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3.逃走防止の鎖なの!?
逃走防止の鎖なの!?①
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まぶた越しに光を感じて、俺はしぶしぶ目を開けた。
まだまだ疲れは取れていなくて、俺の身体は心の底から睡眠を欲している。
「・・・眠い」
それでもモソモソと身体を起こした。
どれだけ眠かろうが、疲れていようが、あの師匠が起きてくる前に朝飯が完成していなければ、どんな目に遭うか分からない。
朝っぱらから不憫な過去が思い出されて、俺は思わず遠くを見つめた。
あの時は大変だった。
武器も無し、杖も無しで渓谷に突き落とされて。
しかも夕方までには帰ってきて夕飯は作れってきたもんだ。
完成させていなければ俺をエサに夕飯の狩りをする気だったんだから、あり得ない。
こっちはあの人みたいな規格外れな存在じゃないっていうのにだ。
「ほんと、師匠みたいなのを鬼畜って言うんだろうな」
何を血迷ってこんな人に弟子入りなんてしてしまったのか。
思わず俺の口からため息が漏れた。
「朝から俺の悪口とは、お前もずいぶん度胸がついたな」
・・・っへ?
今聞こえたのは空耳だと信じたい。
俺は恐る恐る寝ていたベッドの背中側へ振り返る。
「・・・ナンデ、シショウガ、ココニ、イルンデスカ・・・?」
これが血の気が引くってやつだろう。
うまく舌さえ回らなくて、めちゃくちゃ言葉が片言だ。
「何言ってんだ。ここは俺の寝台だろ。お前があの後に意識を飛ばしっぱなしだったから、ろくに実験ができなかったんだよ」
「・・・実験って?」
「あぁ、それ」
ぴっ、と指さされた方を辿っていく。
そんなはずはない。何かの間違いであってくれ。
俺はシーツで隠れた下半身をペラリとめくって確認した。
「ッな!!何ですか、これ!!」
「うーん、魔具?」
いやいや、魔具っていうよりは呪具だろう!しかもとびっきり濃い呪いが掛かって俺を不幸のドン底へ陥れるようなやつだ。
「取って下さいよ!」
「何でだよ?まだ全然確認してねぇんだから、取るわけないだろ」
その確認が嫌で仕方がない。
どういう原理か、項垂れた根元にはまったままの水色のリングは、締め付けられているわけでもないのに、抜け落ちる様子もない。
とりあえずどうにか外せないかと、そのリングに触れてみる。
「なんかやらしいな」
アホかと、俺は師匠を睨み付けた。
そんな俺をニヤニヤと笑いながら見ているこの人が本当に腹が立つ。
抵抗すればするだけ痛い目に合わされるって分かっていても、この顔を見てたら矢っ張りダメだ。
俺が困っているのが楽しくて仕方がないっていう笑顔だ。
イケメンがそんな顔で見てくるのだ。
ぜったいに素直になんかなってられない、って思うのは人として当然だろう。
それにしてもどこにも繋ぎ目が見つからない。
ゲルみたいにプニプニして柔らかいのに、伸ばしても取れないってどんな仕掛けだよ。
「あぁもう!取れない!!」
イライラとした声を上げた俺の視界の隅で、それはそれは意地悪そうにニヤリと笑った師匠の顔が見えた。
あぁ、なんてムカつく顔なんだ。
まだまだ疲れは取れていなくて、俺の身体は心の底から睡眠を欲している。
「・・・眠い」
それでもモソモソと身体を起こした。
どれだけ眠かろうが、疲れていようが、あの師匠が起きてくる前に朝飯が完成していなければ、どんな目に遭うか分からない。
朝っぱらから不憫な過去が思い出されて、俺は思わず遠くを見つめた。
あの時は大変だった。
武器も無し、杖も無しで渓谷に突き落とされて。
しかも夕方までには帰ってきて夕飯は作れってきたもんだ。
完成させていなければ俺をエサに夕飯の狩りをする気だったんだから、あり得ない。
こっちはあの人みたいな規格外れな存在じゃないっていうのにだ。
「ほんと、師匠みたいなのを鬼畜って言うんだろうな」
何を血迷ってこんな人に弟子入りなんてしてしまったのか。
思わず俺の口からため息が漏れた。
「朝から俺の悪口とは、お前もずいぶん度胸がついたな」
・・・っへ?
今聞こえたのは空耳だと信じたい。
俺は恐る恐る寝ていたベッドの背中側へ振り返る。
「・・・ナンデ、シショウガ、ココニ、イルンデスカ・・・?」
これが血の気が引くってやつだろう。
うまく舌さえ回らなくて、めちゃくちゃ言葉が片言だ。
「何言ってんだ。ここは俺の寝台だろ。お前があの後に意識を飛ばしっぱなしだったから、ろくに実験ができなかったんだよ」
「・・・実験って?」
「あぁ、それ」
ぴっ、と指さされた方を辿っていく。
そんなはずはない。何かの間違いであってくれ。
俺はシーツで隠れた下半身をペラリとめくって確認した。
「ッな!!何ですか、これ!!」
「うーん、魔具?」
いやいや、魔具っていうよりは呪具だろう!しかもとびっきり濃い呪いが掛かって俺を不幸のドン底へ陥れるようなやつだ。
「取って下さいよ!」
「何でだよ?まだ全然確認してねぇんだから、取るわけないだろ」
その確認が嫌で仕方がない。
どういう原理か、項垂れた根元にはまったままの水色のリングは、締め付けられているわけでもないのに、抜け落ちる様子もない。
とりあえずどうにか外せないかと、そのリングに触れてみる。
「なんかやらしいな」
アホかと、俺は師匠を睨み付けた。
そんな俺をニヤニヤと笑いながら見ているこの人が本当に腹が立つ。
抵抗すればするだけ痛い目に合わされるって分かっていても、この顔を見てたら矢っ張りダメだ。
俺が困っているのが楽しくて仕方がないっていう笑顔だ。
イケメンがそんな顔で見てくるのだ。
ぜったいに素直になんかなってられない、って思うのは人として当然だろう。
それにしてもどこにも繋ぎ目が見つからない。
ゲルみたいにプニプニして柔らかいのに、伸ばしても取れないってどんな仕掛けだよ。
「あぁもう!取れない!!」
イライラとした声を上げた俺の視界の隅で、それはそれは意地悪そうにニヤリと笑った師匠の顔が見えた。
あぁ、なんてムカつく顔なんだ。
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