異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。第2部

kaonohito

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第27話 動乱に立ち向かうことになる。

Chapter-54

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「これでドラゴンも3体目か」

 ドラゴンはキャロに腹を斬り裂かれ、しばらくのたうっていたが、俺と姉弟子がサンダーボルト轟雷撃を浴びせると、そのままぐったりと動かなくなった。

 亡骸と化したドラゴンに近寄ってきて、ジャックが、苦笑しながらそう言った。

「ますます私達も目をつけられる……」
「そんなつもりがあるわけじゃないんだがなぁ」

 エミの言葉に、俺は苦笑しながらそう言わざるを得なかった。
 実際、別にドラゴンと出くわしたくて出くわしているわけではない。

 と言っても、今回のそれは明らかに不自然なのだが……

「これで私も、一段落ついたら竜騎勲章かな」

 姉弟子が、冗談交じりに笑いながらそう言った。

「そう言えば、ドラゴンが出てくるときって、決まってリリーさんいませんでしたね」

 ジャックが、気がついたように言う。

「地下遺跡探索の時以外はね」

 あれは別格だ、エンシェント古代上位種・ドラゴンだったからな。

「最初の時もサラマンド・ドラゴンの時も、ジャックもアルヴィンも私がいない間に無茶してるんだからな。ちょっとは心配する方の身にもなってほしいわ」

 そう言って笑い飛ばすように苦笑する姉弟子。
 だが、それも一瞬のこと。

「ただ、姉弟子、気にかかることがあるんですが」
「うん」

 俺が問いかけるように言うと、姉弟子も笑みを消して頷いた。

「気にかかることって?」

 ジャックは、あんまり緊張感のない様子で聞き返してきたのだが。

 その声を聞きつけたのか、エミが、それまでキャロと一緒になってドラゴンの遺骸を調べていたのを、中断して、こちらに歩いてきた。

「ドラゴンがこんなところに出るのが不自然」

 エミは、明らかに険しさを表した表情で、そう言った。

「基本的に人間とドラゴンの居住域はラップしないからな。最初のドラゴンの時も、サラマンド・ドラゴンの時も、そうなる要素があってドラゴンと接触したんだ」

 最初のドラゴンの時は、元は別れていた、竜が巣食っていた洞窟と人間が出入りしていた洞窟とが、崩落によって繋がってしまった。
 サラマンド・ドラゴンの時は、この種が好む硫黄分を含んだ温泉脈が、地表に迫ったことで呼び寄せてしまった。

 が、今回は、山岳地帯までそれほど距離はないとは言え、開けた平地に突然、である。

「人為的?」

 エミが、珍しくあからさまに眉を歪ませてそう言ったのを聞いて、俺はドキリとしてしまった。

「師匠のところにあった資料でしか知らんのだが、誘竜石、って代物があってな。そのものは直径がキャロの身長ほどの金属っぽいたまに見えるものなんだが……」

 古代魔法技術とかいうシロモノで造られたと言われている。が、実際、実物はお目にかかったことはない。
 ただ、エバーワイン男爵領の地下遺跡がアレだったことを考えると、ひょっとしたら俺の前世に当たる文明が高度に発展した結果、創り出したシロモノかもしれんが。

「それを使うと、ドラゴンを呼び寄せることができる?」
「確実に、とは言えないが……」

 エミの問いかけに、俺は少し言葉を濁した。

 このアイテムは、ある条件で刺激すると、ドラゴンが精神的に参るほどの、人間には不可聴な超音波を広範囲に渡って出すらしい。
 しかも、これは下位種ドラゴンだけではなく、エンシェント・ドラゴンにも有効なんだそうだ。

 俺が前世にあたる文明で、俺が死んだ時代より未来で創られたのではないか、と考えたのは、その事があったからだ。
 いや、そう考えるようになったのは、実際にあのを見てからだが。
 そう考えると、創られた理由がはっきりするからだ。
 個体では人類より遥かに強大な力を持ち、なおかつ知性でも人類に劣らないエンシェント・ドラゴンを使役するための、あんまし褒められた類ではない性質のアイテム。そう考える事ができる。

 ただ、それは人間と言語で交渉できるエンシェント・ドラゴン相手だから有効な手なんだよな。

「ただ、こいつにはひとつ問題があってな」
「?」

 俺が難しい表情になってしまいながら言うと、エミがキョトンとした。
 チラリ、と姉弟子を見ると、やはり訝しげな表情をしている。そして、それをジャックがキョトンと見ている。

