそうだね。かなり上質な布で出来ているようだね」


 そう言って目を光らせるポトスに、話がずれてほっとしたカイトは改めてその人物に目を向ける。


 その人物は解斗の通っていた高校で、学年内で1、2を争う有名人であった。


(隣のクラスの奴らが召喚されていたことでほとんど確信に近い推測だけど、各国に召喚されたのはあの学校の同級生ばかりのはず。つまり、信託の下った国は全部で5ヶ国。流石にバレることは無いと思うけど、一応用心しとこ!)


 そこまで考え、ふと当然の疑問が浮上する。


(てか、推測通りならあの学校一体どうなってんだ?あと、絶対事件になるよなぁ。2年生が全員行方不明とか…さ)


 そんなことを考えている間にいつの間にか勇者達の自己紹介込みのスピーチは終わっていたようだ。


「さて、私達はパーティーが終わった後に行く予定だから、それまでは自由時間としよう。存分にパーティーを楽しんでくれよ!」

「「「(…)はい」」」


 ポトスの許しを得た3人は食べ物のおいてあるスペースを目指して歩き出す。


 いくら、小規模(この世界では)のパーティーだとはいえ迷子になっては元も子もない為、3人固まって行く。


 食べ物は立食のためか、腹持ちが良く手軽に食べることが出来るものばかりおいてある。


「うわーお。流石王宮。量と質が違うね」

「…モグモグ…ゴクンッ……うっめーー。これならいくらでも食えるな」

「…おいしい」


 ダグラスとネリネも幸せそうである。


 食べ方には本能が出るとは良く言ったもので、カイトは環境からかどこか上品に。ダグラスは両手に骨付き肉を両手に持って交互にかぶりついている。ネリネは少しずつ色んな料理を食べている。


 このパーティー会場には招待された者しか居ないため、難癖をつけてくる貴族などは居なかったが、3人をヘッドハンティングもしくは繋ぎをつけようとする貴族は多く居た。


 幸い、気づいたポトスの巧みな話術のおかげで変なことにはならなかったが、パーティーのお開きの頃にはヘトヘトになっていた。


「さて、疲れているとこ本当に申し訳ないがそろそろ時間だ。奥の部屋に移ろうか」

「「「…はい」」」


 半分夢の世界に旅立っているネリネをおんぶして、カイトもポトス達に着いていくのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

ああ、もういらないのね

志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。 それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。 だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥ たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

お飾りの聖女は王太子に婚約破棄されて都を出ることにしました。

高山奥地
ファンタジー
大聖女の子孫、カミリヤは神聖力のないお飾りの聖女と呼ばれていた。ある日婚約者の王太子に婚約破棄を告げられて……。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

処理中です...