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第29話 世は全て事もなし。
Chapter-58
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な、なんだありゃ、ドラゴンを誘導することができる道具なのか!?
なんて泡食いながら思ってる場合じゃなくて。
「グローリー・グレート・ウォール!」
俺達に向かってブレスを吐きかけてきたドラゴンに対し、ミーラが光の障壁を生み出して、それを遮る。
「行くぞ、アルヴィン!」
「了解です!」
姉弟子の合図で、俺は姉弟子と同時に呪文の詠唱に入る。
「なに……ドラゴンのブレスを遮れるだと……」
ベイリーがそんな風に呟いた気がしたが、今は呪文に集中だ。
「障壁解きます、今!」
ドラゴンブレスを払い散らしきった光の障壁を、ミーラがそう言って解除する。
「グァァァァっ」
ドラゴンは、今度は腕を振るい上げながら俺達に飛びかかってこようとする……が!
「ギガ・バレット!!」
俺と姉弟子の、呪文の詠唱が同時に完成する。
俺が以前使った、大火焔魔法程ではないが、爆炎系の攻撃魔法としては、最上級のものを、同時に、ドラゴンの腹部に向かって叩き込む
ドラゴンも腹部までは鱗で鎧われていない。柔らかいそこに爆裂を伴った火焔の球を叩き込まれて、ドラゴンはのたうつ様にしながら、大地に墜落した。
「なんだと……ええいっ、役立たずめっ、早く起き上がってこいつらを薙ぎ払え!」
ベイリーが苛立った声を出すが、俺と姉弟子はそんな事おかまないなしに次の行動に移っている。
「サンダーボルト!」
雷撃魔法を、今度はその頭部に、やはり俺と姉弟子の2人がかりで叩き込む。
腹部を灼かれ爛れさせられてのたうち回っていたドラゴンだったが、これで完全に動きは止まった。
「ぬぅっ」
ベイリーは、俺と姉弟子の方を見て苦い顔をしたが、
「2匹だ、2匹呼び出せ」
と、ベイリーは激昂したかの様子で、誘竜石に取り付いている魔導師に、乱暴な口調で命令する。
「は、しかし……躁竜杖は……」
「かまわん、けしかけるだけならなんとでもなる」
ソウリュウジョウ、そう読んでるのか、あのなんぞデカいペンライトみたいなシロモノを。
なんて、考えてる場合じゃなくて!
ビシュッ、バシッ!
俺がわずかに考えてしまった瞬間に、姉弟子が、台車の上、誘竜石の傍らでベイリーと言い合いをしていた魔導師を狙う。
だが、飛ばした水の弾丸は、魔導師の直前で弾けて散った。
「ち!」
姉弟子が舌打ちをする。
シールドの魔法か?
あの魔導師が咄嗟に張ったようには見えなかったが。
「どうなっても、知りませんぞ」
「くどい、早くしろ!」
俺は一瞬、飛び出して一気にベイリーを抑えるべきか逡巡してしまった。
台車の牽引役だった兵士達が、剣を抜いている。
数が多い中に、1人で飛び込むのは流石に無謀だ。
それに魔導師がシールドを張れる。今のは、少し不思議だったが。
メガ・バレットあたりをクイックで撃ち込んでも、跳ね返される可能性が高い。
実際姉弟子が、ベイリーを狙撃しようとして失敗した。
その間に、魔導師が誘竜石に、手をかざして何かを唱えた。
「グギャォォォッ」
「ギャオァァァッ」
「今度は2頭呼び出したか!」
姉弟子が緊迫と驚愕の入り混じった声で以て言う。
俺も流石に、ドラゴン2頭を相手にするのは遠慮したい。
それになにより、さっきのドラゴンだって、俺と姉弟子、それに最初の防御のミーラも含めて、3人がかりだから速攻で仕留められたようなもんだ。
「行けっ!」
ベイリーは、ソウリュウジョウとかいうやつをドラゴン達の顔に向けると、それで俺と姉弟子の方を指向させた。
「まずいな……ミーラ! 時間稼げないか?」
俺は焦れつつ、矢面に立ってくれていたミーラにそう声をかける。
「正面からのブレスだけなら! でも、別々に回り込まれたら!」
ミーラも、一瞬振り返って、焦るような声を上げてきた。
その時。
「よし……頼んだわよ、ジャック」
「よっしゃ、フレイム・エンチャンティング!」
キャロの声の後に、ジャックがそう言い、炎を纏った矢を、一方のドラゴンに向かって放った。
いや、ちょっと待て、ジャックが使える程度の伝播魔力でそれは!
