32 / 65
熱烈歓迎!?
しおりを挟む
タケちゃん(もう、社長と呼ぶ気がしねぇ)が差し出したその本は最近話題の市原健の恋愛小説。作者の経歴おろか性別さえも(ただ、名前からして男性だって思うが、何年か前に本○大賞を取った作者は男っぽい名前だけど、女だったりしたしな)不明な謎の作家の作品だ。タケちゃんはその本の名前の部分を指さして、
「これ、僕」
と言った。二歳児みたく二語文って、どうよ。何言ってんのかまったく解んねぇ。
「へっ?」
「一応音だけは本名なんだよ。だけど、誰も僕だって気づいてくれないから、寂しいんだよね」
タケちゃんがそう言ってため息を吐く。
「市原と単櫟原、ぜんぜん違うじゃないですか」
どこが一緒だ。
「あのね、櫟の木はいちいの木とも呼ばれていてね、みんなが読み間違えるから社名はくぬぎはらにしちゃったんだけどね、元々の読みはいちはら」
それに、櫟って画数多いから面倒だし、本名で書くのもね、とタケちゃんは続けた。
「僕の書いた文章に紀文ちゃんが絵をかいてさ、一緒にやろうって言ってたのに……紀文ちゃんたら、一人で絵を描いて勝手に有名になっちゃうんだもんなぁ」
タケちゃんが文章を書いて紀文ちゃんが挿し絵か。それとも二人で漫画家にでもなろうとしていたんだろうか。
「タケちゃんには、会社があるだろ。タケちゃんまで引っ張ったら俺、お義父さんに殺されるよ」
まぁな、嫁にやってその上跡取りを別の仕事に持ってかれたら……思いっきり立場悪くなるよな。
「紀文ちゃんも描きながら会社手伝ってくれたらいいじゃない」
「片手間でできるこっちゃないだろ。会社潰して良いんだったら手伝うけど?」
タケちゃんの言い分に紀文ちゃんはしれっとそう返す。
「ふん、紀文ちゃんは僕よりエミナちゃんを取ったんだ」
普通そうだろ、嫁より嫁の弟取ってどうする、という紀文ちゃんにタケちゃんは口をへの字に曲げて黙り込む。なんつーか、まるでガキの会話だよ。
「ま、そう言うことだから、タケちゃんのこと手伝ってやってくれないかな。君にも譲れない夢があるのなら別だが」
そんなタケちゃんを生温い目で見ながら紀文ちゃんが父親の顔に戻って俺に言う。
「俺にそんなご大層な夢なんかありませんよ。社長なんてガラじゃないですけど、サポートってことなら構わないですよ」
「やったぁ、ありがとう!」
取りあえず承諾した俺に、タケちゃん破顔で俺の手を握りブンブン振り回した。うー、なんだかなぁ。早い遅いに関係なく、俺ダメージ大きいかも。
「それじゃぁ、早速僕の見習いってことで、秘書課に異動かけとくから。今まで君がしていた仕事、入院中に全部ほかの社員に振り分けられてるからね。そのまま異動できる。ほんとラッキーだよ」
げっ、すぐに異動ってか? それも秘書課かよ。
「後は、結婚式だね。櫟原の社長の結婚式として恥ずかしくないものにしなきゃね」
タケちゃんは、会社から足抜けができると決まったからか、上機嫌でそう言った。この分だとあっと言う間に会社投げてこられそうだな。安請け合いして良かったのかな、俺。そう思っていると、今まで黙っていた絵梨紗が、
「お姉ちゃまは結婚式かぁ、いいなぁ」
と盛大にため息をつきながらそう言った。けど、続けて言った、
「あたしも、ビクと結婚したいな」
という言葉にその場にいた全員の動きが止まった。
「これ、僕」
と言った。二歳児みたく二語文って、どうよ。何言ってんのかまったく解んねぇ。
「へっ?」
「一応音だけは本名なんだよ。だけど、誰も僕だって気づいてくれないから、寂しいんだよね」
タケちゃんがそう言ってため息を吐く。
「市原と単櫟原、ぜんぜん違うじゃないですか」
どこが一緒だ。
「あのね、櫟の木はいちいの木とも呼ばれていてね、みんなが読み間違えるから社名はくぬぎはらにしちゃったんだけどね、元々の読みはいちはら」
それに、櫟って画数多いから面倒だし、本名で書くのもね、とタケちゃんは続けた。
「僕の書いた文章に紀文ちゃんが絵をかいてさ、一緒にやろうって言ってたのに……紀文ちゃんたら、一人で絵を描いて勝手に有名になっちゃうんだもんなぁ」
タケちゃんが文章を書いて紀文ちゃんが挿し絵か。それとも二人で漫画家にでもなろうとしていたんだろうか。
「タケちゃんには、会社があるだろ。タケちゃんまで引っ張ったら俺、お義父さんに殺されるよ」
まぁな、嫁にやってその上跡取りを別の仕事に持ってかれたら……思いっきり立場悪くなるよな。
「紀文ちゃんも描きながら会社手伝ってくれたらいいじゃない」
「片手間でできるこっちゃないだろ。会社潰して良いんだったら手伝うけど?」
タケちゃんの言い分に紀文ちゃんはしれっとそう返す。
「ふん、紀文ちゃんは僕よりエミナちゃんを取ったんだ」
普通そうだろ、嫁より嫁の弟取ってどうする、という紀文ちゃんにタケちゃんは口をへの字に曲げて黙り込む。なんつーか、まるでガキの会話だよ。
「ま、そう言うことだから、タケちゃんのこと手伝ってやってくれないかな。君にも譲れない夢があるのなら別だが」
そんなタケちゃんを生温い目で見ながら紀文ちゃんが父親の顔に戻って俺に言う。
「俺にそんなご大層な夢なんかありませんよ。社長なんてガラじゃないですけど、サポートってことなら構わないですよ」
「やったぁ、ありがとう!」
取りあえず承諾した俺に、タケちゃん破顔で俺の手を握りブンブン振り回した。うー、なんだかなぁ。早い遅いに関係なく、俺ダメージ大きいかも。
「それじゃぁ、早速僕の見習いってことで、秘書課に異動かけとくから。今まで君がしていた仕事、入院中に全部ほかの社員に振り分けられてるからね。そのまま異動できる。ほんとラッキーだよ」
げっ、すぐに異動ってか? それも秘書課かよ。
「後は、結婚式だね。櫟原の社長の結婚式として恥ずかしくないものにしなきゃね」
タケちゃんは、会社から足抜けができると決まったからか、上機嫌でそう言った。この分だとあっと言う間に会社投げてこられそうだな。安請け合いして良かったのかな、俺。そう思っていると、今まで黙っていた絵梨紗が、
「お姉ちゃまは結婚式かぁ、いいなぁ」
と盛大にため息をつきながらそう言った。けど、続けて言った、
「あたしも、ビクと結婚したいな」
という言葉にその場にいた全員の動きが止まった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どーも、反逆のオッサンです
わか
ファンタジー
簡単なあらすじ オッサン異世界転移する。 少し詳しいあらすじ 異世界転移したオッサン...能力はスマホ。森の中に転移したオッサンがスマホを駆使して普通の生活に向けひたむきに行動するお話。 この小説は、小説家になろう様、カクヨム様にて同時投稿しております。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる