異世界転生モノの主人公に転生したけどせっかくだからBルートを選んでみる。

kaonohito

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第13話 遺跡調査でセカイの正体を知る。

Chapter-48

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 問題の古代遺跡というのは、ブリュサンメル上級伯領の南東、なんと、キャロの実家、エバーワイン男爵領の中にあった。

 南東部と言っても、ブリュサンメル上級伯領と、我が実家の間に横たわっている山地の北側に存在しており、そこまで交通の便は悪くない。

 領都ブリュサムズシティからは、馬車で5日ほど。まぁ、例によって上級伯が馬車の手配をしてくれたから、駅馬車の乗り継ぎの心配もなく、俺達は揺られていればよかったんだが。

 この世界、もうサスペンションが登場していて、馬車といえど乗り心地はそこそこのもの……なのだが、まだオイルダンパーのショックアブソーバーが無いので、ちょっとデコボコ道を飛ばすとビョンビョン跳ねて会話どころじゃなくなる。

 また、直行便の馬車を手配してくれたとは言え、そこは馬車。たまに駅馬車の駅に寄って、馬を交換しなければならない。

 鉄道ができれば、楽なんだがな。蒸気機関が存在してるんだから、あと一歩の気もするが。
 でも、なんでかこの世界、そろそろ発見されてていいはずの化石燃料、石炭やら石油やらがまだ見つかってないんだよね。

 そんな行程をこなしながら、俺達は目的のエバーワイン男爵領に入った、わけなんだが……

「一応、領都に寄って、エバーワイン男爵に挨拶をしていきたいんですが……」
「うん? ……うん、ああそうか、お前さんがアトリー・エバーワイン卿を無視はできないな」

 姉弟子が、最初、不思議そうな顔をしたが、納得したというような顔で、そう言った。
 実際、力関係なら、上級伯の直接の依頼を持った俺達、しかも位では下とはいえ、より大きな領地を有する俺が、そこまで気にする必要はない。

 が、それ以上に問題がある。
 つまり、結婚相手の親に挨拶という超・重要イベントだ。

「アルヴィン、緊張してる?」
「まぁな……」

 エミには隠せないか。
 そりゃね、緊張するなって方が無理ですよ。こんな初体験イベント。

「ま、現世では初めての体験ってことになるからな。しかも相手は、位では自分より上の男爵ときてる」

 ジャックが、苦笑しながら言った。

「現世も何も、まるっきり初体験だよ」
「え?」

 隣に座っていたキャロが、一瞬呆気にとられたような表情をする。

「俺は、前世では独身のままだったの」
「って、ホントか」

 ジャックが、一転、唖然としたような表情で、そう言った。

「36でしょ、普通は結婚してても……」

 キャロが言う。

「俺の前世の世界では、成人は20歳だったんだ……」
「ああなるほど………………ってそれでも遅いわよ!」

 だろうなぁ。
 晩婚化が進んだ世の中だったとは言え、35を過ぎたところでしっかり婚期を逃した自覚はあったし。

「学生の頃はあまり異性と交流しなかったし、社会人になってからは……説明したよね」
「……そうでしたね」

 ミーラが、落ち込んだかのようなような声を出した。

 …………って、あれ?

「なんでミーラが知ってんの?」

 俺は、確かミーラにはまだ、転生、前世の記憶の事は話したことがなかったはずだ。

 すると、キャロが気まずそうな顔をし、エミもまた口元を少し苦そうにした。

「あ、それは……」
「ごめん、私達が話した……」

 俺が訊き返すと、ミーラが少し戸惑った声を出した後、エミが少し申し訳無さそうに言った。

「ってことは、この中で、そのあたりの事情が解らないのは私だけってことか」

 姉弟子が、苦笑しながら言う。

「すみません姉弟子、この件が片付いた折にでも説明しますんで」
「いいよいいよ、別に焦りゃしない。お前が話したくなったら話してくれればいいさ」

 姉弟子は、軽く手を振りながら、笑い飛ばすようにそう言った。

 一方。

「そうかぁ……なるほどね……」

 キャロは、妙に嬉しそうにしている。

「キャロ?」
「あ、ごめんごめん、不謹慎だとは思ったんだけどね……そうか、アルヴィンの何もかもが、私が初めてってことか……んふふ」

 女性の方もストイックな男性には多少興奮することもあるっていうのは、前世の創作物の中の話かと思ったが、そうでもないのかな……


 一旦、馬車はエバーワイン男爵の領都屋敷についたが、俺達は下車することなく、屋敷の前で待たされた。
 あれ、これって歓迎されていないってことか……?

 俺が少し不安に思った時、1人の、中年だがスマートな女性が、ドレス姿で、護衛の衛士1人を伴って出てきた。

「お母様!」
「え!?」

 キャロルの声に、俺は驚いたように聞き返してしまう。

「このような形で申し訳ありません。お初にお目にかかります。私はティナ・レッド・ハリス・エバーワイン。キャロル・ロゼの母親で、我が領主、ヴィクター・ホワイト・アトリー・エバーワインの妻でございます」

 そう、丁寧に言って、中年だがまだ充分に魅力的な美女が、一礼した。

「それで、アルヴィン・バックエショフ卿はどちらで」
「あ……す、すいません」

 前世の社畜魂のフィードバックが今更出たのか、俺は一気に緊張して、そう言ってしまう。

「自分が、マイケル・アルヴィン・バックエショフです」
「そうでしたか、お優しそうな方で良かったわね、キャロル」

 ティナ夫人は、そう柔和に笑って、そう言った。

「申し訳ないのですが、夫は今回発見された古代遺跡で、今陣頭指揮に追われておりまして。皆様方は、このままそちらに入っていただけたらと」

 なるほど、そう言うことか。
 下車を許さなかった、いやわざわざ下車させなかった理由は解った、が……

「なんか……出発する時より、話が大袈裟になってませんか?」

 馬車のまま遺跡に向けて移動しながら、俺は姉弟子に言った。

「ああ、大して魔獣も出ないって話だったんだがな」

 姉弟子も、険しい顔をして言う。

 ティナ夫人曰く、エバーワイン男爵が独自に雇った冒険者の探索班を組織したが、それが戻らないのだと言う。しかも、2隊もだ。
 絶対的な戦闘能力はともかく、冒険者としては、冒険者ハンター免許ライセンスを受けて7年から10年くらいの、脂の乗り切ったベテランだ。それが、戻らないのだから、事は大きい。

「でも、あれだろ、お前とリリーさんがいれば、大抵の相手はなんとかなるだろ?」

 ジャックが、気軽そうにそう言った。

「いや」

 だが、俺は、深刻そうに言う。

「俺や姉弟子を過信はしないでくれ。もし、俺や姉弟子が身動き取れないような事態になったら、その時は構わない」

 俺は、ひとつの覚悟を持って、その言葉を口にした。

「俺がそれを食い止めている間に、みんなは逃げるんだ」
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