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結婚狂想曲(ウエディング ラプソディ)
中原シナ子の小動物観察日記 おまけ 悪徳不動産屋VS悪徳不動産屋もどき
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そんな訳で、ちゃんとお断りを入れたにもかかわらず、法学君との付き合いは続いていた。
法学君、顔はともかく頭だけは良かったみたいで、大学在学中に司法試験に受かり、とある法律事務所に就職した。
「へぇ、あんたでも拾ってくれるとこがあるのね」
と言う私に、
「俺、先生に期待されてんだぜ」
と言う彼。ホントなのかと思いながら事務所を検索した私は、その中身を見て納得した。その事務所が背中に花とかが咲いちゃっている人たちの問題解決に力入れてる所だったからだ。うんうん、あの顔なら背中に龍が昇っていようが、指が数本足らなかろうが対抗できるだろう。
ただ、その頃になると、テンテンたちに子どもが生まれちゃったので、篠宮家に以前のように行けなくなった。で、これで疎遠になるかと思いきや、法学君はちゃっかりとウチの母ちゃんがやっている小料理屋「つやこ」に顔を出すようになり、お酒が入ってアツくなりがちなおっさんたちの『交通整理』を言われてもいないのに買って出たりして、いつの間にか昔からいるような顔でカウンターに座ってメニューに載ってない物なんか食べてたりするようになった。
ま、それはまだ良いとしても、公判が始まってしばらく顔を見せない時があると、
「シナちゃん、旦那はどうしてる?」
と必ず常連さんの誰かしらが聞いてくるのは何とかしてほしい。法学君は断じて私の旦那じゃないから!
そんな時、「つやこ」を売れと言ってくる不動産屋が現れた。最初こそ丁寧な口調だったけれど、死んだ父ちゃんから受け継いだこの店を母ちゃんが手放すわけがなく、こっちが頑として売らないと言うと、がらっと態度を変えて、
「このアマ、なめんなよ。この店営業できねぇようになっても良いんだな」
と凄んできた。あちゃー、女二人じゃ勝てっこないよどうしようと思ってると、どこからともなく法学君が
現れて、
「営業できないとはどういう事ですか。この店の調度を壊しますか? でしたら器物損壊の現行犯で訴えますよ」
と、ギラギラした笑顔で不動産屋を睨み据える。
「てめぇ何者だ。マッポか」
それを負けじと睨み返した不動産屋に、
「やだな、僕は警察関係者じゃないですよ。ただの常連です」
とかえすと、不動産屋は『なんだただの客か』と鼻を鳴らす。
だけど、法学君が、
「あ、そうだ。常連と言えば、権堂のおやっさんもたまにここに来るんですよね。
おやっさん、ここがなくなると寂しがるだろうな」
と言うと
「ご、権堂のおやっさん……」
と不動産屋の顔が変わった。
「てめぇでまかせ言ってんじゃねぇ!」
慌てて怒鳴り散らす不動産屋に、
「でまかせじゃないですよ。なんなら、今から呼びましょうか?」
と携帯電話を取り出す法学君。そしたら、不動産屋は口の端でなんかイミフなことを言いながらそそくさと店を出ていってしまった。なんかわかんないけど、助かったっぽい。
「あ、ありがと。おかげで助かったけど、権堂のおやっさんって誰?」
不動産屋が完全にいなくなったのを見計らって法学君に聞いてみる。
「権堂のおやっさん? 青龍会の首領だよ。あいつ、青龍の息がかかってるって聞いたから、抑止力になると思ってね。
それにさ、おやっさんにも旨い店紹介しろって言われてるから、連れてくるわ。そしたら、まんざら嘘にもなんないだろっ」
すると、そんな答えが返ってきた。青龍会の首領って……日本で一二を争う広域指定XXXのトップじゃないのよ!
