本気の心と身体の浮気。

おまけ (第36話 side：和真)

「もう泣くな」


方法は好ましくないものだとしても、自分の力で相手を幸せにしたい気持ちを、理解できないわけではない。


（まあ、与えられて幸せだと言うタイプならば、惹かれる事もなかったんだろしな）


目尻から零れた涙がシーツに吸い込まれる前に、添えた指先で拭ってやる。

ひどく涙もろくなっているのは、それだけ心が疲弊しているのだろう。

日頃の自分らしくもなく、ままならない恋人への感情に整理をつけている中。
ペット扱いをした覚えがない中での亜樹の発言に苛立って、それなりの対応をした覚えはあった。

和真からの扱いに、亜樹の心がすり減っていく様子は見て取れていた。

いっそうペットとして割り切ってしまおうかと一瞬頭を過っても、その度に傷付いていく亜樹を目にすればできるはずもない。

向けられた亜樹の表情のどこにも、和真が気に入っていた幸せそうな笑みがないなら。

もういい、と思えた。

あんな空っぽな様子で、笑う姿を見たいわけじゃないのだから。

望んでいる関係はこれじゃない、と気持ちが凪いでいくようにそう思えた。

和真の感触や温もりを確認するように、絡められた指先を引き寄せてキスをする。
その動きに追うように見上げてくる顔に唇を落とす。

とりあえず今は。
先のキスの感触に傷付いた亜樹の心を癒すように、優しくついばみ舌を絡めた。