その矢はドラゴンの手元に命中する。流石にノーダメージではないものの、有効な打撃とも言いにくい。
「アルヴィン! 1匹は私達で引きつけるから、その間にそっちのをなんとかして!」
「引きつけるって、おい、無茶だぞ!」
飛び出してくるキャロの言葉に、俺は慌ててそう言うものの、
「大丈夫だ、作戦がある!」
キャロやエミとともに、弓を投げ出しつつ、新調したミスリル製の剣を抜剣しながら、ジャックがそう言った。
「作戦って……──」
「おい、こっちも気にしろ!」
俺が、キャロ達にあっけにとられかけた時。
姉弟子の、険しい声が帰ってきた。
「きゃぁっ!」
「ミーラ!」
もう1頭のドラゴンは、すぐ目の前に迫っていた。
ブレスは……ミーラが防いでくれたのか?
だが、直前に迫ったドラゴンの腕の一撃が、ミーラに綺麗に入ってしまう。
ミーラは愛用の、割と大きめの盾で受け止めた。それによって鋭い爪による致命傷は避けたものの、その盾ごとミーラは弾き飛ばされてしまう。
「この野郎、こっちだ!」
俺もキャロ達のこと言えねぇな!
ミーラから注意を逸らすため、アクア・ブリッドを無詠唱で、ドラゴンの顔面に叩き込んでいた。
ドラゴンが軽く息を吸い込む、ブレスか!
だがいつぞやの洞窟に比べれば、ここは割合空間は広い。
俺1人なら避けるのは大して厳しくない。あくまで比較論だが。
ブレスが通り抜ける瞬間を、俺は呪文詠唱しながら左に躱す。
「ソーリング・ウィング」
薙ぎ払うようにしてくるドラゴンのブレスから逃げつつ、俺は空中へと飛び上がった。
「グルォオォォォ」
空中へと飛び上がった俺の方向を、ドラゴンは首を曲げ視線で追ってくる。
だが、次の瞬間、今度は別の方向から、アクア・ブリッドがドラゴンの側頭部に命中した。
「グルァアァァァ!」
射点の方を見ると、姉弟子とミーラがいる。
よし、これでこっちは助かった!
「アルヴィン!」
「了解です!」
姉弟子の言葉に、俺は反応して、詠唱を始める。
ドラゴンは、姉弟子たちの方へ向かってブレスを吐き出した。
「グローリー・グレート・ウォール」
ミーラが再度光の障壁を生み出し、自分と姉弟子を、ドラゴンのブレスから遮る。
「大気よ震えろ、擦れて光り、電撃の槍を生め!」
俺は、その間に詠唱を進めていく。
ドラゴンのブレスが途切れた。ミーラが光の障壁を解く。
今だ!!
「メガ・ボルト!!」
「ギガ・バレット!!」
俺の強雷撃魔法と、姉弟子の大爆炎魔法が、同時に放たれる。
それは、どちらもドラゴンの頭部を狙っていた。
果たして、ドラゴンの頭部は、一見そのままかのようだったが、目から生気が消えており、そのまま、ドスン、と倒れ込んだ。
「やった!」
ミーラが、明るい声で言うものの、
「キャロ達は!?」
俺は、ミーラと姉弟子の立っているところに着地するなり、そう言って、険しくなってしまう顔で、あたりを見回した。
すると……
「うわぁぁぁっ、こっち、こっちくんなぁ!」
という、キャロでもエミでも、ジャックでもない悲鳴が聞こえてきた。
声のした方を見ると、それは、ベイリーが引き連れていた兵士達が発したものだった。
なるほど、MPK戦法をとったか!
