Junction

神山 備

文字の大きさ
上 下
3 / 5

音楽集会

しおりを挟む
 祈りが通じたのかどうだか分かんないけど、次の週の音楽集会に拓也君は参加した。
 
 音楽集会というのは、とにかく歌、歌、歌。先生のメッセージは終盤にちょこっとだけ。それからティータイムという、参加型サロンコンサートみたいな形式だ。
 で、音楽集会で歌われるのはワーシップソング。

 ワーシップソングというのは、70年代以降に作られた讃美歌・聖歌のことだ。アメリカのゴスペルから派生されたものやそれに感化された若い人たちがギターを手に歌い始めたもので、昔はゴスペルフォークと呼ばれていたらしい。おかあさんなんかは未だにゴスペルって言う。
 どっちかと言えば素人っぽかったその歌が変わってきたのが80年代。バリバリ世間に名を知られていたプロ歌手の人が入信して、ワーシップレーベルを立ち上げてどんどんと楽曲を発表したのだ。その頃から教会でもギター一本ではなく、キーボード・ベース・ドラムなどが用いられるようになった。
 
 そして今、ワーシップは発端の英語の翻訳バージョンはもちろん、日本で作られたもの、韓国で作られたものまで加わって、毎回選曲でモメるほど。
 また、その中には改訂された讃美歌や聖歌に載ったものまである。
 それに、この間たまたま何気に検索したら、なんとあの機械少女が歌っている動画があってビックリ。無機質だけど透き通っている声が意外とそのバラードに合っていた。
 ただ、世間的なヒットソングではないから、初めて来た人は確実に知らない曲なので、とっついてくれないとそれで終わりだ。
 拓也君はノリノリで参加してくれて、ティータイムには早速門倉さんにベースの弾き方を教わっていた。
 
 だけど、これなら来てくれるかもと思った拓也君は翌週から来なくなった。
「拓也も来たがってんだけど、日曜日には練習試合が多くて」
拓也君は学校でバスケ部に入っているらしい。ちょうど中間テストの勉強期間で、2週間練習も試合もなかっただけなのだ。
 
 そんな拓也君が次に来たのは、期末テストの前。
あたしは、早速出来上がったばかりのジュニアキャンプのパンフレットを渡した。これもクラブでダメかもなぁと思ったけど、長い休みの中、旅行する人は他にもあるみたいで、2~3日の休みなら大丈夫だという。
「行こうぜ、他の教会からもいっぱい来るし、面白いからさ」
ならと、拓也君と同い年の御国君と一緒に誘った。それで拓也君が頷いたときには、思わずちっちゃくガッツポーズしちゃったよ。でもそれを見た御国君が後で、
「明日美ちゃん、コレ貸しね」
って、変な笑い顔で言われた。
バカ、そんなんじゃないから!
 あたしは純粋に拓也君に教会に繋がってほしい、それだけなんだからね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

足跡

冬生まれ
青春
気付けばいつも、その足跡は隣にあった…。

そらいろ

並川たすく
青春
高校三年生の僕・カケルは雨上がりの昼に少女と出会う。毎日同じ場所にいる彼女の探し物は。

クリスマスに奇跡は、もう起こらない

東郷しのぶ
青春
杏は、一八歳の少女。ずっと一人で生きてきた。 クリスマスの一週間前、杏は教会で不思議な少女に出会う。 天使と聖母――二人の少女が織りなす、クリスマス・ストーリーです。

ファンタジスタ 〜アオの奇跡〜

あす
青春
後半15分、東山小対新庄小の決勝戦は0-1で新庄小リードのまま終盤を迎えています。 新庄小エースの成宮を中心としたコンパクトなパス回しに、東山小のイレブンは全くと言っていいほど手が出ない状況です。 「へへっ、このまま逃げ切るんだ」 成宮が余裕の笑顔を見せながら、時間を弄ぶ。 そこに東山小のサイドバックの武藤がひさびさのパスカット。なんとか前に蹴り出すのが精一杯か。右ウイングが何とか追いつきフワッと力の無いボールを中に入れるがそこには誰もいない。 その瞬間、、、

アイドル

大森聡
青春
複数人にようアイドル模様の短編集

処理中です...