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第12話 姉弟子、決闘する。
Chapter-44
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「本当に……本当にありがとうございます」
姉弟子とともに、市民局で登録を終えた後。
アイリス────アイリス・シャーロテスは、姉弟子とともに、俺のところに来て、平身低頭してお礼を言ってきた。
「いやいやいや、俺は大したことはしてないよ……」
俺は、慌てて、手のひらを突き出すようにして振りながら、そう言った。
「今回のは、ホントに姉弟子頼みだったっていうか……」
いや、ホントに。
俺がやってたら、あのモーガンのトリックを見破れていたかどうか。
姉弟子、俺が言ったつまんないことよく覚えてたな…………
「よかったな、アイリス」
「あ……アイザック様」
アイリスに、アイザックさんが声をかけると、アイリスは、少し戸惑ったような顔をして、言う。
うん、そうなんだよね。
実際はともかく、書類上はこの2人、兄妹ではなくなってしまった。
今回の場合、決闘の結果、姉弟子がドーン伯爵から取り上げた奴隷、つまりアイリスを、市民登録した形になる。
実態はどうあれ、姉弟子が分捕った時点でアイリスとドーン伯爵家の間に関係はなくなった。姉弟子はブリュサンメル上級伯の寄騎であってドーン伯爵家と関係ないしな。
アイリスが名乗ることになった姓「シャーロテス」も、姉弟子のミドルネーム「シャーロット」が由来。平民になった時点で保有と被保有の関係ではなくなるのだが、慣例的に解放奴隷を市民登録した後見人の名前に由来した新しい姓を名乗るようになってるんだよね。
従って、アイリスの縁戚者は、今は、書類上は姉弟子だけ。姉弟子自身、今は事実上天涯孤独だし。もっとも、ひょっとしたら近いうちにそうじゃなくなるかもだけど。
まぁ、それに関しては、俺がやっても「アルヴィンス」あたりになってたわけで、別段俺が気にしても仕方のないことではあるのだが……
「すみません、さんざん今まで、お世話になっておきながら……」
「いや、これで良かったんだ。私も身内から家名を穢すまいと、行動しなかったのが、お前をずっと苦しめていた原因になっていたんだからね」
そう、アイザックさんはもう少し穏便な方法を考えていた。
でも、頭に血が上った俺達が強引にアイリスさんをドーン伯爵家から引き剥がした形になってしまった。
「すみません、俺の短慮で、お2人の……その、仲を割いてしまったみたいで」
「とんでもありません!」
俺が、気まずく感じつつ言うと、アイザックさんは、今度は、彼が頭を下げて、そう言った。
「本当に、アイリスのことは、アルヴィン・バックエショフ卿にも、シャーロット・キャロッサ卿にも、感謝しても感謝しきれないほどです」
「いや……そこまでのことは、俺も姉弟子も、自分の感情から行動したようなものですし」
姉弟子も言っていた通り、気に入らないから行動した。
本当にそれだけなんだよね。
「まぁ、でもある意味、これで良かったのかもしれないじゃない」
「え?」
割り込んできたキャロの言葉に、俺は、少し間の抜けた声を返してしまった。
「アイリス、随分アイザックさんに懐いてるみたいだし」
あー……そう言うことか。
そうなんだよね、アイリスがもうドーン家とは縁のない人間になった以上、
この2人、結婚できちゃうんだよな。
「そ、そんな……別に、私は、アイザック様の事を、そのように見たことは……あ、ありません」
アイリスはそう言うものの、なんか顔を赤くして俯きがちになってしまった。
アイザックさんの方も、気まずそうにアイリスから視線をそらしている。
お互い、そう言う意識はなかったが、キャロに言われて、と言ったところか。
「そうなんですね、私は、てっきり……」
そう、口を挟んできたのは、今度はミーラ。
「てっきり、何?」
なんか知らんが、キャロはニタニタしながらミーラを見る。
「てっきり、アルヴィンが序列夫人を増やすのかと……」
はぁ?
「あの、俺ってそこまで節操なく見える?」
「その言葉には、説得力は無いんじゃない?」
キャロまでそれ言うか。
いやまぁ、確かにマイケル・アルヴィンだったら3人が4人どころの騒ぎじゃないハーレム形成やらかすんだけど。
「俺は、3人以外に夫人を増やす気はありません」
俺は、腕を組んで、そう言い切った。
「すみません」
ミーラが、少し申し訳無さそうに言った。
ま、3人を1人に絞れない俺が悪いってことは、解ってるんだけどな……
「だったらよ、アイザックさんの方を……──」
「ぶっ飛ばすぞお前」
ジャックの言葉に、俺は即座に言い返していた。
俺に男色の気はないぞ。
「なに早とちりしてんだよ」
ジャックは、困ったように眉をハの字のにして、そう言ってきた。
「アイザックさんに仕官してもらったらどうか……って言おうとしたんだよ」
え、あ、そっちか……
いけね、本当に早とちりだ。
「その話をいただけるのでしたら、願ってもないことですが!」
アイザックさんは、アピールするように、言ってきた。
「え、あでも俺、領地結構遠いですよ、ローチ伯領の東側ですけど……」
「かまいません!」
アイザックさんは、困惑気に言う俺に、身を乗り出すようにしてそう答えてから、急に、視線を外した。
「どのみち、私も実家には居辛いですし」
あ、まぁそりゃそうだろうな。
もっとも、普段はセオ兄と一緒に、警備兵の宿舎で暮らしているはずだが。
辺境貴族の元実家と違って、法衣貴族で実家が目と鼻の先、ともなると、色々やりづらいか。
「そうですね、それでしたらとりあえず、バックエショフ準男爵家で良いのでしたら、受けてもらえると……ですけど」
「よろしくお願いします!」
まぁ、少なくとも俺は、後3ヶ月、ブリュサムズシティの冒険者養成学校にいなきゃならんわけで。
その間、領内の事を見てくれる人間がいれば、それは助かるか……。
「それでは、お願いしてしまいます」
「はっ、何なりとお申し付けください」
アイザックさんは、俺の足元に跪く。
うんまぁ、原作でもこの人、実直で信頼の置ける人物だったはずだから、丁度いいな。
「それと、アイリスの方は……」
「ん? このままお前の帝都屋敷の面倒をみる、で良いんじゃないのか?」
俺が、アイリスの身の振り方に関して相談しようとすると、姉弟子が、何を今更、と言う感じで、言ってきた。
「いいんですか?」
「別に、うちの貧乏長屋に奉公人は大して要らないし、もう必要な人間はいるからねぇ」
俺が聞くと、姉弟子は、苦笑しながらそう言った。
「じゃあ、アイリスには、引き続き、この屋敷で使用人をやってもらう、ってことで」
「はい、解りました!」
アイリスも、少しだけ緊張した様子で、俺に対して元気よく返事をしてきた。
「な、なぁアルヴィン、俺にも仕官の口、ないか?」
「未成年の弟に仕官の口利き頼むとか、多少は恥ってものが無いんですか」
なんか、調子良さそうに、ついでに俺も、と言ってきたセオ兄に、俺はそう言い返す。
まぁ、気持ちはわからんでもないが。
「そこをなんとか、頼む」
「どのみち、俺だって今は自分の領地でしかクチは紹介できませんよ、良いんですか?」
拝み込んでくるようなセオ兄に、俺は困ったように言う。
俺だって、新参の準男爵なんだ。
ローチ伯や、そのローチ伯の他の寄騎に、口利きができるほどの立場ではない。
「姉弟子?」
「私にだってそんなクチはないよ」
一旦姉弟子に振ってみたが、色よい返事は来なかった。
「お館様の所も今は、貴族の子弟の仕官の口はいっぱいだしなぁ……」
「しょうがないですね……」
はぁ、と、俺はため息を付く。
「とりあえず、アイザックさんと一緒に俺の名代、それでいいですか?」
「良かった、恩に着るよ、アルヴィン」
いきなりニッコニコ顔になったセオ兄に、俺は、首を横に振りながらため息をついた。