「なに、何を話しているの?」
「どうかされたのですか?」

 そこへ、キャロとミーラも俺達の傍に寄ってきた。

「もしかして、呼び寄せたドラゴンを思うように使役できない?」
「そうそれ」

 エミの言葉に、俺は、パキッ、と指を鳴らしながら、エミを指差して、そう言った。

「どういうことよ」

 ここまでの会話に参加していなかったキャロが、当然不思議そうに聞いてくる。
 そこで、俺は再度、誘竜石について、キャロとミーラに説明する。

「それなら」

 キャロが、何をそんなに難しく考えているんだ、というように、言う。

「使役魔法、そう言うのがあるんでしょ? それでドラゴンを使役すればいいじゃない」
「ちょ、無茶言うなよ」

 キャロの言葉に、俺は辟易したような表情をしてしまう。

「下位種ったってドラゴンの魔法耐性はかなりのものなんだ、使役魔法なんてかけきれる魔導師はそうそういないし、だいたいそんな事が簡単にできるんなら俺が今までやってる」

「そう言われれば、そうですね」

 俺が、困ったような表情をしてしまいながら説明すると、ミーラが、顎を抱えるようにして、視線を下に向けて、そう言った。

「リリーさんはどうです?」
「無茶言うな」

 俺から姉弟子に視線を移したジャックが問いかけるが、姉弟子は即答する。

「リリーさんやアルヴィンでもできない事ができる魔導師なんて……」
「いやまぁ、できるか否かで言えば1人だけ心当たりはないわけではないんだが」

 ジャックが、視線を上に向けて、口をへの字にしながら言う。
 それに対して、俺は苦笑しながらそう答えた。

「え、いるの?」

 キャロが、軽く驚いたように俺に聞いてくる。

「まぁ……あの人ならできないことはなさそうですよね」
「確かにそれはそうなんだが」

 俺が言うと、姉弟子も苦笑しながらそう言った。

「あ、そうかアルヴィンの……アルヴィンとリリーさんのお師匠さん」
「魔女ディオシェリル、でしたよね、確かに可能かもしれません」

 キャロと、続けてミーラが、そう言った。

「ただ、可能か否かで言えばあの人ならもしかしたら……という気にはなるが、師匠が今更、南方正義連帯なんて連中に手を貸すかな……」
「俺も、多分それはないと思います」

 そもそもあの人、根無し草なところもあるけど、“アドラーシールム西方の魔女”って呼ばれるようになった由来で分かる通り、意外と帝国中央寄りだしな。

「皇帝陛下の逆張りをするとは思えないんだよねぇ」
「ああ」
「そうなんですか」

 俺が困った顔をつくりながら言い、姉弟子がそれに同意する言葉を発する。
 すると、ミーラがそう言葉を返してきた。

「マジックアイテムの類だったらどうかしら?」

 キャロが、はっと気がついたように言ってきた。

「マジックアイテム?」
「そうよ、ドラゴンでも使役可能なこう、魔法の籠もった宝石とか。そう言うの、可能なんでしょ?」

 俺が聞き返すと、キャロがまくしたてるように言ってくる。

「作らされた……本来の目的を知らされずに、製作を請け負ってしまったのだとしたら」
「いや、それも考えにくいだろうな」

 キャロは少し興奮した様子だったが、姉弟子が、否定の言葉を発した。

「家一軒吹き飛ばす程度なら酒代代わりに造ってしまいそうな気もするが、ドラゴンをも使役するとなると……流石に背後関係は疑ってかかるだろう」
「家一軒吹き飛ばす程度なら、酒代代わりにって、それもいい加減どうかと思うんですけど……」

 姉弟子の答えを聞いて、キャロは引きつった苦笑を浮かべた。

「まぁなんにせよ師匠の線は考えにくいんだが、その師匠だって全知全能じゃないってことはありうるな」

 俺は、キャロに言われて、その事に至っていた。

「どういう事?」
「ドラゴンを使役できるアイテムがあるかもしれないってことだよ、師匠でも知らないシロモノがな。その可能性はゼロじゃないってことだ」

 キョトンとしてきたキャロに、俺はそう答えた。

「そっか、なるほどね」

 キャロが、納得した声を揚げる。

「しかし、もし仮にそれが事実だとすると」

 キャロとのやり取りを聞いていた姉弟子が、言葉を発した。

「兵団同士の会戦の前に、これが決戦……ということになりそうだな」
「ええ」

 険しい表情で言う姉弟子に、俺も表情が引き締まるのを感じた。
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