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第13話 遺跡調査でセカイの正体を知る。
Chapter-52 (第一部・完)
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「アルヴィン! しっかりして、アルヴィン!!」
キャロが、必死に俺の名前を呼ぶ。
「うげぇ……おげぇえぇぇぇっ」
俺は、その事実に、耐えられず、その場にうずくまって、吐いた。
胃の中のものをすべて吐き出して、なお、胃液の残滓を、吐き出した。
「大丈夫!? アルヴィン! しっかり!!」
キャロの声は、しっかりと聞こえていた。
…………やがて、胃の中のものをすべて、内臓ごと吐き出す勢いで吐き出してから、俺は、ようやく、ふぅ、はぁ、と、荒い息をしつつも、なんとか身を起こす。
「キャロ、戻ろう……」
俺は、なんとか、そう言った。
「え、ええ」
キャロは、戸惑いつつも、同意の声を出した。
「アルヴィンには……ここが、なんなのか、解るのね?」
「解る…………そして、ドラゴンの言ったとおりだ、ここに生身の人間は、長くいるべきじゃない」
険しい顔をして訊いてくるキャロに、俺は、そう答えた。
「わかったわ」
キャロは、そう言いつつ、多少よろめく俺に肩を貸すようにして、2人で、もと来た道を引き返した。
俺達は、ドラゴンが示した時間より早く、ドラゴンと皆が待っているところへ戻ってきた。
「なんだ、アルヴィン? だいぶ衣装が、汚れちまってるみたいだが……それに、なんかお前、臭うぞ?」
「うん、ちょっと、あってね」
ジャックが、顔をしかめながら言うと、俺の代わりに、キャロが、そう答えてくれた。
「すみません、姉弟子、先に皆を連れて、上層に移動してもらえますか?」
「? わかった。お館様に報告できる目処が立ったんなら、それでいいが」
「それは、上層に戻ってから、お話します」
キャロも含め、姉弟子に、全員を上へ連れて行くよう、頼んだ。
「アルヴィン、大丈夫なのですか!?」
ミーラは、俺のことを心配して、訊いてくるが、
「大丈夫だ、俺は、ちょっと、このドラゴンと……2人きりで、話がしたいんだ」
「…………行こう、多分、アルヴィンは大丈夫。この場に残ろうとする方が、迷惑になる」
俺が言うと、エミも、なにかを感じ取ったかのように、少し険しい顔で、ミーラにそう言った。
少し後ろ髪を引かれる様子のミーラを連れて、姉弟子達が階段を上がっていった、それを確認した後。
「お前達……これと似たような遺跡を、他にも封印してないか? あと2つ……いや、3つか」
俺は、おもむろにドラゴンに問いかけた。
「なぜ、そんなことまで解る?」
「質問しているのはこっちだ、答えろ!」
質問を質問で帰しているドラゴンに、俺は腹を立てたかのように、怒鳴り声を上げた。
「距離まではわからないが、大体の場所も言ってやろう。最も古いものは、ここからはるか西北西の方角。次が、そこと、こことを、世界の反対周りに繋いだ線の上に近いところ、で、東寄り。そして、3つ目は、1つ目の場所のほぼ真東、やや南、と言ったところだ」
「そこまで、解っているのか……そうだ、我々は、そこに残された遺産を、今の人類が安逸に触れないよう、守っている」
「正しい判断だ」
観念したように言うドラゴンに、俺は妙に可笑しな気分になりながら、そう言った。
「お前はどうしたい? この遺物は、たしかに古代の文明の、技術の遺品の塊だ。一部でも、持って帰りたいのではないか?」
「そうでもない、まだ、自分から寿命縮めには行きたくないんでね」
「なるほど」
俺の言葉に、ドラゴンは妙に感心したように言った。
確かに、もし、魔導師や鍛冶師を、ここに呼んで、技術を回収できれば、今の文明は、飛躍的に進化できるだろう。
だが、同時に、それは、破滅の扉の鍵を外すのと、同義だ。
何より、ここに生身の人間が長くいる事自体が、危険だろう。自らを害する、ありとあらゆるものから、身を守る術があるエンシェント・ドラゴンだけが、この場を封じていられるのだ。
そして、俺は、同時に、ある仮説を立てていた。
「俺も戻る……皆に、説明する義務があるからな」
「そうか……」
何故か、ドラゴンは、名残惜しそうに、言った。
「ああ、縁があったら、また会おう」
「ああ、さらばだ……」
