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2章 少年期

閑話 『鬼の子』と呼ばれた少年

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     ━━━寝室━━━




(歯車はいつから狂い出したのだろう。最初の事件?それとも──)


 ベッドに寝ころんだ男が天井を見ながら考える。


 4年前、伯爵家の住む町で5歳の少年が行方不明になった事から悪夢は始まった。


 当初領民達の間では魔物に襲われたか、家出をしているのだろうと考えられ、大事にはならなかった。


 そんなある日、農民の畑から件の少年の無惨な死体が発見され、その日に雑貨屋の一家が行方不明になったことで伯爵領は大混乱に陥った。


 事件を重く見た小国は、領を治める伯爵家当主に事件の早期解決を求めた。


 当時の伯爵家当主はこれまで善政をしいてきた実績があり、領民達もこれで事件は解決すると信じ疑うことはなかった。


 しかし、いつまで経っても事件と解決はおろか、犯人の特定すらままならない。


 その間にも被害者は増え続け、領民達は謎の虐殺犯に怯え、疑心暗鬼にかられる一方であった。


 そんなある日、1人の傷だらけの青年が王都で保護された。


 その青年は保護した兵士にひたすら同じことを言い続けた。


 「虐殺犯はアスター伯爵だ」と。


 王が青年の身元を調べさせると、その青年は行方不明とされていた人物の1人だった。


 なんでも恋人と一緒に伯爵家に監禁されたが、隙を見て命からがら逃げて来たのだという。


 王は伯爵家に強制捜査を行うよう部下に命じた。


 すると青年の証言通り伯爵家の地下から大量の人体の一部が発見された。


 伯爵はその場で兵士達に取り押さえられ、王都に連れて行かれた。


 その他の伯爵家の人間達にも尋問が行われ、数人の使用人とメイドが伯爵に荷担していたことが判明する。


 幸い、伯爵夫人とその息子は事件に関わってなかったとして、爵位を子爵に落とされたうえで釈放された。


 領民達は伯爵夫人とその息子に怒りをぶつけることは無かったが、アスター子爵領を出て行く者が多発した。


 人が減った分税の取締りが難しくなり、ドンドン財政が圧迫されていく。


 周りの貴族は没落したアスター家と手を切り、孤立させていった。


 そんなアスター家の復興にいち早く名乗りを挙げたのは当時10歳のポトスであった。


 領民達はポトスを『鬼の子』と罵ったが、聞く耳を持たず次々と政策を打ち出していった。


 1年半後、ポトスは当主に就任し口の上手さで着々とコネを作り上げ、なんとか2年持たせたがそれにも限界が訪れる。


 そんなある日、ある噂を耳にする。


 なんでも、今までに類を見ない程の魔力を持った魔力槽がいるというのだ。


 しかも、あの最年少で軍隊長になった紅のギンショウの教え子でもあるという。


 ポトスは長年武力の無さで諦めていた計画を、その少年にさせることにした。


 とはいえ、仮にも侯爵家の次男だ。


 流石に没落貴族の自分が、その少年を引き取りたいと申し出てもダメだろう。


 そこで、アスター家の諜報部隊を侯爵領に潜り込ませ、機会を伺わせた。


 そして、その少年が町外れの教会で仕事をするとの情報を聞きつけ、侯爵領に入り誘拐させたのだ。


 ただ1つ計算違いだったのは、少年が想定以上の強さを持っており、事が大きくなってしまった事だった。
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