6 / 6
浴衣
しおりを挟む
八月頭のある日、神神飯店に出勤した俺は満面笑顔の玉璽さんに、風呂敷包みを渡された。中に入っていたのは……
「浴衣……」
「コレ、タイサクの分ね」
「えっ、これ俺の分っすか」
自分の分だという浴衣を手渡されて俺が首をひねっていると、
「気遣わないでいいよ。コレオンマの手作りだから」
とテンテンちゃんが付け加える。テンテンちゃんは既製品を買うほどけコストがかかってないと言いたいのだろうが、確かに既製品よりは安いのかもしれないが、生地代は絶対必要だし、何より玉璽さんの手間は何十倍もかかっている。ただのバイト学生にそこまでしてもらっていいものだろうか。それに、正直もらっても……
「浴衣なんて着るところないっすよ」
俺はつい口を滑らせて本音を言ってしまった。
「花火大会・祭り着るあるよ」
すると開さんがにこにこ笑って言う。
「皆で行くアルよ。花火大会日は、店早仕舞いね。
みんな花火見るからね。店開けても人来ないアル」
だから4人で行こうという開さんに、
「あ、ごめん。あたし花火大会ダメ。専門学校の子と見に行く約束しちゃった。すし詰めのバスに乗るより希望が丘駅から歩いた方が良いよって言ったらナビ任されちゃって」
テンテンちゃんがそういって俺たちにに手刀を切りながら舌を出す。えーつ、テンテンちゃん一緒に行かないのか……
「じゃぁ、俺はサークルのメンバーと一緒にいきますよ」
それを聞いて俺はそう言った。それはテンテンちゃんと一緒にいけないからじゃない。俺1人で行くことになればあのツンデレボケツッコミ夫婦の王夫妻の大量の砂の餌食になることは間違いないし、花火が終わったあとは、商店街の男たちは共は示し合わせてその日も開いている「居酒屋とうてつ」になだれ込むに決まっている。巻き込まれたらつぶれるまで飲まされるのは火を見るより明らかだ。そうなれば当然、神神飯店で泊まることになるだろうし、そんな醜態をテンテンちゃんに見られたくない。
「そか、じゃぁ、私オッパと二人で見に行くね」
そして、俺の言葉を聞いてそう返した玉璽さんの表情はなんだか嬉しそうで、俺は(ああ、一緒に行くと言わんで良かった。やないと馬に蹴られるとこやで)と思ったのだった。
「祭りも屋台毎年二人タイジョブね。祭り楽しむ良いよ。
それに、中華点心浴衣変ね」
と、祭りの日も屋台を手伝わなくても良いという玉爾さん。
当日開さんはいつものコック服、玉爾さんはチャイナドレスを着て屋台に立つそうだ。メニューは唐揚げ串と春巻と揚げ餃子。それにトッポッキ。やっぱり韓国料理が入ってくるのが神神らしい。『屋台って言えば、トッポッキ』と玉璽さんが譲らないらしい。ま、唐揚げ串と同じ紙コップが使えるので、容器をいろいろ用意しなくていいというのもその理由らしい。
とにかく、手伝うことがなくなった俺はならばと、
「じゃぁ、テンテンちゃん、俺と祭り回らない?」
と、テンテンちゃんを誘った。
「ダイサク君と回るの……うーん、どうしようかな」
すると、テンテンちゃん少し迷った後、
「別に、良いけど?」
と言ってくれた。でも、
「良いね、ダイサク、小天デートしてくるアル」
とニヤニヤ笑いながら開さんが言うので、
「で、デートってそんなんじゃないよね。あたしとダイサク君は家族……そう家族みたいなもんでしょ!」
テンテンちゃんはムキになって開さんに反論していた。
家族というのはちょっと残念だけど、ともかく祭りは一緒に回れる。
それから、大輔に花火大会の打診をした。
「こっちも杜さんの邪魔するなオーラがハンパないんだよ」
と大輔も苦笑する。こっちはマスターの甥っ子である透さんとBlue Marrowの璃青さんのことだけど。どっちも似たような苦労をしてるよなと、笑いあって、花火大会に行く約束をとりつけた。だが、
「けどさ、野郎二人のツーショットはちょっとな」
と言う大輔に、
「なら、法学でも呼ぶか?」
と俺が言う。法学というのは、所属するサークル仲間の御法山学のことだ。
そして、このとき法学を仲間に引き入れたことで、俺はこの後、いろんな意味で翻弄されることになるが、この時はテンテンちゃんと一緒に祭りに行ける幸せで完全に舞い上がっていた。
「浴衣……」
「コレ、タイサクの分ね」
「えっ、これ俺の分っすか」
自分の分だという浴衣を手渡されて俺が首をひねっていると、
「気遣わないでいいよ。コレオンマの手作りだから」
