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本編
第37話 跳び族のレフィ 1
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ギガイの腕から降ろされたレフラを3人が素早く取り囲む。歩き出したレフラの背後から聞こえた溜息は重々しい。だが、視察である以上は、ギガイとしても、いつまでも留まる事はできないためか、リュクトワスを連れ立って、動き出した様子があった。
「どうやってギガイ様を説得されたんですか?」
控え目な声量でレフラに尋ねたリランの面持ちは、少し引き攣っているようだった。だが、直前にギガイに呼びつけられた時に、いったいどんな話しをしたのか。今日初めに顔を合わせた時に比べれば、3人ともだいぶ雰囲気は和らいでいる様子から、それほど悪い状況ではなかったのだろう。
「私もなぜ許可して下さったのか、よく分からないんです……」
レフラは先日の、ギガイとのやり取りを思い出しながら、不思議そうに首を傾げた。
今日の視察の時に、降ろして欲しい、とお願いをした時のギガイは、ハッキリと不機嫌そうな表情だった。行ってみたい店があると告げたレフラへ『お前が望むのなら、どの店でも連れて行ってやる』と予想通りの言葉を返すギガイに、色々説得を試みたのも事実だった。でも、正直なところ、レフラ自身、あんな言葉でギガイが納得してくれたとは思えなかった。
それでも、最後はしぶしぶと。本当にイヤで仕方ない、といった表情を浮かべたまま、しぶしぶと。ギガイは今回だけだと、念押しをしながら、なぜか認めてくれたのだ。
『私が中央区を視察している時間だけで、表通りの店だけだ。その場所から離れる事は、絶対に認めん。それでも良いな?』
だから、ギガイのそんな言葉を聞いた直後は、唖然としたまま、レフラは上手く返事を出来ずにいたぐらいだった。
『どうした? 約束できないなら、この話しは無かった事にするぞ。それとも、気が変わったか?』
その上、せっかく出してくれた許可を撤回されそうになったため、その後は、ただギガイの言葉に素直に頷いてばかりいて、理由を聞き出す余裕はなかった。
「それに、話しを蒸し返した事で、やっぱりダメだと言われてしまうのが怖くて、あれから視察の話しも、できるだけ避けるようにしてたんです」
そのせいで、なぜギガイが許可をしてくれたのか、結局今日まで、レフラも分かっていなかった。でも、今朝のスケジュールの確認の時も、苦々しい雰囲気はあっても、特に不機嫌そうな様子はなかったため、一応は、ギガイの中では納得できているのだろう。
「そうですか」
武官としての振る舞いに慣れた3人は、ギガイの考えをこれ以上追及するつもりはないのか、それだけ言って話題を変えた。
「でも、今回だけでも、許可を頂けて良かったですね」
少し後ろから聞こえたエルフィルの言葉に、見上げるように振り返える。「はい」と返す声は、期待でそわそわする気持ちのままに、自分でも分かるぐらい弾んでいた。
「この通りにある店は、どれも品が良いですから、素晴らしい物が購入できると思いますよ」
「どんな模様にするかは、もう決めたんですか?」
続けたリランやラクーシュも、そんなレフラの雰囲気につられたのか、同じように楽しげだった。正直、こうやって一緒に笑って歩けるのが、ギガイだったらとも思わなくもない。だが、黒族のこの主要地で、気軽に誰にも気に止められずに、2人で並んで歩くなんて無理だろう。
「ギガイ様をご存知でない場所って、この世界にあるでしょうか?」
「ギガイ様を、ですか? うーん、たぶん無いと思いますが……でも、紫族や黄族の奥地なら、ギガイ様のお顔を知らない者は、居るかもしれないですね」
丁寧に説明をしてくれたリランは、突然どうしたのか、と不思議そうな表情をしている。こうい時に、他の2人は特に何も言わないが、同じように不思議に思っているのだろう。リランと同じように口を噤んだまま、レフラの答えを待っているようだった。
「どうやってギガイ様を説得されたんですか?」
控え目な声量でレフラに尋ねたリランの面持ちは、少し引き攣っているようだった。だが、直前にギガイに呼びつけられた時に、いったいどんな話しをしたのか。今日初めに顔を合わせた時に比べれば、3人ともだいぶ雰囲気は和らいでいる様子から、それほど悪い状況ではなかったのだろう。
「私もなぜ許可して下さったのか、よく分からないんです……」
レフラは先日の、ギガイとのやり取りを思い出しながら、不思議そうに首を傾げた。
今日の視察の時に、降ろして欲しい、とお願いをした時のギガイは、ハッキリと不機嫌そうな表情だった。行ってみたい店があると告げたレフラへ『お前が望むのなら、どの店でも連れて行ってやる』と予想通りの言葉を返すギガイに、色々説得を試みたのも事実だった。でも、正直なところ、レフラ自身、あんな言葉でギガイが納得してくれたとは思えなかった。
それでも、最後はしぶしぶと。本当にイヤで仕方ない、といった表情を浮かべたまま、しぶしぶと。ギガイは今回だけだと、念押しをしながら、なぜか認めてくれたのだ。
『私が中央区を視察している時間だけで、表通りの店だけだ。その場所から離れる事は、絶対に認めん。それでも良いな?』
だから、ギガイのそんな言葉を聞いた直後は、唖然としたまま、レフラは上手く返事を出来ずにいたぐらいだった。
『どうした? 約束できないなら、この話しは無かった事にするぞ。それとも、気が変わったか?』
その上、せっかく出してくれた許可を撤回されそうになったため、その後は、ただギガイの言葉に素直に頷いてばかりいて、理由を聞き出す余裕はなかった。
「それに、話しを蒸し返した事で、やっぱりダメだと言われてしまうのが怖くて、あれから視察の話しも、できるだけ避けるようにしてたんです」
そのせいで、なぜギガイが許可をしてくれたのか、結局今日まで、レフラも分かっていなかった。でも、今朝のスケジュールの確認の時も、苦々しい雰囲気はあっても、特に不機嫌そうな様子はなかったため、一応は、ギガイの中では納得できているのだろう。
「そうですか」
武官としての振る舞いに慣れた3人は、ギガイの考えをこれ以上追及するつもりはないのか、それだけ言って話題を変えた。
「でも、今回だけでも、許可を頂けて良かったですね」
少し後ろから聞こえたエルフィルの言葉に、見上げるように振り返える。「はい」と返す声は、期待でそわそわする気持ちのままに、自分でも分かるぐらい弾んでいた。
「この通りにある店は、どれも品が良いですから、素晴らしい物が購入できると思いますよ」
「どんな模様にするかは、もう決めたんですか?」
続けたリランやラクーシュも、そんなレフラの雰囲気につられたのか、同じように楽しげだった。正直、こうやって一緒に笑って歩けるのが、ギガイだったらとも思わなくもない。だが、黒族のこの主要地で、気軽に誰にも気に止められずに、2人で並んで歩くなんて無理だろう。
「ギガイ様をご存知でない場所って、この世界にあるでしょうか?」
「ギガイ様を、ですか? うーん、たぶん無いと思いますが……でも、紫族や黄族の奥地なら、ギガイ様のお顔を知らない者は、居るかもしれないですね」
丁寧に説明をしてくれたリランは、突然どうしたのか、と不思議そうな表情をしている。こうい時に、他の2人は特に何も言わないが、同じように不思議に思っているのだろう。リランと同じように口を噤んだまま、レフラの答えを待っているようだった。
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