あんた、ホントに弁護士だよね。ヤバいことになってないよね。
法学君がその権堂のおやっさんを本当に「つやこ」に連れてきて、おやっさんがまさかの常連になってしまうのはこの後の話……
そして、もっとあり得ないのが、このことをきっかけに法学君が、
「女二人じゃ不用心だ」
と、ウチに転がり込んで、
「責任とれよ。お前に振られてからどんな女見てもお前と比べちまう」
と、ミョーなプロポーズをして旦那に収まってしまった事。
ま、出会った頃ほど法学君のギラギラ感は気にならなくというか、むしろ仕事してるなって感じで良いなと思うようにはなってたんだけどね。
でも私、ホントに責任とらなきゃならなかったのかな。そこんとこは今でも疑問。
母ちゃんにもよくしてくれるし、良いパパだしね。ま、いっか。
法学君、顔はともかく頭だけは良かったみたいで、大学在学中に司法試験に受かり、とある法律事務所に就職した。
「へぇ、あんたでも拾ってくれるとこがあるのね」
と言う私に、
「俺、先生に期待されてんだぜ」
と言う彼。ホントなのかと思いながら事務所を検索した私は、その中身を見て納得した。その事務所が背中に花とかが咲いちゃっている人たちの問題解決に力入れてる所だったからだ。うんうん、あの顔なら背中に龍が昇っていようが、指が数本足らなかろうが対抗できるだろう。
ただ、その頃になると、テンテンたちに子どもが生まれちゃったので、篠宮家に以前のように行けなくなった。で、これで疎遠になるかと思いきや、法学君はちゃっかりとウチの母ちゃんがやっている小料理屋「つやこ」に顔を出すようになり、お酒が入ってアツくなりがちなおっさんたちの『交通整理』を言われてもいないのに買って出たりして、いつの間にか昔からいるような顔でカウンターに座ってメニューに載ってない物なんか食べてたりするようになった。
ま、それはまだ良いとしても、公判が始まってしばらく顔を見せない時があると、
「シナちゃん、旦那はどうしてる?」
と必ず常連さんの誰かしらが聞いてくるのは何とかしてほしい。法学君は断じて私の旦那じゃないから!
そんな時、「つやこ」を売れと言ってくる不動産屋が現れた。最初こそ丁寧な口調だったけれど、死んだ父ちゃんから受け継いだこの店を母ちゃんが手放すわけがなく、こっちが頑として売らないと言うと、がらっと態度を変えて、
「このアマ、なめんなよ。この店営業できねぇようになっても良いんだな」
と凄んできた。あちゃー、女二人じゃ勝てっこないよどうしようと思ってると、どこからともなく法学君が
現れて、
「営業できないとはどういう事ですか。この店の調度を壊しますか? でしたら器物損壊の現行犯で訴えますよ」
と、ギラギラした笑顔で不動産屋を睨み据える。
「てめぇ何者だ。マッポか」
それを負けじと睨み返した不動産屋に、
「やだな、僕は警察関係者じゃないですよ。ただの常連です」
とかえすと、不動産屋は『なんだただの客か』と鼻を鳴らす。
だけど、法学君が、
「あ、そうだ。常連と言えば、権堂のおやっさんもたまにここに来るんですよね。
おやっさん、ここがなくなると寂しがるだろうな」
と言うと
「ご、権堂のおやっさん……」
と不動産屋の顔が変わった。
「てめぇでまかせ言ってんじゃねぇ!」
慌てて怒鳴り散らす不動産屋に、
「でまかせじゃないですよ。なんなら、今から呼びましょうか?」
と携帯電話を取り出す法学君。そしたら、不動産屋は口の端でなんかイミフなことを言いながらそそくさと店を出ていってしまった。なんかわかんないけど、助かったっぽい。
「あ、ありがと。おかげで助かったけど、権堂のおやっさんって誰?」
不動産屋が完全にいなくなったのを見計らって法学君に聞いてみる。
「権堂のおやっさん? 青龍会の首領だよ。あいつ、青龍の息がかかってるって聞いたから、抑止力になると思ってね。
それにさ、おやっさんにも旨い店紹介しろって言われてるから、連れてくるわ。そしたら、まんざら嘘にもなんないだろっ」
すると、そんな答えが返ってきた。青龍会の首領って……日本で一二を争う広域指定XXXのトップじゃないのよ!
あんた、ホントに弁護士だよね。ヤバいことになってないよね。
法学君がその権堂のおやっさんを本当に「つやこ」に連れてきて、おやっさんがまさかの常連になってしまうのはこの後の話……
そして、もっとあり得ないのが、このことをきっかけに法学君が、
「女二人じゃ不用心だ」
と、ウチに転がり込んで、
「責任とれよ。お前に振られてからどんな女見てもお前と比べちまう」
と、ミョーなプロポーズをして旦那に収まってしまった事。
ま、出会った頃ほど法学君のギラギラ感は気にならなくというか、むしろ仕事してるなって感じで良いなと思うようにはなってたんだけどね。
でも私、ホントに責任とらなきゃならなかったのかな。そこんとこは今でも疑問。
母ちゃんにもよくしてくれるし、良いパパだしね。ま、いっか。
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