異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。第2部

kaonohito

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第23話 領地での夏を過ごす。

Chapter-36.5 Ver.Cc

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「じゃあ、お願いするわね」

 結局、やっぱりキャロと俺の組み合わせになることになった。

 まぁ、こういうときは結局これが一番揉めなくていいよな。

 キャロは俺の目の前で、毛羽立ちの少ない麦わらの筵に、うつ伏せに寝そべっている。
 まぁ、流石にまだ、ビニールシートなんぞという気の利いたものはない。

 姉弟子の作ってきたものは日焼けを抑えるというよりは過度な日焼けを止める、いわばサンオイルみたいな感じなもの。
 ただ前世でイメージしていたサンオイルと違って、クリーム状の軟膏になっている。

 それを多めに手のひらに取り、両手になじませるようにしながら、キャロの、水着の露出部分が多い背中へと手をのばす。

「うーん……」

 俺は、その背中のあたりを見て、妙な声を出してしまった。

「どうしたのよ?」
「え、あ……」

 それを凝視してしまっていたのを、キャロの声で、我に返る。

「いや、肌綺麗だなと思ってさ」
「なに、褒めても特に何も出ないわよ」

 キャロは、うつ伏せになったまま、クスクスと苦笑しながら言う。

「まぁそりゃあ、そんなが俺の嫁さんだと思えば、それ自体が褒美みたいなものだけどな」
「何、それ……」

 俺が妙に得意になって言うのに、キャロは可笑しそうに笑った。

「いや……ただ、防具の跡があるな、と思ってな」
「うーん、まぁ、それは仕方ないわよ」

 このところ冒険者稼業はやっていない。
 ただ、キャロには兵団の槍術指南を頼んでしまっている関係で、武具をつけていることが多い。

 まぁ最大の理由は他にアテがないからってだけなんだが……アーヴィングはもっと兵団として基礎的なことの教練で忙しいし。
 とは言え、俺やエミのように、養成学校で武術免除を受けていたほどではないとは言え、常に片手で数えられる順位にはいたわけだけれども。

「そう言えば、キャロはなんで槍を使い始めたんだ?」
「えっ?」

 俺は、単純に気になって、キャロの首周りに軟膏を塗りつつ、そう訊ねた。

「そうね、私のところエバーワイン家にも、エミのところのアーヴィングみたいに、壮年の兵士長がいたのよ」
「その人から槍を?」
「基礎的なところはね」

 俺が問い返すと、キャロはそう答えた。

「まぁでも、後は冒険者養成学校に入ってからかな。だからちょっとばかり荒削りで、兵団向きじゃないとは思うんだけどね」
「いや、まぁ、実戦で使えりゃ、それでいいと思ってるけどね、俺は」

 別に儀仗兵作ってるわけじゃなし、その必要があるならまた別に用意する。

「背中なんかは防具の跡が残る程度だけど、手なんかこうだしね」

 うん、まぁ、別にキャロとスキンシップするのはこれが初めてってわけじゃないので、それは知ってる。
 手には剣ダコならぬ槍ダコができてて、それを削ってる痕がある。

「キャロの槍には何度も助けられてるし、文句なんか言ったらバチが当たるよ」

 実際、2度のドラゴン戦でキャロの槍には2度とも助けられている。

 さて、背中から一回首元へと移動し、それから腰へ、と下りてきたわけなんだが……

「なんか、意外にこうしてまじまじとキャロの脚触るのって初めてな感じ」
「言われてみればそうかも知れないわね」

 いや、まぁ、キャロの色んな所はすでに見せてもらってる俺なんだが、脚の後ろ側って意外に意識したこと無いなぁと、今さらになって感じてしまった。

 太すぎず、引き締まっているが、赤筋ばかり発達して硬いというわけでもない脚。
 カモシカみたいな脚、ってこういうのを言うんだろうか。

「うーん……」
「ん? どうしたの?」

 俺が唸るような声を出すと、キャロが訊き返してくる。

「膝裏やふくらはぎにも留め具の跡があるなと思って」
「まぁ、それも、仕方ないわよ」

 キャロは武装時、革のブーツの上からレッグガードをつけている。
 その留め具の跡が残っているのだ。

「それに、アルヴィンって箱入りのお嬢様より、私達みたいな方が好きだって、自分で言ってたじゃない」
「まぁね。いや、キャロ自身がどう思ってるのかと思っちゃってさ」

 女の子だし、気にするところもあるんじゃないかなとは思ってしまう。

「それは、だいぶ前に言ったわよね」
「え?」

 キャロに言われて、どの事かわからず、俺は間の抜けた様子で訊き返してしまう。

「自分を安売りするつもりはない、って」
「…………自己研鑽は怠らない、か……」
「そうよ」

 確かに、逆に変に気を使ったりしたら、自身を高めようとするキャロに対して失礼かもしれないなぁ。
 などと、俺が考えながら足首の方まで塗り進めていくと……

「ああっ!」

 と、キャロが突然声を出した。

「えっ、どうした?」
「考えたら、別に脚は座れば自分で塗れたんじゃない」

 俺が驚いたように声を出すと、キャロはそう言って、筵の上で所謂“女の子座り”になった。

「あ……そう言えば、そうだったな」
「アルヴィンも、素で気づいてなかったの?」

 キャロが、若干、自分と俺とに呆れたような苦笑になって、そう言った。

「まったく気づいとらんかった」

 俺は正直に言う。

「もう……まぁ、アルヴィンだから良いか」

 いや、それで終わらせちゃうのもどうなのよ、とは思うんだが……

「じゃあ、交代、今度はアルヴィンが横になって」
「了解、頼むよ」

 俺は、キャロにそう言って、うつ伏せに寝そべった。

「脚の方もやる?」

 キャロは、どこか悪戯っぽく言ってきた。

「お願い、って言ったらどうする?」
「もちろん構わないわよ」

 俺の方も悪戯っぽく言い返すと、キャロの方は素で、快諾したようにそう言ってきた。

「じゃあ、頼もうかな」
「りょーかい」
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