とテンテンちゃんが付け加える。テンテンちゃんは既製品を買うほどけコストがかかってないと言いたいのだろうが、確かに既製品よりは安いのかもしれないが、生地代は絶対必要だし、何より玉璽さんの手間は何十倍もかかっている。ただのバイト学生にそこまでしてもらっていいものだろうか。それに、正直もらっても……
「浴衣なんて着るところないっすよ」
俺はつい口を滑らせて本音を言ってしまった。
「花火大会・祭り着るあるよ」
すると開さんがにこにこ笑って言う。
「皆で行くアルよ。花火大会日は、店早仕舞いね。
みんな花火見るからね。店開けても人来ないアル」
だから4人で行こうという開さんに、
「あ、ごめん。あたし花火大会ダメ。専門学校の子と見に行く約束しちゃった。すし詰めのバスに乗るより希望が丘駅から歩いた方が良いよって言ったらナビ任されちゃって」
テンテンちゃんがそういって俺たちにに手刀を切りながら舌を出す。えーつ、テンテンちゃん一緒に行かないのか……
「じゃぁ、俺はサークルのメンバーと一緒にいきますよ」
それを聞いて俺はそう言った。それはテンテンちゃんと一緒にいけないからじゃない。俺1人で行くことになればあのツンデレボケツッコミ夫婦の王夫妻の大量の砂の餌食になることは間違いないし、花火が終わったあとは、商店街の男たちは共は示し合わせてその日も開いている「居酒屋とうてつ」になだれ込むに決まっている。巻き込まれたらつぶれるまで飲まされるのは火を見るより明らかだ。そうなれば当然、神神飯店で泊まることになるだろうし、そんな醜態をテンテンちゃんに見られたくない。
「そか、じゃぁ、私オッパと二人で見に行くね」
そして、俺の言葉を聞いてそう返した玉璽さんの表情はなんだか嬉しそうで、俺は(ああ、一緒に行くと言わんで良かった。やないと馬に蹴られるとこやで)と思ったのだった。
「祭りも屋台毎年二人タイジョブね。祭り楽しむ良いよ。
それに、中華点心浴衣変ね」
と、祭りの日も屋台を手伝わなくても良いという玉爾さん。
当日開さんはいつものコック服、玉爾さんはチャイナドレスを着て屋台に立つそうだ。メニューは唐揚げ串と春巻と揚げ餃子。それにトッポッキ。やっぱり韓国料理が入ってくるのが神神らしい。『屋台って言えば、トッポッキ』と玉璽さんが譲らないらしい。ま、唐揚げ串と同じ紙コップが使えるので、容器をいろいろ用意しなくていいというのもその理由らしい。
とにかく、手伝うことがなくなった俺はならばと、
「じゃぁ、テンテンちゃん、俺と祭り回らない?」
と、テンテンちゃんを誘った。
「ダイサク君と回るの……うーん、どうしようかな」
すると、テンテンちゃん少し迷った後、
「別に、良いけど?」
と言ってくれた。でも、
「良いね、ダイサク、小天デートしてくるアル」
とニヤニヤ笑いながら開さんが言うので、
「で、デートってそんなんじゃないよね。あたしとダイサク君は家族……そう家族みたいなもんでしょ!」
テンテンちゃんはムキになって開さんに反論していた。
家族というのはちょっと残念だけど、ともかく祭りは一緒に回れる。
それから、大輔に花火大会の打診をした。
「こっちも杜さんの邪魔するなオーラがハンパないんだよ」
と大輔も苦笑する。こっちはマスターの甥っ子である透さんとBlue Marrowの璃青さんのことだけど。どっちも似たような苦労をしてるよなと、笑いあって、花火大会に行く約束をとりつけた。だが、
「けどさ、野郎二人のツーショットはちょっとな」
と言う大輔に、
「なら、法学でも呼ぶか?」
と俺が言う。法学というのは、所属するサークル仲間の御法山学のことだ。
そして、このとき法学を仲間に引き入れたことで、俺はこの後、いろんな意味で翻弄されることになるが、この時はテンテンちゃんと一緒に祭りに行ける幸せで完全に舞い上がっていた。
0
お気に入りに追加
60
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小熊カチョー物語
燦一郎
キャラ文芸
真面目でひたむきな小熊カチョーのサラリーマン生活の悲喜こもごもをシリーズでお送りします。
連載物でなくて、各回読み切りです。
キャストを紹介しておきます。
**********************************************
■小熊(おぐま)カチョー
・所属:企画部企画すいしん課
