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第8話 交錯
Chapter-46
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「いや、有意義な夕食だったよ。君がProject MELONPARKに興味をもってくれるのであれば、それは喜ばしいことだ」
「まぁ、興味自体は前からありましたからね、ただまぁ、ちょっと危なっかしいなと思うところがあるのは、事実なんですけど」
食事を終え、テーブルから立ち上がりながら、アデウスと朱鷺光はそう言葉をかわす。
「やはり、Dr.左文字が我々を批判している倫理面での問題ですか」
ディートリンデがそう言った。
「まぁ、そうですね」
朱鷺光は苦笑しながら言う。
「それはお互いの倫理感の違いもありますからね。我々のチームの中には、Dr.左文字を、神の領域を侵す不届き者だと言う人間もいるくらいです」
「まぁ、実際シータを公表した時は、そう言う批判もたくさん受けましたからね。主に宗教がかった人たちから」
ディートリンデが言うと、朱鷺光は困ったような苦笑をしながら返した。
「トキヒロは無神論者というわけではないのだろう?」
「俺は日本人ですからね」
アデウスの言葉に、朱鷺光はそう答えた。
「ヤオヨロズの神々……日本人はすべての物体、すべての事象に神を見出す。それが自然物か人の作ったものであるかさえ問わない」
「ま、そんなところです」
アデウスがどこか興味深そうに言うと、朱鷺光はそう言った。
「しかしトキヒロ、君は自分が神になる意図はないかね」
「さぁ」
アデウスの言葉に、朱鷺光は口元で笑いつつも、目元を真剣なものにしながら言う。
「神になったか悪魔になったか、そんなものは後世の歴史家が決めれば良いことです」
「なるほど」
朱鷺光の発言に、アデウスは頷くようにしながら返した。
「会計お願いします」
キャッシュカウンターの前に立ち、朱鷺光はそう言って店員を呼んだ。
「全部合わせてで」
「良いのかね、これで我々は君に借りをひとつ作ってしまうことになるが」
朱鷺光が店員に言うと、背後からアデウスがそう言った。
「やだなぁ、俺が誰の孫で誰の息子か知ってるでしょう?」
朱鷺光は、一旦アデウスを振り返って、苦笑しながら言いつつ、財布を開く。
「支払いはこれで」
JOYO CARD Plusのゴールドカードを提示して、そう言った。
カードを端末に読み取らせる。
「こちらにサインをお願いします」
信販会社であるJCBの文字が入ったシートに、朱鷺光はサインをした。
レシートとクレジット決済控えを受け取り、財布にしまってから、
「じゃあ、俺、クルマ取ってきますんで」
と、折りたたみ傘を開きながら、店を出て、歩いていった。
「酔い醒ましに歩いていくのも悪くないかと思ったが、まだ雨が降っているか」
店の扉から出つつも、その軒先で、しとしとと梅雨の雨が降っている夜空を見上げて、アデウスは、肩を竦めながら言う。
5分ぐらい経った頃だった。
朱鷺光は、今頃自分のクルマにたどり着いたところだろう。
目の前の道路は、片側2車線の道路だったが、その幅広い路側帯に、不意に、アイボリーのバンが停車した。
「!?」
シータやアデウス達がギョッとする。
そのバンからは、黒い目出し帽を被った、戦闘服姿の男達が降りてきたからだ。
「What!?」
その場で、アデウス達は4人の男達に囲まれる。
「You're Dr. Armstrong Adeus, right?」
アデウスの背後に素早く回り込んだ男が、アデウスの後頭部に銃を突きつけながら、そう言った。
──まずいわね。
シータも、男の1人から、背後から後頭部に銃を突きつけられつつ、考える。
──拳銃程度だったらここで暴れても良いんだけど……高速弾は店の中の被害も馬鹿にならない……
シータはそう、判断した。
男達が持っているのは、拳銃ではなく、小型のアサルトライフルのようだった。
「I don't resist, But women should treat politely, of course to both ladies.」
険しい顔をしつつ、アデウスはそう言った。
そのアデウスに対し、男は銃身で突くようにしつつ、別の男がバンのリアゲートを開けて、手振りで乗るように指示する。
