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第7話 それでも運命の糸は交錯する。
Chapter-24
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はぁ。
お祖父様にも困ったものね……
昨日は、バックエショフ殿を困らせてしまって。
いい加減、私を誰かとくっつけようなんて、諦めてくれると、いいんだけど……
私、ミーラ・プリムス・セニールダーは、そんな事を思いながら、心のなかで溜息をつきつつも、冒険者養成学校が年越し休業の今、教会で、宣教師として、訪れる人達に、笑顔を作って、声をかけていた。
帝都だけでも、生き方に迷って、ここに来る人は、たくさんいる。私は、そんな人達を、自分の力で、救済できるような人物に、なりたかった。
そのために、力を、つけたかった。
自信は、それなりにある。メイス術では、男性の学生にも、引けを取っていなかったし、それに、聖職者として、光属性魔法も、それなりに使えるよう、精進していた。
「プリムス・セニールダー宣教師」
私が、精力的に活動していると、別の宣教師が、私に、声をかけてきた。
宣教師に、本来、序列はないはずなのだけど、私は、一応、この教会のトップとされる主席宣教師の孫娘であるためか、お嬢様扱いを、どうしても受けてしまう。
「あなたに、お話があるという方が見えられています」
ああ、私を、指名してきたのか。珍しいけど、ここで宣教師として活動している以上、私のことを覚えてくれている人は、当然、いるだろう。
「応接室でお待ちです。ここは私達で回しますので、どうぞ、行かれてください」
応接室……?
宣教師としての私に、会いに来たわけではないってこと?
でも、それだとしたら、誰が、何の用で?
私は、心当たりを探りつつ、本殿を離れて、私達の居住区画、その応接室へと向かった。
コンコン、と、扉をノックする。
「入ります」
私は、そう宣言して、応接室の中に入った。
「その……どうも……」
そこにいたのは、その名前は、だいぶ前に聞いていたけど、その顔は、昨日知ったばかりの人。
ドラゴン・スレイヤーの、魔導師。
マイケル・アルヴィン・バックエショフ……準男爵。
応接室の、ゲスト席に座って、待っていたみたいだったけど、私が室内に入ると、立ち上がって、私の方に視線を向けてきた。
「実は、今日は、あなたに、その、ご相談があって、来ました」
どこかどもりながら、アルヴィン・バックエショフ殿は、そう言った。
「はい。どのようなご用件でしょう?」
相談がある、と言われた以上、無碍には出来ない。私は、笑顔を──割と自然に──作りながら、バックエショフ殿の正面に、立つ。
「その、…………よろしかったらで、いいのですが、私の、つまり、妻の、候補の1人に、なっていただけませんでしょうか?」
「…………!」
まさか、私を、口説きに!?
両親もお祖父様も、こんな跳ねっ返りに良縁なんてあるのか、なんて言われてる、私を!?
でも。
「せっかくですが、私は、志す道があるのです」
「承知しています」
私は、断ったつもりだったのだけど、バックエショフ殿は、むしろ、弾んだ声で、そう言った。
「その道を目指す、貴女に、私は、どうしても惹かれてしまったんです」
「…………!」
どうしよう……
断りようが、ないじゃない……
断りようが……ない……
「今の、言い方ですと」
私は、そう言ったところで、自然に、くすっ、と笑みがこぼれた。
「私以外にも、伴侶の候補は、いるのですね?」
「…………はい」
一転、申し訳無さそうな顔になって、バックエショフ殿は、そう言った。
でも、私は、それを責めるつもりで言ったんじゃない。
「それだけ……ですか?」
穏やかに、私は、問いかけた。
「!」
バックエショフ殿が、軽く、驚いたような顔をする。
それから、最初の、どこか、自信に溢れたような顔になって、自分の胸に手を当てながら、言う。
「すでにお聞き及びかと思いますが、此度、私は準男爵の位を賜り、領地も下賜されることになりました。まだ、領地についての詳細は、枢密院で検討されているところですが。ミーラ・プリムス・セニールダー……さん……、その領地を運営するのに、貴女と、この教会の力を、お借りしたい!」
あと、ひとつだけ、確認しておかなければならないことがある。
「私は、未だ、修練の途上の身です。今しばらく、お待ちいただくことに、なりますが」
「それは、私も同様です。今期で、ブリュサムズシティの冒険者養成学校を、卒業する予定です。そうしたら……それから、領地に、入ることになるかと思います」
そっか……そうなのね。
そうしたら、もう、断る意味なんて、ない……
「わかりました」
私は、笑顔を綻ばせて、言う。
「マイケル・アルヴィン・バックエショフ準男爵。私、ミーラ・プリムス・セニールダーは、その身、その力を、貴方と、貴方の領地の民のために、お貸ししましょう」
「はい」
ああ……私でも。
人に、こんなに幸せそうな顔を、させられるんだ……────
お祖父様にも困ったものね……
昨日は、バックエショフ殿を困らせてしまって。
いい加減、私を誰かとくっつけようなんて、諦めてくれると、いいんだけど……
私、ミーラ・プリムス・セニールダーは、そんな事を思いながら、心のなかで溜息をつきつつも、冒険者養成学校が年越し休業の今、教会で、宣教師として、訪れる人達に、笑顔を作って、声をかけていた。
帝都だけでも、生き方に迷って、ここに来る人は、たくさんいる。私は、そんな人達を、自分の力で、救済できるような人物に、なりたかった。
そのために、力を、つけたかった。
自信は、それなりにある。メイス術では、男性の学生にも、引けを取っていなかったし、それに、聖職者として、光属性魔法も、それなりに使えるよう、精進していた。
「プリムス・セニールダー宣教師」
私が、精力的に活動していると、別の宣教師が、私に、声をかけてきた。
宣教師に、本来、序列はないはずなのだけど、私は、一応、この教会のトップとされる主席宣教師の孫娘であるためか、お嬢様扱いを、どうしても受けてしまう。
「あなたに、お話があるという方が見えられています」
ああ、私を、指名してきたのか。珍しいけど、ここで宣教師として活動している以上、私のことを覚えてくれている人は、当然、いるだろう。
「応接室でお待ちです。ここは私達で回しますので、どうぞ、行かれてください」
応接室……?
宣教師としての私に、会いに来たわけではないってこと?
でも、それだとしたら、誰が、何の用で?
私は、心当たりを探りつつ、本殿を離れて、私達の居住区画、その応接室へと向かった。
コンコン、と、扉をノックする。
「入ります」
私は、そう宣言して、応接室の中に入った。
「その……どうも……」
そこにいたのは、その名前は、だいぶ前に聞いていたけど、その顔は、昨日知ったばかりの人。
ドラゴン・スレイヤーの、魔導師。
マイケル・アルヴィン・バックエショフ……準男爵。
応接室の、ゲスト席に座って、待っていたみたいだったけど、私が室内に入ると、立ち上がって、私の方に視線を向けてきた。
「実は、今日は、あなたに、その、ご相談があって、来ました」
どこかどもりながら、アルヴィン・バックエショフ殿は、そう言った。
「はい。どのようなご用件でしょう?」
相談がある、と言われた以上、無碍には出来ない。私は、笑顔を──割と自然に──作りながら、バックエショフ殿の正面に、立つ。
「その、…………よろしかったらで、いいのですが、私の、つまり、妻の、候補の1人に、なっていただけませんでしょうか?」
「…………!」
まさか、私を、口説きに!?
両親もお祖父様も、こんな跳ねっ返りに良縁なんてあるのか、なんて言われてる、私を!?
でも。
「せっかくですが、私は、志す道があるのです」
「承知しています」
私は、断ったつもりだったのだけど、バックエショフ殿は、むしろ、弾んだ声で、そう言った。
「その道を目指す、貴女に、私は、どうしても惹かれてしまったんです」
「…………!」
どうしよう……
断りようが、ないじゃない……
断りようが……ない……
「今の、言い方ですと」
私は、そう言ったところで、自然に、くすっ、と笑みがこぼれた。
「私以外にも、伴侶の候補は、いるのですね?」
「…………はい」
一転、申し訳無さそうな顔になって、バックエショフ殿は、そう言った。
でも、私は、それを責めるつもりで言ったんじゃない。
「それだけ……ですか?」
穏やかに、私は、問いかけた。
「!」
バックエショフ殿が、軽く、驚いたような顔をする。
それから、最初の、どこか、自信に溢れたような顔になって、自分の胸に手を当てながら、言う。
「すでにお聞き及びかと思いますが、此度、私は準男爵の位を賜り、領地も下賜されることになりました。まだ、領地についての詳細は、枢密院で検討されているところですが。ミーラ・プリムス・セニールダー……さん……、その領地を運営するのに、貴女と、この教会の力を、お借りしたい!」
あと、ひとつだけ、確認しておかなければならないことがある。
「私は、未だ、修練の途上の身です。今しばらく、お待ちいただくことに、なりますが」
「それは、私も同様です。今期で、ブリュサムズシティの冒険者養成学校を、卒業する予定です。そうしたら……それから、領地に、入ることになるかと思います」
そっか……そうなのね。
そうしたら、もう、断る意味なんて、ない……
「わかりました」
私は、笑顔を綻ばせて、言う。
「マイケル・アルヴィン・バックエショフ準男爵。私、ミーラ・プリムス・セニールダーは、その身、その力を、貴方と、貴方の領地の民のために、お貸ししましょう」
「はい」
ああ……私でも。
人に、こんなに幸せそうな顔を、させられるんだ……────
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