姉弟子とともに、市民局で登録を終えた後。
アイリス────アイリス・シャーロテスは、姉弟子とともに、俺のところに来て、平身低頭してお礼を言ってきた。
「いやいやいや、俺は大したことはしてないよ……」
俺は、慌てて、手のひらを突き出すようにして振りながら、そう言った。
「今回のは、ホントに姉弟子頼みだったっていうか……」
いや、ホントに。
俺がやってたら、あのモーガンのトリックを見破れていたかどうか。
姉弟子、俺が言ったつまんないことよく覚えてたな…………
「よかったな、アイリス」
「あ……アイザック様」
アイリスに、アイザックさんが声をかけると、アイリスは、少し戸惑ったような顔をして、言う。
うん、そうなんだよね。
実際はともかく、書類上はこの2人、兄妹ではなくなってしまった。
今回の場合、決闘の結果、姉弟子がドーン伯爵から取り上げた奴隷、つまりアイリスを、市民登録した形になる。
実態はどうあれ、姉弟子が分捕った時点でアイリスとドーン伯爵家の間に関係はなくなった。姉弟子はブリュサンメル上級伯の寄騎であってドーン伯爵家と関係ないしな。
アイリスが名乗ることになった姓「シャーロテス」も、姉弟子のミドルネーム「シャーロット」が由来。平民になった時点で保有と被保有の関係ではなくなるのだが、慣例的に解放奴隷を市民登録した後見人の名前に由来した新しい姓を名乗るようになってるんだよね。
従って、アイリスの縁戚者は、今は、書類上は姉弟子だけ。姉弟子自身、今は事実上天涯孤独だし。もっとも、ひょっとしたら近いうちにそうじゃなくなるかもだけど。
まぁ、それに関しては、俺がやっても「アルヴィンス」あたりになってたわけで、別段俺が気にしても仕方のないことではあるのだが……
「すみません、さんざん今まで、お世話になっておきながら……」
「いや、これで良かったんだ。私も身内から家名を穢すまいと、行動しなかったのが、お前をずっと苦しめていた原因になっていたんだからね」
そう、アイザックさんはもう少し穏便な方法を考えていた。
でも、頭に血が上った俺達が強引にアイリスさんをドーン伯爵家から引き剥がした形になってしまった。
「すみません、俺の短慮で、お2人の……その、仲を割いてしまったみたいで」
「とんでもありません!」
俺が、気まずく感じつつ言うと、アイザックさんは、今度は、彼が頭を下げて、そう言った。
「本当に、アイリスのことは、アルヴィン・バックエショフ卿にも、シャーロット・キャロッサ卿にも、感謝しても感謝しきれないほどです」
「いや……そこまでのことは、俺も姉弟子も、自分の感情から行動したようなものですし」
姉弟子も言っていた通り、気に入らないから行動した。
本当にそれだけなんだよね。
「まぁ、でもある意味、これで良かったのかもしれないじゃない」
「え?」
割り込んできたキャロの言葉に、俺は、少し間の抜けた声を返してしまった。
「アイリス、随分アイザックさんに懐いてるみたいだし」
あー……そう言うことか。
そうなんだよね、アイリスがもうドーン家とは縁のない人間になった以上、
この2人、結婚できちゃうんだよな。
「そ、そんな……別に、私は、アイザック様の事を、そのように見たことは……あ、ありません」
アイリスはそう言うものの、なんか顔を赤くして俯きがちになってしまった。
アイザックさんの方も、気まずそうにアイリスから視線をそらしている。
お互い、そう言う意識はなかったが、キャロに言われて、と言ったところか。
「そうなんですね、私は、てっきり……」
そう、口を挟んできたのは、今度はミーラ。
「てっきり、何?」
なんか知らんが、キャロはニタニタしながらミーラを見る。
「てっきり、アルヴィンが序列夫人を増やすのかと……」
はぁ?
「あの、俺ってそこまで節操なく見える?」
「その言葉には、説得力は無いんじゃない?」
キャロまでそれ言うか。
いやまぁ、確かにマイケル・アルヴィンだったら3人が4人どころの騒ぎじゃないハーレム形成やらかすんだけど。
「俺は、3人以外に夫人を増やす気はありません」
俺は、腕を組んで、そう言い切った。
「すみません」
ミーラが、少し申し訳無さそうに言った。
ま、3人を1人に絞れない俺が悪いってことは、解ってるんだけどな……
「だったらよ、アイザックさんの方を……──」
「ぶっ飛ばすぞお前」
ジャックの言葉に、俺は即座に言い返していた。
俺に男色の気はないぞ。
「なに早とちりしてんだよ」
ジャックは、困ったように眉をハの字のにして、そう言ってきた。
「アイザックさんに仕官してもらったらどうか……って言おうとしたんだよ」
え、あ、そっちか……
いけね、本当に早とちりだ。
「その話をいただけるのでしたら、願ってもないことですが!」
アイザックさんは、アピールするように、言ってきた。
「え、あでも俺、領地結構遠いですよ、ローチ伯領の東側ですけど……」
「かまいません!」
アイザックさんは、困惑気に言う俺に、身を乗り出すようにしてそう答えてから、急に、視線を外した。
「どのみち、私も実家には居辛いですし」
あ、まぁそりゃそうだろうな。
もっとも、普段はセオ兄と一緒に、警備兵の宿舎で暮らしているはずだが。
辺境貴族の元実家と違って、法衣貴族で実家が目と鼻の先、ともなると、色々やりづらいか。
「そうですね、それでしたらとりあえず、バックエショフ準男爵家で良いのでしたら、受けてもらえると……ですけど」
「よろしくお願いします!」
まぁ、少なくとも俺は、後3ヶ月、ブリュサムズシティの冒険者養成学校にいなきゃならんわけで。
その間、領内の事を見てくれる人間がいれば、それは助かるか……。
「それでは、お願いしてしまいます」
「はっ、何なりとお申し付けください」
アイザックさんは、俺の足元に跪く。
うんまぁ、原作でもこの人、実直で信頼の置ける人物だったはずだから、丁度いいな。
「それと、アイリスの方は……」
「ん? このままお前の帝都屋敷の面倒をみる、で良いんじゃないのか?」
俺が、アイリスの身の振り方に関して相談しようとすると、姉弟子が、何を今更、と言う感じで、言ってきた。
「いいんですか?」
「別に、うちの貧乏長屋に奉公人は大して要らないし、もう必要な人間はいるからねぇ」
俺が聞くと、姉弟子は、苦笑しながらそう言った。
「じゃあ、アイリスには、引き続き、この屋敷で使用人をやってもらう、ってことで」
「はい、解りました!」
アイリスも、少しだけ緊張した様子で、俺に対して元気よく返事をしてきた。
「な、なぁアルヴィン、俺にも仕官の口、ないか?」
「未成年の弟に仕官の口利き頼むとか、多少は恥ってものが無いんですか」
なんか、調子良さそうに、ついでに俺も、と言ってきたセオ兄に、俺はそう言い返す。
まぁ、気持ちはわからんでもないが。
「そこをなんとか、頼む」
「どのみち、俺だって今は自分の領地でしかクチは紹介できませんよ、良いんですか?」
拝み込んでくるようなセオ兄に、俺は困ったように言う。
俺だって、新参の準男爵なんだ。
ローチ伯や、そのローチ伯の他の寄騎に、口利きができるほどの立場ではない。
「姉弟子?」
「私にだってそんなクチはないよ」
一旦姉弟子に振ってみたが、色よい返事は来なかった。
「お館様の所も今は、貴族の子弟の仕官の口はいっぱいだしなぁ……」
「しょうがないですね……」
はぁ、と、俺はため息を付く。
「とりあえず、アイザックさんと一緒に俺の名代、それでいいですか?」
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