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第8話 新メンバーを加えて準備も開始する。
Chapter-27
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「その……防具は難しいんですか?」
私、キャロルは、難しい顔をする鍛冶師のエズラに、そう訊ねていた。
「いや、防具ってさ、体格に合わせなきゃならないだろ? 鋼のものなら、ある程度は揃ってるんだけど、魔法素材製となるとなぁ……」
と、エズラはそう言ってきた。
「結構な値段になるってことか?」
そう訊ねるのは、ジャックだった。
もっとも、それだったら、私達、今は多少、無理ができるんだけど……
でも、エズラは、困ったように、言う。
「いや……いや、それも確かなんだが、問題は納期よ。オール魔法素材製の防具となると、それこそ半年、下手すりゃ1年は見てもらわないとなぁ、って話になるんだ」
「ううーん、流石に、それは困るわね……」
私も腕組みをして、困惑気に首をひねってしまった。
「ただ、基礎の部分が鋼で、それにミスリルで補強を入れるって程度のものなら、それこそ1日・2日で納品できないこともないんだけど、それならどうだい?」
エズラは、そう提案してきた。
「そうね、それなら、丁度いいかしら」
私は、首を上げ、ぱっと顔を明るくして、そう言った。
「よし、じゃあ、基礎になる防具を選ぼうか。鎧は2階なんだ。ついてきてもらっていいか?」
「ええ」
私が返事をし、エズラに続いて、2階の売り場へと階段を上がる。それにエミやアルヴィン、ジャック、それにミーラが、ぞろぞろと続いてくる。
「さて、どんなのがいいんだい?」
エズラが訊ねてきた。
「そうね、動きを阻害されない程度で、しっかりとしたブレストプレートなんか着けたいんだけど」
「え……」
私が言うと、アルヴィンとジャックが、軽く唖然としたように、声を上げて、ぽかんとしたような顔で、私を見てくる。
大体わかってる。私は今まで、ショルダーガードこそつけていたけど、胸を敢えて強調するような衣装をつけていたから、それが覆われてしまうのが、残念なんだろう。
なんのかんの言ってこの2人、結構スケベなのよね。まぁ、男の子だったら多少はそのくらいでいいんだろうけど。
「ブレストアーマーか。冒険者がよく使うから、種類は揃ってるよ、適当なのを、選んでくれるかな」
エズラはそう言ってきた。
私は、在庫品の中から、良さそうなのを選ぶ。
「これなんか、いい感じかしら」
私が選んだのは、張り出すようなネックガードのついた、ブレストプレートだった。
「それなら、丁度、お嬢さんに丁度いいサイズがあるかな。うん、これなら、明日にでも納品できるよ」
エズラは、明るい口調で、そう言った。
「それと、手甲に固定できる、両手武器と併用できる小型のバックラーなんかあるといいんだけど」
「それも結構種類あるよ。選んでくれるかな」
私が言うと、エズラはそう言って、その種の商品が置かれている棚に、私を案内してくれた。
グリズリーに襲われた時、腕をやられて、槍が使えなくなっちゃったから、とっさに攻撃を受け止められるバックラーが、欲しかったのよね。
オーソドックスなラウンドタイプから、魚のエイみたいな形をしたものまで、いろんな種類があったけど、私が最終的に選んだのは、真円に、腕の前後の自由が効くよう切り欠きがついたような感じの、小さめのバックラー。
「こっちも、補強するかい?」
「うーん、こっちは、不意打ちが防げればいいかな、って程度だから、余計に時間がかかるようだったら、なくてもいいけど」
エズラが訊いてきたので、私はそう答える。
「いや、こんなのはすぐだよ。明日中にはなんとかできると思う」
「そう、それならお願いするわ」
エズラがそう答えてきたので、私は、笑顔でそれをお願いすることにした。
一方、エミは、革のコートの中に収まるスリムなブレストプレートと、それから、脚を太ももまで覆うレッグガードを選んでいた。
レッグガードは、金属の覆いは前側だけだけど、それを固定するのも厚手の革のサポーターで、脚全体をガードするようになっている。
「って、エミ、そんなにゴテゴテ装備したら、動きづらいんじゃない?」
私が、少し唖然としながら訊ねると、エミは、ふるふる、と首を左右に振った。
「見た目の割には、動きづらくない」
「見た目の割には、ね……」
エミの戦闘スタイルは、軽いステップからの速攻での剣技だから、あまり動きをスポイルするような防具は、好まないと思っていたのだけど。
「アルヴィンに最初に助けてもらった時、私、脚さえやられなければ、なんとでもなっていたから」
「!」
エミの話を聞いて、私はハッとした。
そうか、エミも、あの時の反省を生かして、装備を充実させたかったのね。
「動きは、どうとでもカバーできる。だから、覆う方を、考える」
エミは、ピョンピョンと飛び跳ねるような仕種を私に見せながら、そう言った。
そうね、確かにそれはひとつの答えかもしれないわね。
私達が防具を選び終わって、それを加工するために作業所へと持っていこうとするエズラに、
「えっと、エズラ?」
と、アルヴィンが声をかけた。
「なんだい?」
エズラは、一度足を止めて、アルヴィンの方を向く。
「エズラは、やっぱり武器職人って感じの鍛冶師なのか?」
「いや……確かにそう自負はしているけど、まったくそれだけにこだわってるわけでもないかな」
アルヴィンの問いかけに、エズラはそう答えたけど……えっと、どういうことなのかしら?
「…………アルヴィンの領地で必要になる、鉄製品のこと?」
エミが、そう言うと、アルヴィンは、エミを見て、頷いた。
なるほど、それがあったわね。
「ああ、そう言う事なら、別に報酬さえ払ってくれれば、農具でもなんでも、作るよ」
気さくそうな感じで、エズラはそう言った。
「ひょっとしたら、ちょっと変わったものも頼むかもしれないが、大丈夫か?」
アルヴィンは、難しい顔をしたまま、エズラに再度訊ねた。
「それがどんな物によるかにもよるよ。場合によっては知り合いに振るかもだけど、ただ、大体のものはなんとかなると思ってくれていいんじゃないかな」
エズラは、やはり上機嫌そうに、そう答えた。
「そうか、じゃあ、その時が着たら、頼むわ」
「こちらこそ、特定の領主に贔屓にしてもらえると、助かるよ。よろしく頼む」
アルヴィンが笑顔になって言うと、エズラも、笑顔でそう答えた。
「それと……エズラさん」
と、今度は、ミーラがエズラに話しかけた。
「私の武具も、補強を頼んでもよろしいでしょうか?」
あ、そうね、これから先、私達と行動をともにするんなら、その方がいいわね。
「ああ、持ってきてくれれば、すぐに取りかかるよ」
「それじゃあ、よろしくお願いします」
エズラの答えに、ミーラは、そう言って頭を下げた。
「ところで、出来上がりの届け先は、聖愛教会でいいのかな?」
「あ…………」
いけない、その事をすっかり忘れていた。
「できれば、ローチ伯爵家の帝都屋敷に、持ってきてくれるとありがたい、あるいは報せてくれれば、こっちから取りにもいくるけど」
アルヴィンが、そう言った。
「ローチ伯爵家の帝都屋敷ね、了解。じゃあ、早速作業に取り掛かるわ」
そう言って、エズラは、1階奥の作業所に、向かっていった。
「皆様、本日は、どうもありがとうございました」
接客係の青年が、出てきてそう言う。多分、この人の方が、エズラより年下なんだろうな。
「いや、こちらこそ、よろしくお願いします。エズラさんにも、改めてそう言っていたと、お伝え下さい」
アルヴィンがそう言って、私達は、一旦、店を後にした。
私、キャロルは、難しい顔をする鍛冶師のエズラに、そう訊ねていた。
「いや、防具ってさ、体格に合わせなきゃならないだろ? 鋼のものなら、ある程度は揃ってるんだけど、魔法素材製となるとなぁ……」
と、エズラはそう言ってきた。
「結構な値段になるってことか?」
そう訊ねるのは、ジャックだった。
もっとも、それだったら、私達、今は多少、無理ができるんだけど……
でも、エズラは、困ったように、言う。
「いや……いや、それも確かなんだが、問題は納期よ。オール魔法素材製の防具となると、それこそ半年、下手すりゃ1年は見てもらわないとなぁ、って話になるんだ」
「ううーん、流石に、それは困るわね……」
私も腕組みをして、困惑気に首をひねってしまった。
「ただ、基礎の部分が鋼で、それにミスリルで補強を入れるって程度のものなら、それこそ1日・2日で納品できないこともないんだけど、それならどうだい?」
エズラは、そう提案してきた。
「そうね、それなら、丁度いいかしら」
私は、首を上げ、ぱっと顔を明るくして、そう言った。
「よし、じゃあ、基礎になる防具を選ぼうか。鎧は2階なんだ。ついてきてもらっていいか?」
「ええ」
私が返事をし、エズラに続いて、2階の売り場へと階段を上がる。それにエミやアルヴィン、ジャック、それにミーラが、ぞろぞろと続いてくる。
「さて、どんなのがいいんだい?」
エズラが訊ねてきた。
「そうね、動きを阻害されない程度で、しっかりとしたブレストプレートなんか着けたいんだけど」
「え……」
私が言うと、アルヴィンとジャックが、軽く唖然としたように、声を上げて、ぽかんとしたような顔で、私を見てくる。
大体わかってる。私は今まで、ショルダーガードこそつけていたけど、胸を敢えて強調するような衣装をつけていたから、それが覆われてしまうのが、残念なんだろう。
なんのかんの言ってこの2人、結構スケベなのよね。まぁ、男の子だったら多少はそのくらいでいいんだろうけど。
「ブレストアーマーか。冒険者がよく使うから、種類は揃ってるよ、適当なのを、選んでくれるかな」
エズラはそう言ってきた。
私は、在庫品の中から、良さそうなのを選ぶ。
「これなんか、いい感じかしら」
私が選んだのは、張り出すようなネックガードのついた、ブレストプレートだった。
「それなら、丁度、お嬢さんに丁度いいサイズがあるかな。うん、これなら、明日にでも納品できるよ」
エズラは、明るい口調で、そう言った。
「それと、手甲に固定できる、両手武器と併用できる小型のバックラーなんかあるといいんだけど」
「それも結構種類あるよ。選んでくれるかな」