・役職:カチョー
・まじめ。45歳既婚者。子供がふたりいる。
・塩サバが大好物
■大馬(おおば)ブチョー
・所属:企画部
・役職:ブチョー
・見かけだおし。自己中心的。ずるがしこい。
■リス子さん
・所属:企画部企画課
・役職:なし
・美人で利発的。おおらかでいきいきしている。28歳独身。
■ねず美さん
・所属:総務部庶務課
・役職:なし
・適当。おおざっぱ。少々いじわる。
40歳独身。
■燕(つばめ)ちゃん
・所属:営業部営業課
・役職:なし
・入社2年目の女子社員。ひたむき。
正直。24歳独身。
■その他
・猫目(ねこめ)シャチョー
・牛音(うしね)ジョーム
・狸木(たぬきぎ)センム
・蛇丘(へびおか)さん(重要顧客)
・青鹿(あおじか)くん(企画すいしん課カカリチョー)
・舞豚(ぶぶた)くん(営業部営業課)
αteam~アルファチーム〜
αMana
キャラ文芸
◢◤◢注意◤◢◤
カゲプロパロです。
クオリティかなり低めです。
この小説はαManaの人狼ゲームに関連しています。こちらの小説を先に読むのはもちろん良いのですが、人狼ゲームを読んでからの方が分かりやすいかと思われます。また人狼ゲームのネタバレ要素も一部入っています。僕は人狼ゲームから見るのをオススメします。
人狼ゲームの関連小説『αteam~アルファチーム~』が始まります!αteamは不思議な能力を持った人達の集まる場所。人狼ゲームの参加者で最後まで残ることの出来た石井ユキトはαteamのNO.1つまりリーダー的存在になった。一緒に支えるαteamの愉快な9人の仲間達とこんな世界を塗り替えろ!!!さらにユキトにはある隠された命を奪い取る危険がある能力があった。
ドキドキハラハラ時には涙時には爆笑色々詰まった禁断の話がいよいよ解禁されます!!!!!
「それじゃあ今日も行こうか。リーダー?」「うん……もうこんな理不尽な世界は終わらせよう?」
輝く青空をもう一度
三日月
キャラ文芸
余命宣言された主人公のもとにとある女の子があらわれる。
死んでもいいやと思っていたが、その女の子と毎日会っているうちに、この世界にいたいと思ってしまう主人公。
だが、非情にも時間は流れていって…
これは短い時間のなかで繰り広げられる、明るく、切ない
出会いと別れの物語だ
ハルウタ〜もふもふなあやかしたちの事情〜
リオ
キャラ文芸
ある日、妖怪が見えるようになってしまった。そんな少女の前に現れたのは二人の青年、ルカとレオ(妖怪)。右目に入ってしまった<氷力石>が原因で共に過ごすこととなり……。人の姿に化ける動物妖怪と少女とのお話。
諦めて溺愛されてください~皇帝陛下の湯たんぽ係やってます~
七瀬京
キャラ文芸
庶民中の庶民、王宮の洗濯係のリリアは、ある日皇帝陛下の『湯たんぽ』係に任命される。
冷酷無比極まりないと評判の皇帝陛下と毎晩同衾するだけの簡単なお仕事だが、皇帝陛下は妙にリリアを気に入ってしまい……??
『遺産相続人』〜『猫たちの時間』7〜
segakiyui
キャラ文芸
俺は滝志郎。人に言わせれば『厄介事吸引器』。たまたま助けた爺さんは大富豪、遺産相続人として滝を指名する。出かけた滝を待っていたのは幽霊、音量、魑魅魍魎。舞うのは命、散るのはくれない、引き裂かれて行く人の絆。ったく人間てのは化け物よりタチが悪い。愛が絡めばなおのこと。おい、周一郎、早いとこ逃げ出そうぜ! 山村を舞台に展開する『猫たちの時間』シリーズ7。
小説家の日常
くじら
キャラ文芸
くじらと皐月涼夜の中の人が
小説を書くことにしました。
自分達の周囲で起こったこと、
Twitter、pixiv、テレビのニュース、
小説、絵本、純文学にアニメや漫画など……
オタクとヲタクのため、
今、生きている人みんなに読んでほしい漫画の
元ネタを小説にすることにしました。
お時間のあるときは、
是非!!!!
読んでいただきたいです。
一応……登場人物さえ分かれば
どの話から読んでも理解できるようにしています。
(*´・ω・)(・ω・`*)
『アルファポリス』や『小説家になろう』などで
作品を投稿している方と繋がりたいです。
Twitterなどでおっしゃっていただければ、
この小説や漫画で宣伝したいと思います(。・ω・)ノ
何卒、よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる