20 / 50
本編
第18話 素直さへの甘露 1※
しおりを挟む
粘り気が弱い、透明な液体を掌で受ける。
「あっ、あぁぁ……ぁぁ……」
張り上げた嬌声が、弱々しい余韻へと変わっていく。それに伴い、腕の中で強ばっていた身体から、ゆっくりと力が抜けていった。
一気に駆け上がった快感は、堪えていた分だけ強かったのか、レフラは「はぁはぁ」と荒い呼吸を繰り返していた。身体を抱き込んでいた腕を持ち上げて、顔を掌で拭ってやる。その手を追って、ギガイの方を振り返ったレフラが、非難がましい目でギガイを見上げた。
「少し待て」
何かを言おうと動いた唇にキスをする。そのまま身体を起こして、羽織ったままの寝衣を手に掛ければ、近距離で重なっていた目が、ゆっくりと期待に染まっていく。同時にコクッと喉を鳴らす姿は、飢えや渇きを抱いた者のようだった。
「早く……」
レフラの声は、熱く湿り気を帯びて掠れていた。
もう少しで、いつものように触れてくれる。そして、腕の中に抱き込んで、直接肌を触れ合わせきれる。そんな期待を抱いたのだろう。いつもなら腕の中で見せるような表情で、レフラがギガイへ手を伸ばした。
「お前は先に眠っていろ」
そこでギガイは、脱いだ衣で手早く残滓を拭い取り、レフラの手を掬い取った。一瞬だけレフラが表情を輝かせる。だが、言葉とキスで肌に触れる前に、指を押し留めれば、何かが違うと感じたようだった。
「ギガイ様……?」
名前を呼ぶ声は、伺うような少し掠れた音になっていた。
「大丈夫だ、すぐに戻る」
手を押し返したギガイは、宥めるように言いながら、レフラの下半身を清めていく。レフラの着衣を整えた後は、手早くギガイ自身も新しい寝衣に腕を通した。
呆気なく、情事の雰囲気が払拭されていくギガイの様子が信じられない。驚愕に満ちた表情に、ハッキリとそんなレフラの考えが表れていた。そのまま寝かし付けるように、布団を掛けて立ち上がれば。
「ギガイ様! 待って……!」
寝台から出て行こうとしたギガイの腕を、レフラは慌てて抱え込んだ。
「どうした?」
「あの……ギガイ様……なにか、怒っていらっしゃいますか?」
レフラの焦りに反して、様子が変わらないギガイに、不安そうにレフラが聞いてくる。
ずっとレフラを見てきて、表情や仕草のわずかの差で、手を差し伸べて、愛しんで癒してきたのだから。こんなにハッキリと不安や焦りを見せたレフラを、ギガイが気に掛けない事に戸惑っているのだろう。
ギガイにすれば、そんなレフラの様子は、微笑ましくて仕方がない。
レフラにとって当たり前に、自分を癒してくれる存在として。何かあれば、守り、愛しんでくれる相手として。唯一無二となれるように、ずっと腕の中に、甘く囲い込んできたのだから。
その想いが、しっかりと根付いて、芽吹いている様子は、ギガイに思った以上の喜びを湧き上がらせた。
(だが、今は)
胸を占める感情を抑え込んで、ギガイは変わらない表情を向けたまま、レフラへ「そんな事はない」と緩く首を振っただけだった。
「それなら、どうして……」
「なにがだ?」
質問へ質問で返せば、レフラが握る手に力を込めた。
「……しないのですか?」
たったこれだけでも、レフラにとっては恥ずかしかったのか、戸惑った表情のまま、頬は赤くなっている。
「何をだ?」
だがギガイは、ハッキリとレフラが言葉で求めるまでは、と、気が付かないフリを貫き通す。そんなギガイの態度から、このまま応える気がないと、伝わったのだろう。
「……ギガイ様は……?」
視線を何度か彷徨わせて、意を決したように、レフラがギガイの太股に触れた。
「熱は、ツラくないのですか……?」
躊躇が伝わるぐらいゆっくりと、太股を辿る指が中心へと向かう。だが、その指が、股間の膨らみを確認する前に、ギガイは再び手を握り込んだ。
