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3.逃走防止の鎖なの!?
③
しおりを挟む「ちょ、やめて、くだ…っふぁ…ふ…っ」
キスに邪魔をされて言葉が全然出てこない。
しかもこんな暴虐無人なくせに、何でこんなに上手いんだ。
掠めるような舌の愛撫も、強弱を付けた甘噛みも、気持ちよくて仕方がない。
それに俺が思わず身体を震わせた所だって目聡く拾って攻めてくる。
イケメンでキスが上手いってどういう事だ。
って、そういう事なんだろう。
大魔法使いで顔が良ければ、性格なんて二の次だったって訳か。
神様の不公平っぷりを思えば、俺は正直面白くなかった。
それだけ上手くなれるぐらいお相手には事欠かないなら、わざわざ男の弟子を玩具にしなくても良いだろう。
俺をさっさと解放して欲しかった。
その顔で迫れば何だって許してくれる人は、男女共にいるはずだ。
今からでもその人達を当たってこいと叫びたい。
その為にも、俺は取りあえずキスから逃れようと、顔を左右に振ってみた。
「イッ、ーー!!」
ジンジンとした痛みがして、鉄の味が口の中を広がっていく。
「ほらな、だからお前は学習能力のないバカなんだ」
人の唇を噛み切っといて、何を言ってんだと突っ込みたい。
だけど、シレッと冷たい目を向けてくる師匠に、これ以上逆らうのはマズイと俺の本能が告げていた。
なんでますます不機嫌になってるんだ。
さっきと同じ台詞なのに、こんな声を出す時の師匠はかなりヤバい時だ。
蛇に睨まれた蛙のように、師匠の腕の中で俺の身体が硬直する。
そんな俺の唇に滲んだ血を師匠の指が塗りつけていた。
まるで女の人が口紅でも塗っている時みたいだ。
この人も誰かにこうやって塗ってあげる事もあるんだろうか。
そんなどうでも良いことを考えて現実逃避を図ってみる。
「そんなんだから、なおさらなんだよ」
そんなんだから、ってどれの事だ?
なおさらって、俺が嫌がっている昨日の続きの事だよな?
何を言っているのか全く分かんない。
でも、俺が地雷を踏み抜いているって事だよな。
だってメチャクチャ不機嫌だし。
「って言っても、お前全然分かってないだろ」
ヤバい、それさえもバレていた。
「そ、そんな事はーーー」
「あるだろう」
もはや断定ですか。
俺には言い逃れの余地も無しですか。
「まぁ、いいさ」
何でそこで笑うんだ。
いや、その顔は『いい』なんて思ってない。
黒い笑みとしか言えないそれに俺の喉がヒクリッと鳴った。
塗りつけた血を舐め取るようにもう一度舌を這わされながら、ピリピリとした傷を癒やされていく。
「お前は身体で分かっていけばいいさ」
そして、俺が何か言う前に唇はまた塞がれていた。
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