私が言うと、エズラはそう言って、その種の商品が置かれている棚に、私を案内してくれた。
グリズリーに襲われた時、腕をやられて、槍が使えなくなっちゃったから、とっさに攻撃を受け止められるバックラーが、欲しかったのよね。
オーソドックスなラウンドタイプから、魚のエイみたいな形をしたものまで、いろんな種類があったけど、私が最終的に選んだのは、真円に、腕の前後の自由が効くよう切り欠きがついたような感じの、小さめのバックラー。
「こっちも、補強するかい?」
「うーん、こっちは、不意打ちが防げればいいかな、って程度だから、余計に時間がかかるようだったら、なくてもいいけど」
エズラが訊いてきたので、私はそう答える。
「いや、こんなのはすぐだよ。明日中にはなんとかできると思う」
「そう、それならお願いするわ」
エズラがそう答えてきたので、私は、笑顔でそれをお願いすることにした。
一方、エミは、革のコートの中に収まるスリムなブレストプレートと、それから、脚を太ももまで覆うレッグガードを選んでいた。
レッグガードは、金属の覆いは前側だけだけど、それを固定するのも厚手の革のサポーターで、脚全体をガードするようになっている。
「って、エミ、そんなにゴテゴテ装備したら、動きづらいんじゃない?」
私が、少し唖然としながら訊ねると、エミは、ふるふる、と首を左右に振った。
「見た目の割には、動きづらくない」
「見た目の割には、ね……」
エミの戦闘スタイルは、軽いステップからの速攻での剣技だから、あまり動きをスポイルするような防具は、好まないと思っていたのだけど。
「アルヴィンに最初に助けてもらった時、私、脚さえやられなければ、なんとでもなっていたから」
「!」
エミの話を聞いて、私はハッとした。
そうか、エミも、あの時の反省を生かして、装備を充実させたかったのね。
「動きは、どうとでもカバーできる。だから、覆う方を、考える」
エミは、ピョンピョンと飛び跳ねるような仕種を私に見せながら、そう言った。
そうね、確かにそれはひとつの答えかもしれないわね。
私達が防具を選び終わって、それを加工するために作業所へと持っていこうとするエズラに、
「えっと、エズラ?」
と、アルヴィンが声をかけた。
「なんだい?」
エズラは、一度足を止めて、アルヴィンの方を向く。
「エズラは、やっぱり武器職人って感じの鍛冶師なのか?」
「いや……確かにそう自負はしているけど、まったくそれだけにこだわってるわけでもないかな」
アルヴィンの問いかけに、エズラはそう答えたけど……えっと、どういうことなのかしら?
「…………アルヴィンの領地で必要になる、鉄製品のこと?」
エミが、そう言うと、アルヴィンは、エミを見て、頷いた。
なるほど、それがあったわね。
「ああ、そう言う事なら、別に報酬さえ払ってくれれば、農具でもなんでも、作るよ」
気さくそうな感じで、エズラはそう言った。
「ひょっとしたら、ちょっと変わったものも頼むかもしれないが、大丈夫か?」
アルヴィンは、難しい顔をしたまま、エズラに再度訊ねた。
「それがどんな物によるかにもよるよ。場合によっては知り合いに振るかもだけど、ただ、大体のものはなんとかなると思ってくれていいんじゃないかな」
エズラは、やはり上機嫌そうに、そう答えた。
「そうか、じゃあ、その時が着たら、頼むわ」
「こちらこそ、特定の領主に贔屓にしてもらえると、助かるよ。よろしく頼む」
アルヴィンが笑顔になって言うと、エズラも、笑顔でそう答えた。
「それと……エズラさん」
と、今度は、ミーラがエズラに話しかけた。
「私の武具も、補強を頼んでもよろしいでしょうか?」
あ、そうね、これから先、私達と行動をともにするんなら、その方がいいわね。
「ああ、持ってきてくれれば、すぐに取りかかるよ」
「それじゃあ、よろしくお願いします」
エズラの答えに、ミーラは、そう言って頭を下げた。
「ところで、出来上がりの届け先は、聖愛教会でいいのかな?」
「あ…………」
いけない、その事をすっかり忘れていた。
「できれば、ローチ伯爵家の帝都屋敷に、持ってきてくれるとありがたい、あるいは報せてくれれば、こっちから取りにもいくるけど」
アルヴィンが、そう言った。
「ローチ伯爵家の帝都屋敷ね、了解。じゃあ、早速作業に取り掛かるわ」
そう言って、エズラは、1階奥の作業所に、向かっていった。
「皆様、本日は、どうもありがとうございました」
接客係の青年が、出てきてそう言う。多分、この人の方が、エズラより年下なんだろうな。
「いや、こちらこそ、よろしくお願いします。エズラさんにも、改めてそう言っていたと、お伝え下さい」
アルヴィンがそう言って、私達は、一旦、店を後にした。
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