キャロ達は、ジャックの弓矢でドラゴンの注意を自分達に向けさせると、そのまま一直線に、ベイリー達のいる方へ突っ込んでいったのである。
どうもベイリーの持ってるあれは、簡単なターゲット指示程度の事しかできないみたいだし、1つしかないみたいだからな。
スマートかどうかはわからないが、成程冴えたやり方だぜ。
なんて泡食いながら思ってる場合じゃなくて。
「グローリー・グレート・ウォール!」
俺達に向かってブレスを吐きかけてきたドラゴンに対し、ミーラが光の障壁を生み出して、それを遮る。
「行くぞ、アルヴィン!」
「了解です!」
姉弟子の合図で、俺は姉弟子と同時に呪文の詠唱に入る。
「なに……ドラゴンのブレスを遮れるだと……」
ベイリーがそんな風に呟いた気がしたが、今は呪文に集中だ。
「障壁解きます、今!」
ドラゴンブレスを払い散らしきった光の障壁を、ミーラがそう言って解除する。
「グァァァァっ」
ドラゴンは、今度は腕を振るい上げながら俺達に飛びかかってこようとする……が!
「ギガ・バレット!!」
俺と姉弟子の、呪文の詠唱が同時に完成する。
俺が以前使った、大火焔魔法程ではないが、爆炎系の攻撃魔法としては、最上級のものを、同時に、ドラゴンの腹部に向かって叩き込む
ドラゴンも腹部までは鱗で鎧われていない。柔らかいそこに爆裂を伴った火焔の球を叩き込まれて、ドラゴンはのたうつ様にしながら、大地に墜落した。
「なんだと……ええいっ、役立たずめっ、早く起き上がってこいつらを薙ぎ払え!」
ベイリーが苛立った声を出すが、俺と姉弟子はそんな事おかまないなしに次の行動に移っている。
「サンダーボルト!」
雷撃魔法を、今度はその頭部に、やはり俺と姉弟子の2人がかりで叩き込む。
腹部を灼かれ爛れさせられてのたうち回っていたドラゴンだったが、これで完全に動きは止まった。
「ぬぅっ」
ベイリーは、俺と姉弟子の方を見て苦い顔をしたが、
「2匹だ、2匹呼び出せ」
と、ベイリーは激昂したかの様子で、誘竜石に取り付いている魔導師に、乱暴な口調で命令する。
「は、しかし……躁竜杖は……」
「かまわん、けしかけるだけならなんとでもなる」
ソウリュウジョウ、そう読んでるのか、あのなんぞデカいペンライトみたいなシロモノを。
なんて、考えてる場合じゃなくて!
ビシュッ、バシッ!
俺がわずかに考えてしまった瞬間に、姉弟子が、台車の上、誘竜石の傍らでベイリーと言い合いをしていた魔導師を狙う。
だが、飛ばした水の弾丸は、魔導師の直前で弾けて散った。
「ち!」
姉弟子が舌打ちをする。
シールドの魔法か?
あの魔導師が咄嗟に張ったようには見えなかったが。
「どうなっても、知りませんぞ」
「くどい、早くしろ!」
俺は一瞬、飛び出して一気にベイリーを抑えるべきか逡巡してしまった。
台車の牽引役だった兵士達が、剣を抜いている。
数が多い中に、1人で飛び込むのは流石に無謀だ。
それに魔導師がシールドを張れる。今のは、少し不思議だったが。
メガ・バレットあたりをクイックで撃ち込んでも、跳ね返される可能性が高い。
実際姉弟子が、ベイリーを狙撃しようとして失敗した。
その間に、魔導師が誘竜石に、手をかざして何かを唱えた。
「グギャォォォッ」
「ギャオァァァッ」
「今度は2頭呼び出したか!」
姉弟子が緊迫と驚愕の入り混じった声で以て言う。
俺も流石に、ドラゴン2頭を相手にするのは遠慮したい。
それになにより、さっきのドラゴンだって、俺と姉弟子、それに最初の防御のミーラも含めて、3人がかりだから速攻で仕留められたようなもんだ。
「行けっ!」
ベイリーは、ソウリュウジョウとかいうやつをドラゴン達の顔に向けると、それで俺と姉弟子の方を指向させた。
「まずいな……ミーラ! 時間稼げないか?」
俺は焦れつつ、矢面に立ってくれていたミーラにそう声をかける。
「正面からのブレスだけなら! でも、別々に回り込まれたら!」
ミーラも、一瞬振り返って、焦るような声を上げてきた。
その時。
「よし……頼んだわよ、ジャック」
「よっしゃ、フレイム・エンチャンティング!」
キャロの声の後に、ジャックがそう言い、炎を纏った矢を、一方のドラゴンに向かって放った。
いや、ちょっと待て、ジャックが使える程度の伝播魔力でそれは!
