異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。第2部

kaonohito

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第21話 立太子の儀でひと悶着起こす事になる。

Chapter-25

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「聞いちまったなぁ、これ、どうするか」

 俺、アルヴィンはこうめんどくさいのに巻き込まれるのが嫌だったけど……

「さっきも言ったけど、こういう国内の問題に、外国の人間入れて碌な事にはなりませんよ。本気で言ってるのですか?」

 俺は、アシル王子に問い質す。

「はい……残念ながら、我々の手だけでは、どうしようも……」
「アシル殿下、あなたはシグル殿下が王太子になることには不満はないのですか?」

 姉弟子が質問する。
 確かに、それは重要な質問だ。

「はい、シグルは私より武の才に秀でてますし、なにより人を引きつけるカリスマがあります。私が国を治めるより、安定するでしょう」

 アシル王子は、一見、真摯な顔でそう言った……が。

「誰が叛乱を起こそうとしているのかはだいたい分かります」
「おそらく、アルヴィン殿の予想は当たっているのではないかと思います」

 俺の言葉に、アシル王子はそう言った。

「けれど、殿下御自身に王位に対しての野心がないと、そう証明しきれますか?」
「それは……難しいです」

 俺が、険しい顔をしてそう言うと、アシル王子は、流石に言い澱んだ。

「どういうこと?」

 キャロが、俺に向かって訊いてくる。

「誰かが明日の立太子の儀でなにかやらかすのが本当だったとする。が、それを庇ったのが、外国の貴族である俺達だったとなると、第3王子と現国王は外国勢力に頼ったとして外患誘致で追放する。その後にアシル殿下が実権を握る。こういう筋書きも考えられるってことさ」

 俺は、考えられる最悪のシナリオを、この場でブチまけてみせた。

「残念ながら、この話は、私を信じていただく以外にないのですが……」

 心苦しそうな態度で、アシル王子は言った。
 だが、それも芝居かもしれない。

「私も気にかかっているんだが」

 姉弟子が、アシル王子に声をかける。

「ガスパル陛下やシグル殿下はその、襲撃計画の話、知っているのか?」
「はい。ですが、父上は、それで立太子の儀を中止すれば相手の思うツボ、立太子の儀は予定通りに行うと……」

 姉弟子の質問に、アシル王子は、苦い顔でそう答える。
 まぁ、話自体に矛盾はないな。

 ここで立太子の儀を延期や中止にすれば、それを妨害できたただけでも、ガスパル王やシグル王子に敵対している相手にとってはプラスの効果になるだろう。

「俺としては、今、アシル殿下が訪ねてきていることも含めて、一切合切聞かなかったことにしたいんだけどなー」

 俺は、困ったように、と言うか、多分面倒くさそうにため息をついて、そう言った。

「そう言うわけには、行かない……」
「そ、話、聞かされちまったからな。このまま明日、立太子の儀が平穏に済めばそれでいいが、もし、なんかあった場合、どちらにしても俺達をシレジアから出さない、と言うか、無事に帰さないつもりだろう」

 エミの呟くような声に続けて、俺はそう言った。

「無事に帰さない、といいますと?」
「飛空船の事故に見せかけて墜落死、とかな」

 ミーラの問いかけに、俺は端的に答えた。
 アシル王子は、どこか脂汗をかいたような顔をしている。

「ほんっとにめんどくせぇ話に、半ば無理矢理首を突っ込まされちまったが、1つだけ条件がある、それが通れば、引き受けてもいいぞ」
「本当ですか!?」

 アシル王子は、顔をぱっ、と明るくして、そう言った。

「おっと、アシル殿下。こういう時はきちんと相手の条件を聞いてから判断した方がよろしいぞ」
「そうねー、アルヴィン、突拍子もない事言い出しそうだし」

 姉弟子は、真面目な表情で、そう言ったのだが、キャロが、なぜだか面白そうに笑いながら、そう言った。

「その、条件というのは?」

 アシル王子が、改めて訊いてくる。

「俺達は、立太子の儀での国王陛下とシグル殿下の謀殺は食い止める。だが、あとのことは知らん。シレジアがどんな騒ぎになっても、責任とらん。そう言う事態になったら、俺らは陸路ででも帝国に帰る」

 俺は、すっとぼけたような声を出して、そう言った。

「追手を放つのはいいが、こちらは西方の魔女ディオシェリルの直弟子が2人に、後のメンバーもドラゴン・スレイヤーの称号を受けている。それを承知で、ということになる」

 俺が言うと、アシル王子は難しい顔をして押し黙ってしまった。

「最悪の場合、シレジアがいくつかの勢力に別れたら、帝国はシレジアに対して挙兵するかも知れない。俺が直接挙兵を促すようなことはしないがな」

 俺は、表情を険しくしつつ、そう言ってから、

「姉弟子も、それでいいですよね?」

 と、姉弟子の表情を覗き込むようにして、そう訊ねた。
 姉弟子の表情も、険しい。

「ああ、私もアルヴィンと同意見だ。帝国には帰る、だからといって陛下に挙兵の進言はしないさ。ただ、アルヴィンが言ったように、帝国西方の領主達が黙っている保証はできない」

「…………」

 俺と、姉弟子の言葉とに、アシル王子はしばらく押し黙ってしまっていたが、やがて、

「すみません、父上と、シグルの事を、助けてやってください」

 と、懇願するような声で、言ってきた。

「解った。それじゃあ、それだけはなんとかする。ただし、他のことは本当に何一つ責任取らないし、取れない。それでよろしいですね?」

「はい、よろしくお願いします!」


 アシル王子を帰した後、メンバーはそのままロビーで話を続けた。

「でも、シグル王子の立太子に反対している人って、誰なのかしら?」

 キャロが、怪訝そうな顔をしながら、そう言った。

「多分、この国の地方の領主だろう」

 俺は、あっさりとそう答える。

「ガスパル王は焦りすぎたんだ。それまで領主の権限だった兵力の準備を、いきなり国家の中央に取られます、なんてなったら、反発するのは当然さ」

 それに、ガスパル王は同時に並行して行うべき改革をやらなかった、ただ、国防軍の集約を行っただけだったんだ。だから、反発も受けている。
 と、俺は、口には出さずに、付け加えた。

「で、実際どうやって、ガスパル王やシグル王子への襲撃を防ぐつもりなの?」

 キャロが訊ねてくる。
 うん、実はね、それ、俺も考え中なんだよね。

「俺と姉弟子は腹痛でも起こしたってことにして、キャロかエミを使節団臨時団長にして、俺達は舞台の下にでも隠れてます?」
「お前、大見得は切ったはいいけど、結局いきあたりばったりじゃしょうがないぞ」

 俺がそう言うと、姉弟子が苦笑しながらそう言った。
 だってしょうがないじゃん、こんなことになるとは流石に露とも思ってなかったもん。

「それなら私に任せておけ。何、魔導の研究と研鑽はお前だけのものじゃないってことだ」
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