俺をおもちゃにするなって!

丹砂 (あかさ)

文字の大きさ
上 下
10 / 23
3.逃走防止の鎖なの!?

逃走防止の鎖なの!?①

しおりを挟む
まぶた越しに光を感じて、俺はしぶしぶ目を開けた。
まだまだ疲れは取れていなくて、俺の身体は心の底から睡眠を欲している。

「・・・眠い」

それでもモソモソと身体を起こした。

どれだけ眠かろうが、疲れていようが、あの師匠が起きてくる前に朝飯が完成していなければ、どんな目に遭うか分からない。

朝っぱらから不憫な過去が思い出されて、俺は思わず遠くを見つめた。

あの時は大変だった。
武器も無し、杖も無しで渓谷に突き落とされて。
しかも夕方までには帰ってきて夕飯は作れってきたもんだ。
完成させていなければ俺をエサに夕飯の狩りをする気だったんだから、あり得ない。

こっちはあの人みたいな規格外れな存在じゃないっていうのにだ。

「ほんと、師匠みたいなのを鬼畜って言うんだろうな」

何を血迷ってこんな人に弟子入りなんてしてしまったのか。
思わず俺の口からため息が漏れた。

「朝から俺の悪口とは、お前もずいぶん度胸がついたな」

・・・っへ?
今聞こえたのは空耳だと信じたい。

俺は恐る恐る寝ていたベッドの背中側へ振り返る。

「・・・ナンデ、シショウガ、ココニ、イルンデスカ・・・?」

これが血の気が引くってやつだろう。
うまく舌さえ回らなくて、めちゃくちゃ言葉が片言だ。

「何言ってんだ。ここは俺の寝台だろ。お前があの後に意識を飛ばしっぱなしだったから、ろくに実験ができなかったんだよ」

「・・・実験って?」

「あぁ、それ」

ぴっ、と指さされた方を辿っていく。
そんなはずはない。何かの間違いであってくれ。
俺はシーツで隠れた下半身をペラリとめくって確認した。

「ッな!!何ですか、これ!!」

「うーん、魔具?」

いやいや、魔具っていうよりは呪具だろう!しかもとびっきり濃い呪いが掛かって俺を不幸のドン底へ陥れるようなやつだ。

「取って下さいよ!」

「何でだよ?まだ全然確認してねぇんだから、取るわけないだろ」

その確認が嫌で仕方がない。

どういう原理か、項垂れた根元にはまったままの水色のリングは、締め付けられているわけでもないのに、抜け落ちる様子もない。
とりあえずどうにか外せないかと、そのリングに触れてみる。

「なんかやらしいな」

アホかと、俺は師匠を睨み付けた。
そんな俺をニヤニヤと笑いながら見ているこの人が本当に腹が立つ。

抵抗すればするだけ痛い目に合わされるって分かっていても、この顔を見てたら矢っ張りダメだ。

俺が困っているのが楽しくて仕方がないっていう笑顔だ。
イケメンがそんな顔で見てくるのだ。
ぜったいに素直になんかなってられない、って思うのは人として当然だろう。

それにしてもどこにも繋ぎ目が見つからない。
ゲルみたいにプニプニして柔らかいのに、伸ばしても取れないってどんな仕掛けだよ。

「あぁもう!取れない!!」

イライラとした声を上げた俺の視界の隅で、それはそれは意地悪そうにニヤリと笑った師匠の顔が見えた。

あぁ、なんてムカつく顔なんだ。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

処理中です...