その矢はドラゴンの手元に命中する。流石にノーダメージではないものの、有効な打撃とも言いにくい。
「アルヴィン! 1匹は私達で引きつけるから、その間にそっちのをなんとかして!」
「引きつけるって、おい、無茶だぞ!」
飛び出してくるキャロの言葉に、俺は慌ててそう言うものの、
「大丈夫だ、作戦がある!」
キャロやエミとともに、弓を投げ出しつつ、新調したミスリル製の剣を抜剣しながら、ジャックがそう言った。
「作戦って……──」
「おい、こっちも気にしろ!」
俺が、キャロ達にあっけにとられかけた時。
姉弟子の、険しい声が帰ってきた。
「きゃぁっ!」
「ミーラ!」
もう1頭のドラゴンは、すぐ目の前に迫っていた。
ブレスは……ミーラが防いでくれたのか?
だが、直前に迫ったドラゴンの腕の一撃が、ミーラに綺麗に入ってしまう。
ミーラは愛用の、割と大きめの盾で受け止めた。それによって鋭い爪による致命傷は避けたものの、その盾ごとミーラは弾き飛ばされてしまう。
「この野郎、こっちだ!」
俺もキャロ達のこと言えねぇな!
ミーラから注意を逸らすため、アクア・ブリッドを無詠唱で、ドラゴンの顔面に叩き込んでいた。
ドラゴンが軽く息を吸い込む、ブレスか!
だがいつぞやの洞窟に比べれば、ここは割合空間は広い。
俺1人なら避けるのは大して厳しくない。あくまで比較論だが。
ブレスが通り抜ける瞬間を、俺は呪文詠唱しながら左に躱す。
「ソーリング・ウィング」
薙ぎ払うようにしてくるドラゴンのブレスから逃げつつ、俺は空中へと飛び上がった。
「グルォオォォォ」
空中へと飛び上がった俺の方向を、ドラゴンは首を曲げ視線で追ってくる。
だが、次の瞬間、今度は別の方向から、アクア・ブリッドがドラゴンの側頭部に命中した。
「グルァアァァァ!」
射点の方を見ると、姉弟子とミーラがいる。
よし、これでこっちは助かった!
「アルヴィン!」
「了解です!」
姉弟子の言葉に、俺は反応して、詠唱を始める。
ドラゴンは、姉弟子たちの方へ向かってブレスを吐き出した。
「グローリー・グレート・ウォール」
ミーラが再度光の障壁を生み出し、自分と姉弟子を、ドラゴンのブレスから遮る。
「大気よ震えろ、擦れて光り、電撃の槍を生め!」
俺は、その間に詠唱を進めていく。
ドラゴンのブレスが途切れた。ミーラが光の障壁を解く。
今だ!!
「メガ・ボルト!!」
「ギガ・バレット!!」
俺の強雷撃魔法と、姉弟子の大爆炎魔法が、同時に放たれる。
それは、どちらもドラゴンの頭部を狙っていた。
果たして、ドラゴンの頭部は、一見そのままかのようだったが、目から生気が消えており、そのまま、ドスン、と倒れ込んだ。
「やった!」
ミーラが、明るい声で言うものの、
「キャロ達は!?」
俺は、ミーラと姉弟子の立っているところに着地するなり、そう言って、険しくなってしまう顔で、あたりを見回した。
すると……
「うわぁぁぁっ、こっち、こっちくんなぁ!」
という、キャロでもエミでも、ジャックでもない悲鳴が聞こえてきた。
声のした方を見ると、それは、ベイリーが引き連れていた兵士達が発したものだった。
なるほど、MPK戦法をとったか!
キャロ達は、ジャックの弓矢でドラゴンの注意を自分達に向けさせると、そのまま一直線に、ベイリー達のいる方へ突っ込んでいったのである。
どうもベイリーの持ってるあれは、簡単なターゲット指示程度の事しかできないみたいだし、1つしかないみたいだからな。
スマートかどうかはわからないが、成程冴えたやり方だぜ。
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