続いて、ディートリンデがやはり銃身で突かれ、バンに乗り込まされる。
そして、シータも同じようにされた。
「私も乗れっての!?」
シータは驚いたように言う。
まだ事情を完全に飲み込めてはいなかったが、この襲撃者達はアデウス博士が目的らしい。
だと言うのに、シータも同道しろというのか。
──私がR-2[THETA]だってことは……見れば解るはず。
シータは一時期、メディアに露出していたこともあったし、ネコミミと左側頭部のアンテナを見れば一目瞭然のはずだ。
少し怪訝に想いつつも、アデウス博士やディートリンデが銃口を突きつけられている状況で、抵抗らしい抵抗はできずに、自らもバンに乗り込まされる。
バンは、ロシア製のUAZ-3909だった。
だが、男達が持っている銃は、少なくともAKではない。
シータが知らない形式だったが、どちらかと言うとコルト製っぽいシャシーだった。
シータが乗り込まされ座らされると、UAZはエンジンを始動させて車道に出る。
ギャギャギャギャッ
「What!?」
UAZが走り出しかけたところで、その後ろから鋭いスキール音が聞こえてきた。
朱鷺光のドミンゴが、ドリフトをかましながら、路地から飛び出してきて、UAZを追いかけてくる。
UAZのスライドドアの窓から1人の男が身を乗り出し、朱鷺光のドミンゴめがけてアサルトライフルを向ける。
カタカタと軽いが明らかな発砲音がする。
朱鷺光は、銃を向けられたことで慌てて急ハンドルを切りかけるが、タイヤに悲鳴を上げさせつつ、カウンターを当てて態勢を立て直しながら、ターボのブースト音を響かせつつ、内側車線を走って、斜め前方のUAZに迫る。
すると、UAZはテールスライド気味にしながら、別の路地に逃げ込んだ。
ドミンゴはドリフトでクランクを描きつつ、その路地にUAZを追って飛び込む。
すると、ドミンゴが避ける余裕を無くしたところで、再び男の1人がドミンゴに銃を向けようとする。
「いい加減にしろっ!」
シータが、ローキックで男の脚を払った。
男はバランスを崩して、車外の上半身がのたうち回る。
シータは間髪入れず、アデウスとディートリンデに銃を突きつけていた男の首根っこを掴んで、リアゲートの観音扉に後頭部を強打させる。
「Shit!!」
助手席に座っていた男が、シータに銃を向けようとするが、ほぼ同時に、シータも気絶させた男から奪い取った銃をそちらに向ける。
「私が誰だか解ってるはずよね、仮になにやってもあんたも隣でハンドル握ってるやつも蜂の巣よ?」
シータは男を睨みつけつつ、険しい表情でそう言った。
「oh……」
「クルマを停めなさい」
有無を言わせない口調で、シータはそう言った。
ドライバーは、シータに言われるままに停車させた。
「大丈夫か?」
UAZが停車すると、その直後にドミンゴが停車し、朱鷺光が、そう言いながら慌てて飛び出してくる。
リアゲートを開く。
すると、気絶した男2人が崩れ落ちてきた。
車内では、シータがほぼ中央に陣取り、運転席と助手席の2人に銃を向けている。
「姉さんじゃないから生身の人間でも行けると思った? 舐めないでほしいわね」
シータが、凄みを利かせた声で言う。
「はーぁやれやれ、また淳志になんか言われそ」
朱鷺光は、安堵混じりにため息をつきつつも、苦笑しながらそう言った。
「ここ警視庁管内でしょ」
「だからだよ」
シータの言葉に、朱鷺光はそう返した。
「ハッハッハ、いやいや、なかなかExcellentなアクションだったよ、さすがトキヒロ、君の作るRobotは運動性能も超人級だね」
自分が襲われたということも忘れかけているのか、アデウスは笑い声を上げながら、そう言った。
その時。
カラン
「へ?」
シータの足元に、なにかが転がった。
それから、大量の煙、煙幕が吹き出す。
「ちょっ……逃げるな、こら!」
シータは、見えてはいないが、対物センサーで動く人物は捉えてはいた。
だが、運転席と助手席の、ドアから飛び出した2人は、そのまま、車体の後方側に向かって駆け出す。
下手に発砲すると朱鷺光に当たりかねない。
「ぐぁっ!」
朱鷺光が、強かに弾き飛ばされて、右側の建物の壁に叩きつけられる。
「朱鷺光!」
シータが声を上げる。
「いててて……いや、突き飛ばされただけだ」
朱鷺光はそう答える。
車内を満たした煙幕が、開放された窓やドアから逃げていき、ようやく晴れてくる。
「どうやら、ただのスモーク弾だったようですね」
