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確信犯?

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「うわっ、鮎川」
 目を覚ました私の目に飛び込んできたのは、鮎川の超どアップで、私はベッドから飛び降りようとしたんだけど、私の体は何かにつながれていた。鮎川は、
「薫、動くな」
と肩を掴んで私をベッドに戻した。
「何よ、その銀行強盗みたいな台詞は」
私がにらみながらそう言うと、
「バカ、動くと点滴が外れっだろーが」
ムッとした様子でそう鮎川が返した。
点滴? そう言われてつながれているものの先を見ると、確かにその先には何かの薬液のパッケージがぶら下げられている。
「言っとくけどお前は今、24時間絶対安静だ。トイレ以外で起きるのはNGだぞ」
鮎川は続けてそう言った。
「えーっ、何よそれ!」
私はその発言に大きく抗議の声を上げたけど、鮎川に
「大体、おめぇが無茶するからだろ。自分の体のことだ、薄々気づいてんだろーが」
と反論されて、首をすくめながら小さく頷いた。

 うん……もしかしたらとはこの前からずっと思ってるよ。
「けど、鮎川ちゃんとしてくれてたじゃん」
それでも、私は意地になったようにそう言う。
「生でしてないことを言ってんのか? あれだって100%ガードできるもんじゃねぇ。慌てて引っ張ると、気づかない程度に穴が開くらしいぜ、アレ。
大体、これから本番って時に余裕こいてゴムする奴の方が変だろ。穴開いててもおかしかねぇ」
そしたら、間髪入れずにそんな返事が返ってきた。それは私も聞いたことはあるんだけど。
 だけど、そうだよね、タイミングが悪かったんだよねとため息をついた私を見て、鮎川は急に思いだしたように、
「あ、最近外出ししたこともあったっけか。あれもあんまし効果ないって聞くよな」
と続けたのだ。えっ? それって、どーいうこと?
「鮎川、効果がないって知ってたの?」
と聞いた私に、
「薫、知らなかったのか?」
鮎川はそう答えたが、その顔が笑っている。
「まさか、わざとなの!」
思わずそう怒鳴ってしまった私に、
「そんな訳あるかよ。あれはだな、海外出張でご無沙汰だった分、余裕がなかっただけで……」
一応そう返すけど、へらっと上がった広角は『お前、今頃気づいたか』と言う感じ。絶対に確信犯だ。私はちゃんとしてくれてるって信用してたのに……とんだ狸め。
「何よ、私が知らないからって、ひどいじゃないの」
で、私は点滴につながれていない左手で、鮎川に殴りかかる。
「だから、点滴外れっからおとなしくしてろって」
鮎川はへらへら笑いまま、私の手首を掴んでそう言った。
 
 だけど、へらへら笑っていた鮎川の顔は、私が
「何よ、こんなのだまし討ちじゃない」
と言った途端、すっと引いた。むすっとして、急に黙り込む。
 そして……
「薫、そんなに俺のことが嫌いなんだったら別れよう」
鮎川はそう言いながら私のベッド横の椅子から立ち上がった。

 ねぇ、怒ってんのは私の方なんだけど。んで、どーして一足飛びにそういう話になる訳?!
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