「あっ、あぁぁ……ぁぁ……」
張り上げた嬌声が、弱々しい余韻へと変わっていく。それに伴い、腕の中で強ばっていた身体から、ゆっくりと力が抜けていった。
一気に駆け上がった快感は、堪えていた分だけ強かったのか、レフラは「はぁはぁ」と荒い呼吸を繰り返していた。身体を抱き込んでいた腕を持ち上げて、顔を掌で拭ってやる。その手を追って、ギガイの方を振り返ったレフラが、非難がましい目でギガイを見上げた。
「少し待て」
何かを言おうと動いた唇にキスをする。そのまま身体を起こして、羽織ったままの寝衣を手に掛ければ、近距離で重なっていた目が、ゆっくりと期待に染まっていく。同時にコクッと喉を鳴らす姿は、飢えや渇きを抱いた者のようだった。
「早く……」
レフラの声は、熱く湿り気を帯びて掠れていた。
もう少しで、いつものように触れてくれる。そして、腕の中に抱き込んで、直接肌を触れ合わせきれる。そんな期待を抱いたのだろう。いつもなら腕の中で見せるような表情で、レフラがギガイへ手を伸ばした。
「お前は先に眠っていろ」
そこでギガイは、脱いだ衣で手早く残滓を拭い取り、レフラの手を掬い取った。一瞬だけレフラが表情を輝かせる。だが、言葉とキスで肌に触れる前に、指を押し留めれば、何かが違うと感じたようだった。
「ギガイ様……?」
名前を呼ぶ声は、伺うような少し掠れた音になっていた。
「大丈夫だ、すぐに戻る」
手を押し返したギガイは、宥めるように言いながら、レフラの下半身を清めていく。レフラの着衣を整えた後は、手早くギガイ自身も新しい寝衣に腕を通した。
呆気なく、情事の雰囲気が払拭されていくギガイの様子が信じられない。驚愕に満ちた表情に、ハッキリとそんなレフラの考えが表れていた。そのまま寝かし付けるように、布団を掛けて立ち上がれば。
「ギガイ様! 待って……!」
寝台から出て行こうとしたギガイの腕を、レフラは慌てて抱え込んだ。
「どうした?」
「あの……ギガイ様……なにか、怒っていらっしゃいますか?」
レフラの焦りに反して、様子が変わらないギガイに、不安そうにレフラが聞いてくる。
ずっとレフラを見てきて、表情や仕草のわずかの差で、手を差し伸べて、愛しんで癒してきたのだから。こんなにハッキリと不安や焦りを見せたレフラを、ギガイが気に掛けない事に戸惑っているのだろう。
ギガイにすれば、そんなレフラの様子は、微笑ましくて仕方がない。
レフラにとって当たり前に、自分を癒してくれる存在として。何かあれば、守り、愛しんでくれる相手として。唯一無二となれるように、ずっと腕の中に、甘く囲い込んできたのだから。
その想いが、しっかりと根付いて、芽吹いている様子は、ギガイに思った以上の喜びを湧き上がらせた。
(だが、今は)
胸を占める感情を抑え込んで、ギガイは変わらない表情を向けたまま、レフラへ「そんな事はない」と緩く首を振っただけだった。
「それなら、どうして……」
「なにがだ?」
質問へ質問で返せば、レフラが握る手に力を込めた。
「……しないのですか?」
たったこれだけでも、レフラにとっては恥ずかしかったのか、戸惑った表情のまま、頬は赤くなっている。
「何をだ?」
だがギガイは、ハッキリとレフラが言葉で求めるまでは、と、気が付かないフリを貫き通す。そんなギガイの態度から、このまま応える気がないと、伝わったのだろう。
「……ギガイ様は……?」
視線を何度か彷徨わせて、意を決したように、レフラがギガイの太股に触れた。
「熱は、ツラくないのですか……?」
躊躇が伝わるぐらいゆっくりと、太股を辿る指が中心へと向かう。だが、その指が、股間の膨らみを確認する前に、ギガイは再び手を握り込んだ。
4
お気に入りに追加
428
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる