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第2話 仲間に転生者だと打ち明けてみる。

Chapter-05

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「おいおい、どこからツッコめばいいんだ?」

 ジャックが、まず最初にそう言った。

「へ、変にからかってるんだったら、怒るわよ?」

 キャロルも、不機嫌そうな顔になって、そう言った。

「いや……からかいや冗談のつもりはないんだが……」

 そう言って、俺は軽くため息をつく。まぁ、いきなしぶっちゃけすぎたか。

「別の世界からって……どういう意味?」

 エミが、静かに、いつものニュートラルな表情で、訊いてきた。

「そうよ、生まれ変わりってのはわからないでもないにしても、それがあるから、余計に胡散臭くなっちゃうわ」

 キャロルも、少し憤ったような荒い口調で言う。
 そこは譲っちゃっていいのか? でもまぁそうか、この世界じゃ輪廻転生って完全には否定されてないからな。

「そんな事言われてもなぁ……間違いなくこの世界とは違う、まったく別の世界から来たんだよ、としか言いようがないんだよな」

 俺は、唇を尖らせるようにしながら、そう言った。

「想像もつかねぇな……マジで言ってんのか?」

 ジャックの、呆れたような、困惑したような顔に、俺は頷く。

「で……前の世界ではなんだったの、賢者級の魔導師? それとも破邪の英雄?」

 キャロルが、呆れ混じりに、半ば茶化すような口調でそう言ってきた。

「いや……」

 なんて言えばいいのかな、システムエンジニア、なんて言って解るわけないし。

「技術職……なんだけど」

「つまり、職人ってこと?」

 俺が言うと、エミが訊き返すように言ってきたので、俺はその言葉に頷く。

「職人って言っても、鍛冶屋とかとは違うイメージで……この世界でわかりやすく言うなら、ケイオススクリプト魔法の呪文を編集して新しいものを開発する仕事……って言えばいいのかな」

「え、それじゃあすっごいエリートだったってこと?」

 キャロルが、軽く驚いた様子で訊いてきた。

「いや、わかりやすく言っただけで、そこまで特別な存在じゃなかったよ」

「でも、それなら魔法の才覚も説明できるよな?」

 ジャックが言ってきた。

「うーん……魔法そのものとは少し違うんだが、確かにそう言われてみると……」

 魔法を系統立てて、オブジェクトとして処理する感覚なんかは、前世の経験が生きているのかも知れない。

「そうなのかも知れないなぁ……」

「でも、それほどの技能者なら、やっぱりエリートだったんじゃない」

 キャロルが言う。

「うーん、どうだろうなー、とにかく忙しいと言うか休みがなくてなー」

 俺は、腕を組んで、渋い表情になってしまっているのを自覚する。

「とにかくスケジュールとノルマの管理がメチャクチャで、俺みたいな現場レベルの人間は休息もまともに取れない状態だったんだ」

「ひでぇなぁ……」

 ジャックが引きつった表情で言う。

「報酬も手取り額は多いんだが、労働量に見合ってるのかと言うと、首を傾げるようなもんだったしなぁ……」

「あっきれた」

 キャロルが、軽く驚いたように口元を手で押さえつつ、そう言った。

「それほどの技能者なら国の宝でしょう、それを使い捨てるような使い方をするなんて、どうかしてるわ」

「いや、わかりやすく言っただけで、そのものじゃないんだが……」

 とは言うものの、

「でも、キャロの言うことは正しいと思う」

 そう言うしかない。

「実際、前世での最後って、疲れ切って倒れた覚えしかないんだよなぁ、気がついた時には、11歳のマイケル・アルヴィン・バックエショフだったってわけだ」

「それで──」

 キャロルが、少し低い声で訊いてくる。

「それが、今のアルヴィンがボーッとしてた理由と、どんな関係があるの?」

 ん? あ、いやそうか、話題が飛躍してるな。

「いや、俺、前世でそんな生き方だったからさ、この世界ではあくせくしない、のんびりした生き方をするつもりだったんだよ」

「そういや、それは、俺は前にも訊いたことがあったな」

 そう、卒業後にどうしたいかは、ジャックには一応言ってはあった。

「一旗揚げようとか授爵しようとか、大口の士官先を見つけようとか、そんな気はなくてさ、冒険者ハンター免許ライセンスだけ取ったらさ、あとは田舎で片手間に兼業農家でもしながら、気ままに過ごそうかなんて考えてたわけ」