俺とドラゴンは別れを交わし、俺は、皆を追って階段を上っていった。
「アルヴィン!」
俺が、第2層に着くと、皆が、俺の顔を見て、一斉に声を出した。
「大丈夫だったのですか?」
「ああ、別に、ドラゴンとタイマンやってたわけじゃないよ」
あまりに心配そうなミーラに、俺は苦笑して、そう言った。
「それで、姉弟子」
俺は、早速姉弟子の方を向いた。
「この遺跡は、封印してください。今の人間には、とても扱いきれないものが、埋まっています。そして、それを守るためには、エンシェント・ドラゴンは、あらゆる手段を使ってくるでしょう」
「そう言うだろうとは、思っていたが、もう少し、説明してくれないか?」
姉弟子は、納得しきれないと言った様子で、そう言った。
「そうですね、それでは、俺の転生の話からしましょう」
俺はまず、そう言って、姉弟子に、他の4人が知っている、俺の転生の話をした。
「なるほどな。しかし、それとここを封印しなければならない事実と、どう関係があるんだ?」
姉弟子は、少し疑問を持った様子で、訊ねてきた。
まぁ、今説明した、今までの認識だと、話として飛躍してしまうからな。
「はい、俺は、ずっと、異世界から転生してきたんだと思っていました。ですが、転生は事実でも、世界転移をしたわけではないのかもしれない、ということなんです」
「どういうことだ?」
ジャックが、反射的に聞き返してくる。
「俺が転生してきた、元の世界は、今のこの世界の、はるかな過去……その可能性が、高いんだ」
実際には、違うだろう。
俺にとって、ここは、小説『転生したら辺境貴族の末っ子でした』という、創作物の世界だからだ。
だが、俺はその結末を知らないし、あるいは、完結しているという小説の中でも、語られてはいないのかもしれない。
だが、そう言う世界として設計されている。
そう考えれば、辻褄が合う。
だとすれば、そう説明した方が、みんなには解りやすいはずだ。
「じゃあ、この遺跡が、遺跡じゃなかった時代から、転生してきた──そう言う、事?」
エミが言う。
俺は、頷いた。
石炭や石油がなかなか見つからないこと。
それは、原始的な方法で採掘できる分は採り尽くされてしまっているから。
傍証は他にもある。
言葉の壁がないこと。
転生モノであるがゆえにご都合主義のものと考えていたが、最初から、俺以外、いや俺自身も含めた皆が喋っているのが、実は日本語なのだとすれば、説明がつく。
それに、文を書く文字こそ全く違うはずなのに、何故か使われている、アラビア数字。
そして、4つの、負の遺産。
ウィンズケール。
スリーマイル・アイランド。
チェルノブイリ。
そしてここ────────福島第一。
「ここのそれを始めとして、エンシェント・ドラゴンが守っている遺跡は、国が滅びかけるほどの…………そうアクシデントを起こした痕なんだ」
「国が滅びる……」
「実際に、遠因になって滅びた国もあったよ」
ミーラが、息を呑んで出した声に、俺はそう言った。
みんなのイメージとは違うかもしれないが、1つの大国が崩壊したのは確かな事実だ。
「将来、今を生きる人間が、それを御するに足る叡智を得るまでは、ここは、封じておいたほうがいい」
「そうか…………」
姉弟子は、ため息交じりに、そう言った。
「だが、エンシェント・ドラゴンが守護についているのでは、どのみち手も足も出ないも当然だし、お館様にはなんとか説明しよう」
「すみません。俺からも、言える事は言いますから」
その後。
まず、エバーワイン男爵に、まずエンシェント・ドラゴンと、そしてここの遺跡の危険性を遠回しに伝え、遺跡発掘は諦めてもらうことになった。
「アドラーシールム西方の魔女、その直弟子が2人揃って、どうにもならないというのであれば、私がどうすることもできまい……」
男爵は、残念がってはいたが、結果的には、理解してくれた。
「それに、このままではキャロルの花嫁姿を見損なってしまうことになるだろうからな」
「な、なに言ってるのよ、父上ったら……」
父親の言葉に、キャロルは照れくさそうな表情をして、どこか拗ねたように言う。
「いや、姉はスチャーズ準男爵の公子に嫁がせたのですが、まさかキャロルの方がこんな大当たりを引くとは、思いもよらなかった」
男爵は、そう言って笑った。もう、遺跡なんかより、こっちの方が興味あるらしい。
…………
……ん?
今、長女の嫁ぎ先がスチャーズ準男爵の公子って言わなかったか?
「ははーん、なるほど、ということは、俺とアルヴィンは義兄弟の仲になるってことだな」
ジャックが、何故か面白そうに、そう言ってきた。
「ならば、私は姉弟子から、義理とは言え本物の姉になるのか」
姉弟子まで悪ノリしてやがる……つうか、お前らももうさっさとくっついちゃえよ、そして末永く爆発しろ。
その後、エバーワイン男爵領の領都で何泊かした後、俺達はブリュサムズシティへの帰途についた。
「エンシェント・ドラゴンに、生身の人間には扱いかねる遺物……それでは、流石に穿り返すわけには、行かないね。わかった。あの遺跡は封印するとしよう」
ブリュサンメル上級伯は、少し遠回しの説明でも、打てば響くように納得してくれ、遺跡の封印は決まった。
「ただ……その、我々の処遇なんですが……」
上級伯の依頼の本意を叶えたとは言い難いため、報酬なし、カリキュラム免除もなし……と言われても、仕方ないかと思っていたのだが、
「いや、たしかに依頼の内容は果たされているよ。内部の探索。それが、条件だったはずだからね。むしろ、根本的なところまで暴いてきてくれたのだから、報酬の上乗せも考えなければならないところだ」
と、上級伯は言ってくれた。
結果として、報酬の増額分は雀の涙ほどだったものの、俺達は、卒業式を終えて冒険者免許を得るまで、少し早めの春休みとなった。
もっとも、身体を鈍らせてはいけないと、各自自己鍛錬は怠らなかったのだが。
俺も、エミに剣の鍛錬をつけてもらい、まあ護身術程度には、剣も使えるようになった。
そうして、後は卒業を待つばかり。
それが終われば……いよいよ、領地入り、アルヴィン・バックエショフ準男爵としての生活が待っていた。
キャロが、必死に俺の名前を呼ぶ。
「うげぇ……おげぇえぇぇぇっ」
俺は、その事実に、耐えられず、その場にうずくまって、吐いた。
胃の中のものをすべて吐き出して、なお、胃液の残滓を、吐き出した。
「大丈夫!? アルヴィン! しっかり!!」
キャロの声は、しっかりと聞こえていた。
…………やがて、胃の中のものをすべて、内臓ごと吐き出す勢いで吐き出してから、俺は、ようやく、ふぅ、はぁ、と、荒い息をしつつも、なんとか身を起こす。
「キャロ、戻ろう……」
俺は、なんとか、そう言った。
「え、ええ」
キャロは、戸惑いつつも、同意の声を出した。
「アルヴィンには……ここが、なんなのか、解るのね?」
「解る…………そして、ドラゴンの言ったとおりだ、ここに生身の人間は、長くいるべきじゃない」
険しい顔をして訊いてくるキャロに、俺は、そう答えた。
「わかったわ」
キャロは、そう言いつつ、多少よろめく俺に肩を貸すようにして、2人で、もと来た道を引き返した。
俺達は、ドラゴンが示した時間より早く、ドラゴンと皆が待っているところへ戻ってきた。
「なんだ、アルヴィン? だいぶ衣装が、汚れちまってるみたいだが……それに、なんかお前、臭うぞ?」
「うん、ちょっと、あってね」
ジャックが、顔をしかめながら言うと、俺の代わりに、キャロが、そう答えてくれた。
「すみません、姉弟子、先に皆を連れて、上層に移動してもらえますか?」
「? わかった。お館様に報告できる目処が立ったんなら、それでいいが」
「それは、上層に戻ってから、お話します」
キャロも含め、姉弟子に、全員を上へ連れて行くよう、頼んだ。
「アルヴィン、大丈夫なのですか!?」
ミーラは、俺のことを心配して、訊いてくるが、
「大丈夫だ、俺は、ちょっと、このドラゴンと……2人きりで、話がしたいんだ」
「…………行こう、多分、アルヴィンは大丈夫。この場に残ろうとする方が、迷惑になる」
俺が言うと、エミも、なにかを感じ取ったかのように、少し険しい顔で、ミーラにそう言った。
少し後ろ髪を引かれる様子のミーラを連れて、姉弟子達が階段を上がっていった、それを確認した後。
「お前達……これと似たような遺跡を、他にも封印してないか? あと2つ……いや、3つか」
俺は、おもむろにドラゴンに問いかけた。
「なぜ、そんなことまで解る?」
「質問しているのはこっちだ、答えろ!」
質問を質問で帰しているドラゴンに、俺は腹を立てたかのように、怒鳴り声を上げた。
「距離まではわからないが、大体の場所も言ってやろう。最も古いものは、ここからはるか西北西の方角。次が、そこと、こことを、世界の反対周りに繋いだ線の上に近いところ、で、東寄り。そして、3つ目は、1つ目の場所のほぼ真東、やや南、と言ったところだ」
「そこまで、解っているのか……そうだ、我々は、そこに残された遺産を、今の人類が安逸に触れないよう、守っている」
「正しい判断だ」
観念したように言うドラゴンに、俺は妙に可笑しな気分になりながら、そう言った。
「お前はどうしたい? この遺物は、たしかに古代の文明の、技術の遺品の塊だ。一部でも、持って帰りたいのではないか?」
「そうでもない、まだ、自分から寿命縮めには行きたくないんでね」
「なるほど」
俺の言葉に、ドラゴンは妙に感心したように言った。
確かに、もし、魔導師や鍛冶師を、ここに呼んで、技術を回収できれば、今の文明は、飛躍的に進化できるだろう。
だが、同時に、それは、破滅の扉の鍵を外すのと、同義だ。
何より、ここに生身の人間が長くいる事自体が、危険だろう。自らを害する、ありとあらゆるものから、身を守る術があるエンシェント・ドラゴンだけが、この場を封じていられるのだ。
そして、俺は、同時に、ある仮説を立てていた。
「俺も戻る……皆に、説明する義務があるからな」
「そうか……」
何故か、ドラゴンは、名残惜しそうに、言った。
「ああ、縁があったら、また会おう」
「ああ、さらばだ……」
俺とドラゴンは別れを交わし、俺は、皆を追って階段を上っていった。
「アルヴィン!」
俺が、第2層に着くと、皆が、俺の顔を見て、一斉に声を出した。
「大丈夫だったのですか?」
「ああ、別に、ドラゴンとタイマンやってたわけじゃないよ」
あまりに心配そうなミーラに、俺は苦笑して、そう言った。
「それで、姉弟子」
俺は、早速姉弟子の方を向いた。
「この遺跡は、封印してください。今の人間には、とても扱いきれないものが、埋まっています。そして、それを守るためには、エンシェント・ドラゴンは、あらゆる手段を使ってくるでしょう」
「そう言うだろうとは、思っていたが、もう少し、説明してくれないか?」
姉弟子は、納得しきれないと言った様子で、そう言った。
「そうですね、それでは、俺の転生の話からしましょう」
俺はまず、そう言って、姉弟子に、他の4人が知っている、俺の転生の話をした。
「なるほどな。しかし、それとここを封印しなければならない事実と、どう関係があるんだ?」
姉弟子は、少し疑問を持った様子で、訊ねてきた。
まぁ、今説明した、今までの認識だと、話として飛躍してしまうからな。
「はい、俺は、ずっと、異世界から転生してきたんだと思っていました。ですが、転生は事実でも、世界転移をしたわけではないのかもしれない、ということなんです」
「どういうことだ?」
ジャックが、反射的に聞き返してくる。
「俺が転生してきた、元の世界は、今のこの世界の、はるかな過去……その可能性が、高いんだ」
実際には、違うだろう。
俺にとって、ここは、小説『転生したら辺境貴族の末っ子でした』という、創作物の世界だからだ。
だが、俺はその結末を知らないし、あるいは、完結しているという小説の中でも、語られてはいないのかもしれない。
だが、そう言う世界として設計されている。
そう考えれば、辻褄が合う。
だとすれば、そう説明した方が、みんなには解りやすいはずだ。
「じゃあ、この遺跡が、遺跡じゃなかった時代から、転生してきた──そう言う、事?」
エミが言う。
俺は、頷いた。
石炭や石油がなかなか見つからないこと。
それは、原始的な方法で採掘できる分は採り尽くされてしまっているから。
傍証は他にもある。
言葉の壁がないこと。