ディートリンデが言いつつ、アデウスとともに煙たそうにパタパタと手で煙幕をかき分けるようにしていた。
気がつけば、気絶させたはずの2人も、姿を消していた。
「まぁ、興味自体は前からありましたからね、ただまぁ、ちょっと危なっかしいなと思うところがあるのは、事実なんですけど」
食事を終え、テーブルから立ち上がりながら、アデウスと朱鷺光はそう言葉をかわす。
「やはり、Dr.左文字が我々を批判している倫理面での問題ですか」
ディートリンデがそう言った。
「まぁ、そうですね」
朱鷺光は苦笑しながら言う。
「それはお互いの倫理感の違いもありますからね。我々のチームの中には、Dr.左文字を、神の領域を侵す不届き者だと言う人間もいるくらいです」
「まぁ、実際シータを公表した時は、そう言う批判もたくさん受けましたからね。主に宗教がかった人たちから」
ディートリンデが言うと、朱鷺光は困ったような苦笑をしながら返した。
「トキヒロは無神論者というわけではないのだろう?」
「俺は日本人ですからね」
アデウスの言葉に、朱鷺光はそう答えた。
「ヤオヨロズの神々……日本人はすべての物体、すべての事象に神を見出す。それが自然物か人の作ったものであるかさえ問わない」
「ま、そんなところです」
アデウスがどこか興味深そうに言うと、朱鷺光はそう言った。
「しかしトキヒロ、君は自分が神になる意図はないかね」
「さぁ」
アデウスの言葉に、朱鷺光は口元で笑いつつも、目元を真剣なものにしながら言う。
「神になったか悪魔になったか、そんなものは後世の歴史家が決めれば良いことです」
「なるほど」
朱鷺光の発言に、アデウスは頷くようにしながら返した。
「会計お願いします」
キャッシュカウンターの前に立ち、朱鷺光はそう言って店員を呼んだ。
「全部合わせてで」
「良いのかね、これで我々は君に借りをひとつ作ってしまうことになるが」
朱鷺光が店員に言うと、背後からアデウスがそう言った。
「やだなぁ、俺が誰の孫で誰の息子か知ってるでしょう?」
朱鷺光は、一旦アデウスを振り返って、苦笑しながら言いつつ、財布を開く。
「支払いはこれで」
JOYO CARD Plusのゴールドカードを提示して、そう言った。
カードを端末に読み取らせる。
「こちらにサインをお願いします」
信販会社であるJCBの文字が入ったシートに、朱鷺光はサインをした。
レシートとクレジット決済控えを受け取り、財布にしまってから、
「じゃあ、俺、クルマ取ってきますんで」
と、折りたたみ傘を開きながら、店を出て、歩いていった。
「酔い醒ましに歩いていくのも悪くないかと思ったが、まだ雨が降っているか」
店の扉から出つつも、その軒先で、しとしとと梅雨の雨が降っている夜空を見上げて、アデウスは、肩を竦めながら言う。
5分ぐらい経った頃だった。
朱鷺光は、今頃自分のクルマにたどり着いたところだろう。
目の前の道路は、片側2車線の道路だったが、その幅広い路側帯に、不意に、アイボリーのバンが停車した。
「!?」
シータやアデウス達がギョッとする。
そのバンからは、黒い目出し帽を被った、戦闘服姿の男達が降りてきたからだ。
「What!?」
その場で、アデウス達は4人の男達に囲まれる。
「You're Dr. Armstrong Adeus, right?」
アデウスの背後に素早く回り込んだ男が、アデウスの後頭部に銃を突きつけながら、そう言った。
──まずいわね。
シータも、男の1人から、背後から後頭部に銃を突きつけられつつ、考える。
──拳銃程度だったらここで暴れても良いんだけど……高速弾は店の中の被害も馬鹿にならない……
シータはそう、判断した。
男達が持っているのは、拳銃ではなく、小型のアサルトライフルのようだった。
「I don't resist, But women should treat politely, of course to both ladies.」
険しい顔をしつつ、アデウスはそう言った。
そのアデウスに対し、男は銃身で突くようにしつつ、別の男がバンのリアゲートを開けて、手振りで乗るように指示する。
続いて、ディートリンデがやはり銃身で突かれ、バンに乗り込まされる。
そして、シータも同じようにされた。
「私も乗れっての!?」
シータは驚いたように言う。
まだ事情を完全に飲み込めてはいなかったが、この襲撃者達はアデウス博士が目的らしい。
だと言うのに、シータも同道しろというのか。