「そうか……それだとすると、私達の考えているアルヴィンの姿とは、違ってしまう……」

 エミが言った。俺は頷く。

「だからさ、もし2人が“成り上がり”を求めてるんだったら、俺はそれに応えられないから、2人は今のうちにパーティーを組み直すことも考えてもいいと思うんだよな」

 俺はそう言って、ふう、とまたため息をついた。

 すると、キャロルはまた振り返って、エミとしばらく顔を見合わせる。

 やがて、何かを決意したように、2人でこくん、と頷いた。

「少なくとも卒業するまで、パーティーの解散はなし、よ」

 キャロルは、はっきりとした口調で、そう言った。

「いいのか?」

「言ったでしょ、自分を安売りするつもりはないって。少なくともアルヴィンと組んでいることで、得られるものは大きいと思うわ。その……自己研鑽って意味でね」

 そこまで言って、キャロルは苦笑気味に微笑む。

「成績も上位をキープしやすいでしょうしね」

 キャロルは口元で笑いながら言う。

 まぁ、そうだよな。少なくとも在学中は、実力者と組んでた方が何かと有利だろうな。

「それに」

 そんな事を考えていると、エミが声をかけてきた。

「あなたは力を持っている。あなたがどう生きるのかは貴方の望むままだけど、あなたの強い力はきっと、何かを成し遂げることになると思う」

「だよなー、やっぱりそう思うよな」

 エミの言葉に、ジャックがニタニタと笑いながら同意の声を出した。

 そう言うの、あんまりやりたくないんだけどなぁ……
 などと思いつつ、俺は多分困ったような顔をして、頬を掻いた。

「ところで」

 ジャックが、話題を切り替えるように切り出す。

「アルヴィンは前世で、いくつまで生きたんだ?」

 お、それを訊いてくるのかよ。

「36の誕生日を過ぎたぐらいだったかな……」

「えっ……」

「若い……」

 キャロルとエミが驚いたような声を出した。人生50年、なんて言葉もあるが、この世界の水準でも、一般的な成人が亡くなるのに30代はまだ若い。

「はー、でもそれじゃ」

 深くため息を付いてから、キャロルは苦笑する。

「まだ14の私達なんて子供と同じね、それじゃ……」

「ん? まぁそうだけど、それは今の俺だって同じことだぞ」

 キャロルがなんでため息を付いたのかわからず、俺はそう訊き返した。

「バッカ、お前」

 そう言って、ジャックは、いきなり肩を組んできながら、耳打ちするように言ってくる。

「要するに、女として見れねぇだろってこと」

「!?」

 そ、そう言う意味か……
 ジャックは声を潜めてたとは言え、2人に聞こえるのは半ば承知だったはずだ。

 その2人は、少し顔を俯きがちにして、赤くなっている。

「あ、え、いや……」

 俺はなんと言って良いのか、混乱してきた。

「た、確かにどっちかって言うと“可愛い”って見えちゃうけど、女として見れないなんてことは……いや、2人とも魅力的だよ」

 すると、2人は一瞬目をまるくしたかと思うと、再びキャロルが振り返り、エミと顔を見合わせた後、またこっちを見る。

「ま、そうでしょうね」

 キャロルは、ツインテールを左手で掻き上げる仕種をしながら、自信有りげにそう言った。エミは、その後ろで穏やかに笑っている。

 そうそう、キャロルはやっぱりそう言うイメージじゃないとなぁ。
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