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第二章それぞれの未来(みらい)
エピローグ -marineside
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【ミク、何を一生懸命書いているんだ?】
私が夜中、パソコンを叩いていると、ジェラールにそう言われた。
【うん? いろいろあったけど、私の人生って面白いかなと思って、今までの事をぽつぽつと書きためてるの。でも、日記でもいいんだけど、違う私がいても面白いなと思って、パラレルワールドも盛り込んで、小説にね】
本当は全部事実だけど、パラレルワールドなんて信じてもらえるはずもないので、私はそう言った。
【えっ、ミクが主人公? 見たい!】
すると、彼はそう即答した。そんなジェラールに私は、
【見たいって日本語よ、解らないでしょ? 私、自分の文章翻訳なんかしないわよ】
って返した。本当は見られるのが恥ずかしかったからだけなんだけどね。
【それでも良いからって言ったら、君は見せてくれるのかな?】
それを聞いたジェラールはニヤッとわらってそう言った。
【良いけど……】
読めない日本語の文章を見てどうするつもりよと思った私に、彼は一言、
【君は翻訳ソフトの事を忘れてないかい?
第一、私がもっとミクの事を知りたいと思うのはイケナイ事なのかな】
と言った。あ、しまった、忘れてた。翻訳ソフトの精度って今はかなり良いのよね……
それに、私は彼の『もっとミクの事を知りたいと思うのはイケナイ事なのかな』という言葉にも感動していた。
【じゃぁ、私の見ていないところで、翻訳ソフトで勝手に見てくれるって言うんなら良いわ。】
私は渋々という調子を装ってそう答えた。
数日後…
【ミク、これ不思議で感動的で……本当に良いよ。私だけじゃなくてもっといろんな人に見てもらいたい。ただね、1つだけ気になるのは「未来」って言葉が多用されてるんだけど、これ何? 意味がつながらない】
私は、それを聞いて吹き出した。それは、精度が良くなった翻訳ソフトでもカバーできない、最後の欠点とでも言えるもの。
【ああ、それは私の名前よ。頭がちゃんと大文字になってるでしょ。
私の名前は、英語では未来を意味する単語だから、ソフトは固有名詞だと思わずに訳しちゃうのよ】
【そういうことか! それを除けばすごく良かった。そうだ、Webででも発表すればいい。絶対にウケるよ。企業名や個人名を変えればいいんだ】
謎が解けたジェラールは私にこの話を発表するように言った。
【ダメよ、これ龍太郎さんの事が書いてあるし、見る人が見れば判っちゃう】
【大丈夫だよ、誰も君が書いてるなんて思いやしないさ】
【それに、私の名前が未来だから「Future」なのよ。名前を変えたら、この話成立しなくなっちゃうわ。】
【君は、ハンドルネームに本名を使う気かい? ねぇ、出そうよ、これ。君と君の家族との生きた証にもさ】
書いたものの、人前に出すつもりなんて少しもなかったのに、ジェラールは一生懸命私にWebに載せるように説いた。はじめは絶対にイヤだと思ったけど、ものすごく熱心に言ってくれることと、『生きた証』という言葉が私を捉えた。
私は、自分の事に先立って、ママの事から書くことにした。
タイトルは 『Parallel』にした。気持ちは最初からつながっていたのに、決して交われなかった彼らの道筋を思って、『並行』という単語を充てた。
私は、パソコンに向かって言葉を紡ぎ続けた。
――私の……私たち家族の生きた証を――
Future -fin-
私が夜中、パソコンを叩いていると、ジェラールにそう言われた。
【うん? いろいろあったけど、私の人生って面白いかなと思って、今までの事をぽつぽつと書きためてるの。でも、日記でもいいんだけど、違う私がいても面白いなと思って、パラレルワールドも盛り込んで、小説にね】
本当は全部事実だけど、パラレルワールドなんて信じてもらえるはずもないので、私はそう言った。
【えっ、ミクが主人公? 見たい!】
すると、彼はそう即答した。そんなジェラールに私は、
【見たいって日本語よ、解らないでしょ? 私、自分の文章翻訳なんかしないわよ】
って返した。本当は見られるのが恥ずかしかったからだけなんだけどね。
【それでも良いからって言ったら、君は見せてくれるのかな?】
それを聞いたジェラールはニヤッとわらってそう言った。
【良いけど……】
読めない日本語の文章を見てどうするつもりよと思った私に、彼は一言、
【君は翻訳ソフトの事を忘れてないかい?
第一、私がもっとミクの事を知りたいと思うのはイケナイ事なのかな】
と言った。あ、しまった、忘れてた。翻訳ソフトの精度って今はかなり良いのよね……
それに、私は彼の『もっとミクの事を知りたいと思うのはイケナイ事なのかな』という言葉にも感動していた。
【じゃぁ、私の見ていないところで、翻訳ソフトで勝手に見てくれるって言うんなら良いわ。】
私は渋々という調子を装ってそう答えた。
数日後…
【ミク、これ不思議で感動的で……本当に良いよ。私だけじゃなくてもっといろんな人に見てもらいたい。ただね、1つだけ気になるのは「未来」って言葉が多用されてるんだけど、これ何? 意味がつながらない】
私は、それを聞いて吹き出した。それは、精度が良くなった翻訳ソフトでもカバーできない、最後の欠点とでも言えるもの。
【ああ、それは私の名前よ。頭がちゃんと大文字になってるでしょ。
私の名前は、英語では未来を意味する単語だから、ソフトは固有名詞だと思わずに訳しちゃうのよ】
【そういうことか! それを除けばすごく良かった。そうだ、Webででも発表すればいい。絶対にウケるよ。企業名や個人名を変えればいいんだ】
謎が解けたジェラールは私にこの話を発表するように言った。
【ダメよ、これ龍太郎さんの事が書いてあるし、見る人が見れば判っちゃう】
【大丈夫だよ、誰も君が書いてるなんて思いやしないさ】
【それに、私の名前が未来だから「Future」なのよ。名前を変えたら、この話成立しなくなっちゃうわ。】
【君は、ハンドルネームに本名を使う気かい? ねぇ、出そうよ、これ。君と君の家族との生きた証にもさ】
書いたものの、人前に出すつもりなんて少しもなかったのに、ジェラールは一生懸命私にWebに載せるように説いた。はじめは絶対にイヤだと思ったけど、ものすごく熱心に言ってくれることと、『生きた証』という言葉が私を捉えた。
私は、自分の事に先立って、ママの事から書くことにした。
タイトルは 『Parallel』にした。気持ちは最初からつながっていたのに、決して交われなかった彼らの道筋を思って、『並行』という単語を充てた。
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