──私がR-2[THETA]だってことは……見れば解るはず。
シータは一時期、メディアに露出していたこともあったし、ネコミミと左側頭部のアンテナを見れば一目瞭然のはずだ。
少し怪訝に想いつつも、アデウス博士やディートリンデが銃口を突きつけられている状況で、抵抗らしい抵抗はできずに、自らもバンに乗り込まされる。
バンは、ロシア製のUAZ-3909だった。
だが、男達が持っている銃は、少なくともAKではない。
シータが知らない形式だったが、どちらかと言うとコルト製っぽいシャシーだった。
シータが乗り込まされ座らされると、UAZはエンジンを始動させて車道に出る。
ギャギャギャギャッ
「What!?」
UAZが走り出しかけたところで、その後ろから鋭いスキール音が聞こえてきた。
朱鷺光のドミンゴが、ドリフトをかましながら、路地から飛び出してきて、UAZを追いかけてくる。
UAZのスライドドアの窓から1人の男が身を乗り出し、朱鷺光のドミンゴめがけてアサルトライフルを向ける。
カタカタと軽いが明らかな発砲音がする。
朱鷺光は、銃を向けられたことで慌てて急ハンドルを切りかけるが、タイヤに悲鳴を上げさせつつ、カウンターを当てて態勢を立て直しながら、ターボのブースト音を響かせつつ、内側車線を走って、斜め前方のUAZに迫る。
すると、UAZはテールスライド気味にしながら、別の路地に逃げ込んだ。
ドミンゴはドリフトでクランクを描きつつ、その路地にUAZを追って飛び込む。
すると、ドミンゴが避ける余裕を無くしたところで、再び男の1人がドミンゴに銃を向けようとする。
「いい加減にしろっ!」
シータが、ローキックで男の脚を払った。
男はバランスを崩して、車外の上半身がのたうち回る。
シータは間髪入れず、アデウスとディートリンデに銃を突きつけていた男の首根っこを掴んで、リアゲートの観音扉に後頭部を強打させる。
「Shit!!」
助手席に座っていた男が、シータに銃を向けようとするが、ほぼ同時に、シータも気絶させた男から奪い取った銃をそちらに向ける。
「私が誰だか解ってるはずよね、仮になにやってもあんたも隣でハンドル握ってるやつも蜂の巣よ?」
シータは男を睨みつけつつ、険しい表情でそう言った。
「oh……」
「クルマを停めなさい」
有無を言わせない口調で、シータはそう言った。
ドライバーは、シータに言われるままに停車させた。
「大丈夫か?」
UAZが停車すると、その直後にドミンゴが停車し、朱鷺光が、そう言いながら慌てて飛び出してくる。
リアゲートを開く。
すると、気絶した男2人が崩れ落ちてきた。
車内では、シータがほぼ中央に陣取り、運転席と助手席の2人に銃を向けている。
「姉さんじゃないから生身の人間でも行けると思った? 舐めないでほしいわね」
シータが、凄みを利かせた声で言う。
「はーぁやれやれ、また淳志になんか言われそ」
朱鷺光は、安堵混じりにため息をつきつつも、苦笑しながらそう言った。
「ここ警視庁管内でしょ」
「だからだよ」
シータの言葉に、朱鷺光はそう返した。
「ハッハッハ、いやいや、なかなかExcellentなアクションだったよ、さすがトキヒロ、君の作るRobotは運動性能も超人級だね」
自分が襲われたということも忘れかけているのか、アデウスは笑い声を上げながら、そう言った。
その時。
カラン
「へ?」
シータの足元に、なにかが転がった。
それから、大量の煙、煙幕が吹き出す。
「ちょっ……逃げるな、こら!」
シータは、見えてはいないが、対物センサーで動く人物は捉えてはいた。
だが、運転席と助手席の、ドアから飛び出した2人は、そのまま、車体の後方側に向かって駆け出す。
下手に発砲すると朱鷺光に当たりかねない。
「ぐぁっ!」
朱鷺光が、強かに弾き飛ばされて、右側の建物の壁に叩きつけられる。
「朱鷺光!」
シータが声を上げる。
「いててて……いや、突き飛ばされただけだ」
朱鷺光はそう答える。
車内を満たした煙幕が、開放された窓やドアから逃げていき、ようやく晴れてくる。
「どうやら、ただのスモーク弾だったようですね」
ディートリンデが言いつつ、アデウスとともに煙たそうにパタパタと手で煙幕をかき分けるようにしていた。
気がつけば、気絶させたはずの2人も、姿を消していた。
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