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本編
第22話 素直さへの甘露 5※
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ボロボロと零れた涙で、頬に触れたシーツがだいぶ濡れていた。そのシーツの不快さを認識してしまえば、一気に感情が膨らんで、耐えていたものが決壊する。
「も、もう、やだぁぁ、いじわる、しないで、もう、いつもどおりがいい、ひざが、いい、ぎがいさまの、かおがみたい」
振り返ろうと、身体を動かしても、腰を捕らえているギガイの手が邪魔をして、少しも振り返る事さえ出来ないのだ。濡れたシーツの分だけ、ずっとギガイに抱きしめて貰えないまま、1人でシーツに顔を埋めていた事に気が付いてしまえば、もう少しも我慢なんてできなかった。
堪えていた制止の言葉が、何度もやだやだ、と口を吐く。動かせないと分かりつつ、身を捩って、やっぱり振り向けない事を再認識して。
「うぅぅ~~~!!」
レフラは悔しそうに、泣き声を上げた。
「分かった、待て、分かったから、どうした」
突然号泣し始めたレフラに焦ったのか、屹立を抜いたギガイがレフラの身体から手を離す。一旦自由にさせて、様子を見る事にしたのだろう。
ようやく自由に動けるようになったレフラが、シーツの上で仰向けになる。そのままギガイを見上げたレフラの頬を、ギガイが指の背でなぞってくる。もうこれ以上レフラを拘束する気はないのか、その手はレフラへ触れるだけで、どこも掴まえるような気配はなかった。
レフラの身体はまだシーツの上に転がったままで、求めたように膝に抱えられてはいなかった。それでもようやく見えたギガイの顔に、レフラはまたクシャッと顔を歪めて、「んっ!」と催促するように、ギガイの方へ腕を伸ばした。
その腕に応えるように、ギガイが上体を倒して近付いてくれる。レフラは逃がさないとでもいうように、その首に回した腕に力を込めて抱きついた。
「ひざがいいです……」
ギガイの耳元で、グスッと鼻をすすりながら訴える。
泣いたレフラをなだめる為か、さっきまであったギガイの意地悪そうな空気が掻き消え、レフラが求めるまま、ギガイがいつもの様に応じてくれた。
大きな掌が背中を支えて、首にしがみ付いたままのレフラの身体が、シーツからギガイの方へと引き寄せられる。
温もりと感触にホッとしたレフラが、また「うぅぅ~~~!!」と唸りながら、ギガイの首筋に噛みついた。
「だきしめても、くれない、なんて、ひどいです……」
赤い噛み痕が薄らと、ギガイの鍛えられた首筋に残る。大したことはない痕だとしても、黒族長であるギガイの身体に、こうやって傷を残せるのは、レフラぐらいだった。
「それで怒ったのか?」
首に付いた歯形を一撫でして、フッと笑ったギガイの声は、蕩けるように甘かった。だが、そのまま、宥めるように背中を撫でて、太股へ引き上げられたレフラは、これでは足りないと、不満げな目をギガイへ向けた。
「だって、ずっと、顔も見えなくて……ギガイ様は意地悪ですし……」
「意地悪と言っても、お前の望むままに抱いていたはずだぞ。それに、お前がイヤだと言っていたのも事実だ」
そんな風に言いながらも、意地悪をしていた事も、また事実だったせいだろう。ギガイは苦笑を浮かべていた。
「でも……でも……もう、ちゃんと欲しいです……おくにください……ギガイさまの顔を見ながら……いつも、みたいに抱いて欲しいです……」
ギガイの言葉に、気まずさを感じれば、睨み付けていたはずの視線が彷徨ってしまう。だけど、欲しいという思いのまま、レフラはギガイへ指を絡めて、ギュッと握り締めた。
「も、もう、やだぁぁ、いじわる、しないで、もう、いつもどおりがいい、ひざが、いい、ぎがいさまの、かおがみたい」
振り返ろうと、身体を動かしても、腰を捕らえているギガイの手が邪魔をして、少しも振り返る事さえ出来ないのだ。濡れたシーツの分だけ、ずっとギガイに抱きしめて貰えないまま、1人でシーツに顔を埋めていた事に気が付いてしまえば、もう少しも我慢なんてできなかった。
堪えていた制止の言葉が、何度もやだやだ、と口を吐く。動かせないと分かりつつ、身を捩って、やっぱり振り向けない事を再認識して。
「うぅぅ~~~!!」
レフラは悔しそうに、泣き声を上げた。
「分かった、待て、分かったから、どうした」
突然号泣し始めたレフラに焦ったのか、屹立を抜いたギガイがレフラの身体から手を離す。一旦自由にさせて、様子を見る事にしたのだろう。
ようやく自由に動けるようになったレフラが、シーツの上で仰向けになる。そのままギガイを見上げたレフラの頬を、ギガイが指の背でなぞってくる。もうこれ以上レフラを拘束する気はないのか、その手はレフラへ触れるだけで、どこも掴まえるような気配はなかった。
レフラの身体はまだシーツの上に転がったままで、求めたように膝に抱えられてはいなかった。それでもようやく見えたギガイの顔に、レフラはまたクシャッと顔を歪めて、「んっ!」と催促するように、ギガイの方へ腕を伸ばした。
その腕に応えるように、ギガイが上体を倒して近付いてくれる。レフラは逃がさないとでもいうように、その首に回した腕に力を込めて抱きついた。
「ひざがいいです……」
ギガイの耳元で、グスッと鼻をすすりながら訴える。
泣いたレフラをなだめる為か、さっきまであったギガイの意地悪そうな空気が掻き消え、レフラが求めるまま、ギガイがいつもの様に応じてくれた。
大きな掌が背中を支えて、首にしがみ付いたままのレフラの身体が、シーツからギガイの方へと引き寄せられる。
温もりと感触にホッとしたレフラが、また「うぅぅ~~~!!」と唸りながら、ギガイの首筋に噛みついた。
「だきしめても、くれない、なんて、ひどいです……」
赤い噛み痕が薄らと、ギガイの鍛えられた首筋に残る。大したことはない痕だとしても、黒族長であるギガイの身体に、こうやって傷を残せるのは、レフラぐらいだった。
「それで怒ったのか?」
首に付いた歯形を一撫でして、フッと笑ったギガイの声は、蕩けるように甘かった。だが、そのまま、宥めるように背中を撫でて、太股へ引き上げられたレフラは、これでは足りないと、不満げな目をギガイへ向けた。
「だって、ずっと、顔も見えなくて……ギガイ様は意地悪ですし……」
「意地悪と言っても、お前の望むままに抱いていたはずだぞ。それに、お前がイヤだと言っていたのも事実だ」
そんな風に言いながらも、意地悪をしていた事も、また事実だったせいだろう。ギガイは苦笑を浮かべていた。
「でも……でも……もう、ちゃんと欲しいです……おくにください……ギガイさまの顔を見ながら……いつも、みたいに抱いて欲しいです……」
ギガイの言葉に、気まずさを感じれば、睨み付けていたはずの視線が彷徨ってしまう。だけど、欲しいという思いのまま、レフラはギガイへ指を絡めて、ギュッと握り締めた。
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