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別にいいけどよ、なんだかなぁ……
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「ベス、ビクって誰?」
タケちゃんが聞き捨てならないと絵梨紗にそう聞く。それに対して、
「ああ、本名宮本美久、彼女の命の恩人その二ですよ」
俺が代わってそう答えた。
「じゃぁ、幸太郎君と一緒に乗ってたっていう? ビクって言うから、ベスの学校の友達かと思っちゃった。日本人なんでしょ、何でビク?」
学校の友達って言うから聞いてみると、絵梨紗はアメリカンスクールに通っているらしい。
「ええ、ベタベタのネイティブ日本人ですよ。よしひさってのは、美しいに久しいって書くんですよ。つい最近ちょっと外人と知り合いになって、そいつがよしひさって発音できなくてヨッシャにしか聞こえないから、それなら俺が音読みでビクって呼べば良いってそいつに教えたんです」
正確に言えば、外人じゃなくて、異世界人だけどな。そう言えば、ビクって呼ぶ元になったマシュー改めエリーサは、宮本との別れ際、泣きながらよしひさと発音しようと懸命に頑張っていたっけ。そんなことを思い出していると、タケちゃんは俺をリビングの隅に連れて行くと、小声で、
「ねぇ、宮本君の方はベスの事どう思ってるの? ベスの独りよがりとかじゃない?」
と聞いた。絵梨紗はまだ恋に恋する年頃、命の恩人に優しくされて、その気になってるようなことを心配しているのだろう。
「いいえ、残念でしょうけど、しっかり両想いですよ」
寧ろ、宮本の方がお宅の姪御さんに夢中です。
「ふーん、そうか……ベス、ホントにビクくんのお嫁さんになりたいの?」
「うん、なりたい!」
なれるの? と、その一言に身を乗り出す絵梨紗。
「でもね、ベスが結婚できる歳になるまでまだだいぶあるし、それまでに気持ちが変わるかもしれないからさ、一応仮押さえってことで、宮本くんも一緒に秘書課に異動させるよ。このままうまく行くようなら、君の補佐をしてもらう。その方が君も気分が楽でしょ?
でね、最初は君が僕のところにきてもらうつもりだったけど、絵梨紗の彼氏をパパにつけるのはちょっとさすがにアレだから、君がパパの方に回ってくれる?
思ったより、僕早く辞められそうだね、君は痛い思いをしただろうけど、僕としてはホントに良かったよ」
タケちゃんは嬉しそうにそう言うと、まだ仕事があるとさっさと帰って行った。まったく、自分が言いたいことだけ言って行っちまったぜ。
その後……
タケちゃんはそれから半年も経たない内に青木賞にノミネートされてしまい、あっけなく受賞。そして、受賞会見でいきなり素性をカミングアウト。社内は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなる。それで、タケちゃんが未だ独身であることが発覚。
「じゃぁ、デビくんは一体誰の子なんだ?」
と聞いた俺に、
「あれ? 言ってなかったっけ?」
と、薫。そこで俺たちは、デビくんこと本名櫟原英雄(デビッド)は会長の三十歳年下の再婚相手、クラウディアさんとの間にできた、タケちゃんにとっては義弟だと知ることになる。ちなみに絵梨紗は英雄の姉。つまり、タケちゃんの義妹。
「じゃぁ、絵梨紗は義理の叔母? ってことは、あの二人がくっつきゃ宮本は俺の義理の叔父になっちまうってか!」
それを聞いたとき、俺がそんな雄叫びを上げてしまったことは言うまでもない。
人生、どう転がるかなんて分かんないけどよ、さすがにこれはねぇだろ……
――The End――
タケちゃんが聞き捨てならないと絵梨紗にそう聞く。それに対して、
「ああ、本名宮本美久、彼女の命の恩人その二ですよ」
俺が代わってそう答えた。
「じゃぁ、幸太郎君と一緒に乗ってたっていう? ビクって言うから、ベスの学校の友達かと思っちゃった。日本人なんでしょ、何でビク?」
学校の友達って言うから聞いてみると、絵梨紗はアメリカンスクールに通っているらしい。
「ええ、ベタベタのネイティブ日本人ですよ。よしひさってのは、美しいに久しいって書くんですよ。つい最近ちょっと外人と知り合いになって、そいつがよしひさって発音できなくてヨッシャにしか聞こえないから、それなら俺が音読みでビクって呼べば良いってそいつに教えたんです」
正確に言えば、外人じゃなくて、異世界人だけどな。そう言えば、ビクって呼ぶ元になったマシュー改めエリーサは、宮本との別れ際、泣きながらよしひさと発音しようと懸命に頑張っていたっけ。そんなことを思い出していると、タケちゃんは俺をリビングの隅に連れて行くと、小声で、
「ねぇ、宮本君の方はベスの事どう思ってるの? ベスの独りよがりとかじゃない?」
と聞いた。絵梨紗はまだ恋に恋する年頃、命の恩人に優しくされて、その気になってるようなことを心配しているのだろう。
「いいえ、残念でしょうけど、しっかり両想いですよ」
寧ろ、宮本の方がお宅の姪御さんに夢中です。
「ふーん、そうか……ベス、ホントにビクくんのお嫁さんになりたいの?」
「うん、なりたい!」
なれるの? と、その一言に身を乗り出す絵梨紗。
「でもね、ベスが結婚できる歳になるまでまだだいぶあるし、それまでに気持ちが変わるかもしれないからさ、一応仮押さえってことで、宮本くんも一緒に秘書課に異動させるよ。このままうまく行くようなら、君の補佐をしてもらう。その方が君も気分が楽でしょ?
でね、最初は君が僕のところにきてもらうつもりだったけど、絵梨紗の彼氏をパパにつけるのはちょっとさすがにアレだから、君がパパの方に回ってくれる?
思ったより、僕早く辞められそうだね、君は痛い思いをしただろうけど、僕としてはホントに良かったよ」
タケちゃんは嬉しそうにそう言うと、まだ仕事があるとさっさと帰って行った。まったく、自分が言いたいことだけ言って行っちまったぜ。
その後……
タケちゃんはそれから半年も経たない内に青木賞にノミネートされてしまい、あっけなく受賞。そして、受賞会見でいきなり素性をカミングアウト。社内は蜂の巣を突いたような大騒ぎとなる。それで、タケちゃんが未だ独身であることが発覚。
「じゃぁ、デビくんは一体誰の子なんだ?」
と聞いた俺に、
「あれ? 言ってなかったっけ?」
と、薫。そこで俺たちは、デビくんこと本名櫟原英雄(デビッド)は会長の三十歳年下の再婚相手、クラウディアさんとの間にできた、タケちゃんにとっては義弟だと知ることになる。ちなみに絵梨紗は英雄の姉。つまり、タケちゃんの義妹。
「じゃぁ、絵梨紗は義理の叔母? ってことは、あの二人がくっつきゃ宮本は俺の義理の叔父になっちまうってか!」
それを聞いたとき、俺がそんな雄叫びを上げてしまったことは言うまでもない。
人生、どう転がるかなんて分かんないけどよ、さすがにこれはねぇだろ……
――The End――
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