転生モノであるがゆえにご都合主義のものと考えていたが、最初から、俺以外、いや俺自身も含めた皆が喋っているのが、実は日本語なのだとすれば、説明がつく。
それに、文を書く文字こそ全く違うはずなのに、何故か使われている、アラビア数字。
そして、4つの、負の遺産。
ウィンズケール。
スリーマイル・アイランド。
チェルノブイリ。
そしてここ────────福島第一。
「ここのそれを始めとして、エンシェント・ドラゴンが守っている遺跡は、国が滅びかけるほどの…………そうアクシデントを起こした痕なんだ」
「国が滅びる……」
「実際に、遠因になって滅びた国もあったよ」
ミーラが、息を呑んで出した声に、俺はそう言った。
みんなのイメージとは違うかもしれないが、1つの大国が崩壊したのは確かな事実だ。
「将来、今を生きる人間が、それを御するに足る叡智を得るまでは、ここは、封じておいたほうがいい」
「そうか…………」
姉弟子は、ため息交じりに、そう言った。
「だが、エンシェント・ドラゴンが守護についているのでは、どのみち手も足も出ないも当然だし、お館様にはなんとか説明しよう」
「すみません。俺からも、言える事は言いますから」
その後。
まず、エバーワイン男爵に、まずエンシェント・ドラゴンと、そしてここの遺跡の危険性を遠回しに伝え、遺跡発掘は諦めてもらうことになった。
「アドラーシールム西方の魔女、その直弟子が2人揃って、どうにもならないというのであれば、私がどうすることもできまい……」
男爵は、残念がってはいたが、結果的には、理解してくれた。
「それに、このままではキャロルの花嫁姿を見損なってしまうことになるだろうからな」
「な、なに言ってるのよ、父上ったら……」
父親の言葉に、キャロルは照れくさそうな表情をして、どこか拗ねたように言う。
「いや、姉はスチャーズ準男爵の公子に嫁がせたのですが、まさかキャロルの方がこんな大当たりを引くとは、思いもよらなかった」
男爵は、そう言って笑った。もう、遺跡なんかより、こっちの方が興味あるらしい。
…………
……ん?
今、長女の嫁ぎ先がスチャーズ準男爵の公子って言わなかったか?
「ははーん、なるほど、ということは、俺とアルヴィンは義兄弟の仲になるってことだな」
ジャックが、何故か面白そうに、そう言ってきた。
「ならば、私は姉弟子から、義理とは言え本物の姉になるのか」
姉弟子まで悪ノリしてやがる……つうか、お前らももうさっさとくっついちゃえよ、そして末永く爆発しろ。
その後、エバーワイン男爵領の領都で何泊かした後、俺達はブリュサムズシティへの帰途についた。
「エンシェント・ドラゴンに、生身の人間には扱いかねる遺物……それでは、流石に穿り返すわけには、行かないね。わかった。あの遺跡は封印するとしよう」
ブリュサンメル上級伯は、少し遠回しの説明でも、打てば響くように納得してくれ、遺跡の封印は決まった。
「ただ……その、我々の処遇なんですが……」
上級伯の依頼の本意を叶えたとは言い難いため、報酬なし、カリキュラム免除もなし……と言われても、仕方ないかと思っていたのだが、
「いや、たしかに依頼の内容は果たされているよ。内部の探索。それが、条件だったはずだからね。むしろ、根本的なところまで暴いてきてくれたのだから、報酬の上乗せも考えなければならないところだ」
と、上級伯は言ってくれた。
結果として、報酬の増額分は雀の涙ほどだったものの、俺達は、卒業式を終えて冒険者免許を得るまで、少し早めの春休みとなった。
もっとも、身体を鈍らせてはいけないと、各自自己鍛錬は怠らなかったのだが。
俺も、エミに剣の鍛錬をつけてもらい、まあ護身術程度には、剣も使えるようになった。
そうして、後は卒業を待つばかり。
それが終われば……いよいよ、領地入り、アルヴィン・バックエショフ準男爵としての生活が待っていた。
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